妖怪に転生したから、陰陽師に退治されないようにしたい 作:大崎 狂花
『まあ祓われなかったのは良かったんだけどさ・・・・・・元男として、あんなにかわいいかわいいって撫で回されるのはやっぱり不本意だよ』
アキはこの前の新人陰陽師の女の子を思い出し、ため息をついた。あのあと、膝の上に座らせられてお菓子を食べさせられたり、頭を撫でられたりした。まるで本当の幼女みたいな扱いを受けたのである。
まあ、祓われなかったのはよかったものの、やっぱりそんなふうな扱いを受けたのは男としてのプライドがゴリゴリ削られていくことだった。
『はー・・・・・・成人男性がいきなり狐っ娘幼女になるっていうのは大変だあ。でもまあ、会社に行かなくていいっていうのは良いねー。一日中寝てても怒られない!』
この荒れ果てたビルにベットなんてものはないが、アキは空に浮かべるので、眠くなったら大体ぷかぷか浮かびながら眠っているのである。
『まあ、何もないから暇で仕方ないし、本当に惰眠を貪るだけでいいのかというちょっとした罪悪感はあるんだけど・・・・・・』
さて、アキがそんなふうに独り言を言いながらぷかぷかと浮かんでいた時のことだった。
『ん? 誰か入ってきたかな・・・・・・』
何やら気配を感じたので例の如く視覚と聴覚を飛ばして、どんな奴が侵入してきたかを確認した。
「こわーい」
「ははは、大丈夫だよ。俺がついてるからね」
陰陽師でもなんでもない、普通のカップルだった。
『チッ、なんだカップルかよ・・・・・・こんなところでデートなんかすんじゃねえよ・・・・・・』
陰陽師ではないので祓われる心配はない。しかし、アキの精神衛生上、このまま帰すというわけにもいかない。
『よし、脅かしてしまおう! せっかく妖狐になったんだから、成人男性だった時には出来なかったことをするんだ! カップルに一矢報いるということを!』
と、いうことでアキはこのカップルを驚かすことにした。
『まずは、あのカップルにも見えるように実体化して・・・・・・』
アキは霊力のある人間にしか見ることが出来ないので、実体化の術を使うことで一般人にも見えるようにする。
『うーん・・・・・・よし。ここにある紙切れを妖術で幽霊っぽい衣装にして・・・・・・』
アキは妖狐なので、妖術であるものを別のものと誤認させることが出来るのである。どこぞの元五番隊隊長みたいなことが出来るのだ!
ただまあ、この場合紙切れを幽霊っぽい着物に誤認させているだけなので、実際には裸に紙切れをつけてるだけというとんでもない格好なわけなのだが、それはもう仕方がない。カップルを驚かすためには必要なことだと割り切って、変態TSロリ妖狐おじさんの名を甘んじて受け入れよう。
そして、脅かしの準備が完成した。
「待てー!」
「あははは、捕まえてごらんなさ〜い」
廃ビルの中なのに海岸でやるヤツをやっているカップルの前に
『うらめしや〜』
オーソドックスな幽霊のセリフを言いながら飛び出していった。幽霊っぽい白い着物を着て、頭にはちゃんと天冠もつけ、血糊もつけてある。
(ふふふ・・・・・・どうだ、怖いだろ!)
と、アキは自信満々で飛び出していったのだが・・・・・・
「わーかわいいー!」
「本当だ。かわいい女の子だね。勝手に忍び込んできちゃったのかな?」
なぜか廃ビルへ勝手に忍び込んだ子供だと思われてしまった。
(なんでだよ。血糊とかついてんだぞ? 血だらけの女の子が可愛いってなんだよ・・・・・・)
イタズラだと思われたのだろう。この幼女の体が憎い。血糊がついてても可愛く見えるこの体が憎い。
「勝手にこんなところに入って、親御さんも困っているだろうし」
「ここは私たちが連れてってあげようか!」
アキはカップルの男の方に右手を、女性の方に左手を握られた。連れられてく宇宙人みたいな格好だ。新婚夫婦と子供の格好でもある。
「ね、私たちに子供が出来たら、こんな感じなのかな?」
「そうだね。きっとこんなふうにかわいい子だよ。なんせ、君と僕の子供なんだからね・・・・・・」
(カップルのイチャイチャのきっかけにされた・・・・・・最悪超えて超悪だよもう・・・・・・)
結果的に裏目に出てしまい、アキはため息をつくのだった。
で、まあそのまま連れて行かれるわけにもいかないので、アキは頃合いを見てなんかちょっと神秘的な感じでふわっと消えておいた。
「なんだったんだろう、あの子・・・・・・」
「ひょっとして、未来から来た僕らの子供だったんじゃないかな?」
(んなわけねーだろ・・・・・・)
アキはこの日、なんとも言えない微妙な気持ちになりながら眠りについたのだった。
『祓う』の意味は厳密に言うと少し違うらしいですが、書き直すのも面倒なのでこのままにします。目をつぶってくださると嬉しいです
タイトルとかは修正しておきました