どけ!僕はお兄ちゃんだぞ!   作:お兄ちゃん

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どけ!ロシデレの二次創作お兄ちゃんだぞ!


第1話

 

 

 

 

 

 ◯月×日

 

 どうやら転生したらしいので、今日から日記を付けていこうと思う。

 

 僕の名前はアレクサンドル・ミハイロヴィチ・九条。どこにでもいる金髪碧眼系男の子である。歳は1つです。

 1歳で日記書いてて気味悪がられないかって?大丈夫、うちの親揃いも揃って天然だから『ウチの子天才!』ぐらいにしか思わないって。

 

 日記を書き始めた目的としては、思い出した前世を綴ることを主旨に置き、日記はあくまでオマケで書いていこう………と、思っていたのだが、もう前世の記憶忘れてしまった。

 どうやら最初の数行書き始めたところで忘却の彼方へといってしまったらしい。

 

 ………忘れたもんはしょうがないか!と切り替える他ない。

 別に前世の記憶があろうとなかろうと、僕の世界が劇的に変わるわけでもない。

 中世ヨーロッパ風異世界ならまだしも、ここ、科学が発展した現代社会だし。うっすい板をタプタプしている時代だし。

 

 ということで、僕の日記はいたってありふれた日常を描くだけの、本当につまらないものになるのが確定したことをご承知の上で読んでほしい。

 まぁ、こんな日記、誰かが読むことなんてまずないんだけど。

 

 

 

 

 

 ☆月∇日

 

 ママ上の出産が近い。

 

 今は12月。窓辺から外を見ればしんしんと雪が降り積もっており、the Russia って感じの風景だ。

 そんな季節の中で我が家に訪れた吉報。どうやら僕に妹ができるらしい。

 

 とはいえ、実際それほど興味がない。

 記憶がなくても転生者という感覚を一丁前に持ち合わせているせいか、人生そのものに達観している節がある。そんな僕が、家族1人増える程度で一喜一憂などしないのだ。

 

 僕は漫画や小説のような病的なシスコンブラコンには絶対にならない。

 

 

 

 

 

 ◯月∮日

 

 くぁwせdrftgyふじこlpくぁwせdrftgyふじこlpくぁwせdrftgyふじこlpくぁwせdrftgyふじこlpくぁwせdrftgyふじこlpくぁwせdrftgyふじこlpくぁwせdrftgyふじこlp

 

 幸。

 

 

 

 

 

 ※月ヾ日

 

 妹とは素晴らしい存在だ。

 云うなら、オアシス。枯れ果てた人生に潤いを与える唯一無二の聖域。One for sister,All for sister。

 

 可愛すぎてずっと見てられる。

 なんでこんなに可愛いんだろう。笑顔の威力核兵器並だろこんなの、禁止にしろ。やっぱり禁止しないで。

 

 僕はこの子を──マリヤを死んでも守ると神に誓った。

 

 

 

 

 

 ℃月∇日

 

 マリヤに付きっきりの日々が続いている。

 ママ上が『しっかりお兄さんで助かるわ〜』なんて言っていたが、当たり前だろうと言いたい。むしろこの天使を放置することは許されざる罪と言わざるを得ない。国際法で極刑にすべき。

 

 

 

 

 

 ‼︎月♪日

 

 マリヤがハイハイした。

 感動で泣きそうになった。というか泣いた。

 

 

 

 

 

 ★月°日

 

 マリヤがはじめて言葉を話した。

 一般的に赤ちゃんのはじめての言葉といえば“ぱぱ”や“まま”を思い浮かべるだろう。

 だが、マリヤのはじめての言葉は───“おにい”だった。

 

 おにい───嗚呼、なんて甘美な響きだろうか。

 ずっと『僕がお兄ちゃんですよ〜』と刷り込みしてきた甲斐があったというものだ。これからも色々教えよう。

 

 

 

 

 

 〻月√日

 

 マリヤの愛称はマーシャというらしい。スッゲーかわいい愛称じゃん。

 これから僕もマーシャと呼ぼう。

 

 

 

 

 

 §月◇日

 

 マーシャが初めてあんよした。

 泣いた。

 

 

 

 

 

 〒月⁑日

 

 ママ上が三度目の出産を迎える。

 

 出産や新たな家族が増えることに祝福はすれど、それはそれとして、うちのママ上元気すぎでは?1年に1回ペースですよね?流石に心配が勝る。いや、本人はすごく嬉しそうにしてるから大丈夫なんだろうけど。母は強くて偉大なり。

 

 そんな元気すぎる母とは対照的に、僕は新たな不安が芽生えつつある。それは、新たに生まれる子にマーシャに注いでいるのと同じだけの愛情を注ぐことができるのか、ということである。

 僕はマーシャを愛してる。愛しすぎているとすら言える。

 その同等の熱量を、愛情を、新しい家族に注げるのか。僕は無理だと思う。それぐらいマーシャを愛しているのだ。

 

 あぁ、不安だ。これが杞憂であることを祈ろう。

 

 

 

 

 

 ♀月=日

 

 くぁwせdrftgyふじこlpくぁwせdrftgyふじこlpくぁwせdrftgyふじこlpくぁwせdrftgyふじこlpくぁwせdrftgyふじこlpくぁwせdrftgyふじこlpくぁwせdrftgyふじこlp

 

 幸、幸。

 

 

 

 

 

 £月∩ 日

 

 生まれたのは女の子だった。

 

 嗚呼、なんてかわいいのだろうか。

 名前はアリサ。愛称はアーリャ。顔つきはマーシャとそっくりで、目元なんか僕とそっくり。

 

 まさしく天からの贈り物。神様に感謝しないと。

 

 改めてマーシャとアーリャを命に換えて守ると神に誓った。

 

 

 

 

 

 ×月→日

 

 3歳になった。

 ここ2年間ぐらい毎日楽しくて満たされた人生を謳歌している。

 それもひとえに妹たちの存在のおかげだ。本当に感謝している。

 

 僕の人生は満たされている。アーリャが妹になってから、なおのことそう強く思うようになった。

 マーシャに続き、アーリャの口からも“にいに”を引き出し、またしても妹の初めてを奪ってしまった僕は、このところアーリャのあんよを手伝うなど、多忙な日々を送っている。

 マーシャですでに経験済みだからな、手慣れたものよ。

 

 しかし、ここ最近アーリャに付きっきりなせいか、マーシャが面白くなさそうな顔をすることが多くなった。

 頬を膨らませながら服を引っ張る仕草にキュン死しそうになった場面が何度もあった。

 生まれて初めて、影分身の術を使えない自分を心の底から憎んだ。

 

 

 

 

 

 ◉月◉日

 

 4歳になった。

 

 何事もなく平穏な日常を謳歌していた僕に新たな試練が訪れる。

 そう………幼稚園児に昇格である。

 

 入園するということは、2人と離れ離れになる時間が必然的に増える。この時間は毎度苦行の試練の連続である。

 しかし、ここで駄々捏ねてママ上やパパ上に迷惑はかけたくない。なので必死に我慢して、血涙を飲み込みながら通っている。

 

 あと1年、あと1年頑張ればマーシャも通うから……

 

 

 

 

 

 ¥月⊆ 日

 

 5歳になった。

 

 マーシャ、無事に幼稚園児に昇格を果たす。僕も年中さんに昇格を果たした。

 よく1年耐え抜いたと自分を褒めてあげたい。

 

 幼稚園でもマーシャに付きっきりだ。

 いや、流石に女の子たちだけで遊んでいる場合は空気を読んで引き下がっている。ただし男、テメェはダメだ。

 僕の目が黒いうちは指一本髪の毛一本触らせないからな!

 

 

 

 

 

 *月仝日

 

 6歳になった。

 

 今年で全員幼稚園児になり、毎日がハッピーな幼稚園生を過ごしている。

 惜しむらくは、今年で卒園であるということぐらいだ。

 これが三兄妹で先に生まれた者の宿命か……お兄ちゃんが妹たちの進む道を照らすのだ。

 

 

 

 

 

 ★月∂日

 

 7歳になった。

 

 一足早く小学生になった。

 このタイミングで、一度自身の身の振り方について考えてみた。

 

 僕はあの子たちにとってどうありたいのか。決まっている。尊敬されるような、あの子たちが胸を張って誇れるような兄になりたいのだ。そして、あの子たちが人生という名の道に迷ったとき、手を差し伸ばしてあげられる兄になりたいのだ。

 ならば、これまでの自分では不足と言わざるを得ないだろう。勉強、スポーツ、人望、その全てが完璧でなければならない。

 

 全ては妹たちのために。One for sisters,All for sistersだ!!

 

 

 

 

 

 ÷月∠日

 

 まだまだ幼いせいか分からないが、スポンジのように知識がポンポン吸収されていく。おかげで今のところテストは全て満点だ。問題が簡単ということもあるだろうけど。

 ……やはり肉体スペックが凄まじいのだろうか。

 

 いや、ぶっちゃけそこら辺はなんだっていい。

 妹たちに『お兄ちゃんすごい!』と言われるだけで、満点取った価値があるというものよ。

 

 

 

 

 

 ◇月◆日

 

 8歳になった。

 

 マーシャも小学生となり、よく勉強を教えてほしいとせがんでくるようになった。

 1年かけて積み上げた“頼れるお兄ちゃん”像の構築が実を結んだ瞬間だった。

 アーリャもマーシャに倣って横で勉強していた。すごく偉くて可愛いとお兄ちゃんは思います。

 

 

 

 

 

 □月⌒日

 

 アーリャのバレエ大会を観戦しに行った。

 バカみたいに応援した。声が枯れた。

 

 

 

 

 

 ☆月♀日

 

 9歳になった。

 

 アーリャが小学生になった。入学式の写真は100枚ぐらい保存した。

 小学校は幼稚園と違って通う期間が長い。3人離れ離れになることも滅多になくなることだろう。

 

 最近の楽しみは休み時間に妹たちが教室にやって来てくれることだ。

 同クラスの子たちを萎縮させてしまうかもしれないと、断腸の思いで妹たちの教室に行くのを自重していたが、まさか彼女たちから来てくれるとは思いもしなかった。

 お兄ちゃん、感激で泣いちゃう。というか泣いた。

 

 

 

 

 

 ♫月¥日

 

 10歳になった。

 

 最近、アーリャが勉強に打ち込むようになった。

 聞けば、全てにおいて1位になりたいのだとか。

 

 向上心があるのは素晴らしいことである。が、少し根気詰めすぎではないかとお兄ちゃんは思う。

 だから、もっとその可愛いお顔をお兄ちゃんに見せてほしいな〜と思っている。

 今はまだ、そうやってお願いすれば、『仕方ないわね』って感じで僕に構ってくれるけど、拒否されだしたら反抗期の突入の合図だと思ってる。

 まぁうちの妹に反抗期なんて訪れるわけないけどな!

 

 

 

 

 

 ∵月⁂日

 

 近々日本に引っ越すことが決まった。なんでも仕事の都合上とかで。

 

 ママ上は全く見知らぬ異国に僕らを行かせることに反対気味だったが、何故か生まれてからずっと使える日本語を初めて披露すれば、『この子が妹たちを守ってくれるわ!』と日本行きに同意してくれたらしい。

 まさかここで日本語が活きるとは思わなかった。

 というか、僕の前世絶対日本人だろ。記憶がなくても魂が日本行きに歓喜しちゃってるのが分かるもん。

 

 

 

 

 

 ¢月◎日

 

 おはようございます。こんにちは。こんばんは。

 世界最古の国日本にて、ロシアと日本のハーフであるアレクサンドル・ミハイロヴィチ・九条が日記をお送りしております。ちなみに11歳になりました。

 

 やはり日本の気候はロシアと全然違う。聞けば東京圏だと冬でも雪は珍しいらしい。マジで?

 僕ら兄妹は日本の小学校に転校し、ランドセルを背負いながら毎日歩いて登下校している。

 僕は登校初日でクラスに馴染んだけど、2人はまだもう少しかかりそうな印象だ。

 日本語さえ覚えれば馴染めるはず……今度兄妹で勉強会開こうかな。

 

 

 

 

 

 ∞月⇔日

 

 公園でガキんちょどもがマーシャを囲んで虐めていたので泣かした。

 虐めてた理由?知らん。なんであれマーシャを泣かせる奴は遍くすべてが悪である。慈悲はない。

 

 その時、マーシャのことをボーッと見てる同年代のガキんちょがいたので、そいつもガキんちょ共の一派かと思い、泣かす準備をはじめたところ、どうやらマーシャを助けようとしてくれたらしく、殴る一歩手前で未遂に終わった。

 そこまでならいい。そこまでならな。

 コイツ、何故かロシア語が堪能だった。

 

 これって……

 あぁ………うちの姉妹特攻だ。

 

 お前はラブコメの主人公か?と言いたい。何故英語でもフランス語でもドイツ語でもなくロシア語なのか。ふざけてるのか?どうしてこうもマーシャアーリャ特攻な男がピンポイントで日本の同年代のガキんちょにいんだよ。

 

 スオウ・マサチカ……名前は覚えたぞ。要注意人物認定、ブラックリスト入りだ。

 

 

 

 

 

────────────────

 

 

 

 

 

 最初の出会いはあまりに鮮烈だった。

 

 誰もが見惚れる金髪、サファイアを直接入れ込んだような蒼穹の瞳、人形のように精巧で白磁な容姿。

 気づけばその子だけを見ていた。

 

 だけど、その子は周囲の子供に揶揄われ、次第に大粒の涙を目元に溜め込みはじめた。

 

 ───助けなきゃ。

 それは正義感からくるものか、それとも可愛いあの子に見栄を張りたかったのかは分からない。

 ただ、普段の自分なら決して踏み出すことのない一歩を、この瞬間初めて踏み出せたような気がした。

 

 

 【どけ!!僕はお兄ちゃんだぞ!!】

 

 

 ───烏合たちとあの子の間に滑り込むように割って入ってきた同年代の少年のせいで、偉大なる一歩はただの一歩に成り果てたが。

 

 「だ、誰!?」

 「えっ、カッコいい……」

 「何ですか〜?あなたも日本語喋れないんですか〜?」

 「………いいよ。暴力はやめた。言葉で泣かす」

 「「「え?」」」

 

 それからの舌戦は……何というか聞くに耐えなかった。

 放送禁止用語がばんばん出てきて、大の大人ですら泣いて駄々こねるであろう暴力的な言葉の数々。自身に向けられていないにも関わらず、聞いてるだけで心が抉り取られるような語彙の豊富さには2周回って感心すらしてしまった程だ。

 案の定、あの子を囲っていた女子たちはギャン泣き。

 背中を向けながら捨て台詞を吐く姿はあまりにも三下キャラ的な光景ではあるが、向けられてる当の本人は天使のような少女ばかりに気を取られてまるで聞いていなかった。

 

 【あぁ、マーシャ、大丈夫かい?痛いことされてない?ほら、痛いの痛いの飛んでけ〜】

 【ひっく、お兄ちゃん……ありがとう】

 

 あまりにも聞き慣れない、しかし異常に聞き馴染んだ言語に我が耳を疑う。

 ……間違いない、ロシア語だ。珍しいなんてものじゃない。祖父の趣味でよくロシアの映画を観ていたこともあり、少しだけロシア語を齧っていた自分でも、生のロシア語を耳にするのは初めてだった。

 というか、あの2人は兄妹なのか。それにスッゲーイケメン。云うなら絵画から飛び出してきた王子様(プリンセス)そのものだ。あまりに日本人離れしすぎて…………あっ、目が合った。

 

 「………………………処す」

 「うあっ、ちょ、ちが、待ってくれ!俺は何もしてない!むしろ止めたかったっていうか……」

 「……………」

 

 あまりに物騒な日本語が聞こえたので全力で弁明する。今、あの少年には目に見える全てが敵なのだろう。少し視野狭窄に陥っているのではないかと思うが、妹を守りたいという気持ちは痛いほど解ってしまうので、その警戒心に非難の声を上げようなどと出来ようはずもない。

 ただ、睨みつけるイケメンほど怖いものはないという諺があるように、この状況はあまり好ましくない。ひとつでも妙な動きをしたら殴り飛ばされるであろうことは容易に想像させる。とにかく心臓に悪い。

 

 なにかないか?どうにかして警戒を薄れさせる方法は…………そうだ、あるじゃないか。俺たち共有の言語が。

 

 【き、君たち……ロシアの人?】

 【……ロシア語?】

 

 真っ先に反応したのは少女の方だった。

 少年の背中の隠れながら、半身で此方を覗く姿があまりに小動物味を感じて、その姿に愛おしさすら感じてしまう。こんな状況でなければ赤面しながら身を悶えさせていたことだろう。

 とにかく、妹の方は警戒を解くことができた。きっと兄の方も……

 

 

 「………………やはり処すか」

 

 

 なんで???

 

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