魔法少女リリカルなのはStrikerS WitH 2nd 作:八神煌斗
「何故?」
《さぁ?》
《私は新参者だからな。分からん》
首に掛かっている白と黒の指輪に聞いてみても、返ってくるのは俺を突き放す言葉。
一時的な軟禁……もとい、監査が終わって、暫らくぶりに外の空気を吸う事が出来た。
襲撃の際、半壊状態だった六課も既に修繕が終わっていると言う話だったのでまっすぐ帰宅。
うん。ここまでは途中飲食店のトイレを借りた所までしっかり覚えてる。
久方振りに六課の正面玄関を見たのも覚えてる。
だけど――……。
「何故だろう?思い出せない」
《既に記憶の消去に掛かっているようですね》
《体が覚えてるのか目に光るモノが見えるがな》
気が付けば六課が誇る訓練場の真ん中に立っていた俺。
何度も言うが、本当にココに立つ事になった経緯が思い出せない。
ただ、俺の目の前にはジャケット、甲冑を来た我がお姉さま方が腕を組んで仁王立ちしてます。
風なんか吹いてないのに、何だか押し返されてるような気がしてならない。
本当は今すぐにでも逃げ出したいんだけど――……。
「なぁ、頼むから離してくれないか?そして全力で俺を逃がせ」
「スミマセン、私達も命は惜しいんです!」
「可愛い部下の為に犠牲になってください!」
若干、キャラが崩壊しながら俺を後ろから捕まえているスターズ3と4の二人。
ま、二人共腰が引けて捕まえるというかしがみ付いてるって表現が正しいかも。
因みにライトニング3と4もさっきまで俺の脚を捕まえてたんだが、今は青ざめた顔で訓練場外に避難している。
なんで帰宅早々こんな目に合わにゃいかんのだ!?
「本当に分からないのかな?」
答えてくれたのはフェイ姉。
でもな、声のトーンがいつもと比べて360度も違うんだよ。
《一周して元に戻ってます相棒》
「え、マジ?」
《……しかし、今の声、なにやら別の言葉も聞こえたような……》
《レイラ、それが俗に言う副音声です》
《成る程。中々に興味深い……》
仲良いのな、二人共。
いや、姉妹だから当たり前なのかもしれないけどさぁ。
お兄さんはそれ所じゃないよ。
「公開陳述前の無断外泊」
「……む」
はや姉が、これまた副音声込みで喋る。
「陳述会護衛任務の欠席」
「万華鏡を秘密にしていた事」
「そして自爆」
「は、はははっ……」
続くようになの姉、フェイ姉、シグナム姉さんにヴィータ姉さん。
俺はもう笑い事しか出来ない。
全て心当たり、というかバッチリドストライクで俺の取った行動です。
というかヴィータ姉さん、自爆ってなんだ自爆って。
アレは立派な戦術――……。
「自爆だろ?」
「はい」
《コレがヘタレです》
《中々……》
チクショウ……。結局アレか?
今までばら撒いたお仕置きフラグを一気に回収とか言う……。
だけど何でこんな扱いをうけにゃならんのだ!
今言われたことは全て良かれと思ってやったことだぞ!?
呆れられたとしても、お仕置きなんておかしいじゃないか!!
「で、何か言うことは?」
「スミマセンデシタァァ!!」
土下座。
俺にしがみ付いていた二人を振り払い、その場に土下座。
いやね、もう理屈とかそんなんじゃないんですよ。
怖いモノは怖い。仕方ないだろ?
《姉さん、コレもヘタレで合っているか?》
《そうです。成長しましたねレイラ》
とうとうレイラにまれコレ扱いされた。
……泣いてもいいだろうか?
「ウィズ君、そこまで必死になること無いよ」
「なの姉?」
両手両膝を付いたまま、土下座の体制を保ったまま顔だけを上げる。
姉さん達はさっきと違い皆笑っていて、特に起こっている様子は無い。
「私達は特に怒ってないんよ?」
「私達が言ったこと、お前は全部良かれと思ってやったんだろ?」
「まぁ……」
なの姉に続いてはや姉とヴィータ姉さん。
あれ?
もしかしてそんなに起こってない?
俺の思い込み?
「でもそれならなんで皆さんは甲冑とかを着用中なのでしょうか?」
単に思ったことを口にする。
すると一歩前に出たのはフェイ姉とシグナム姉さん。
「ウィズ、監査中は特に外に出してもらえなかったんだよね?」
「うん」
「と、言うことは運動不足気味、だな?」
「うん。……うん?」
何だか雲行きが怪しくなってきたよ?
「だから模擬戦をしよう!」
「やっぱりか、コンチクショー!!」
「あ、逃げた!」
「追うんや、逃がしたらあかん!!」
文字通り脱兎の如く逃げたした。
あんな化け物5人も相手にして生きてられる訳ねぇだろ!
チクショウ、開始早々コレかよ!
《おい……逃げ出してもよかったのか?》
《コレが日常ですからねぇ。レイラも早く慣れることですね》
《ふむ……》
「お前ら呑気に喋ってないでこの状況何とかしろ!!」
《無理です》《無理だ》
シンクロ。
さすが姉妹機。
と、油断したその瞬間、俺の行く手を遮った一本の蒼い道。
そして同時に聞こえてくるのはやっぱり駆動音。
「はあぁぁぁ!!」
「どわあぁぁ!!?」
頭を掠めた蒼い疾風こと、スバル。
「ティア!」
「わかってるわよ!」
「なあぁぁ!?」
避けた先に飛んできたのはオレンジの魔力球一杯。
数を数えてる余裕なんて無いんだよ。
「ティアナ!どういうこちゃね!?」
《相棒、言葉使いが何だか変です!》
そんなこと言われなくても分かってるけど、しょうがないじゃないか。
それだけ焦ってるんですよ。
「私も命は惜しいんです!」
「……ああ」
もう分かった。つまり脅されたんだな?
多分ライトニングが追撃に来ないって事はまだ震えてるんだろ。
トラウマにならなきゃいいけど。
《マスター!上空から魔力反応!》
「なにゃあぁぁ!!?」
横に跳ぶ。と、俺が居たところに雨の様に降り注いだ桃色の魔力球。
《おい、本当にコレが日常なのか?》
《……今回は中々激しい部類に入りますかね》
「ウィズ君!」
声のするほうを見ると、レイジングハートを構えたなの姉が空に浮かんでいた。
「次は当てるよ?」
「何悪役っぽいこと言ってんの!?」
「ツッコミを入れている暇などあるのか!!」
「うひゃあぁ!!?」
横から切りかかってきたのはシグナム姉さん。
太刀筋が何時もより鋭そうに見えたのはきっと気のせいじゃない。
髪の毛が何本か落ちていくのを見て冷や汗が流れる。
「立ち止まるってのは戦場じゃ命取りだぜ!!」
「ひゃああぁぁ!」
避けた所で間髪要れずに上から攻撃を入れてくるヴィータ姉さん。
跳ぶように交わす俺。
「ウィズ、避けてね。轟(とどろ)け、轟雷(ごうらい)!」
「ならそんな攻撃しないでくださいーー!!」
「サンダースマッシャー!!」
「イーーーヤーーー!!」
放たれるフェイ姉のサンダースマッシャー。
なの姉のディバインに比べたら弱いけど、雷纏ってるのもあって破壊力はコッチが上なのよ!?
分かってる!?
「休んでる暇は無いで!!刃以(も)て、血に染めよ――」
「ちょ!? はや姉それ使えんの!!?」
「当たり前やろ! 穿(うが)て、ブラッディダガー!!」
「だあぁぁぁ!!?」
詠唱が終わる前に横に跳んでいたため何とか交わすことが出来ました。
いや、あれ早すぎて視認できないのよ、マジで。
《相棒! 叫び方にも色んなバリエーションがあるんですね!!》
《勉強になるぞ、マスター》
「んな呑気なこと言ってる場合かぁ!」
《ところでマスター》
次々に繰り出される攻撃をかわしつているところでレイラが話しかけてきた。
なんだ?
《彼女達が使っている魔法……突撃槍(ランス)なら簡単に防げるが?》
「…………」
隣で爆発が起きているが、あまりに突然の事に足が止まり無言になる。
そういえばアイスマン、俺のサードもそれで防いでたっけか?
およ?
もしかして連載早々救済フラグか?
《ちょっと違います》
《旗がどうかしたのか?》
レイラの教育はまた追々アテナとするとして――
「よっしゃ! ならレイラ、頼めるか!?」
《勿論だ》
《相棒、私というものが有りながら浮気なんて許しませんよ!!》
うるさいな。
今は命の方が大事なんだ。
「レイラ、セットアップ!」
《了解だマスター。―― set up ――》
《相棒の浮気者ーーー!!》
ティアナ side――――――――――――――――――
なのはさん達の攻撃が始まると同時に私達は一目散に訓練場から出た。
今は外からモニターも使って様子を見ている。
「うわー、ウィズさんすごーい」
隣で呑気な声を出しているパートナーにため息をつく。
確かに凄いとは思うけど……私はあの光景を見て怖くなってるわよ……。
本当に頭が痛いわ……。
「あれ、ウィズさんが使ってるの槍じゃないですか?」
「え? あ、本当。アテナって槍型にもなれたのかしら?」
エリオの呟きを聞いて再び殺戮(ジェノサイド)空間(フィールド)に目をやる。
そこには今まで見たことの無い黒い大きい槍でなのはさんたちの攻撃を凌いでいるウィズさんが見えた。
バリアジャケット纏ってないのも気になるけど……一体どんな効果なのよ、あれ。
「でも、なのはさんたち楽しそうですね」
どこを見ればそう見えるのか。
キャロに突っ込みたかったけど、しなかった。
それは単純に私もそう感じたからで……。
この一週間、なのはさんを含めて隊長たちはどこか元気が無かった。
それが今ではアレだけ笑顔……でいいのかしら?
兎に角、どこか楽しそうに見えるのよね。
こんな光景を見て、やっと日常に戻ってきたって思う私は可笑しいのかしら?
「あ、直撃」