魔法少女リリカルなのはStrikerS WitH 2nd 作:八神煌斗
あの後、ヴァイスさんの所とシャーリーさんの所を回って、食堂に来ている。
局員には予め言ってあるので、ここには数人しか昼食をとっていない。
で、ココで子供達には嬉しいハプニング。
ヴィータ姉さんとなの姉が昼食を取っていたのだ。
当然子供達だけでなく、先生達も喜んでいた。
話によれば午後の訓練の分を少しだけ午前の訓練に回して、終了時間が延びたらしい。
因みにフェイ姉とシグナム姉さんは火がつき未だに訓練中。
FW陣は虫の息らしい。
南無。
「こうやって見るとやっぱり人気者なんだなぁ」
「ヴィータは友達の感覚で絡まれてる気がしないでもないけどね」
「怒るに怒れなくて困ってるな」
背丈の関係もあってか子供達は若干ヴィータ姉さんの方に集まっている。
と、いい加減我慢の限界なのか笑ってない目で俺の事を見てきた。
「(……やってもいいか?)」
「(駄目に決まってるでしょ!?)」
「(ならどうにかしやがれ……)」
言っておくが今の会話は念話じゃなくてアイコンタクト。
直接言葉を交したわけじゃないが、間違いなくこう言ったはずだ。
やるが平仮名なのが余計に怖い。
「さ、さぁ皆。お姉さん達とお昼食べましょ、ね?」
流石のユリアもマズイと感じたのか普段なら絶対に言わない口調で子供達を宥める。
普段なら「ほら、さっさと食べなさい」とかそんな感じだろうに。
「お姉さん!こっちです!」
「あーはいはい……って――」
さっきの男の子だろう。
急かすようにユリアを呼び、めんどくさい雰囲気を微塵も隠さないユリアが視線を移して……固まった。
まぁ理由は分かるが。
「増殖してる……」
「せめて増えた、って言ってやれよ」
そう、増えてるのだ。
司令室で誘ってきたのは二人だった。
だが、今は二つくっ付けたテーブルに文字通り10人以上は確実にいる男のこ達が居た。
一箇所、一人分の席はキッチリ空けられて。
「……ムリ」
「約束したんだろ。諦めろ」
小刻みに左右に首を振り、行きたくないって駄々をこねるのを後ろから押しながら諦めさせる。
気持ちは分からんでもないけどな。
「二人ならまだしも、なんで私があんな大人数の子供の相手しないといけないのよぉ」
「……お前のほうが年下だろうが」
「あぅ~~」
最後に意味不明な言葉を残して、ユリアは男の子達の元へと歩いていった。
見た目あんなのだから忘れそうになるけど、あの辺を見るとやっぱり子供なんだなって思うな。
「さて、俺も誘われてたよな……どこだ?」
《相棒相棒》
「んあ?なんだよ?」
《あそこに居るのがそうじゃないですか?》
アテナに言われた方を見ると、確かに俺を司令室で誘った女の子達が居た。
なの姉と一緒に昼食をとりながら。
「何でだろう。悲しいから涙が出てくるよ」
《当たり前のことだな》
結局一人で飯を食った俺。
その後は予定通り訓練場に向かうことになったのだが……。
「やせた?」
「やつれた」
隣でげっそりしてるユリアには今後助力は望めないだろうと思った。
「みんないらっしゃい」
訓練場ではなの姉とフェイ姉が出迎えてくれた。
フェイ姉はところどころ焦げてるけど、無視させてもらう。
この後は特に面白いことも無くFW陣がシグナム姉さんとヴィータ姉さん相手に模擬戦を小学生が見学。
時折説明や、質問に答えるなどと言うやり取りを含めながら時間が過ぎていった。
やがて、模擬戦が終わった頃、一人の男の子が俺に話しかけてきた。
「なぁ兄ちゃん。兄ちゃんも戦えんのか?」
「ん、俺か?戦えねぇ事も無いぞ。一応教導の資格も持ってるし」
《宝の持ち腐れ》
「ウルせぇな」
ついさっきまで《暇だから》って理由でスリープモードに二人して入ってたくせに何で都合よく起きて来んだよ。
《何かを受信しました》
「……お前なら本当にしてそうで怖いよ」
「じゃぁさ、あそこの姉ちゃんとどっちが強いんだ!?」
「私?」
指さされたのは何故かスバル。
模擬戦の後、他のFW陣と隅で休んでいて油断していたんだろう、慌ててる。
「あーどうだろうな。タイマンで戦ったことないからわかんねぇなよな?」
「そんな、私も流石に負けちゃいますよー」
こういう風に言ってるが、俺の考えだと悲しいかな結構いい勝負になるような気がする。
勿論戦い方にもよるけど、常にくっ付かれて間合いの中に居られると打つ手が無い。
格闘技はザフィーラ兄さんから少し習ってるけど、体運びの為だったから実戦で使えるレベルじゃないし。
で、残るのは剣技。
接近されるとダブルになるんだが……スバルの拳の重さには負けるだろうなぁ。
あれ?
今上げた中に俺の勝てる要素あったか?
「なら一回戦ってみれば?」
「は?」「え?」
で、五分後。
俺は訓練場にスバルと向かい合って立っていた。
これも皆ユリアとスバルが悪い。
ユリアが戦ってみれば?って言った後、あろうことかスバルの奴も戦ってみたいです、とか言いやがったから。
そのスバルはさっきまで模擬線してたってのに今は元気に屈伸中。
流石元気っ子。
『それじゃ二人共、準備はいい?』
通信が開いてなの姉が最後の確認を取る。
それにスバルはいつもの様に返事をし、俺は頷くだけ。
流れでココに立ったわけだが、戦るからには勝ちたい。
それがスバル、FW達なら余計にだ。
『それじゃ……はじめ!』
開始の合図と共にスバルがこちらに突っ込んでくる。
そこで俺が選択したのは手数を優先してアテナ、ダブルソード。
正面から迎え撃つ!
「はああぁぁぁ!!」
「おおおぉぉ!!」
互いのデバイスがぶつかり合い、火花を散らす。
そしてそのまま、後退せずに攻撃を繰り出し、更に火花を散らせる。
右手一本だと思ってたらスバルのヤツ足まで使ってきやがった。
いや、よく考えたら分かることだったけどな。
1対2の図式にしたかったけど、実際には3対2。
俺に有利なところなんて一つも無い……!
「(ちっ、やっぱりダブルで今のスバル相手はきついな……)」
《(今の間合いをどうにかしないとヤバイですよ)》
「(分かってらぁ!)」
少しセコくなるけど……許せ、スバル。
「え、うわぁ!?」
スバルと俺の間が、一瞬光を放った。
その正体はブランコスフィアの暴発の際の発光。
スフィアを形成する前に暴発させる事で突然との場が光りだしたように感じたはずだ。
こんなもん攻撃には何の役にもたたねぇけど、一瞬だけ足を止めるには十分だ!
その場から大きく後退、ハイペリオンを展開させ、上へと逃げ――距離をとる。
「逃がしません!」
予想通り、直ぐに回復したスバルは足元からウイングロードを伸ばし、俺の元へと駆け上がってくる。
だが、その選択こそが敗因になる。
《――Gun(ガン) Silhouette(シルエット)――blanco(ブランコ) Sphere(スフィア)――fire!――》
「くっ!」
ダブルだったのをガンソードに変更、総計10のスフィアを尚も昇り続けながら、こちらに向かってくる蒼い影に向かって打ち出す。
だが、なの姉の訓練を受けているスバルにはこの程度を交すことが造作も無い。
打ち出したスフィアは全て交されてしまう。
――これでいい!
「レイラ!」
《了解!――Seal(シール) Silhouette(シルエット)――》
上空でハイペリオンの上立ち止まり、レイラを例の突撃槍にする。
俺はその場でレイラを槍投げの如く投擲する為構えに入る。
「っ!マッハキャリバー!」
俺の行動に不信感を抱いただろうスバルは更にスピードを上げ、こちらに向かってくる。
だが――俺の勝ちだ。
「行け、レイラ!!」
《――magic(マジック) canceler(キャンセラー) !!――》
投擲されたレイラの行く先はスバルではなく、その足元の風の道!
「え?え?うわああーー!!?」
キャンセラーを発動したレイラの前に、道は消え去り、足場を失ったスバルは重力に従い真っ直ぐに落ちてゆく。
「アテナ!」
《――Technical(テクニカル) Silhouette(シルエット)!――》
休む間もなくアテナをテクニカルに変更。
ハイペリオンを穿つつもりで蹴り、スバルに向かって跳び出し、同時にスバルの後ろにハイペリオンを新たに出現させる。
勿論スバルはその上に倒れこみ、俺はアテナの剣先を突きつけた。
「あれ、もしかして六課きてから初勝利じゃね?」
《そうですね。でも教え子に勝って嬉しいですか?》
「……面目ない」
《情けない……》
この後、レイラを回収して、スバルと二人で子供達の所へ戻った。
すると何人もの男の子がこっちに駆け寄ってきた。
「おじさんスゲェな!見直したぞ!」
「……今までどう見てたかその一言でよーく分かったよ」
興奮気味に話しかけてきているのはユリアをナンパしてた男の子。
俺の勇士を見て認識を改めたみたいで、妙に目がキラキラしてる。
スバルの方をチラッと見ると、男女の違いはあれど俺と似たような状態だ。
まぁ始めの模擬戦と違ってガチのタイマンだったからこの興奮も分からないでもないけど……。
「でもコレで安心して任せられるな!」
「おう!」
さっきの男の子が回りのヤツに声をかけ、周りのやつらも頷いている。
「んあ?何のことだ?」
「兄ちゃんだったらユリアさんを任せられるってことだ!」
「いや。だからな、俺とユリアは――」
こんな騒ぎもあったが無事、社会見学は終わり子供達は帰っていった。
「疲れたな……」
「私はもう二度とゴメンよ」
そしてこの日は幕を下ろした。
なんか忘れてる気もするけど……まぁ良いか。
「なぁリイン。もしかして忘れられてる?」
「ハイですぅ~……。リインは悲しいですよ」
「私は泣きたいわ」
その日、部隊長室から一晩中泣き声が聞こえてきたとか何とか。