魔法少女リリカルなのはStrikerS WitH 2nd   作:八神煌斗

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14.同意の黒

 

 「……何で貴様まで居るのかね?」

 「俺が知るか、バカ」

 

今、俺の目の前には黒髪、黒目の男。アイスマンが透明な板越しに居る。

アイツも俺も、気分は急降下。

 

 「ほら、二人共。もっと仲良くしいや」

 「はぁ……」

 

俺を挟むように居るはや姉とユリア。

はや姉は俺たちお互いの態度を注意し、ユリアは方肘を突いてため息をついている。

 

さてこの状況、簡単に言えばこのはや姉に嵌められた。

 

朝。

はや姉に出かけるから付いてきて欲しいと言われ、その話を聞いていたユリアが付いて来たいと言った。

この話を聞いたとき、何で俺なのか気になってたけど……。

 

やっと納得がいった。

 

途中……てか、本局の留置所に来た時点で何となく分かってたんだけど、もうその時は手遅れ。

俺はここに座り、目の前にアイスマンが居た。

 

 「考えるまでも無く八神の仕業だろうな」

 「いい加減『お姉ちゃん』って言いーや」

 

いきなり、はや姉が八神と言われた事に対して反論する。

というかまたそれか。最近出会ったヤツ全員に言ってるんじゃね?

 

 「何度も言っているだろう。私と貴様の間にそんな関係は一切ないと」

 「でもアンタ、言うなら時間差で生まれたウィズの双子みたいなモンやろ?」

 「例えそうであっても呼ぶ理由にはならん!」

 

アイスマン、お前が不機嫌になる理由も何となく分かるぞ。

 

と、来て早々はや姉と俺が想像できないような会話をした後、アイスマンがユリアを見た。

 

 「……で、そっちの女。まさかと思うが?」

 「流石にアナタには分かるみたいね。始めましてで良いかしら?」

 「構わん。貴様の母親は知っているが、貴様は知らんからな」

 「そ」

 

こっちはこっちで最低限の会話だけ。

二人共、お互いの存在はもう分かってるみたいだし。

 

 「はや姉。もしかして今までも何度かココ来てる?」

 「来とるよ。今回で5回目位とちゃうかなぁ。シグナム達も来た事あるんよ」

 「そんなに……」

 

なんだか最近、妙に忙しそうだなって思ってたけどそういうことか。

 

 「おい、ウィズ」

 「? 何だ急に名前で呼びやがって。気持ち悪い……」

 「ウィーズー?」

 「……なんだ、アイスマン?」

 

隣で怖い顔をしているはや姉に脅され、やむなく言い直す。

まさかとは思うが、俺とアイスマンを仲良くさせようとか考えてるんじゃないだろうな?

 

 「トウギだ」

 「何が?……あ、お前の名前か?」

 「分かったらそのふざけた名前はもう呼ぶな」

 「ハイハイ」

 

腕を組んで、背もたれに深く座り込むアイス……トウギ。

急に機嫌を悪くしよってからに。

 

 「あ、私はトーギって呼んでるんよ」

 「それも止めろと言っている」

 「えー、良いやんか。親しみがあって」

 「そんなモノいらん!」

 

なんだかなぁ。

二人共仲が良いように見えるんだけど……。

 

 「あら。ウィズ、もしかしてやきもち焼いてる?」

 「ちげぇよ!……で、トーギ。何なんだよ?」

 「貴様まで……っ。もういい」

 

あれ。もしかして拗ねた?

コイツ、表情豊かになったって言うか何て言うか。

元々こんな性格だったのか?

 

 「なぁウィズ。トーギ、変わったって思わへん?」

 「ん?確かに少し愉快な性格になってる気がするけど」

 「あははは!愉快って!トーギ、アンタ愉快だって!」

 「君は黙れ。そして慎みという言葉を知れ」

 

はや姉と話してると、ユリアが俺の言葉を拾って指差してからかってる。

 

 「やろ?その辺の説明を……はいトーギ君!」

 「む。君が説明したら良いだろう」

 「私も全部理解した分けちゃうし、やっぱり張本人が説明すべきやと思わへん?」

 「……了解した」

 

うんざりした様子のトーギ、そしてその姿をみて微笑んでるはや姉。

会って五回くらいって言ってたけど、既にはや姉>トーギの式が出来上がってるっぽいな。

なんだか一気に距離が縮まった気がする。

 

 「なんかお前との溝が急激に埋まった気がする」

 「何を言っているのだ?そんなことより、私のここに何があったか覚えているか?」

 「?」

 

トーギが指したのは自分の額。

んー……。何かあった気がするんだけど……。

 

 「あ、髪留めか?」

 「正確にはスカリエッティ作の感情の増幅器なのだが」

 「増幅器?」

 

話がいきなりぶっ飛んだなぁ。

付いて行けるだろうか、俺。

いや、頑張れ俺。やればできる子、俺。

 

 「付いていけるか?と言う顔をしているな」

 「う……」

 「簡単に言ってやろう。私は貴様が憎かった、それをスカリエッティの増幅器によって殺意にまで押し上げられたと言うことだ」

 「……あれ、それだけ?」

 「だから簡単に纏めてやると言っただろう?何ならもう少し細かく言ってやってもいいのだが?」

 「余計なお世話だ!」

 

だけど、言われてみれば確かに。

さっきは愉快ってチャカしたけど、雰囲気はゆりかごで会った時と全く違う。

目つきも違うし。あの時に比べてよっぽど俺に似ている気がする。

性格の捻くれ具合は変わってないみたいだけどな。

 

 「って、ちょっと待て。お前俺を恨んでるって……何でだよ?」

 「言う必要が無いな」

 「羨ましかったんじゃない?そうでしょ?」

 

いつの間にか、席を離れ、俺たちの後ろで小さなアヴェを操作していたユリアが言った。

アヴェを消して、乗り出すように、トウギに板越しに顔を近づける。

 

 「……なぜそう思う?」 

 「そう聞いてる時点で認めてるようなモノだけど……。そうね。私も同じ思いを抱いてたからよ」

 「…………」

 「私の中に記録はあっても記憶は無い。お父さんに会ったことがあるウィズ(コイツ)が酷く恨めしく思ったときもあったわ。ま、今はそんなこと関係ないくらいお母さんLOVEだし。ウィズの事も守ってあげたいって思ってるけどね」

 

二人、いや四人とも口を開かない。

俺とはや姉はユリアの言葉の意味を理解して。

トーギは自分に問いかけた者を睨み、ユリアはただ答えを待つ。

 

フンッと、トーギが横に視線をずらした。

 

 「案外分かりやすいのね、アナタ」

 「…………」

 

どこか満足げなユリア。本当にコイツは容赦が無いと言うか、何と言うか。

事情を知っててあんな聞き方できないぞ、普通。

 

隣に居るはや姉も知ってた……というか聞き出してたんだろうな。

頭抑えて、ため息を付いている。

 

 「ユリアなぁ。そういうのは本人の口から言わせるもんやで」

 「いいじゃない。どうせ自分から話したりするようなヤツじゃないわよ」

 「そうやろうけど……」

 

まだ何処か納得いかない顔のはや姉に、何どこか満足気なユリア。

 

 「な、なぁユリア。今の話……」

 「本当の事だけどアンタが気にする事でもないわ。だけど、忘れることは許さないわよ」

 「…………」

 

そういって椅子に腰掛けるユリア。

既に話すことは無いのか、さっきのトウギの様に腕と足を組み、目を閉じた。

 

って言われてもなぁ……。この部屋の空気が重過ぎる。

こうなった張本人は言った通り既に我関せずを決め込んでるし。

 

はや姉は空気を変えようとトウギに話しかけてるけど、耳に入ってる様子は無い。

変わりに、その目は俺を写している。

 

 「……なんだよ?」

 「そこの女の――」

 「ユリア、神崎ユリアよ」

 「――ユリアと同じように俺にとっても既に過去だ。貴様に気にさせれる筋合いは無い」

 「…………」

 「なんだ?」

 「お前、本当にアイツか?」

 

さっきも思ったけど、初見、そしてその後の面識や行動を考えると、俺に気を使っている事が不自然で仕方ない。

はっきり言うと気持ち悪い。

 

しかも最後にコイツに会ったのが暴走状態の時だし。

印象が180度、全くと言って良いほど違う。

 

 「それは私も思ったなぁ」

 「だろ?」

 「だから私は【アイスマン】と【トウギ】は別人と思うことにしたんよ」

 

成る程。そっちの方が俺も良い。

違いを探す所じゃない。同じ所を探す方が難しい。

それならそう考えた方が楽だ。

 

 「それと……」

 「ん?」

 「その、なんだ……」

 「何だよ、言いたいことがあるならさっさと言えよ」

 

言いたい事を言っていたクセに、急に口ごもる。

視線もかなり泳いでるし……本当になんなんだ?

 

この表情ははや姉も見たことが無かったみたいで、首をかしげている。

ユリアは……寝てるんじゃねぇか?

 

 「レイラと、話をさせて欲しい……」

 

 

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