魔法少女リリカルなのはStrikerS WitH 2nd 作:八神煌斗
「さて、これは何の騒ぎなのか、教えてもらおうか」
「言ったでしょう。今回は君が目的ですよ」
トウギの後ろから、新たな声。
そこに立っているのは、下ろしている青髪以外ヴィオルに瓜二つの男。
来ている蒼黒の服もジャケットなんだろう。ヴィオルと全く同じ形をしていた。
「それはそれは、人気者は辛い……なっ!」
口を開きながら裏拳を繰り出すトウギだが、受けとめられる。
しかし、トウギは別段気にした様子も無く、すぐさまこちらに向かって走り出して来た。
その姿を確認し、ヴィオルは振り返ると同時に手の盾でトウギに殴りかかる。
「おいおい。俺と正面から殺り合おうってかぁ!?」
「ふっ、そんなはず無いだろう」
ヴィオルの攻撃を屈んで交し、俺の首根っこを掴み……って、え?
「おい!テメェなにし――」
「黙っていろ。舌を噛んでも知らんぞ!」
どこにそんな力が在るのか。
俺を掴んだまま、後ろに待機していたはや姉の元まで連れてきた。
「トーギ、なんでアンタが外に出てるんや?」
「あそこの青いのが出してくれてな。一応顔を知らない中では無いのからな、援護してやっろうというわけだ」
「やっぱアングまで来てたか。トーギが来て助かったわね」
ユリアもアヴェで牽制しつつ、俺たちの元まで後退してくる。
アング、おそらく青髪の男の事だろう。
「トーギ、暇なんでしょ。手伝いなさい」
「暇という訳ではないが……元々のそつもりだ。ウィズ、レイラを渡せ」
そう言って、手を俺に差し出してくる。
ユリアは人手が欲しいからそう言ったみたいだが、俺はまだコイツを信用する気なんてない。
確かに性格は変わってるし、少なくとも今は悪いヤツじゃないんだろう。
俺だってトウギの気持ちも分かるつもりだ。
もし立ち居地が逆だったら、トウギと同じことをしていると思う。
だけど、だからといってコイツにされた事を考えるとそう簡単に信用できるはずが無い。
「渡さないのは構わないがな、その時は避難させてもらう。私とて命は惜しい」
「…………」
「ウィズ、渡して」
「はや姉!?」
どうしていいか悩んでいた時、はや姉が渡してと言って来た。
「トーギなら裏切らんよ。だから、な?」
「…………」
《私からも頼む。マスターを信じてやってくれ》
「…………」
立ち上がり、無言でトウギにレイラを渡す。
同時に俺の姿はアテナだけ、つい最近までの格好へと戻る。
「いいのかね?」
「ふん。はや姉とレイラを裏切ったら承知しねぇからな」
「精々期待に答えるとしよう。レイラ、セットアップ」
《了解。――set up――》
黒い光がトウギを包み、次に現れた時には甲冑を纏った姿。
しかし、依然に比べて細部に変化が見られる。
白いカッター、黒のズボン。胸部に鎧。
丈が鳩尾辺りまでの黒のジャケットに、足首までの黒の腰布は右側のみ。
以前のコートが無くなっただけで、随分軽装になったイメージがある。
「足を引っ張ってくれるなよ、ウィズ」
「そりゃ、俺の台詞だ」
「やる気になった所で、良く聞きなさい。はやても」
トウギがセットアップしたのを確かめると、ユリアが言った。
俺とはや姉は頷き、トーギは横目で見るだけだ。
「あの青いの、アングって言うんだけど。近づいちゃだめよ。特にウィズとトーギ」
「……なんでなん?」
「説明してる暇は無いわ。本当は私が相手をしたいんだけど……」
ユリアが見るのは白い男、エストラを睨みつける。
言いたいことは俺でもわかる。
見えない、無色の魔力。
どれだけはや姉のサーチと作戦があっても、見えないものは見えない。
そこで重要になってくるのが経験や慣れ。
それがこの中で一番高いのは言うまでもない、ユリアだ。
「とりあえず乱戦は避けなさい。そうなったらこっちに勝ち目は無いわよ?」
「だろうな。この即興のチームが勝てるはずが無い」
「そういう事。さ、行くわよ!」
「八神、貴様は下がって見ていろ。狭い空間では邪魔なだけだ」
「そやな。私はサーチするだけにしとくわ」
「おい、偉そうだぞ」
「私にとって八神は上司でも何でも無いからな」
「ちっ」
一番前に、ユリア、後ろに並ぶように俺とトウギ。
そして後ろにはや姉。
「ん?もう良いのか?」
ヴィオルが壁に背を預け座ったまま、顔だけをこっちに向け聞いてくる。
完全に舐められてる。
「ええ。お蔭様で……勝てそうだわ!!――plunge(突っ込め)!――」
いつの間に用意していたのか。
数個のアヴェをやつ等が居る地点に向かって打ち込んだ。
これが開戦の合図。俺たち三人は一斉に走り出す。
だが、直ぐにユリアは横に反れる。
「正面、来るで!!」
数瞬遅れてはや姉の声。
それを聞いて俺とトウギはお互い左右に跳び、飛来して来ていただろうスフィアを避ける。
「君の相手は僕がしましょう」
「っ!」
《――Hyperion(ハイペリオン)!――》
向かって放たれた魔力刃をハイペリオンで防ぐ。
「よう。アンタが俺の相手、か」
「アングと申します。以後お見知りおきを」
俺の前に現れたのは青髪の男、アング。
こんな状況で自己紹介をしてきやがった。
そこまで余裕てか?
一度相手を弾き、距離を置く。
アイツには近付くなってユリアが言ってた。
それなら、この狭い空間じゃ少し扱いづらいが…・・・。
「アテナ、ガンソード」
《――Gun(ガン) Silhouette(シルエット)――》
俺に仕える遠距離魔法。ブランコ・スフィアとブランコ・バスター。
流石にバスターはこの狭い場所じゃ使えねぇけど、スフィアなら十分いける。
ガンソードだと10球まで作ることも出来る。
「アテナ!」
《――blanco(ブランコ) Sphere(スフィア)――》
造りだすのは俺が作れる最大数の10。
アングがヴィオルと似通った戦闘力なら一瞬でも気を抜いた瞬間に俺はやられる。
一瞬の油断も、妥協も許されない。
俺が持てる最大の力で迎え撃つ!
《――fire!――》
一斉に打ち出す。
この狭い空間、それもこの近距離なら流石に全部とはいかなくても……!
「ふむ。速さは良いですが……密度、構築式が緩いですね」
「なに!?」
だが、俺の期待は裏切られる。
アングは群青色のシールドを張り、俺のスフィアを全て防いだ。
《相棒!》
「っ!」
アテナに呼ばれてハッとする。
目の前には、スフィアの軍勢が迫ってきていた。
慌てて体を捻り、それをかわす。
「不足の自体が起きたからといって、立ち止まることは――」
「!――しまっ!」
反応が遅れた。
いつの間にか俺の懐に入り込んでいたアングに、アテナを持っている右手を掴まれた。
「――バカのすることですよ!」
空いている手で、俺の頭を握る。
「――hack!――」
「あ――ああああぁぁぁあぁあぁぁぁぁ!!!??」
アングの声が聞こえると同時に、頭に激痛が走った。
何かが、入り込んでくるような痛み。
中のモノが、俺が押し退けられる様な。
言いがたい痛みが、頭から全身に駆け抜ける。
「ウィズ!!」
声が、最後に聞こえた。