魔法少女リリカルなのはStrikerS WitH 2nd   作:八神煌斗

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17.矛盾/不可視創造

 

トウギside――――――――――――――――――

 

 「はぁ!やるじゃねぇか、トウギ!」

 「そういう貴様は速さが足りないな」

 「言うねぇ。ならコイツはどうだ!!」

 

ヤツの、ヴィオルの攻撃がより速さを増す。

 

これは空間が狭いからと、二槍にしていて正解だったか。

一本なら、さすがに対処しきれない。

 

 「レイラ!」

 《――negro(ネグロ) stad(スタッド)――》

 

レイラの刃に、漆黒の魔力刃を纏わせ、攻撃力を上乗せする。

元よりレイラのスタイルの中に、速力強化系のスタイルは無い。

 

それならば少しでも攻撃力を底上げし、当たる一撃の重さを上げ、その一撃に賭ける!

 

 「おおぉぉぉぉ!!」

 「はぁっ!」

 

共に打ち込み、鍔迫り合いの状態へとなる。

接点を中心に、黒と赤の魔力の本流が巻き起こり、風が荒れ狂う。

だが、交代するわけには行かない。

 

 「どうよ、俺の盾と打ち合った感想は?硬ぇだろ?」

 「残念だが、レイラの前には絶対の盾で在ろうとも紙切れ同然だな」

 「何だ、最強の矛とでも言いてぇのか?」

 「無論!」

 

ヴィオルごと盾を押し返し、自らも後退。

一度距離を取り、一時の休みを取る。

 

 「お前がそこまで言うなら、矛盾(むじゅん)の答えをココで出してみようや?」

 「私も丁度それを考えていた。良いだろう。その話、乗ってやる」

 

矛盾。以前、父から学んだとある管理外世界の教訓。

いかなる矛の攻撃も許さない絶対の盾と、いかなる盾の防御も許さない最強の矛。

この話では答えは出ずに終わっていた。

 

だが、父は言っていた。

レイラを信じれば、その時こそレイラは最強の矛と成り得ると。

正確にはレイラは矛ではなく槍だが、そんなことは些細な事。

 

 「レイラ、解け」

 《了解しました――Normal(ノーマル) Silhouette(シルエット)――negro(ネグロ) stad(スタッド) second(セカンド)――》

 

二槍から一本槍へ。

そして本来の刃を遥かに上回る大きさの圧縮魔力刃を生成。

さらに、貫く事に特化させる為に微弱に魔力を振動させる。

 

攻撃力なら本来、ノーマルより突撃槍のシールやハルバート状のブイオの方が勝っている。

だが、シールは魔力を纏った所で性質上キャンセルされる。

ブイオは穿つと言う概念を削り、切ると言う項目を付加したものだ。

貫くと言うことに関してはノーマルが一番良い。

 

……へんなプライドだとは思うがな。

 

 「さて、絶対の盾とやらを穿いて見せよう」

 「なら俺は、最強の矛を防いでやらぁ」

 

矛先を敵に向け、敵は構えを俺に向ける。

互いに目を離さず、次に放つ最後の一撃で勝負が決まると知っている。

 

跳び出す切っ掛けを待つ。

その時だった。

 

 「あ――ああああぁぁぁあぁあぁぁぁぁ!!!??」

 

叫び声が聞こえてきたのは。

 

 

ユリアside――――――――――――――――――

 

 

 「あぁもう!うっとうしい!――flock(集まれ)!――defend(防げ)!――」

 

辺りに散らしていたアヴェを引き戻し、私の壁とする。

 

ほぼ同時、壁になっていたアヴェ達が弾かれる様な動きを見せ、消えていく。

実際は『様』な、では無く本当に見えないもので弾かれている。

 

見えないモノに反応出来るのは長年の経験と、はやてが提案した策あっての事。

 

経験は殆ど勘で、この前戦った時も手当たりしだいに避けていたけど、今回は違う。

はやての策。

それは自分を覆うように球体の魔力の膜を作ること。

 

これは言わば魔力感知器。

スフィアは見えなくてもそこに在る。

 

なら、私が創った膜が貫通されるはず。

そして穴が開いた方向から、スフィアが飛んで来るという事。

 

魔力が少なく、マルチタスクが苦手なウィズや、同位体のトーギには絶対に出来ないこと。

これは常に一定量の魔力を、常に同じ形に放出し続けると言う事だから。

 

だけど、お母さんのコピー体の私になら、この魔力と演算能力が出来る。

 

 「――deployment(散れ)!――pierce(貫け)!――」

 「効かないと言っている」

 

攻撃に回したアヴェが全て打ち落とされる。

それなら――!

 

 「――create(クリエイト)……Leon(レオン)!――」

 

創り出すのは灰色の獅子、レオン。

防御用にアヴェは二体だけ残しておく。

 

……あの時、なのはと模擬戦しておいて正解だったわね。

もし私が鈍っていることにあのまま気づかなかったら、防御用のアヴェなんか創れなかったし、レオンの制御に思考を全部裂いていた事になってた。

 

とは言っても、レオンの制御は今もギリギリ。

でも、アヴェだとエストラまで届かない。

長引かせるだけこっちが不利。

 

 「――plunge(突っ込め)――break(砕け)!――」

 

命令を聞き、真っ直ぐにエストラまで駆ける私の獅子。

エルトラも先ほど同様、その手をレオンに向けるが、私の獅子は止まらない。

 

 「ちっ、鈍い獣だ……」

 「せめて頑丈って言ってくれる?」

 

初めて、エストラが回避行動を取った。

この好機、逃すわけには!

 

 「――plunge(突っ込め)!――」

 

二節ではなく一節での命令行使。

レオンに二節の指示を出した私に、アヴェに二節の命令はする余裕がない。

 

それでも、今のエストラには十分すぎる!

 

 「ちぃ!」

 

体を捻り、無理な体勢で二度目回避行動。

 

元々エストラは、その希少能力(レア・スキル)に頼りすぎて、接近戦は得意じゃない。

つまり、一度でも懐に入るか、攻撃行動をさせなければ、こっちに勝機がある!!

 

 「アヴェ――turn(回れ)――pierce(貫け)――。レオン――break(砕け)――」

 

前からアヴェ、後ろからレオン。

今の無理な状態じゃ避けきれないでしょ!

 

 「あ――ああああぁぁぁあぁあぁぁぁぁ!!!??」

 「!?」

 

だけど、この決定的な勝機に私は気をそらしてしまった。

 

 「っ。見せたな、隙を!」

 「しま――!」

 「遅い!」

 

体制を立て直したエストラが右手を水平に、体を軸に回転する。

同時に囲んでいたアヴェとレオンが二つに割れ、消えた。

 

魔力刃で切られたか……。

だけど、今はそんなことより。

 

エストラに注意を割きつつ、叫び声が聞こえた方を見る。

そこには、予想通り最悪の事態に陥っていた。

 

ウィズが、アングに捕まっていた。

頭を掴んでいる手は群青色に輝き、ウィズとの接点から、侵食していく。

 

最悪の事態だ。

あれほど近付くなって言ったのに!

 

 「ウィズ!」

 

はやての叫び声が響く。

 

まさかと思ってはやてを見ると、案の定。

ウィズの方に駆け出していた。

 

アングはそんなはやてを見て、気味の悪い笑みを浮かべた後、ウィズを掴んでいた手を離した。

糸が切れた人形のようにその場に倒れるウィズ。

 

アングはその場から下がり、それを確認したエストラもまた下がった。

 

 「ウィズ!」

 

はやてがアングを警戒しながらもウィズの元へと駆け寄る。

でもね、それじゃ駄目なのよはやて!

 

 「トーギ!はやてを止めなさい!早く!!」

 「むっ!」

 

叫びながら、はやてへと足を向け駆け出す。

トーギと戦っていたヴィオルも下がってたみたいで、直ぐに反応してくれた。

 

私とトーギ。出来る限り、最速といって良いほどの早さで私は今の状況を把握した。

 

でも間に合わない。

 

ウィズは半身で起き上がり、その手にはアテナと言う刃を握っている。

 

ここで初めてはやてがウィズの異変に気づいて、足を止めた。

 

でも、もう遅い。

 

ウィズがアテナを振り抜いてはやては切られる。

 

 「はやて、しゃがめ!!」

 「!」

 

私でも、トーギでも無い。第三者の声。

 

はやてはそれに反応し、その場でしゃがみ込んだ。

 

刹那、その頭上を数多の青いスフィア……いや。アレは刃だ。

数多の魔力刃が通り抜け、ウィズに直撃した。

 

飛来してきた方向を見る。

そこに居たのはトーギよりもさらに黒い格好をした男が、一本の槍を掲げていた。

 

 「クロノ君!」

 「状況を知りたいが……それは後回しだな」

 

はやての横に立ち、辺りを見回す男、クロノ。

 

 「とりあえず、姉に手を出す愚弟にお仕置きだ」

 「残念だがそれは適わない。クロノ提督」

 「お前か……」

 

口を挟んだアング。アングを知っていようなクロノ。

私たちは何も言えずにその場で様子みに回る。

クロノが出すその重圧(プレッシャー)。空気が重過ぎて、この私でも口を挟めない。

 

 「提督様直々に持て成してくれるようで悪いが、俺たちは帰らせてもらうことにする。本来の目的とは違ったが、大きな収穫があったからな」

 

二人の会話に口を出したのはエストラ。

 

そして直ぐに三人の体は嘘のように消えうせた。

多分、口を挟んだときには足元に転送用魔方陣を敷いていたのね。

 

最後に残ったのは、荒れた廊下と、私たちだけだった。

 

 

 

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