魔法少女リリカルなのはStrikerS WitH 2nd   作:八神煌斗

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20.選ばれた理由

 

俺の睨みもどこ吹く風と言わんばかりに流し、口を開く蒼髪の男アング。

何でコイツがここに居る?

 

アテナが言うにはここは俺の中。

俺の制御用デバイスであるアテナが入ってくるのは何となく分かるけど、コイツがここに入れる理由が無い。

 

 「僕が居る理由は後にしましょう。少々時間が無い」

 

考えてることが分かったのか、そんなことを言ってきた。

時間が無い、と言うのが気になったがアングは俺の質問を許さず言葉を続けた。

 

 「十日後、クラナガンのファントム、と言うバーであなたを待っています」

 「罠だと分かってて行くと思ってんのか?」

 

雰囲気に飲まれるわけにはいかない。

今の俺の対抗手段なんてシューティングアーツもどきしかねぇけど、黙りっぱなしって訳じゃない。

 

 「いえ、あなたは来るはずです。きっとね」

 「あん?」

 「出生の秘密……知りたくないですか?」

 「っ!」

 

思いもしなかった言葉に、一瞬動揺してしまう。

が、あくまで頭は冷静だった。

 

まぁ、アテナから何も聞いてなかったら冷静になんていられなかっただろうけど。

 

 「それくらい俺だって知ってる」

 「スカリエッティとデバイスが教えてくれましたか?」

 「そうだ」

 

そう言うとアングは声を押し殺しながら笑い始めた。

 

 「何がおかしいんだ?」

 「いえ。まさかそれが真実だと信じきっているとは思っていなかったので」

 「なっ……」

 

どういうことだ?

確かにスカリエッティの言うことは嘘だったかもしれない。

だけどそれもアテナから裏づけは取ってる。

 

アテナが嘘を言う筈はないし、実際俺が生まれてからの事を記録され……て。

 

まさか……。

 

 「気づいたようですね。そう。貴方が知っているのはデバイスに記録されたことに過ぎません。真実か、どう判断するのですか?」

 

そうだ。

アテナは自分で言ってたじゃないか。

 

 《やがて、相棒はロストロギアも封印できるロストロギアとして完成しました。――ここまでが、私が情報としてインプットされた情報です》

 《その通りです。私は相棒より少し遅れての完成でしたからね》

 

アテナが知ってるのはインプットされた情報。

俺よりも後に作られたアイツが、俺の出生の真実を知っている確証は無い。

 

いや。ならユリアは?

アイツは母さんの記憶を受け継いでるって。

 

――なら、何で俺に言わない?

 

俺の心配をしてる?

まさか。アイツは隠すことが傷つける事だって思ってるやつだ。

隠すわけが無い。

 

知ってると思ってる?

それこそ無い。俺が知るための情報源なんで無いんだから。

 

 「その真実、知りたくは無いですか?」

 

混乱している最中、畳み掛けるように声をかけてくるアング。

 

 「お前が真実を知っている理由も無いだろう……!」

 

渇いた喉で、絞り出す様に言い返した。

……実際、少し心が揺れてる。

 

ある意味これが最後の壁だ。

これが崩されたら――……。

 

 「僕の事は聞いているんでしょう?管理局から痕跡を残さずに調べることは簡単です」

 「残念だな。まったく聞いてねぇよ」

 

実際俺が聞いてるのはあの白いヤツ、エストラの無色の魔力光だけだ。

それ以外は聞いてない。

 

するとアングは手を顎に沿え悩むそぶりを見せる。

だけどそれも一瞬。

 

 「ふむ……。では一つだけ。貴方は唯のロストロギアではありません」

 「……なに?」

 「貴方はロストロギアを封印できるロストロギア。これは間違い有りません」

 

コイツは何を言ってんだ?

俺を動揺させようとでも思ってんのか?

あいにく俺は既に自分がロストロギアだという事を認めてる。

今更俺がロストロギアだと言われても何も……。

 

 「ですが、それは力の一端……いえ、使い方でしかありません。貴方はこう聞いているはずです。闇の書を封印する為に作られた、と」

 「…………」

 

俺は何も言わない。

だけどアイツが言っていることは本当だ。俺はそう聞いている。

それを肯定と取ったのか、話を続けるアング。

 

 「そして凍結で封印しようと考えた。ここで疑問が生まれます」

 「?」

 「分からないようですね。……なぜ、凍結どころか、変換資質も持っていない貴方が選ばれたんでしょう」

 「っ!?」

 

そうだ。

闇の書を封印するなら俺よりアイスマン……トウギの方が何倍も適切だ。

 

なんでこの事に一切気づかなかった?

 

 「さて、僕から言えるのはこれだけです。それでわ」

 

そう言うアングの体は透け始めた。

慌てて引き止めようとするが、俺の体も何かに引っ張られ……視界が暗転した。

 

 

 

 「んっ……ふぅ」

 

とりあえず、眼が覚めて体を起こした。

 

 《チッ。相棒、起きましたか?》

 

声がするほう、枕元を見るとアテナが添えられるように置いてあった。

多分、はや姉が置いておいてくれたんだろう。

舌打ち?そんなの聞こえなかったよ。

 

 「…………」

 《相棒?》

 

レイラが居ない。

とりあえず何も喋らずにアテナを掴み、壁代わりのカーテンを開ける。

 

そこにはシャマル姉さんも居ない。

レイラの記録をみんなで見てるって所か?

 

ちょうどいい。

 

 「なぁ、アテナ」

 《はい?》

 

近くのソファーに腰掛け、手のひらにアテナを乗せ、話しかける。

俺の様子がおかしい事に気づいたのか、何時もみたいに茶化す事なく素直なアテナ。

 

 「お前が知ってる俺の出生は情報なんだよな?」

 《……前に一度言いましたよ?》

 「あん時は寝たふりしてたからな。覚えてねぇんだ」

 

確りと覚えてる。

だけど、コイツからもう一度ちゃんと聞きたかった。

 

 《……そうです》

 

重い口調で、でも確かに答えてくれた。

なら俺もちゃんと答えないとな。

 

 「実はな、お前が戻ってからアングと会った」

 《なっ!?なぜ私を呼ばなかったんですか!?》

 「それは方法を教えてから言う台詞な」

 《……言ってませんでした?》

 「うん」

 

ん~……。やっぱしまらんなぁ。

仕方ないのかもしれないけど。この方が俺ららしいっちゃらしいけど。

 

でも今回ばかりはこの雰囲気ではいられない。

 

 「そいつな。俺の出生の真実を知ってるって」

 《それで私に確認を?》

 「あぁ」

 

短く返事をする。

これ以上何を言っていいのか分からないから。

 

いや、言うことは有るんだけど……どういったら良いのか。

ん~……やっぱ突然すぎたか?

 

 《相棒はどうしたいんですか?》

 

悩んでると、アテナがそう聞いてきてくれた。

その口調はまさに俺の言いたい事が分かってるみたいで……。

 

 「時間と場所を指定されてる。……正直、行きたい」

 

実際、アングが指摘したことは確かな矛盾だった。

何で凍結魔法を持たない俺が選ばれたのか。

アイツの口ぶりからすると、知ってる筈だ。

 

 《罠かも知れませんよ?》

 「それでもだ。馬鹿な事だって事は分かってるんだけどな」

 

ここで会話が途切れた。

俺の答えに呆れてるのか、何て言って良いのか分からないのか。

とにかく、アテナは何も言わない。

 

俺も何も言わないでアテナの答えを待つ。

 

 《はぁ、最近はマシになってきたと思ったら……根元は変わってないんですね》

 

暫くしてアテナが口を開いた。

その口調は何時もと変わらない。

 

 《止めたら私を置いて行きそうですし。相棒の好きにしたらいいと思いますよ?》

 「いいのか?」

 《だったら一応聞きますけど、止めたら諦めるんですか?》

 「いや、置いてく」

 《即答!?ってゆうかやっぱり!?》

 

手のひらで騒ぐアテナ。

本当に何時も通り。まぁ、俺のことを思ってくれての事なんだろうけど。

 

 《あぁ、予想が当たって嬉しいのか、悲しいのか……。私はどうすれば!?》

 「騒がしいと思えば、起きていたのか」

 

そんな時、医務室の扉が開く音と声が聞こえてきた。

 

 「シグナム姉さん、シャマル姉さん。それにフェイ姉も」

 「ウィズ、体の具合はどう?」

 「え?あぁ、うん。大丈夫大丈夫!」

 

一歩前に出てきて心配してくれるフェイ姉に俺は返事をする。

実際体はなんとも無いし。

うん。少しモヤモヤしてるけど……大丈夫。

 

 《(お姉さん達にはさっきの事言わないのですか?)》

 「(あぁ。言っても止められるのが見えてるし。それを無理やり押し通そうとしたら……)」

 《(まぁ、火を見るより明らかですね)》

 

でしょ?

絶対に部屋に監禁されて24時間体制で見張られるに決まってる。

それか休憩なしの模擬戦大会。もちろん俺は休憩なし。

 

……うわぁ。

 

 「ウィズ君、はい。レイラ……震えてるけど本当に大丈夫?」

 「ダイジョウブデス」

 「……片言だけど?」

 

レイラを受け取りつつ返事をする。が、どうやら片言になってたらしい。

想像したら誰でもそうなりますって。

しかも俺の場合想像じゃなくて実際にされそうだから余計に震えが止まらない。

 

イカン。

このままここに居たらボロがでそうだ。

 

 《(でしょうねぇ。相棒って分かりやすいですから)》

 《(話が見えんがそれには賛成だ)》

 「(ぐぬぬぬ……好き放題言いやがって……)」

 

だけど悲しいかな。

自分でもその辺はちゃんと分かってるので言い返せない。

 

俺は椅子から立ち上がってそのまま医務室を後にする。

 

 「じゃ、じゃぁ目も覚めたし部屋に戻ってるね!」

 「あ、ちょっとウィズ君!」

 「ちゃんとシャマルに見て貰った方が……」

 「ホンットに大丈夫だから!!」

 

 

この時俺は慌ててたから気づかなかった。

シグナム姉さんが俺を訝しむような目で見ていたことに……。

 

 

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