魔法少女リリカルなのはStrikerS WitH 2nd   作:八神煌斗

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24.道の妨げ・家族の重み

 「どういう、ことだ?」

 「そう睨まないでください。正確にはかかわっていた者のクローンですよ」

 

……成る程。

コイツもユリアと同じ記憶を継いでるって事か。

 

嘘かどうか解んねぇけど、これだけ情報が貰えれば言うこと無しだ。

 

俺は椅子から立ち上がり、アングに背を向け、出口へ歩き出す。

 

 「どこに行くんですか?」

 「帰るんだよ。十分情報は引き出せたからな」

 

答えながらも俺は歩くことを止めない。

正直慣れない事をしたせいで精神的に結構キてる。

この場から早く逃げ出したいんです。はい。

 

 「それが、起動六課……いえ、八神はやての苦労に繋がるとしてもですか?」

 

そう言われて、俺は思わず足を止めた。

振り向くといつの間にか立ち上がったアングが俺の方を見ていた。

 

 「どういうことだ、テメェ?」

 「八神はやてが管理局でどのような立場に居るのか、ご存知の筈ですよね?」

 

はや姉の立ち位置。

ロストロギア、夜天の魔道書の最後の主。

それだけ聞いたら凄いが、実際はそれだけじゃない。

 

夜天の魔道書が闇の書だった頃の犠牲者の憎しみをその一身に受けてる。

俺からしたら逆恨みもいい所だけど、そうも行かないのが現実。

今じゃ減ったらしいけど、今でも少なからず居る。

これはシグナム姉さん達も同じだけど……。

 

そしてその憎しみを持つのが管理局内にも居る。

しかもそれは世代的に今の管理局の上に位置している人物が多いと言うこと。

 

だからこそ、危うい。

だけど……。

 

 「テメェには関係ないだろ」

 「ですが、貴方には関係がある。まさか知らないんですか?八神はやての今の状態を」

 「今の?」

 

その言い回しが俺に引っかかった。

さっきまで顔だけだったのを体ごと振り向き、アングに再び向き直る。

 

 「いい加減にしろよ。それ以上適当な事言いやがったら――……」

 「適当ではありませんよ。八神はやては今、貴方のせいで再び管理局に睨まれています」

 「なっ、なに……?」

 

一瞬、動揺する。

 

 「俺のせい?出鱈目――」

 「ではありません。彼女はロストロギアの不正所持として事件後また睨まれ始めています」

 「不正所持?そん、な……の」

 

……俺?

 

気づいたら当たり前の事だった。

ロストロギアは管理局の厳しい審査の末に所持が許させる。

それは既知未知の差は有っても魔道士という立場なら、何らかの罰がある事には変わらない。

 

姉さん達も10年前闇の書事件が終わった時、管理局任務への従事と言う形で罪滅ぼしをし、はや姉は名目上の監視下に置かれることになった。

姉さんたちがこの程度で済んだのはクロノやリンディさんが結構な無茶を通してくれてたかららしい。

そう。無茶をしてくれて監視下なんだ。

 

 「解りましたか?貴方が八神はやての元に返るだけで、そばに居るだけで迷惑がかかる」

 「……だからって」

 

俺の帰る場所は……。

 

 「その場所が、この先、八神はやてが歩む道の妨げに成ったとしても、帰りますか?」

 「っ……」

 「貴方が壁に成りたいのなら止めませんが……オススメはしませんね」

 

そして静かに、その右手を俺に向けて差し出してくる。

その顔には、薄い笑みが張り付いている。

 

 「……なんだよ?」

 「貴方は僕たちを同じ造られたモノです。普通とは根本的に違う生まれ方をした。分かっているのでしょう?自分が居るだけで、迷惑が掛かると言うことは」

 

苦しい。息が荒くなってるのが、相手のペースに飲まれてるのが分かる。

いつもならこういう時、アテナが助けてくれるんだけど……。

今回に限っては無い。

どういう動きを取るか分からないからだ。

 

 「貴方がどう願おうと、世界は優しくありません。世界は私たちを拒絶する」

 

洗脳されかかってる。

分かってるけど……アイツの言葉が俺に突き刺さる。

きっと、俺が気づいてないところで、俺のトラウマになってたんだ。

 

 《(相棒、駄目です!その手を受け取ったら、戻れなくなります!)》

 《(マスター!落ち着け、その手を戻すんだ!)》

 

二人の声が頭に響く。

あれだけ言ったのにコイツらは……。そう頭の隅で考える余裕があることに驚いた。

けど、二人に言われて自分の手が少しずつアングに向かって伸びてることに気づいた。

 

 「貴方は同じ生まれの僕たちと来るべきだ。貴方の居場所は私たちの所だ」

 

 「違う!」

 「っ!?」

 

その声は誰の声か。

突然店内に響いた凛とした声に、俺の手が止まった。

 

 「轟炎(ごうえん)!!」

 「ちぃっ!」

 

アングが後ろにステップを踏み、俺から距離を取った。

と同時。

さっきまでアングが居た場所に一つの火球は降り注いだ。

 

 「万が一を考えてアギトを連れて来たが……正解だったな」

 

足音が後ろから聞こえた。

 

 「居場所は他人に決められるものではない。自分で決めるものだ」

 

そして俺の左肩に手が触れる感触がした。

振り向くとそこに居たのは――……。

 

 「シグナム、姉さん?」

 「言いたいことは山と有るが、後回しだ」

 

そう言って俺の方を後ろに引き、前に出た姉さん。

その格好は既に甲冑を着用、手にはレヴァンティンを握っている。

 

 「貴様がアングだな?」

 「烈火の騎士ですか。また厄介な……」

 

悪態をつくアング。

 

 「良いのですか?ここか仮にも都市内ですよ?こんなところで戦闘すれば貴方の地位は直ぐに――」

 「構わん」

 

アングの言葉を遮ったシグナム姉さん。

その声は誰でも分かるほどに怒りが込められてた。

 

 「家族一人と我が地位。天秤にかけるまでもない」

 「ほぅ?因みにそれはどちらで?」

 

無言でレヴァンティンをアングに向けた。

それはつまり……俺を選んでくれたと言うこと。

 

 「一人で何が出来ると?」

 「一人じゃねぇ!」

 「なにっ!?くっ」

 

再び声がする。

同時、俺たちをアングを遮るように火が壁のように燃え盛った。

 

 「よくやった、アギト」

 「ヘッ。くれくらい朝飯前だぜ」

 

降りてきたのはリインサイズの赤い悪魔のような格好をした女の子。

シグナム姉さんから話にだけは聞いていた。

姉さんを歩むことを決めたユニゾンデバイス。

烈火の剣精、アギト。

 

 「チィ。ユニゾンデバイス持ちですか。流石にこの狭い空間では……」

 

燃え盛る炎の奥に揺らいで見えるアングの顔は少しだが歪んでいた。

 

これも話から聞いている。

シグナム姉さんはアギトとのユニゾン適正がリイン以上に高いって。

アングの能力がどれだけ凄くても、姉さんのデバイスに近づけなかったら破壊は出来ないだろう。

 

それに俺にだってわかる。

ユニゾンしなくてもこの狭い空間、炎が降り注ぐ中ならいくらアングでもまともに戦闘にならない。

 

だからこその舌打ちだろう。

 

 「今回は出直しましょう。ですがウィズ。貴方もよく考えることですね」

 

そういい残し、アングは姿をけした。

 

 

 「機動六課所属、フェイト・T・ハラオウンです。市街地で火災が……。はい。場所は――」

 

その後、俺はシグナム姉さんに引っ張られるように店の外に出た。

店の外にはフェイ姉の車が置いてあって、フェイ姉も待機していた。

 

今はフェイ姉が店の参上に驚きながらも、近くの地上部隊に連絡を入れてくれてる。

まぁ、原因は俺の隣に居る人なんだけどね。

 

 「ウィズ」

 「……?なに――づっ!?」

 

シグナム姉さんに呼ばれて、そっちを向こうとしたら、頬に強い衝撃を感じた。

そして俺は店の向かいの壁際に叩きつけられた。

口の中に広がる鉄の味。

 

 「シグナム!?」

 

通信が終わっていたフェイ姉が慌てて俺のほうに駆け寄ってくる。

シグナム姉さんは何も言わずに右手で作った拳を胸元まで持ち上げている。

 

 「私の分はこの一発で許してやる。後は主やテスタロッサに任せる」

 

そう言って車に乗り込むシグナム姉さん。

その声は店内に居たときよりも、酷く重く聞こえた。

 

 「大丈夫?」

 「うん……」

 

心配してくれながら、ハンカチで俺の口元を拭いてくれる。

多分、そこから血が出てるんだろう。

 

もたれ掛っていた壁から背を離し、少しふら付きながらも確りと立つ。

 

 「ウィズ」

 

俺の両肩に手を置いて俺の視線を合わせて屈んだフェイ姉。

そして俺の名前を呼ぶ。

 

だけど俺は目を合わすことが出来ずに、横に逸らしてしまう。

 

 「ウィズ。こっち向いて」

 「…………」

 

恐る恐る、フェイ姉に目を合わせる。

 

 「何で今回の事を話してくれなかったのかは今は聞かない」

 「…………」

 「でも、六課に帰ったらちゃんと話して。いい?」

 「……わかった」

 

 

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