魔法少女リリカルなのはStrikerS WitH 2nd 作:八神煌斗
「成る程、な……」
俺は今部隊長室にいる。
いつもの様にはや姉はデスクに座っていて俺はその前に立っている。
でもそれ以外は全く違う。
はや姉を挟む様にねの姉とフェイ姉も立ってるし、空気は比べるまでも無く重い。
はじめはヴィータ姉さんも居たんだけど、シグナム姉さんが引きずっていった。
ヴィータ姉さんには後で何か言われるだろうけど、シグナム姉さんは本当に言うことはないらしい。
アテナ達も今回は流石に怒ってるみたいで一切口を開かない。
「で、報告はそれで全部か?」
「……はい」
お互いにいつもの様になぁなぁなんかじゃない、仕事モード。
「ほな、その件は後で私らが調べとく」
「はい」
頷く事しかできない。
いや、もう俺から言うことは無いんだから頷く以外ない、が正しいか。
「もう下がってええで。って言いたいところやけど……私らが個人的に聞き無い事はまだや」
喋り方が普段の感じに戻った。
けど、雰囲気は相変わらず変わらない。
どっちらかというと重くなってるような気もする。
「ここに居場所が無いって言われて向こうの手を取ろうとしたらしいな?」
何も言わずに、気づいたら顔を横に逸らしていた。
シグナム姉さん、いつから聞いてたんだよ。
俺が何も言わずに居ると、なの姉がよって来た。
「ウィズ君、何でそんな風になったのかな?ここ、そんなに居づらかった?」
「違う!そんなこと……ない」
その一言に、俺は直ぐに否定した。
ここは凄く居心地が良い。
毎日が楽しいし、不自由なことなんて何一つない。
それ以上に、はや姉……みんなが居ることが凄く嬉しい。
「ならなんで……」
「俺が……はや姉の首を絞めてる」
「どういうこと?」
俺は全部話した。
俺がはや姉の夢への道を塞いでいること、足を引っ張っていること。
気づかない内に自分の存在がトラウマになってたってこと。
そして……アングに言われた時、何も言い返せないどころか、受け入れたこと。
全部言い終わると、目の前のなの姉が、本当に悲しそうな顔をしていた。
「そんなことないよ。ウィズ君は……」
「でも!アイツの言ってることは全部本当の事だ……」
「本当じゃないよ!」
声を上げたのは、フェイ姉。
怒った顔で俺の方に寄ってきて、俺の視線に合わせる為に身を屈めた。
「ウィズは殺すために生まれたんでも、迷惑も掛からない。生まれなんて関係ないんだ」
「違う!実際俺は皆の負担になってる……。だって……」
「いい加減にしぃや」
俺の言葉を遮ったのは、はや姉。
座っていた椅子から立ち上がり、俺の方にゆっくり歩いてくる。
怒ってる。確実に。
それははや姉の顔を見ても分かる。
「私が、いつ、迷惑やって言った?」
「言ってねぇよ。でも……気づいてないだけだ」
目の前にいるはや姉の方を見ないように、再び視線を横に逸らして答える。
「本当に、そう思ってんのか?」
「…………」
「舐めんといてや」
「っ!」
言葉の重みが一層増した。
いつものおふざけの重みじゃない。
心のそこから、本当に溢れ出しそうなナニカを押さえ込んでいるような。
そんな重み、
その溢れ出しそうになっている原因を作ってるのが俺だからか、余計に感じるのかもしれない。
「壁の一枚や二枚、今まで何度も越えてきたわ。それはこれからも変わらへん」
「でも!俺は……俺の存在は今までのモノとは比べ物にならねぇだろ!?」
「それでもや。そもそも私は壁や思ってないし、壁やとしても越えたるわ。私一人で無理なら、なのはちゃんたちに手伝ってもらう」
「そうだよ。私たちも手伝う!」
「だから、大丈夫だよ」
はや姉の言葉に続くように、なの姉とフェイ姉が声を掛けてくれる。
嬉しい。
嬉しいけど……駄目だ。
「ウィズ?」
疑問の声を上げたのはフェイ姉。
それはきっと俺が体を後ろに引いたから。
「俺は手伝うことが、助けることが出来ない……。俺がいたらはや姉の夢の邪魔になる!」
だって、俺は越える壁そのものなんだから。
「夢?夢って……」
「誰にももう泣かない夜が来ないこと。助けるどころか……」
邪魔にしかならない……。
六課に来てから、俺は何をした?
トウギに肩ぶち抜かれて、生まれの事を知って八つ当たりして、今回の独断行動。
極めつけ、はや姉の道を塞いでる。
助ける?
邪魔しかしてない……。
やっぱり、俺はここに来ないほうが……。
「ウィズ」
声の主ははや姉。
俺が離れた分、こっちに寄ってくる。
直ぐにでも走り出したい。
でも、その声が……優しくて、足が動かなかった。
「その誰にも、って言う中にはウィズも入ってるねんで?」
言葉が出なかった。
いや、驚きの言葉さえ、出てこなかった。
言われた言葉の意味は分かるのに、理解できなかった。
「はや姉……」
やっと出た言葉は、はや姉の名前。
名前を呼びながらはや姉の顔を見る。
笑っていた。
「そもそもな。私らは守ってもらう程弱くないわ。強いんよ、私ら」
両腰に手を当てて、悪戯っぽく。
でも、嫌味な感じは一切無く。
なの姉とフェイ姉も笑顔で頷く。
「まぁあれやな。十年早いっちゅうやっちゃ。……でもまぁ――」
自分より高い位置にある、俺の頭に手を置く。
「本当に助けて欲しくなったら、助けてや?」
「――っ!」
体が震えた。
震えて、動かなくなった。
「焦らんで良いんよ。ゆっくり歩けばええんや」
「そうだよ。今は私たちが守ってあげる」
「だから、ウィズも私たちを守ってね」
はや姉となの姉、フェイ姉が声を掛けてくれる。
正直情けない。
今の俺は弱いって、そういう意味だから。
だけど、同時に嬉しい。
俺に期待してくれてるから。いつか並ぶこと、俺が皆に追いつくことを信じてくれてるから。
「……はや姉」
「なんや?」
震える声で、名前を呼ぶ。
俺は、はや姉の両肩に手を置いて、俯く。
「ゴメン。隠して」
「りょーかいや」
単純だなんて分かってる。
だけど、皆が掛けてくれた言葉が、信じてくれていることが、本当に嬉しくて。
皆を信じれてなかった自分が恥ずかしくて。
これで、今日で最後にしようと心に決めて。
はや姉の腕の中で泣いた。
「ウィズ、もしかして涙もろくなったんちゃう?」
「……そんなことない」
《あれだけ泣いておいてよく言いますよ》
《可愛かったぞ、マスター》
「うるせぇ」
まぁ、例の如くおもいっきり泣かせてもらいました。
今は部隊長室にある長椅子に二人並んで座ってます。
なの姉とフェイ姉はヴィータ姉さんとシグナム姉さんの所に向かった。
二人とも心配してくれてたし。
何よりヴィータ姉さんには一拍置かないと問答無用で肉体言語になりそうだ。
いや、それくらい心配してくれてるのも分かるんだけどね。
アレだけはどうしても無理なの、うん。
「とりあえず少し早いけど、でも食べにいこか?」
「今食べたら絶対に夜食とか言ってもう一回食いそうなんだけど?」
「私もそう思うわ。そんときは一緒にまた食べよな?」
《太りますよ?》
「……やっぱ一人で食べてな」
「う、うん……」
エストラside――――――――――――――――――
「それで、接触はしたが連れ帰れなかったと?」
「はい。そうなりますね」
俺が睨みをきかせて問いかけるも、目の前に立つアングは飄々と受け流す。
やはりコイツは気に食わん。
今の計画が無ければ、一緒に居たくないタイプだな。
「チッ。それで、計画の方はどうなっている?ヤツはが居なければ成就しないのだろう?」
「そこは大丈夫です。下準備は全て終えています。ですが……あと一つ、欲しいものがあるんですよ」
「一つ?」
何だ?
俺たちに必要なのはあの人間紛いさえ居ればいいのではなかったのか?
「演算装置ですね。数度接触して分かりましたが、製作途中だったせいかその部分が決定的に欠如しています。現にマルチタスクが苦手らしいですし」
そういえばデーターにも魔法の同時行使は苦手とあったな……。
そういうことか。
だから変わりの演算装置、か。
しかし、そんな直ぐに換わりに成り得るモノなど――……。
あぁ、なるほど。
「だが、あそこは文字通り鉄壁だぞ?今回貴様のミスのおかげでより厚くなっているだろうな」
「問題ありません。時間と、貴方たちの協力さえあれば決行できます」
「時間……。どのくらい必要だ?」
「そうですね……10日程あれば」
12月の始め頃、か。
「遅いな。一週間でやれ」
「やれやれ、人使いが荒いですね。分かりました」
そうしてアングは踵を返し、闇に染まりつつ姿を消した。