魔法少女リリカルなのはStrikerS WitH 2nd   作:八神煌斗

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26.これからの為にできること

 「悪いな、レイラ」

 《構わん。マスターの愛がそれ程強いと言うことだろう》

 「いやそれ違うから!……いや、どうなんだろうな」

 《知らん。が、好きにすればいい》

 「――あぁ。そうする」

 

そして俺はレイラを机に置いたまま、部屋を出た。

昨日から全く口を聞いてくれなくなった相棒を持って。

 

 

 「はぁっ!――らあぁ!!」

 

まだ太陽が昇りきっていない時間、薄暗い空の下、俺はアテナを振っていた。

聞こえるのは風を切る音と、俺自身の鼓動のみ。

 

昨日は本当に情けなかった。

俺が間違っていたことに気づかせてもらった。

 

だから――。

 

 「こんな早くから、何のようだ?」

 

俺はシグナム姉さんを呼んだ。

 

 

 

 「俺に、一閃を教えてください」

 

頭を下げた。

こう言ったら安くなるかもしれないけど、ほぼ90度まで腰を曲げている。

 

姉さんは何も言わない。でも、動く様子も無い。

俺も何も言わないで頭を下げ続けた。

 

そして数分後、姉さんが口を開いた。

 

 「……何故だ?お前にはカラーズがあるだろう」

 「あれじゃ、駄目なんだ。アング達には勝てない。俺は強くなりたい」

 

頭を上げて、姉さんの目を見てハッキリと答える。

 

 「強くなりたい、か。月並みな答えだな」

 「俺もそう思う」

 「なら私もあえて聞く。何故強くなりたい?」

 

姉さんも俺の目を見て、もう一度問い返してくる。

嘘を付くつもりなんて全く無いけど、嘘を言わせない。そんな目だ。

昨日の……いや、昨日までの俺だったら目を逸らしてたと思う。

 

だけど、大丈夫。

 

 「変わりたいんだ。もう……逃げたくない」

 「今までの自分を否定するか」

 「違う!」

 

その言葉に俺は今の時間を忘れて大声を出していた。

 

 「今までの自分を、認めた上で変わりたいんだ。……今までの自分を否定したら、それはもう俺じゃない」

 

記憶を失っったあの日から今日まで、逃げたことも、弱いところも、全部含めて俺なんだ。

その過去の俺を否定したら、今までの俺を認めてくれてた人たちも否定することになる。

 

それだけは絶対にイヤだ。

 

弱い自分をもう否定しない。

今までの弱い部分が居て、過去の俺が居るから、今の俺なんだ。

 

 「だから俺は、今までの自分を否定しないし、前だけを見ることもしない。ヘタレ?上等だよ。過去を振り切れないことが、振り返る事がヘタレって言うなら、俺は一生ヘタレのままで良い――ぁ……」

 

口に出して初めて気づいた。

俺は強くなりたい訳じゃないんだ。

 

 「ゴメン姉さん。強くなりたいって、やっぱ無し」

 「なに?」

 「俺は、成長したいんだ」

 

自分の気持ちに初めて、18年間生きてきて初めて自分が分かった気がした。

 

全部、言いたいこと、自分の今まで気づかなかった本音を全て吐き出して、なんだかスッキリした。

 

 

 「成長したい、か。随分大きな口を叩くようになったじゃないか。……決意は結構。だが、それでもお前は道に迷わないと言い切れるのか?」

 

今までずっと黙って聞いていた姉さんが口を開いた。

その質問はきっと、今の俺。

 

そしてこれからの俺に対しての質問。

 

だけど俺は、答えになんて詰まらない。

 

 「もう迷わない。なんて言わない。それでも必ず、待っていてくれる人が居る場所に帰ってくる」

 

なの姉にフェイ姉、はや姉にシグナム姉さん達。

分かってる。

皆が居る場所が俺の帰る場所なんだ。

 

 「だから、俺は遠くに行ける!今日が、その一歩なんだ!」

 

言った。

全部言った。

 

どうなるかなんて分からない。

情けないことばっか言ってんのも分かる。

 

過去を振り返り続ける。とか、道に迷わないなんていえません。とか。

 

でも全部本心。

 

だから、姉さんに見限られても、それでいい。

 

姉さんは腕を組んで目を閉じている。

その顔から感情を読み取ることは俺には出来ない。

 

と、思ったその矢先。

姉さんの口が緩んで、目を開いた。

 

 「と、言うことらしいです。主はやて」

 「……へ?」

 

そして微笑みながら言ってくれた一言がそれ。

え、なに?

主はやて?

何ではや姉の名前が出てくんの?

 

頭が追いつかない。

状況を理解しようとしている時、シグナム姉さんの横にモニターが開いた。

 

そこに映ってるのは……はや姉。

モニター越しだったけど、目が合った瞬間、俺の混乱は消えていった。

 

 「こんな早くに態々呼び出したのだ。昨日の事に関係あることだと思ってな。音声通信を繋いでおいた」

 

あー……なんだろ、これ。

すっごいデジャブ。

 

こんなこと思ってるのもデジャブだし……。

 

 『ウィズ』

 

なんか違う意味で頭が痛くなって頭を抱えているとはや姉から声がかけられた。

 

俺は改めてはや姉を見る。

 

 『今何時やと思ってるんや?』

 「え?あー……ごめんなさい」

 

少し不機嫌そうなはや姉の声に、咄嗟に謝ってしまう。

まぁ、FWの訓練が始まるまで一時間程有るし、そう言われると少し辛いです。

ヘタレ?

いいの。俺はヘタレで行くって決めたから。

 

 『まぁ、ええわ。……ちゃんと答え、見つけたんやな?』

 

そして今度はとても穏やかな、俺の好きな表情のはや姉。

 

 「……うん。これだけは、この気持ちだけは……間違いじゃない。俺の、俺だけの心の底からの本心」

 『小難しい言い方せんでええわ』

 「うぇ?」

 

そんな言い方しなくても……。

そりゃ少しは考えて発言したけどさ、いいじゃない。

こんな時くらい。

 

 『ウィズのここにある今の気持ちを、そのまま言葉にして』

 

そういいながらはや姉の右手は、胸元へと添えられる。

……だから俺も、右手を胸に添えて、ありのままに答える。

 

 「俺はきっと、これからも逃げるし迷うと思う」

 

――さっき吐き出した、俺の気持ち。

 

 「でも、どれだけ時間が経っても必ず帰ってくる」

 

――嘘偽りない、気づいた気持ち。

 

 「はや姉が、皆が居る場所が、俺の居場所だから」

 

――もう二度と忘れない。俺の進む力になる気持ち。

 

俺の言葉を聞いて、はや姉は……笑ってくれた。

 

 『合格、って言うのはちょっとちゃうね。でも……安心したよ』

 

はや姉の目が潤んで来ている気がする。

 

 『ほんならジグナム。後は任せるわ』

 「はい。主はやて」

 

その言葉を最後に通信が切れ、モニターが閉じた。

 

最後の言葉、少し震えてた気がする。

本当に心配かけちゃったな。

 

 「ウィズ」

 

少し自己嫌悪してると、シグナム姉さんから声が掛かった。

姉さんを見る。

 

――甲冑を着ていた。

 

 「私に教えを請うと言う意味、分かっているな」

 「当たり前だろ。俺は姉さんの一番弟子だぜ?」

 

姉さんは教える人間じゃない。

そんなの、周知の事実だ。

 

ならどうする。

 

 「私は言葉を簡単に信じる気は無い」

 「うん。知ってる」

 

つまり、さっきまでの俺の決意を姉さんは鵜呑みにしてないって事。

でもそれも分かってる。

コレでも10年、姉さんの弟をやってるんだ。

 

ならどう信じてもらう。

 

二つの問いの答えは同じ。

簡単だ。

 

レヴァンティンの剣先が俺に向けられる。

 

 「だから、行動で示せ。そして――」

 「一閃を学びたければ、勝手に盗め。でしょ?」

 

姉さんの言葉を遮って俺が答えると、静かに笑った。

口で言われなくても分かる。

 

わかってるじゃないか。

 

 「準備はいいよな?」

 《遅いんですよ。私は待ちくたびれました》

 「悪かったな。もう絶対に待たせねぇよ!」

 《その言葉、信じて良いんですよね?》

 「当たり前だ。俺は出来ない約束はしねぇ!」

 《そうでしたね》

 

あぁ。

絶対に立ち止まらない。

 

俺とお前は最高のパートナーだ。

二人で一緒に、歩いて行こう!

 

 「アテナ!行くぞ!」

 《はい!》

 

 

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