魔法少女リリカルなのはStrikerS WitH 2nd 作:八神煌斗
「それじゃぁ、アテナを借りていくですよ?」
「おー」
《行って来ます相棒。寂しいからって泣かないでくださいね?》
「誰が泣くか」
夜、アテナはリィンが持って行った。
最近はずっとこうだ。
何故マスターの俺に理由を言わないのか分からないが、ほぼ毎日暇があればシャーリーさんの所に行ってる。
いや、暇が無くても行くんだが……。
そして今日も仕事は終わって寝るだけ、ってなった時にアレだ。
普通なら俺とレイラを二人きりになるだけで大騒ぎするくせに。
一度気になって聞いてみたんだがのらりくらりを流されてしまった。
「レイラはなにか聞いてんのか?」
《さぁな》
「…………」
寝よ。
昨日アテナは帰ってこなかった。
いつもリィンが持って来てくれてるけど、偶には迎えに行ってやろうと思い、俺は廊下を歩いてる。
因みにレイラは部屋。
なんか誰かと念話してたみたいだけど……誰とだ?
「あ、おはようございます相棒」
「はい、おはよー…………ん?」
今俺を横切ったのってリィンだよな?
チッサかったし、浮いてたし。
でも相棒って言ってた気が……。
振り向くとそこに居るのはリィンサイズの小人。
「酷いです」
両手を腰に当て、怒ったような素振りを見せてる。
「こんな所にいたですか?」
「リィンさん。さっき完成した飛行ユニットの調整目的ですけどね」
「本体と繋ぐコードも取れたみたいですね?感度はどうです?」
「あぁ。接続コードはこのベルトなんですよ。感度については良好です。ラグも最大0.1を切ってますし」
あー……。
誰と何の話をしているのかな、リィンは。
「リィン、誰?誰かのユニゾンデバイス?」
「あ!ウィズには内緒にしてたですね。アテナですよ!」
「そうですよ。というか相棒は姿かたちが変わると分かってくれないんですか……」
「は、はああぁぁぁぁ!!?」
「つまり、ふざけて話した内容が回りまわっていつの間にか実現してたと」
「そうなりますね。アウトフレームならぬ、アナザーフレームというところですね」
「色々大変だったですよ」
その後、俺とアテナは談話室へ移動。
俺は椅子に座り、二人はテーブルの上に座っている。
リィンはまだ仕事が残ってるとかでそのまま分かれた
「にしても、おふざけでこんなもん完成させるのか、六課開発陣は……」
「あ、今回関わったのはシャーリーさんとユリアさんだけですね。因みにお二人とも飛行ユニットを徹夜で完成させた後、死んだようにその場で眠りました」
何やってんだ、あの二人……特にシャーリーさん。
そういうキャラじゃないでしょうに。
「それで相棒、どうですか、今の私は」
「ん?あぁ……」
俺の目の前まで浮かび上がるアテナ。
俺よりも若干青い膝下まである長い髪。
薄い藍色ノースリーブの服に黒のスカートにニーソックス。
そしてまだ未完成なのが伺える左胸部分や耳の部分など細かい部分に外付けパーツらしきものもある。
手足の先に緑と赤の光輪が有るけど、これがさっき言ってた飛行ユニットだろ。
腰の辺りにベルトが巻いてあって、一緒に指輪のアテナが結ばれてる。
「どうって……リィンに少し似てる?」
「まぁ、少なからずリィンさんを元にしてますし……ってそういう意味じゃないですよ!!」
「へぶしっ!?」
アテナが俺の顎に思いっきり蹴りをかましてくれやがった。
「で、どうですか?」
「スゴクカワイイデスヨ」
「本当ですか?ありがとうございます!」
半ば言わされた感があるが、アテナはそんなこと気にしてないようで笑顔で俺の周りを飛び回る。
と、一通り回り終えた後俺の肩の上に座った。
「相棒。ご飯にしましょう。私はお腹が空きました」
「お前飯食えんの?」
「言ったでしょう、リィンさんを元にしていると。さすがにユニゾンやアウトフレーム機能はありませんが、生活面ではほとんど変わりません」
「無駄な機能……へぶっ!?」
「いいから食べましょう」
頬にパンチをくれたアテナは素敵な笑顔です。
コイツ、手足が出来たからって暴力的になりすぎじゃないか?
結局その後、俺は適当に飯を買った。
え?アテナはさっきのテーブルに座ったまんまでしたよ?
「相棒、から揚げ貰います」
「ちょ!それ俺が取っといたヤツ!」
「早い者勝ちです。相棒はバランでも食べてなさい」
「食べられないから!バラン食べられないから!!」
まぁ、始終こんな感じで飯は終了した。
「それで相棒。どうですか?私を攻略したくなりましたか?」
「……はい?」
「私の方は大丈夫ですよ!フラグは十分過ぎるほど立っていますし、何より体を手に入れました!」
「おい。ちょっとまて~」
何自然な流れでヤバい発言してるんですか!?
この小説は全年齢対象だからね!?
「さぁ、相棒!今こそ私たちで甘ったるい絶対的不可侵領域を作り出しましょう!!」
いや、そんな拳を作りながら力説されても……。
なんか背後に炎が見えるよ。ほら煙も……。ん、煙?
「アテナ、煙……出てないか?」
「はい?……は!?興奮しすぎました!!相棒!氷、氷を!!」
「はぁ!?お前どんだけ興奮してんだよ!!?おばちゃーん、氷頂戴!ありったけ!!」
「た、助かりました相棒。ありがとうございます……」
「別にいいけどよ。発熱許容量こえるってどんだけよ?」
「10年越しの思いがかなうんです。仕方ないですよ」
「……どんだけ~」
今のアテナは氷の入った袋に背中を預けて、またまた氷袋を抱いている。
どれだけ興奮したんだよ、本当に。
「で、相棒」
「ん~?」
「私のルートに入るつもりはないんですか?」
「ない」
「言い切られた!!?」
いや、なんだよルートって。
そんな現実と創作物を一緒にすんなよな。
「相棒、その台詞は私たちにとって禁句です」
「ん?まぁ、それは置いといて、そもそもお前どっからそんな知識手に入れてくんだよ?
俺も男だ。
ルートとかって言葉を使うゲームもしたこと無いことは無い。
だけど一日もやってないんだぞ?
せっかく勇気だしてダチから借りたのに、ゲーム機に入れっぱなしなの忘れてて、次の日姉さん達に問い詰められた。
弁償代で財布が空っぽになったのはいい思い出。
「その辺はほら。私の交友関係をフルに活用して……」
「お前の交友関係どうなってんの!!?」
いや、冗談抜きマジで。
そもそも俺が知らない友達が居ることが驚きだよ!?
浮遊機能なんか無かったよな!?
「女には秘密の一つや二つや三つ、あるものなんですよ」
「……うん。まぁ、お前が普通じゃないって事は重々承知してるつもりだよ」
もう諦めよう。
アテナはアテナ。それでいいじゃないか。
もう考えるのにも疲れたし。
「それで相棒。一つ頼みがあるのですが」
「頼み?」
改まって、なんじゃい?
「今日一日お暇を貰いたいんですよ。せっかく体を手に入れたので」
「あぁ、そういうことな。良いんじゃないか?一日くらい休んでも」
「本当ですか相棒!?大好きです!!」
歓喜の声を上げつつ、俺の顔に抱きついてくるアテナ。
コイツ、体あったらこんなに行動に出るタイプなのな。
「なら相棒。相棒も今日はお休みと言う事でいいですよね」
「あぁ、いいんじゃ……なに?」
聞こえなかったから、って意味じゃないのよ。
意味が分からないから聞き返してんの。
「だって私と相棒はニコイチじゃないですか。私が休みなら相棒も休みと言う事ですよ」
「何その勝手な理屈!?」
そもそもニコイチって何だよ!?
「二人で一つ、と言う意味ですが?」
「そういう意味じゃねえぇぇ!!意味は分かってるから!分かってるからそんな目で見ないで!」
「本当に分かってるんでしょうね?」
「分かってるよ!!」
コイツ、表情が付いたから俺をバカにしてることが完全に丸分かりだぞ、この野郎。
「とにかく、相棒には私と共に休んで貰うんです。何のためにレイラを説得したと思ってるんですか」
「あの念話の相手お前か!?」
「当たり前でしょう!さぁ、休みなさい!例えお仕置きが待っていようとも!!」
「できるかあぁぁ!!」
まぁこの先もこんな言い合いを暫くした。
結局、レイラを部屋に放置した上で俺にべったりくっついている、と言う条件で折れてもらった。
「それで、今日はこんな感じに……」
「何をやってんだ、あのバカどもは……」
「私は感謝感激ですけどね」
頭を抱えているヴィータ姉さんにアテナが答える。
「それでヴィータさん、一つお聞きしたいんですが……よろしいですか?」
「なんだよ?」
さっきまでの浮かれた雰囲気はどこに言ったのか、と言うくらい、思い口調になったアテナ。
姉さんも目が真剣になった。
一体なんだよ?
そう思った瞬間、アテナが俺の顔……頬に抱きついた。
「今の私達、絶対的不可侵領域創れていますか?主に甘ったるい、ラブラブと言う意味で」
「真面目な顔して何バカな事言ってんだ!?」
「バカな事!?ヴィータさん、それはどういう意味ですか!?」
俺から離れ、姉さんの目の前まで移動するアテナ。
「そのままの意味だよ!お前は何を考えてるんだ!?」
「相棒との愛の成就です!!」
スッゴク楽だ。
俺の役割を変わってもらえただけで、こんなに負担が減るもんなんだな。
でもなぁ……。何故だろう、少し物足りない。
まさかコレが……恋!?
いや、無いな。
マジでない。
「ウィズ。ここにいたか?」
「ん?あぁ、シグナム姉さん。ゴメンね」
時間を見ると俺の訓練まであと少しだった。
いつもコレくらい時間だったらアップしてるから探しに来てくれたんだろ。
「別にまだ時間には成ってないから構わんが……」
視線を横にずらして未だに言い争っている二人を見る。
まぁそうだよな。
「あのヴィータと言い争っているのは、誰かのユニゾンデバイスか?」
「ちがうちがう。アテナだよ」
「ふむ。そうかアテナか……なに?」
首を傾げてるシグナム姉さんを置いて俺は二人に近づいて、アテナの首元を掴む。
「そもそもヴィータさんはですね――っておぉ!?」
掴んだアテナをそのまま俺の肩に乗せる。
「いい加減にしろって。姉さんも。俺そろそろ訓練の時間だから――」
「ん?あぁ、ウィズ悪いな。もう少し待ってくれ」
「まだ続けるの!?」
ヴィータ姉さん、目が据わってるよ!?
いや、何でその目で俺を見るのかな!?アテナだよね?アテナと喧嘩してたんだよね!?
「そ、それでアテナ。お前ちゃんとテクニカルとかになれるのかよ?」
とにかく目を逸らしたかったのでアテナに話を振る。
いや、この空気を変えるには睨み合ってるどっちかに話しかけるしか無いじゃんか。
ヴィータ姉さんに話しかけるとか本当に無理です。
「一応コード無しでも稼動出来るので出来ますが、これ(アナザー)稼働中は補助が一切出来なくなります」
「そっちに回路を回してるからか?」
「はい。後はシルエットの変更も口頭で伝えてもらえれば……」
「……そのフレーム必要か?」
「当たり前です!!」
だよな。
お前だったらそう答えるよな。
ま、今シグナム姉さんと訓練してるのは魔法に頼りきらないってのが前提でもあるから特に困るって事はないけどな。
「ならどうするよ?俺は今からシグナム姉さんと訓練だけど」
「相棒の勇士を外から見ると言うのもゾクゾクしますが――……」
「ゾクゾク言うな」
「折角の休暇です。私は六課の中をブラブラさせて貰いますよ」
「ん、了解」
そしてアテナは俺の肩から浮かび上がり、隊舎の方へ戻っていった。
さて、俺も頑張りますか。