魔法少女リリカルなのはStrikerS WitH 2nd 作:八神煌斗
ティアナside――――――――――――――――――
「どうだ、なのは。分かったか?」
「駄目。システムに不具合が有るのは確かなんだけど……操作を受け付けない」
「ちっ。外に居るウィズに任せるしかないって事か」
ジャケットを解除したなのはさんとヴィータ副隊長がそんな会話をする。
ホンの2、3分前、私たちは朝練の仕上げに入ろうとしていた。
その瞬間にこれだ。
訓練場の誤作動で完全に外から隔離された。
森林のステージを使ってたのに、ご丁寧に廃墟の設定にまで変わって。
「でもちゃんとチェックしてたのに、おかしいよね?」
そう言うのは私の隣に居るスバル。
確かにそう。
今日の準備は私とスバルの担当だったから確信がある。
あの時はおかしいところなんて一つもなかった。
「アンタ、変に弄ったんじゃないでしょうね?」
「そんな事してないよー!」
まぁ、分かってるけどね。
場を和ませる為にいった冗談よ、冗談。
そのつもりで私は言ったんだけど……。
「おー。譲ちゃん感が良いなぁ。だけど惜しいっ。弄ったのは俺なんだわ」
「っ!?」
突然男の声が聞こえた。
エリオの声じゃない。
なら誰――?
「あーこっちこっち」
そして視線が集まるのは廃ビルの壁が崩れ落ちている一角。
そこに居たのは赤髪の男。
記録でしか見てなかったけど、名前は確か……。
「ヴィオル!?」
「せーかーい」
手を振りながらそういうヴィオルに、無償に腹が立つ。
「テメェ、どういうつもりでこんな事しやがる!?」
怒鳴りつけるのは副隊長。
既にセットアップして、手にはアイゼンが握られてる。
「あぁ?生意気なガキだな」
「アタシはガキじゃねぇ!!」
「ガキは皆そう言うんだよ」
何でかしら。
私でも分かるくらいの殺気なにのどこか微笑ましく思っちゃうのよ。
「改めて聞きます。どうしてこんな事を?」
「あぁん?」
睨み合ってる二人の間になのはさんが入った。
セットアップはしてないけど、その手には確りレイジングハートが握られてる。
「目的は何ですか?」
「目的?あー。まぁ、言ってやってもいいか。ってか、目星はついてんだろ、エースさんよ」
「という事はウィズ君を狙っている、という事で良いんですね?そしてアナタは足止めですか?」
「正解だぁ。いや、流石だねぇ。尊敬しちゃう」
腕を組んで何度もうなずくヴィオル。
記録とは少し印象が違うけれど……コッチが普段の性格って所かしら。
「(ティア)」
スバル?
「(私がウィングロード近づいてどうにか……)」
「(何バカな事言ってんのよ。なのはさんたちでも様子見してるのよ。私たちが出しゃばっても足手まといになるだけ)」
ユリアから聞いた限りだと、ランクもSS前後あるらしいし。
訓練後の私たちが出て行っても足手まといになるだけだ。
「それで、テメェはアタシたちを閉じ込めてどうするつもりだ?」
「は?どうするもこうするも。何もしねぇよ」
「は、はぁ?」
何もしないって……そういうことよね?
「ほれ、これなんだと思う?」
そう言って私たちに見せたのは手のひらサイズの四角い箱の様な者に丸いボタンが付いたモノ。
どっからどう見てもスイッチだけど……何のスイッチか分からない。
「なんだよ、それ」
「なんだ、もう答え聞くのか?しゃーねぇな。これはな……あー、と……アレだ、アレ」
急に歯切れが悪くなって開いている左手を小刻みに振る。
何をしてるのかと思ったら次にその左手をポッケに入れて一枚の紙を取り出した。
「えーと……。お前、らのデバイスに組み……込まれてる……」
「カンペ!?」
「何で地球語なんかで書いてんだよアングのヤロウ!!」
「しかも読めてない!!?」
ちょっと……ユリア。
本当にアイツSSランクなんでしょうね?
なんだか空気もおかしい事になってきてるし。
「だぁーーー!!もういい!テメェらで勝手に読んでろ!!」
持っていた紙を丸めて私たちの方に投げたヴィオル。
投げた後はその場に膝に肘を付いて座り込んだ。
一瞬気を取られたけど、その紙をなのはさんが拾い上げ、広げ始めた。
「本当だ。これ、地球の日本語で書いてある」
「それで内容は?なんて書いてあんだ?」
「……少し、厄介なこと」
厄介なこと?
それが気になって私たちはなのはさんたちの方に寄っていった。
「簡単に言うとね、FWにAMFを最大レベルで発動させるって」
「私たち、だけにですか?そんなこと出来るんですか?」
なのはさんの台詞にキャロが疑問を口にした。
ヴィータ副隊長は納得した顔をしてるけど、私たちには何のことか分からない。
「六課(ここ)に来た時に少しだけ説明したでしょ?キャロたちのデバイスに少し細工して擬似AMFを体験出来るって」
「あ、そういえば……」
確か初めての訓練の時だっけ。
スバルのウィングロードが消されて、ビルに突っ込んだ時。
あの時は精一杯であんまり聞いてなかったけど、そんな事言ってた気がする。
でもそうなると少しどころじゃない。
そうとう厄介だ。
結果だけいうと私たち4人は足手まとい以外なんでもなくなる。
デバイスが無いと魔法が使えないって訳じゃないけど……時間はやっぱり掛かるし、使えても制度が落ちる。
スバルの戦闘機人モードでも、デバイスに直接細工されてる訳だからあんまり意味ないし。
つまり、なのはさんとヴィータ副体長は私たちをいつも以上に気にかけながら、SSランクを戦わないといけない。
「運よく、向こうは私たちが手を出さない限りは何もしてこないみたいだし、長くは無理だけど、考える時間はあるよ」
ヴィオルは今、余裕なのか、油断してるのか。
足を垂らす形で、寝転がってる。
「何もしないって言ってたけど、ここから出るためにはやっぱり戦わないと」
「だな、だけどなのは。お前はFW達の護衛だ」
「ヴィータちゃん!?」
カートリッジを確認しながらそういうヴィータ副隊長の発言になのはさんが驚きの声を上げた。
私だって驚いてる。
確かに一人を護衛に回したほうが戦いやすいのかも知れないけど。
私たちだって力を付けた。自分の身は自分で守れる自身もある。
わざわざなのはさんを護衛に回してまで、一人で行くメリットが無い。
「知ってんだぞ。お前ブラスター使って体調が完全じゃないだろ」
「…………」
その一言になのはさんが押し黙った。
「そういうことだ。WF共、なのはと一緒にどっか隠れてろ」
そしてヴィータ副隊長の足元に魔法陣は現れ、同時、ヴィオルの方へと飛んでいった。
「そりゃ来るとは思ってたけどよ……ガキが相手かよ?エースさんは?」
「テメェなんかアタシだけで十分なんだよ」
デバイス、アイゼンをヴィオルに向ける。
「まぁ、戦えるってならそれだけで構わねぇか……強ぇんだろうな、ガキ?」
ヴィオルの雰囲気が変わった。
顔も恐怖を覚えるような笑みを浮かべて、ユラリと立ち上がる。
「十分なんてデカい口叩きやがったんだ……。……出番だ、アブソリュート」
ヴィオルの右手に強大な鮮血色の盾型デバイスが表れた。
「精々……満足させろやあぁぁぁ!!」
「はあぁぁぁぁ!!」
二人は、私たちの目の前で、ぶつかり合った。
そして、数分後には――。
まずい……。それは私の目で見ても明白だった。
「どうしたガキィ!!ぜんっぜんモノ足んねぇぞ!!」
「っ。ウルせぇ!ギガント、ハンマー!!」
「効かねぇってんだろぉ!!」
ヴィータ副隊長の攻撃もヴィオルの突き出したデバイス、アブソリュートの前に防がれてしまう。
「アクセルシューター……シュート!!」
「っとぉ、危ねぇな、この野郎!」
ヴィオルの背後、真後ろから撃たれたなのはさんの攻撃も危ないとか言いながらも簡単に交わす。
なのはさんがついさっき、状況を見かねて戦闘に参加しても、あまり戦況は変わらなかった。
「ねぇ、ティア……」
「なによ?」
返事をしながらスバルの方を見ると、不安じゃなくて首をかしげた表情をしてた。
「さっきエリオとも話してたんだけど……」
「あーもう!良いから言ってみなさいよ!!」
こういう時は大体が言いたいことを我慢してる時だ。
もう長い付き合い。いつもだったら普通に聞き返せてたんだけど、何も出来ない事にイライラしてたせいで怒鳴ってしまった。
「う、うん。あのヴィオルって人だけどさ……」
「なに?ヴィオルがどうかしたの?」
この後、スバルの一言に私は頭を抱えることになった。