魔法少女リリカルなのはStrikerS WitH 2nd   作:八神煌斗

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31.封印された記憶・FWの意地

ユリアside――――――――――――――――――

 

 「うらぁぁ!!」

 

ウィズの連撃が容赦なくシグナムを襲う。

 

 「ウィズ!いい加減目を覚ませ!」

 「目はバッチリ覚めてんだよぉ!!」

 「――ぬぅっ!!」

 「シグナム!!」

 

シグナムが鍔競り合ったその瞬間に必死に訴えかけるけれど、それは届かない。

そのまま押し返されるような形で後ろに弾き飛ばされた。

 

 「よそ見している暇があるのか?」

 「――っ! アヴェ!――flock(あつまれ)!――defend(ふせげ)!――」

 

直ぐにアヴェを作り出し、壁にする。

けれど、それもあまり役に立たない。

一羽づつなんてモノじゃない。ほぼ一斉に全てのアヴェが弾き消された。

 

だけど、私がアヴェを壁に隠れたことで一瞬だけどエストラの視界から逃れる。

その間に私はシグナムの近くに寄る。

 

 「大丈夫?」

 「肉体面はな。だが……闘争心が全く沸いてこない」

 「無理ないわよ。私だってそうだもの」

 

正直、今の構図はマズい。

 

始めの二対一は崩されて、タイマンの勝負になっちゃってる。

ちらりと横を見る。

 

――ザッフィーにはここに参戦する前に一つだけお願いをしてる。

 

それはアングとぶつかり合う構図になったら私たちの方に寄ってこないこと。

アングに接近されたらデバイス持ちは接近できない。それはFS計画で生まれた私にも言える事。

 

ザッフィーは守りが自慢みたいだから何とか耐えてられてるみたいだけど、時間の問題なのは明白よね。

それが崩されたら少しヤバそう。

 

―ーでも、今の問題はそっちじゃない。

 

私は自慢のマルチタスク使って混乱を最小限に押さえ込んでるけど、それでも少しキてる。

 

その現況は今エストラと一緒に一定の距離を保ったまま同じ高さまにハイペリオンを作って立ったウィズにある。

 

 「どうした、烈火の将?いや、姉ちゃんって呼んだほうか良いのか?」

 「姉と呼ぶな。虫唾が走る」

 「おいおい。弟にそんな事言っちゃう訳?」

 

アテナの峰を肩に乗せて、呆れたように言うウィズ。

 

 「俺は本物だって、何回言えば信じてくれるんだよ?」

 「そんな話信じられるか!」

 

そう、ウィズが自分が本物だって言い始めた。

 

 「だから。俺は記憶を消されたんじゃ無くて、封印されたの。この体にな。で、アングがそれを解いた。わかった?」

 「…………」

 「信じられるわけ無いでしょう。そんなの」

 

何も答えないシグナムに変わって私が答える。

 

ウィズの記憶の事は、私の記録にもお母さんまさもちゃんと聞いてる。

その作業はウィズの能力封印の時のようにお父さんに完全に任せてた訳じゃなくて、ちゃんと参加してた。

 

だけどあのウィズが嘘を言ってる証拠が無い。

だからこそ、厄介。

 

アレが偽者って分かったら直ぐにでもあの奥の手を出せるんだけど……。

本物なら……。

 

 「まぁ良いや。力ずくで信じてもらうってモノ悪くはねぇか。なぁ?」

 「ふぅ。良いんじゃないか?俺は関わらんが」

 「薄い反応。んじゃ、許可が出たことだし、いっちょやるか」

 

最後の言葉を呟く様に言って、目を閉じたウィズ。

何をするつもり?

 

 「管理者権限発動。第三、第四拘束、解除」

 「なに!?」

 

刹那、ウィズから莫大な魔力が吹く出した。

って、あのバカ……!

第三までならまだしも四番まで!!

 

 「おースゲェなぁ。これ。こんなに魔力あんのかぁ」

 「シグナム!!」

 「分かっている!!」

 

私の怒号にシグナムが駆ける。

四番拘束はウィズの体が持たない。

一秒でも早く……閉じさせないと――!!

 

 「はああぁぁぁ!!」

 「っとぉ。やる――なぁ!!」

 

レバンティンの一線を最低限の動きで交わし、切りかかるウィズ。

そのまま、二人は自身の魔力光を残像に、光の線を残しながら何度もぶつかり合う。

 

 「――っ!」

 

視線を外した一瞬の隙、私の張っていたフィールド・センスに反応があり、私は急いで体をずらす。

 

 「――ッチ」

 「――create(クリエイト)・ave(アヴェ)――deployment(ちれ)・plunge(つっこめ)――」

 

分割思考をザッフィーとシグナムに少しだけ割いたまま、作り出せる限りのアヴェを作り出し、一斉に突っ込ませる。

 

まぁ、全部叩き落されたんだけど……。

 

 「どういうつもりよ。私はともかく、ウィズが居ないと穴を手に入れる事なんてできないでしょ?」

 

多分、私が必要とされる理由はウィズに欠落してる演算能力の為。

だからこそ、私だけを手に入れても仕方が無い。

部品が有っても、本体が無かったら意味が無いんだから。

 

 「アレが死のうと関係ない。体さえあれば能力の解析は出来る。生きてた方が楽なのは確かだけどな」

 「へぇ。そんな死体相手に解析できる設備が有るって言うの?」

 「設備は無いが、ヤツが居る」

 

はぁ。あの蒼髪野郎か……。

 

視線を移す。

 

そこでは純白の魔力光で作り出された幾つもの軛(くびき)が突き出している。

全ての目標はおつもの笑みを浮かべてるアング。

ザッフィーも付かず離れずで戦ってるみたいだけど……そろそろ厳しいかしら。

 

アングはああ見えて近~中距離タイプ。もろ接近型じゃぁ……ねぇ。

 

さて、どうしたもんか。

せめて戦闘要員がもう少し居てくれたらなぁ……。

 

そう考えていた時、その会話が聞こえてきた。

 

 「だぁかぁら!いい加減信じろって!元々、この体の所有者は俺なの!」

 「そんな事が信じられるか!記憶の故意的な封印など、出来るはずが――」

 「今日日(きょうび)脳みそだけで生きられる時代よ?出来ても可笑しくないっしょぉ!!」

 「くっ!」

 

思うように体が動かないのか、シグナムがまた後ろに弾き飛ばされた。

だから、私は距離の開いた今のうちに念話を繋ぐ。

 

 「(シグナム。脳みそで生きられるって言うのは本当?)」

 「(管理局にそういう者が居たらしい。とは言っても私も最近噂で聞いただけだがな……)」

 「(それは最近聞いたのね?それも噂で)」

 「(あぁ。そうだが……戦闘中に聞いてくることではないだろう?何を考えている)」

 

普通はそうかも知れない。

だけど……ようやく活路が見出せたわ。

その情報は……絶対の証拠になる!

 

 「(聞きなさい。そのウィズは元々の主人格なんかじゃないわ。アングの作り出した第二人格)」

 「(なっ!?何を根拠に……)」

 「(説明してる時間は無いの。私の合図でウィズから離れなさい。良いわね?)」

 「(……信じるぞ?)」

 

信じなさい。そういい残して私はシグナムと念話を切り、別の人物に念話を繋ぐ。

……よし、幸い近くに居る見たいね。ならお願い。合図はコッチで出すから。

 

 「作戦は決まったか?」

 「えぇ、もちろん。さぁ、行くわよ!――create(クリエイト)!!――」

 

 

ティアナside――――――――――――――――――

 

 「スイッチ押してたっけ?」

 

……はい?

私の呆れた目を見て、スバルが慌てながら両手を振る。

 

 「だ、だって私たちにスイッチは見せたけど、直ぐに副隊長と戦い始めたから……!!」

 「…………」

 

そういえば見せられただけで押してるところなんて見てないわね。

いやでも、こんなバカな話あるの?

 

 「クロスミラージュ?」

 《調べてみましたが、装置は機能してませんでした》

 「……つまり?」

 《いつも通りに魔法が使えます》

 「はあぁぁぁ!!?」

 

思わず大声を出しちゃったけど、許して欲しい。

だって、どれだけマヌケなのよアイツ。

 

見せるだけ見せておいて、それを使わないなんて。

 

 「まぁ、いいわ。コレで私たちにもどうにか出来そうだし」

 

額に流れた汗を拭い、気合を入れなおす。

 

私たちが攻撃を当てる事、もっと言ったら戦闘に参加する必要は全く無い。

今必要なのは、なのはさんか副隊長が攻撃を当てる隙を作り出すこと。

 

 

 「(今の作戦で行くわよ。――いけるわね?)」

 

念話で確認を取る。

それから私たちは即興で作戦を考えて、それぞれ配置に付いた。

私たちが動いてる間もヴィオルが反応しなかったのがびっくりだけど……。

やっぱりバカなのかしら?

 

いや、今は考えるのをよそう。

だって一瞬のタイミングのズレも失敗も許されない、一度きりの作戦。

 

失敗したら完全に負ける、賭博性の高い作戦だけど――。

 

 「(はい。いけます)」

 「(私たちなら大丈夫だよ!)」

 「(ココに来てからの日々を無駄にするわけには行きません!)」

 

三人から心強い言葉が帰ってきた。

うん。私たちなら絶対に出来る!

 

だから私は、作戦を結構出来る!

 

 「(なのはさん、ヴィータ副隊長!下がってください!!)」

 

私の言葉になのはさんたちは一瞬驚いたようだったけど、直ぐに後退した。

刹那、蒼い翼の道がヴィオルを包み込み、視界を埋め尽くす。

 

 「あぁ!?んだこりゃ!?」

 

様子は見えないけど、驚いて立ち止まってるのが分かる。

コッチの予想通り!

 

だから次は――!

 

 「フリード!ブラストフレア!!」

 「一閃必中……メッサー・アングリフ!!」

 「――っ!?っのヤロオォォがぁ!!」

 

上下からのライトニングコンビ同時攻撃!

ヴィオルの叫び声も、爆発音にかき消され、爆煙は立ち込める。

 

当たったのは確実!

でも、コレで終わりじゃないのはさっきまでの戦闘を見てて明らか!

 

 「ウゼエェェェ!!」

 

そう、あまり攻撃を食らって叫ばないような事を叫びながらヴィオルが爆煙の中から飛び出した。

 

 「クロスミラージュ!クロスファイア――シューーート!!」

 

空中に作り出しておいた六つのスフィアを一斉に打ち出す。

 

 「ちっ。まだ来やがるか!」

 

だけど、私のスフィアはヴィオルに察知されだ。

でもね……コレだけじゃないのよ!!

 

 「スバル!!」

 「うん!」

 「なっ――!?」

 

物陰に隠れてたスバルが、私の合図と同時に飛び出してくる。

その右手には青いスフィアが形成されている。

でもそれは私のスフィアとは用途が違う。

 

 「ディバイーーーン……」

 

スフィアを左手に持ち替え、右手を大きく振りかぶる。

 

 「そんなバンバンバンバン、撃たせると思ってんのかぁ!!」

 

しまった!?

タイミングがズレた訳じゃない。

ただ、私の計算がズレた。

 

ヴィオルは私の攻撃を防いだデバイスをそのまま攻撃を繰り出そうとしてるスバルに向ける。

どう見てもカウンター。

でも技を出す直前だったズバルに避ける手段が無い!

 

 「スバル、そのまま!!」

 「! はい!」

 

私の声じゃない。

 

その声は――なのはさん

 

 「アクセル――シューート!!」

 

私たちが攻撃中、こうなることを予想してたのか、偶然近くに居たのか分からない。

けれどなのはさんはスバルとは間逆、私が打ち込んだ所にスフィアを打ち込んだ。

 

 「バスターーー!!」

 

同時、スバルの攻撃も襲い掛かる。

 

必然と、ヴィオルは両手が塞がる。

だから――

 

 「ラケーテン……ハンマーーー!!」

 「づぅぅ――!!」

 

私が合図を送る必要は無かった。

ヴィータ副隊長がその一瞬の隙を突いて、ヴィオルに攻撃を繰り出した。

 

攻撃はヴィオルに当たる。そのまま私たちを隔離してるビル郡に直撃、滑り落ちる。

 

 「――やった?」

 

不意に口から言葉が出た。

 

と、突然ビル郡が溶けるように消えていった。

 

何で?

そう思うとコツンと私の後ろで音が鳴った。

 

振り向くとそこにあったのはヴィオルが持っていたスイッチ。

まぁ、ボロボロになって火花ふいてるんだけどさ。

 

とにかく、脱出することは出来たみたいだった。

 

 

 

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