魔法少女リリカルなのはStrikerS WitH 2nd 作:八神煌斗
「っ……」
目が覚めて、同時に起きた頭痛に目を細めた。
「目が覚めたんですか、相棒」
《グーテルモルゲン、マスター》
「……なんでアナザー?」
《私は無視なのか?》
次に見たのは俺の視界に入った何故かアナザー装備でレイラをその手に抱えてるアテナだった。
「あぁ、コレはシャーリーさんが直して――って、開口一言目がそれですか……」
いや、だって。
事の次第は一応全部覚えてるし、ココだって医務室だろ?
ん?
「なぁ、ココ六課じゃないよな?」
「はい。ここはアースラです」
「は――はあぁぁぁぁ!!?」
「うるっさい!」
「へぶ!?」
叫んだその瞬間、俺の顔に強い衝撃。
その場にうずくまる。
「見事に決まりましたね」
《人間の首はあんな角度に曲がるものだったのだな》
「いえ、あれは相棒だけですよ。まだまだですね」
《む、むぅ……》
こらこら、そんな会話してないで俺の心配をしてくれないのか?
メッチャ痛いんですけど……。
「コッチは頭痛が酷いんだから、静かにしてくれない」
シャッ、と音が鳴ってカーテンが開いた。
そこに居たのは頭を抑えた不機嫌な顔をしたユリア。
成る程、さっきのはアヴェか……。
「お、おぉぉ……俺だって病人だぞ、コラ」
「知るか」
「ゴメンナサイ」
え?何か凄く怖いんですけど……?
俺そんなに変なこと言ったかな?別にいつも通りだったと思うけど。
「はぁ、もう良いわよ。どうせ様子見に来ただけだし。ほら行くわよ」
暫く俺を睨んだ後、ため息を付きいつもの感じに戻ったユリア。
「行くって、どこにだよ?」
「ブリッジ。アンタの目が覚めてたらつれて来いって言われてたのよ。状況説明もしないと駄目だしね」
「あぁ、そういうことな」
アヴェで攻撃されて忘れてたけど、ここって六課じゃなくてアースラなんだよな。
一応映像は見えてたから分かるけど、JS事件の時みたいに大破した訳でもない。
それに、クロノまで居るみたいだし……俺だけじゃ予想も出来ないし、予想した所で意味も無い、か。
「分かった。直ぐに行く」
「了解、って言いたい所なんだけどね……」
そのまま医務室を出て行くとばかり思っていたユリアは表情を引き締め俺の方によってくる。
そして腰を曲げてベッドに座っている俺の視線に合わせて、こう言った。
「今から右手でアンタの右頬を殴るわ。受け止めなさい。3、2、1――」
「へ?づっ!?」
《マスター!》
「ナイスヒット!」
ユリアはその言葉の通り、俺の右頬をカウントを取った後殴った。
俺は何も言えない。いや、アテナがいい感じに壊れてるからとかそういう意味じゃなく。
それは状況が理解できなかったからでも、ユリアの行動の意味が分からなかったからでもない。
震える自分の右手をじっと見つめる。
――反応が……遅かった。
「ちっ……やっぱり、ね」
殴った本人は俺の状態を予想してたみたいで、腕を組んで苦い表情をしてる。
「おい、これ……」
「どうなの?ズレはどれくらい?」
言葉を遮り質問してくる。
俺はベッドの上で軽く体を動かして、確認を始める。
手、腕、肩、首、腰、足。
が、異常は特に見当たらなかった。
そのことをユリアに伝えると、少しホッとした表情になった。
「つまり、反射的行動が鈍るって事か……。良かった。それなら修復できる」
「ユリアさん。教えてください。どういうことですか?」
「俺も同意見。自分だけで納得してないで教えてくれ」
アテナと俺の質問にユリアは少し考えるそぶりを見せる。
が、それも本当に一瞬。
手を腰に当てて説明を始めた。
「簡単よ。第四拘束を長時間解いてたからその反動でしょ。ショートしてるのと同じ」
「ショートって……元通りに戻るのかよ?」
それが問題だ。
これからのことも有るけど、そもそも今回の事件だってまだ片が付いてない。
ここで離脱だけは、イヤだ。
「それは大丈夫。絶対に治してあげるから」
だけどユリアは俺の不安をよそに、いつも通りの軽口で帰してきた。
「ま、方法とかはまた今度。今はブリッジ」
ブリッジの扉が開き、俺をユリアは中に入る。
アテナはずっと肩の上。
「つれてきたわよ~」
中にはクロノとはや姉。そしてシグナム姉さんが居た。
ユリアは階級とか関係ないと思ってるだろう、あの態度。
俺は一応皆の前だから敬礼をしておく。
が、クロノが直ぐにいつも通りで良い、と言ったので直ぐに崩す。
「なら……早速だけど、何でアースラ?」
「それなんだが、先日例の襲撃事件、僕が受け持つことになった」
「アングたちの目的は海鳴のホールやから、アースラで次元移動することになったんよ」
クロノに続いてはや姉が説明をしてくれる。
まぁ、アースラの理由は分かった。
襲撃事件、って事はつまりアングたちを追うことだろ?
クロノの戦艦、クラウディアはアングたちがパクったまんまだし足が無かったと。
アースラなら稼動も十分出来るし、直ぐに動かせたってところか。
……うん?
「ちょっと待って。なら何で俺たちまで?クラウディアスタッフで十分だろ?」
なんで俺たち六課メンバーまで出て来てんの?
担当はクラウディアスタッフだろ?
ココから見ても何人かのスタッフは六課隊員だし……。
「クラウディアの武装隊も優秀やけど……流石に心持たない、というのが本局も考えらしいんよ」
「まぁ、恥ずかしながら僕も同意見なんだが……」
「あ、成る程」
「それに、六課も例のウイルスのせいでまともに稼動できないしな」
成るほどね。それでに六課の一部だけアースラに搭乗、残りは六課の普及作業中ってとこか。
ん~。大体見る限り、前線メンバーと管制室メンバー数人ってとこだな。
「あと、ココには居ないがユーノも後で合流予定だ」
「ユーノさん?なんで?」
聞くとマジックホールはあまり知られておらず、クロノでさえ知らなかったらしい。
となるともしもの時の為に知識がある人物が必要。
で、無限書庫員に矛先が向いたらしいんだけど……デスクワークが中心の人ばっかり。
ユーノさんを除いて既知人は全員拒否したらしい。
よって、本局はしぶしぶユーノさんをこっちに遣したらしい。
……今頃他の部隊はてんてこ舞いになるだろうなぁ。
いや。ユーノさんも合流する為に走り回ってるだろうけど。
「あ、ならアースラが向う所ってもしかして……海鳴?」
俺が聞くと三人とも頷いた。
やっぱり。
「明日、ミッドを発つ予定だ。それまでは体を休めておけ。先も色々あったみたいだしな」
「あ、その事なんだけど、私から一つ」
クロノに続いて発言したのはユリア。
「少し医務室貸して欲しいのよ。コイツ、厄介なことになってるから」
「厄介?」
「ユリア!?」
つい大声を出してしまった。
ココで普通にしていたら何も無かっただろうけど、俺の大声で皆いぶかしんだ表情になる。
「あのね、私よ家族してるはやてには言っておいた方が良いでしょうが」
「そういう問題じゃねぇ!」
何を言うのかと思ったら……。
コイツ、一番言って欲しくないことを一番知られたくない相手に言いやがった。
「ウィズ、どういうことや?」
「教えてもらおうか。現状の戦力を把握しておくのも、私たち上の仕事だ」
「ぬ、ぬぅ……」
二人の威圧が凄い。特にはや姉。
向こうサイドのクロノさんまで震えてますよ!?
結局、威圧に負け全てを話したのでした。
――で。
例の如く俺たちの周りの空気が重くなりました。
だからイヤだったんだ。
「大丈夫よ。この程度だったら私が治せるから」
「本当か!?」
この空気の中、ユリアが言った。
さっきも言ってた気がするけど、俺は思いっきり食いつきました。
「コレくらい出来なくて守護騎士なんて名乗らないわよ。……コレを使えば、治せるわ。ベガ」
短くそう呟いて、ユリアの右手が灰色に輝きだす。
そして俺は思い出していた。俺が体を取り戻す際にも、ユリアの手はこうやって光っていた。
光が収まって、ユリアの右手には指だしの黒いグローブが付けられていた。
あれ?でもユリアってデバイスは足引っ張るから使わないって言ってただろ?
「あぁ、あれウソ。どれだけ分割思考できても、補助が有る事に越したことないし」
なんてシレッと手を振りながら言いやがった。
「なら何で使わへんかったん?襲われてた時とか」
「ベガ……私のデバイスは元々あるデータが9割以上を占めてるのよ。だから」
「デバイスとしての役目を果たさない、ということか」
「正解」
シグナム姉さんに軽く微笑んで返すユリア。
「で、そのデータの正体が――」
「ウィズを治す、治療魔法、ってことだな?」
「まぁ、魔法って言うよりプログラムだけどね」
と、フィンガーグローブを付けている右手を開いたり閉じたりしながら答えるユリア。
別にいいけどよ、プログラムって言うな。
「で、医務室は借りていいの?」
「構わない。好きなだけ使え」
「ありがと。あ、シャマルも借りるわよ?手伝えそうなの彼女だけだし。じゃ」
そして俺とユリアはブリッジを出て早速医務室へ向かう。
「そういえば俺のはどうやって治すんだよ?」
「覚えてる?私がコレで頭掴んだの」
そういえば頭の隅に残ってたのを思い出し、俺は素直に頷く。
「そういうこと。あれで体を調整する」
「ふーん。まぁ、俺には良く分からねぇから任せる」
「あたりまえ――」
「待て」
軽く方法を聞きながら歩いていると後ろから声をかけられた。
声の主はシグナム姉さんだった。
その声にユリアも足を止め、姉さんの方を見る。
「なに?」
「私はまだ理由を聞かせてもらっていない。教えてもらおうか?」
「……理由って、あのウィズが偽者って話?」
シグナム姉さんは無言で頷く。
これでまた少し、この場の雰囲気が重くなった。
「簡単な話よ。ウィズ、アンタ脳みそだけで生きられるって知ってた?」
「そういえばアイツがそんな事言ってたなぁ……ん?どうしたの?」
俺が答えるとシグネム姉さんが少し驚いたような、納得したような、複雑な顔をしていた。
ユリアはユリアで、こういうことよ、とか言ってるし。
「ウィズが知らない情報を、持ってる訳無いでしょう?そもそも、シグナムだって噂程度なのに言い切ってたしね」
「……それだけで偽者と判断したのか?」
「まさか。他にも肉体が追い付かない程の運動能力とか、シグナムの事を烈火の将って呼んだり色々あったけど……それでも良く見て7:3って所でしょ。情報に限っては色んな所から入って来るんだし」
「なら何故?アイツが本物だったら――」
「関係ないわね」
何度も食いつくシグナム姉さんに、ユリアは尚も軽く返す。
「私はコッチのウィズを守るって決めたの。あのままだったらコイツが押しつぶされててもおかしくなかったし」
「……ならあのウィズは――」
「消したわ。今からする治療もアイツを消す作業じゃなくて、ウィズの体の為だし」
まぁ、目が覚めたのは少し意外だったけど。といって俺の方を見るユリア。
「それに、シグナムも覚悟は決めてたんでしょう?」
「……あぁ」
今度はあの目を細めた挑発的は目でシグナムを見る。
その問いに姉さんは頷いた。
「あれが本物だったとしても、私にとっての本物はそちらだからな。……迷いが無かったと言えば嘘になるが」
「それが正しいわよ。私だって最初は消して良いか悩んでたし」
お互いため息と付く。
「ま、そういうことよ。納得した?」
あぁ、とシグナム姉さんは頷き、そのまま戻っていった。
「よかったわね?」
「……あぁ」