魔法少女リリカルなのはStrikerS WitH 2nd 作:八神煌斗
アテナ side――――――――――――――――――
私はブリッジに入って、モニターに写る状況に一瞬理解が追いつきませんでした。
はやてさんたちの目の前にあるアング達以外の三つの影。
なのはさんに似た短髪の赤と黒の服を纏った女性。
フェイトさんに似た蒼髪の青い装飾の多い服を纏った女性。
はやてさんに似た漆黒衣服を纏った女性。
「ま、マテリアルだと……?」
クロノさんかがそう呟きました。
疑問系に成っていますが……その理由は良く分かります。
なぜなら彼女達の記憶にあるマテリアルは9歳の自分達を模していた筈ですから。
今、あそこに居る三人は明らかに今のはやてさんたちと同じ年齢、10台後半でしょう。
『驚くことはありません。コレは、僕が欠片事件を元に作った模造品でしかありません』
解説するようにアングが口を開きました。
そして……アング以外の二人とマテリアルたちが構え――
『ですが……能力は本物以上ですよ!!』
爆ぜた。
先行を取ったのはマテリアル。星光の殲滅者。
爆ぜた次の瞬間、自信に急ブレーキを掛け、自身を停止させた。
『っ!みんな、下がって!』
迎え撃つのはなのはさん。
号令を掛け、他の皆さんが下がる前にレイジングハートさんを構えました。
『パイロ――……』
『アクセルシューター ――……』
二人の頭上に無数モノ桃色のスフィアが生み出された。
『シューター!』
『シュート!!』
同時に打ち出される二つのスフィア。
それは共にぶつかり合い、爆煙を上げ消滅します。
『ははははは!僕は強いぞーー!』
『っ!』
そんな少しバカな声が聞こえたと同時、爆煙から尾を引いて青い陰が飛び出す。
それに反応したのはフェイトさんでした。
少し下がっていた場所から一番に飛び出して互いにぶつかり合いました。
だけど一瞬、フェイトさんと雷刃の襲撃者は直ぐにお互い間を取り合った。
『電刃衝(でんじんしょう)!!』
『ブラズマランサー ――ファイア!!』
なのはさんたちと同じように、二人は互いに射撃魔法を打ち出し、相殺しあいます。
ですがココからは違います。
『凄いぞ強いぞカッコイイ~!』
『くっ!』
二人は再びぶつかりあい、互いの体から出る電撃を残して戦闘を開始しました。
『私は、貴方を超える……!』
『っ!』
そしてなのはさんの方もフェイトさんたちのように戦闘を開始しました。
『ふん。久しぶりだな塵芥共』
そんな中、他の二人と違う雰囲気のマテリアル。闇統べる王。
先の二人の様に戦闘を仕掛けるのではなく、はやてさんたちに話しかけました。
『久しぶり……記憶があるのか?』
シグナムさんが聞きます。
『勿論だ。うぬらの事は一瞬たりとも忘れたことは無かったわ!』
『ま、本当はアングのヤツが土地の記憶を頼りに複製したヤツだからな。その当時の記憶も一緒に複製したんだろう』
『む。違うぞ。我が記憶を持ったままなのは我が強いからだ』
『ふっ。そうか』
隣に居たエストラさんが詳しく説明をします。
私たちは納得しました。が、闇統べる王は納得しなかったようですね。
『んなこたぁどうでも良いんだよ』
会話を遮り前に出てきたのはヴィオル。
その視線に写っているのは……ヴィータさん。
『よぅ。久しぶりだな。譲ちゃん』
『私はもうそんな年じゃねぇって言ってんだろ!!』
『そりゃ悪かった』
悪びれも無い様子で謝るヴィオルの右手にはデバイスが既にセットアップされています。
ヴィオルは後ろに居るエストラに顔だけ振り向く。
『もう良いか?あの譲ちゃんとも決着決めてぇんだよ』
『我はアイツさえ残しておけば文句は無い』
闇総べる王が見るのははやてさんです。
どうやらマテリアルたちは少なからず元となった皆さんにう恨みの様なものが有るみたいですね。
『俺も。コッチにも用事があるヤツが居るみたいだからな』
『気づいていたか』
『それだけ殺気を向けられて気づかないわけが無いだろう』
会話を交わすのはエストラとシグナムさん。
『お前が用事があるのはアングじゃないのか?』
『貴様を倒すと、約束したからな』
『それは、ユリアか?』
『あぁ』
フッとお互いに笑う。
けれど、その視線は決して相手を逃しません。
『主』
『はやて』
二人ははやてさんに声を掛けました。
その意味は間違いなく、言って良いのかの確認の意味。
『ええよ。二人共行って』
そして同時。
シグナムさんとヴィータさん。エストラとヴィオルはそれぞれの魔力光を残してその場から消えました。
『シャマル、ザフィーラ。二人もシグナムたちの援護に行って』
『はやてちゃん!?』
はやてさんの発言にシャマルさんが驚きの声を上げました。
当然です。こちらでもクロノさんが声にならない声を上げました。
はやてさんの言ってる事は、一人でマテリアルを相手にすると言っているのですから。
『大丈夫や。向こうも私と同じ魔法しか使えへんねんから条件は一緒や。いや、リィンも居るからこっちの方が有利やな』
『はいです!』
そう言ってシャマルさんたちに微笑みかけるはやてさん。
はやてさんの言葉を聞いてシャマルさんたちも状況が分かったようでした。
確かに使う魔法さえ間違わなければ、マテリアルとはやてさんの条件は同じ。
対してシグナムさんたちは今の自分たちよりランクの高いSSランクの相手。
はやてさんは悪く言えば固定砲台。
なのはさんたちみたいに飛び回って魔法の打ち合いをする様な魔道士ではありません。
だからこそ取れる手。
確かに、ここはシグナムさんたちの援護に回ったほうが良いかも知れません。
『な?うちは大丈夫やよ』
『直ぐに戻ってきます……』
『それまで、持ちこたえてください』
少しの間はありましたが、シャマルさんとザフィーラさんも私と同じ答えに行きついたようです。
非常に渋い顔をしていましたが、お二人の援護に回りました。
そして、なのはさんやフェイトさんの戦闘も、激化して言っているようでした。
another side――――――――――――――――――
「随分余裕なのだな塵芥」
「さっきから人を塵芥塵芥って……少しバカにしすぎちゃうんか?」
残った二人が言葉を交わす。
二人の周りには何色もの魔力光が飛び交い、輝く。
そんな中で全く同じ容姿をした二人が向かい合う様子は、酷く幻想的だった。
「塵芥に塵芥と言ってなにが悪い。ふん。うぬが我のモデルと思うとヘドがでる」
そう吐き捨て、マテリアルはその手に持つエルシニアクロイツの切っ先をはやてに向ける。
「構えよ。その軟弱な精神ごと、我が滅ぼしてくれる」
「軟弱って……言ってくれるなぁ。これでも平均くらいはあるつもりやよ――リィン」
「ハイです!」
「ユニゾン――イン!」
はやてとリィンの声が重なり、眩く輝きだす。
光りが収まったとき、そこにリィンの姿は無く、代わりに髪がクリーム色に変わったはやてが居た。
そして再び睨み合う。
「他の者の力を借りる。やはりうぬは軟弱者だ」
「……もうええ。ほなアンタに勝って証明したる」
マテルアルと同じようにシュベルトクロイツを向けるはやて。
一瞬の沈黙。
そして――。
「バルムンク!」
「ドゥームブリンガー!」
戦闘が開始した。
互いに打ち出された剣のスフィアはぶつかり、砕けあう。
瞬間、二人はスフィアが砕けた場所を基点に回りだす。
「破壊の剣(つるぎ)、アロンダイト!」
「っ!はやい――っ!」
マテリアルから打ち出されたのは構えから発射までほぼタイムラグ無しの砲撃魔法。
はやてはその速度に驚きつつも砲撃を急上昇して交わす。
「穿(うが)て!ブラッディダガー!!」
「遅いわ!」
通常、視認すら難しい速度のダガー。
それを視覚から撃たれた筈なのに、マテリアルは避けるでもなく、シールドを張り防ぎった。
そして再び訪れた沈黙。
「くくくっ。うぬの力はその程度か?」
「くっ……」
見下げるマテリアルに、歯を食いしばるはやて。
立った数度の攻撃。お互いに傷を受けていない。
だが――それでも実力の差は歴然だった……。
――同時刻
「パイロ……シューター!」
「アクセルシューター……シュート!!」
共に射撃戦となっている戦場。
なのはも、そのマテリアルも交わすのは本当に最低限。
その殆どは打ち落とす事で対処していた。
「くっ――!」
そんな時、一瞬なのはさんの肩に一発のスフィアが掠った。
その隙をマテリアルが見逃す筈なかった。
「ルベライト!」
「っ!」
一瞬の隙を付き、マテリアルはなのはにバインドを仕掛ける。
が、いくら体制を崩しても、そんなものに掛かるなのはではない。
その場から体を引く形で交わす。
――が、それこそが罠だった。
マテリアルは自身のデバイス、ルシフェリオンを砲撃モードに変え構えていた。
「ブラスト――」
「っ!レイジングハート!」
《Buster(バスター) Mode(モード)》
すぐさま反応をしてレイジングハートのモードを変えるなのは。
「ディバイーン――……」
「ファイアァァーー!!」
「バスタァァーー!!」
同時に打ち出された桃色の砲撃は、ぶつかり合い、拮抗する。
が、それも徐々になのはさんが押され始めた。
当然といえば当然だった。
打ち出すまでのチャージ時間はなのはが断然下回っていた。
序所に押し返され始めるなのはの砲撃。
だが、なのははその程度の逆行はいつも打ち破ってきた。
「はああぁぁぁ!!」
ディバインバスターに更に力が入り、押し戻されていた砲撃が再び拮抗する。
と思った瞬間。
二つの砲撃の接点を中心に爆発が起きる。
煙から尾を引き飛び出してくる二人。
二人共構えずそこに飛んでいます。が、なのはは肩で息をしていた。
「何とか耐えた、という所ですか?」
「ま、まだまだだよ。ね?なんでこんな事をするのかな?」
自分の呼吸を整える為……いや。
なのははそんな風に考えてはいないのだろう。
ただ単純に、お話がしたいだけ。
分かり合えるのなら、例え相手が誰だとしても分かり合おうとする。
それがなのはだった。
「なぜ、と問われれば簡単です。貴方を超えたい。ただそれだけです」
「私を……超える?」
首をかしげるなのは。
「これでも、私はオリジナルである貴方に敬意を示しているつもりです」
「そ、それなら――」
「ですが」
何かを言おうとしたなのはを遮り、更に口を開くマテリアル。
「だからこそ、私は貴方を超えたい。貴方を超えて、自身の存在をより確固たるものにしたい」
「そんな事しなくても!貴方は!」
「そうでしょう、貴方はそう言ってくれるのでしょうね」
目を閉じて軽く頷くマテリアル。
そして静かに目を開け、再び構える。
「これは私の我侭なのでしょう。その我侭に……付き合ってもらいます!!」
「――っ!」
そして再び、二人はぶつかり合う。
――夜はまだ、始まったばかりだった。