魔法少女リリカルなのはStrikerS WitH 2nd 作:八神煌斗
another side――――――――――――――――――
バチンッと、電気がぶつかり合った時の様な音が漆黒の空に鳴り響いた。
その音源は二閃の雷光がぶつかり合っていた音だった。
いや、それは電光などではなく、フェイトとそのマテリアルだった。
互いのデバイス、バルデッシュとバルニフィカスで鍔迫り合いになる。
二人の体からは電気が弾け合い、弾ける様な音が鳴り続く。
「お前、凄いな強いな!」
「なんでこんな事を……まだ闇の書を復活させたいの!?」
そんな中でフェイトはマテリアルに声を掛ける。
「そんなの関係ないっ!」
「え――?」
瞬間、マテリアルがフェイトを弾き、共に距離を取った。
「光翼斬(こうよくざん)!」
「くっ――!ハーケン、セイバー!」
同時に打ち出された二つの雷を纏った光輪。
そては互いに刻み合い、その場で弾けるようにその場で消滅する。
「関係ないって……なら何で戦うの!?」
「イライラするからだ!」
「……へ?」
あまりに単純で簡単な、意味の分からない答えにフェイトは一瞬呆ける。
だがマテリアルはそんなのお構いなしにエッヘンと胸を張っている。
自分と同じ容姿のマテリアルがとるそのポーズに少し恥ずかしくなったのは秘密。
「ど、どういうこと?」
「何だ分からないのか?君はアホだな」
「む……」
何故か分からないが、マテリアルの一言にカチンと来たフェイトは顔をしかめた。
そしてマテリアルは説明してやる、と言ってバルニフィカスを下げた。
それは絶好の反撃のチャンス。
だがフェイトは攻撃をせずに、その言葉に耳を傾ける。
「何故か分からない。けど、君を見ていると酷くイライラする。それも白い魔道士以上に」
「白い魔道士……なのはのこと?」
「上手くは言えないけど……僕の魂がこう叫ぶんだっ!」
一言、そう叫び再びバルニフィカスを構え――……。
「君を殺して我が糧とすればこの不快感も消えるはず、と!」
「――っ!」
まさに弾丸。
フェイトに向かって飛び掛った。
「僕はあの暖かな闇へ帰るんだ!君は落ちろ!僕は――飛ぶんだ!」
「そういう訳には――行かない!」
そして二閃の雷光は再び交差する。
・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
「でりゃあぁぁぁ!!」
「まだまだあぁぁぁ!!」
二色の赤がぶつかり合い、鮮血と真紅の魔力が本流する。
一方は破壊の為、一方は迎え撃つため。
迎え撃つ盾は何度も破壊を防ぎきっていた。
だが、それは何の皮肉だったのか。
その盾、鮮血の盾こそが本当の破壊、そして破壊の鉄槌こそが守る為にぶつかり合っていた。
「どうしたガキ!そんな力じゃ俺には勝てねぇって……わかってんだろぉがぁ!」
「んな事、関係あるかぁ!」
鉄槌の所持者、ヴィータは、鮮血の盾ごとヴィオルを弾き飛ばす。
「ておらあぁぁぁ!!」
「遅えぇ!!」
弾き飛ばされた先に待ち構えていたザフィーラがカウンターの要領で自身の拳を繰り出す。
常人では反応不可能と思える絶好のカウンター。
だが――ヴィオルの反射速度は、雷に寄って底上げされる。
回避負荷のカウンター、それさえもヴィオル雷を体に走らせながら手で受け止めた。
「――づ!?」
「んぁ?どぉした?」
「くっ!」
刹那、ザフィーラの顔が歪み、ヴィオルから距離を開いた。
「ザフィーラ!?」
その様子をおかしく思ったヴィータがザフィーラに近寄る。
そしてその表情が驚きに染まった。
ザフィーラの拳が焼けていたから。
焦げてるんじゃない……焼けていたのだ。
ヴィータは幼き見かけとは裏腹らに歴戦の騎士である。
だからこそ判断が出来た。
これは雷などではなく、炎や熱系統の焼け方だと。
「テメェ!何しやがった!」
「何しやがったって……そっちが飛び込んできただけだろぉが」
デバイスの持っていない左手を顔の辺りに持ってくる。
手の周りは揺らいでいた。
その意味を、二人は直ぐに理解した。
「――熱……。変換資質っ」
ユリアが言っていた事をヴィータ、ザフィーラと思い出していた。
ヴィオルは雷と炎、二つの変換資質を持っていると。
だが碌な魔法も使えないという事も。
考えてみれば予想できたことだった。
雷と自身の体に作用する使い方をするなら、炎もそれに準じる何かだということは。
つまり、炎の使いからは自身の体温の底上げ、又は体からの尋常じゃない程の発熱を起こすという事。
「さぁて……休憩は終わりだぁ!!」
「っ!アイゼン!」
《――Raketen(ラケーテン) form(フォーム)――》
「ラケーテンハンマー!」
蒼の魔力光を残し、再び鮮血と真紅の赤がぶつかり合う。
・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
ヴィータたちと少しはなれた場所。
そこでも二人、烈火の騎士と湖の騎士は戦っていた。
「シグナム!前から五発!」
「っ!レヴァンティン!」
シグナムが叫ぶと、レヴァンティンからカートリッジが一発吐き出される。
「はあぁぁぁ!!」
シュランゲとなったレバンティンを前方に、壁のように連結刃を巡らせる。
と、巡らせた連結刃のあちこちで爆発が起こった。
「ほぉ。防いだか。幕を張っている訳でも無いな……」
シグナムたちに向けていた手を下げながら、関心するエストラ。
「正確に場所を把握……。どうやった?」
「ネタばらしをする気は無い」
「それもそうだな」
実際、シグナム一人ではエストラの無色の魔力を感知は出来ても、正確に防ぎきる事など出来なかっただろう。
それが出来ているのは、一重にシャマルの活躍のお陰だった。
シャマルの風の力。
常に戦闘区域(フィールド)に微弱な風を張り巡らせる。
そして風が断ち切られればそこから魔力弾が襲い掛かってくるということ。
つまりはユリアの専用感知魔法、フィールド・センスの風バージョンと言う事だ。
だが……この方法がフィールド・センスに比べ、かなり劣るものであった。
普段使う風の足枷や風の護盾のように一瞬や、一箇所に留めるならそれ程でもない。
が、戦闘区域(フィールド)全域に常に魔力を一定に維持、測定し続けなければならない。
シャマルにはそれ程の高レベル分割思考(マルチタスク)は持っていない。
それは彼女が戦闘に不参加することと同義だった。
それに加え、シグナムは常にシャマルに意識を傾けていなければならない。
これがヴィータやザフィーラ、又は普段のシャマルなら影響は無かっただろう。
だが、今のシャマルは悪く言えば的だった。
動けはするが、どうしても普段に比べ反応が鈍る。
たとえどこから攻撃が来ると分かっていたとしても……。
「それなら――俺自らネタを探るまで!精々、ボロを出さないように気をつけろ!」
「やれるのもなら!」
アテナ side――――――――――――――――――
「まずい……」
私の隣でクロノさんが呟きました。
見るからに劣勢。
確かに現状、見る限りでは互角の勝負でしょう。
ですが、時間の問題なのも明らかでした。
それも当然といえば当然なのでしょう。
なぜなら、はやてさん達にはリミッターが掛かっているのですから。
「クロノさん、みなさんのリミッターを――」
「駄目だ……。僕に、その権限は既に無い……」
奥歯をかみ締めながら答えるクロノさん。
聞けば既になのはさん達はクロノさんの分のリミッターを解除していたそうです。
リミッター解除の権限を持つ後見人、カリムさんも分も既に解除しています。
ここで本局に申請していては時間が足りません。
「あれ?提督、六課からメッセージが……」
「六課から?こんな時に?」
私も首を傾げます。
確かに六課は私たちが今戦闘中だと言う事は知らないでしょう。
ですが、今はアングのウイルスでまともに機能していない筈。
話ではそんなに簡単なものでは無かったはず。
どのような経緯で感染するかも知れませんのに……まさかっ!?
「駄目だ!そのメッセージを開くな!」
クロノさんも私と同じ答えに行きついたようでした。
「……え?」
ですが……既に手遅れでした。
普段ならこんなミス、誰もしなかったでしょう。
管理局のエースたちが押されている。
それが僅かなミスを引き寄せてしまったのでしょう。
メールが開かれると同時、一つのモニターに写った人物。
――アング。
『メッセージを受け取ってくれたようで、ありがとうございます』
「やはりお前か……」
アングの背景は夜空。そして背後には例の白い細長い楕円形のモノ。
それだけで、今映る映像がライブ映像と言う事が分かります。
『提督のあなたの事です。このメッセージが何なのか、分かりますよね?』
「…………」
モニター越しに睨み合う二人。
いえ、実際に睨んでいるのはクロノさんだけで、アンウはあの不気味な笑顔を浮かべていました。
『本当はもう少し話したいんですけれどね。僕にも準備があります。ここで――』
「ま、待て!!」
『さようなら、クロノ提督』
クロノさんの抑止も全くの意味を待ちませんでした。
アングは笑いながら手を振り、モニターは切られました。
そして艦内は赤く点滅し、鳴り響くアラームの音。
ダンッ、とクロノさんが目の前のデスクに拳を振り下ろしました。
「ウイスル……アングっ!直ぐにプロテクトを強化しろ!艦のコントロールを奪われるな!」
「駄目です!感染速度が速すぎて……対処仕切れません!」
「くそっ!」
デスクに振り下ろされた拳が更に強く握り締められる。
まさに絶対絶命です。
なのはさんたちの劣勢。アースラのウイルス感染。
この状況からの逆転は厳しい。
それはデバイスである私にも明確でした。
「くそっ……どうすれば……」
「なに、暗い顔してるのよ?」
「艦長がそんな顔してたら駄目だよ」
「……え?」
いつの間にか、ブリッジの扉の前に二つの人影がありました。