魔法少女リリカルなのはStrikerS WitH 2nd 作:八神煌斗
「さぁ、いくわよ!!」
ユリアがそう言い、俺の頭をベガをつけている手で鷲掴んだ。
「――access(アクセス)!!――」
「ずぅっ!!?」
その瞬間、体中を痛みが駆け抜ける感覚が走り抜けた。
あくまで感覚、実際に痛んでいる訳じゃないのに……!!
だけど、そんな中でも何故かどこか俺の頭は冷静だった。
「づっ――づあぁあぁぁあ!!?」
「少しは我慢しなさいよ!スバル、足しっかり押さえなさい!!」
「う、うん!」
スバルが俺の足を掴む力を強めた。
我慢しろって言われても……コレは、無理っ!!
掴まれてる所、頭から全身に向けて痛みが走ってる感覚。
この激痛は頭だけの筈なのに……どうしても暴れてしまう。
「があぁぁぁあぁ!!」
どうしても叫んでしまう。
「あぁもう、うっとうしい!エリオ、来なさい!!」
「は、はい!」
俺が動きまくってイライラしているのか、後ろで大人しくしていたエリオを怒鳴りつけ、自分の隣に呼んだ。
「あ、あの……なんでしょうか?」
「コイツ、眠らせて。大丈夫、500V位あれば良いから」
「えええ!?」
「大丈夫って、ユリアあんた何言ってんの!!?」
エリオが驚きの声を上げ、ティアナが突っ込みを入れる。
その500Vがどれ位かわかんねぇけど、何となく三桁いってる時点でマズイと思うわけですよ。
「そうですよ。さすがにその方法は……」
キャロ。その言い方だと違う方法なら良いって言い方に俺は聞こえるよ。
でも俺を庇ってくれてるんだよな。ありがと――。
「大丈夫よ。首元に一瞬バチッてやるくらいだから」
「あ、それでしたら……」
キャローーーー!!?
それでしたらって何!?大自然を少しとはいえ一人で生き抜いた精神力は並じゃないって事!?
コレくらい日常茶飯事だったの!!?
「ほら、早くやりなさい。いい加減二人もキツそうだし」
確かに、二人共だが特にティアナの消耗が激しいっぽい。
さっきから手は結構動くから。
「で、では……。ウィズさん、行きます!」
そして俺の首元にエリオの手が添えられ――。
「アバババババババ!!?」
し、死ぬ!これなら死ねる!
エリオ君!?君は何をやってるのかな!!?
「こらエリオ!電圧弱い!それだとただの拷問よ!」
「あ!ス、スミマセン!」
あぁやっぱりか。
今のはかなり辛かったよ……。
そんな事を考えながら俺の意識は次の瞬間、刈り取られた。
「――で、なんなんだよ。これ?」
気づいたら俺は、どこか廃れた所に立っていた。
雰囲気的には古城とか、そんなのがあってる。
そう考えるとここは……エントランスとか、そんな所だろう。
円形の部屋は壁もあちこち崩れ落ちているが、崩れた隣の空間が何も見えない。
遥か高い天井も同じ。抜けているクセに空が見えない。
「こういうのって精神の中~って流れなんだろうけど……コレは?」
城とかはもう突っ込まない。前は何も無い空間だったとかいうツッコミもなし。
どうせ俺がいくら考えてもわかんねぇし、アテナも居ないんじゃそれが正解かもわからない。
だけど、どうしても気になるものが俺の目の前に一つ。
「どう見ても……扉、だよな」
そう扉。でもその扉は鎖で硬く閉ざされている。
いくつもの数え切れないほどの切れた鎖。
だが、それ以上に目立っているのが比べるまでも無い巨大な五本の鎖。
下から数えて切れた鎖が二本、三本目はあちこち切れていて繋げているって表現がピッタリだ。
そして残りの二本の鎖で封じられている。
ここまで確認して、何となく分かった。
「それがなんなのか気になるか?」
「――っ!?」
背後から声。
俺は前方に跳びながら振り向く。
「……オレ?」
「よう、俺」
右手で作ったチョキを動かしながら、ヘラヘラ笑うオレがいた。
違うところと言えば髪型を掻き上げている、と言う事だろう。
「あー……そう身構えるなって。そんなオレに勝ったらココから出してやる~、なんてお決まりパターンじゃねぇから」
「アホか。それならこの状況がまずお決まりだろぉが」
よくあったら堪ったモンじゃねぇけど、良く見るシュチュエーションだし。
と言うか、俺自身でも二度目だからなぁ。
「それもそうだな。ま、手は出さぇから安心しろや」
手をヒラヒラさせながら近くにあった瓦礫に腰を下ろすオレ。
「俺に手を出さない?ならワザワザ出てきやがった?」
コイツの口調、掻き上げた髪。
その様子を見ながら俺は考える。
コイツはあの六課での時にアングが俺の中に創りだしたオレだろう。
ユリアは消したって言ってたの筈だけど……。
「だから身構えるなって。そうだな……単純に話がしたかった」
「話?」
「あぁ。今までは話したくても、話せなかったからな」
「今まで?」
その言い回しに少し引っかかった。
コイツが俺の体に創られたのは一週間程前。
だけど今の言い回しはもっと長い期間みたいな……。
「そう突っ立ってないで座れや」
「……いやだ」
「はぁ……。あっそ」
座らない俺に対して、オレはため息をついて膝に肘を付いた。
「まずは……そうだな、オレって言うのも面倒だし、ダミーとでも呼んでくれれば良いや」
「ダミ?」
「おいこら、それだと駄目みたいな発音になるだろうが。ちゃんと伸ばせ。ダミー」
呆れたように言うダミー。
……確かに今のは悪かったかも。
「ったく。……でよ、早速だが、お前の後ろにある扉。何か分かるよな?」
「……俺に掛けられた封印、だな?」
「へぇ。だとしたら、その先にあるんだ?」
多分、小さい鎖が補助封印。
デカイのが拘束封印ってところだろう。
なら、この奥にあるのが俺の本来の魔力、そして――。
「封印の能力」
「ご名答」
ゆっくりとした拍手をしながらいうダミー。
「俺からも一つ聞かせろ」
「聞かせろって、どっちかってーと今のも俺が答えてやったと思うんだけど?」
うるさい。
俺も言ってから気が付いたんだ。
「テメェが何でココに居る?」
「しかも行き成り確信かよ。ツマンネェ」
「いいから答えろよ」
ゲンナリし、頭を垂れるダミーに俺は答えを急かす。
はっきり言う。
感覚なんてものは無ぇけど、他の人格が俺の中に居るなんて気持ち悪い。
それに……ユリアはコイツを消したって言ってた筈だ。
「はぁ。んなの一つしかねぇだろぉが。消えてなかったんだよ」
「な――っ!?」
「ま、ユリア……だっけ?アイツも最初は驚いただろうけど」
驚きが隠せない。
最初はってことは、ユリアはもう気づいてたって事だ。
「俺の想像だけどよ、ユリアが消したのはアングが俺に注ぎ込んだ部分だけだったんだろ」
まただ。コイツの言い回しが頭に引っかかる。
信用なんか出来ねぇし、してねぇけど……この言い方はまるで……。
「あ、ついでにお前の不調もオレのせいね」
「はあぁぁ!!?」
「色々させてもらいました」
あっけらかんと、コイツある意味今回一番の問題をサラッと言いやがった!
ってか、お前が原因か!?
「なんでそんな事を!?」
「だから話がしたかったからって言ってんだろ。俺の合図にユリアも気づいたみたいだし」
合図。
俺の体の不調は俺をココに呼ぶための合図?
なら、ユリアはダミーの存在に気づいてて……それで嘘を付いた?
「そう睨むなって。ほれ、コレ見ろ」
「あん?――っ!?」
そうしてダミーが俺に見せたのは――消えかかって、透けた右足。
その異様な光景に、俺はさっきまでとは別の驚きを覚えていた。
「外から俺を消しに掛かってるんだろ」
外から……ユリア!?
「だから時間がねぇ。率直に言うぞ。その鎖、断つ勇気がお前にあるか?」
無意識に俺の後ろにある例の扉を見る。
鎖を断つ。
その意味はただ、封印の能力を使用可能になるだけじゃない。
トウギと戦った時の……あの溢れそうな魔力をこの身に受け続けるということ。
「簡単に言ってやる。この空間はテメェの魔力許容量と思え」
「ここが……」
「そしてその扉の向こうにはココに納まり切らないほどの水が溜まっている。分かるな?」
収まりきらない水が、ここに流れ込んでくる。
それは溢れ出すなんて生ぬるいものじゃない。
ココが……俺が、内側から壊される。
「もしその度胸が無いなら……テメェが消えろ」
「――っ!」
ダミーのその言葉の重み、その威圧に怯んでしまった。
今の一言だけで分かる。
コイツには……その覚悟がある。
はや姉の為になら、いつでも死ねるっていう覚悟が……。
「おら、どうなんだ。度胸、あんのか?」
ダミーが動かない。
動かないけど……俺に近づいてきている気がする。
それだけアイツに押されている。
――まて。思い出せ。
俺は、この空気を、この感じを一度味わってるじゃないか。
「俺にそんな度胸はない。そんな覚悟、いらない!」
「……なに?」