魔法少女リリカルなのはStrikerS WitH 2nd   作:八神煌斗

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41.リミッター解除

 

アテナ side――――――――――――――――――

 

 「くそっ……どうすれば……」

 

 「なに、暗い顔してるのよ?」

 「艦長がそんな顔してたら駄目だよ」

 

 「……え?」

 

いつの間にか、ブリッジの扉の前に二つの人影がありました。

 

 「母さん、エイミィ!?」

 「急に広域結界が展開されたから、もしかしたらと思ったけど……やっぱりね」

 

クロノさんが慌てて二人に駆け寄ります。

 

 「な、なんでこんな時に!?いや。そもそもどうやって……」

 「私が何年ここの艦長やってたと思うの?それくらいチョロいわよ」

 

グッと親指を立てて言うリンディさんは恐ろしく今のこの場に似つかわしくありません。

さすがのクロノさんも少し呆れています。

というかリンディさん、法に触れるようなことしてないですよね?

 

 「さてさてクロノ君。もしかして今って例のウイルスに感染してるっぽい?」

 「あ……あぁ」

 

そして今度はエイミィさん。

手の運動をしながら向かうのはオペレーターの席の一角。

そこに座っていた人に変わって座ります。

 

 「まてまて!エイミィ、君は何をするつもり――」

 

そこまで言ってエイミィさんは手を歩み寄ってきたクロノさんの方に向けます。

その手の指の間には一つのメモリが挟まれていました。

 

そのメモリを見てクロノさんの表情が変わりました。

 

 「……完成、したのか?」

 「私を舐めてもらっちゃぁー困りますなぁ」

 

エイミィさんは堂々と言いますが、それでもクロノさんは信じられないようです。

 

 「あれだけ難しいって言ってたじゃないか……」

 「だから舐めないで欲しいって。これでも元アースラのナンバー3だったのよ?」

 

それだけ言ってエイミィさんはメモリを差込ます。

手の運動を改めて少し。

 

そしてキーボードに手を置き――。

 

 「さぁて、いきますか!」

 

目にも止まらぬ速さで叩き始めました。

 

その様子を、ココに居る全員が唖然と見ています。

 

 「ぼーっとしないで!簡単なの回すよ!対処して!」

 「は、はい!」

 

他のオペレーター席に座っていた人たちもその剣幕に負け返事を返します。

そしてそれぞれの目の前にモニターが表示され、各々操作を始めます。

 

 「アナタがS2Uを持ってきてからエイミィ、徹夜で頑張ってたのよ?」

 「それは……でもこんな短期間で抗ウイルスデータを作ってくるなんて……」

 「ま、未完成で私が大本は直接操作しないと動かないんだけどね」

 

相変わらず手の動きは衰えないまま、いつもの軽い口調で返すエイミィさん。

……もしかして凄いマルチタスク持ちなのでは?

 

 「あと、増援も来てるわよ?」

 「増援……コッチも間に合ったのか」

 「転送ポートは暫く前から使えなかったみたいでね。私たちの家の方に来たのよ。そろそろ向こうも付く頃じゃない?……さて、私もここに来た仕事をしないとね」

 

今度はリンディさんが肩を回しながら言います。

そして立った場所は、クロノさんがさっきまで居た艦長席。

 

 「か、母さん!?なにを……」

 「何って、リミッターを外すのよ」

 「リミッター……そうか!」

 

なるほど。

六課のメンバーのリミッターを外す権限を持つのは六課の後見人の人たちのみ。

そして後見人はクロノさんとカリムさん。そしてリンディさんです。

 

気軽……とは少し違いますが、ミッドで直ぐに連絡が取れたのはクロノさんとカリムさんの二人でした。

だから必然と外せる回数は二回、と思っていました。

 

たしかに、ある種盲点でした。

 

 「さて、通信開くわよ?」

 

 

another side――――――――――――――――――

 

 『ここ、リンディ・ハラオウン提督が後見人権限として、六課隊員に掛かったリミッターを解除を許可します。繰り返します――』

 

 「え――?」

 

それは突然戦闘区域に流れた言葉だった。

その言葉を聞いて、敵味方問わずほんの数瞬動きが止まった。

 

そして、その一瞬さえあれば十分だと、全員が思った。

 

当然、なのはも。

 

 「パイロ――」

 「――っ!」

 

だがそれは選択の違い。

 

本来なのはは十分な戦闘が出来る体ではなかった。

それはゆりかご戦での後遺症。未だにリンカーコアは万全ではなかったのだ。

 

だからこそ、焦ってしまった。

選択を間違えてしまったがゆえに、なのはは絶好の的えとなった。

 

 「シューター!!」

 

打ち出される10以上ものスフィアはまっすぐになのはを打ち抜く為に加速する。

避ける術はない。隙を付かれたのが痛かった。

 

なのはは次に来る痛みや衝撃に備えようとして目を閉じた。

 

――だが、痛みは一向にやってこない。

恐る恐る目を開ける。

 

その目が映したのは翡翠色のシールドと、金髪の華奢な男だった。

 

 「ユーノ、君?」

 「なのは、今のうちに!」

 「っ!うん!」

 

お互いに言葉は交わさない。

未だに打ち込まれるいくつものスフィア。

だがそれもすべてユーノによって阻まれる。

 

――だからこそ、なのはは無防備になれるのだ。

 

 「エクシード……ドライブ!」

 

一瞬の光耀(こうよう)。

次の刹那、バリアジャケットが姿を変える。

これこそが、なのはとレイジングハートのリミッター解除、フルドライブモード。

 

大きな違いはミニスカートがロングスカートへ。

まさにそれは、少女時代の彼女の衣装を思わせた。

 

 「いくよ、レイジングハート!」

 

相棒に声をかけ、足元に桃色の魔法陣が展開される。

その上になのはは足を下ろし、レイジングハートを構える。

 

そしてレイジングハートを基点に少しづつ、少々の魔力が集まりだす。

 

 「っ。なるほど……それでは、私も全力で応じます。――集え、明星(あかぼし)」

 

マテリアルも同じ構えをとる。

 

それは異様で、目を奪われる光景。

お互いのデバイスに少しづつだが集まる魔力。

 

まさにその共にその名を冠するに相応しい光景だった。

 

 「私は今、あなたを超えます……」

 「そうはいかない……私は超えられる訳にはいかないの……っ」

 

デバイスに魔力が集まり、桃色の球体にが出来上がり始める。

 

 「スターライト――ブレイカー!」

 「ルシフェリオン――ブレイカー!」

 

二つの極光が放たれた。

 

 

・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

 

同時刻、ヴィータの元にも放送は届いていた。

――だが。

 

 「解除できても――このペースじゃっ!」

 

悪態付きつつ、何度目になるか分からない攻撃を繰り出す。

が、それもやはり受け止められてしまう。

 

 「どしたぁ?リミッター……解除しねぇのか?」

 「うっせぇ!」

 「下がれ!ヴィータ!!」

 

ザフィーラの声が響き、ヴィータが後退する。

同時、ヴィオルに向かっていくつモノ軛が打ち込まれる。

 

 「きかねぇって言ってんだろぉがぁ!!」

 

自身を包むように、球体のシールドを張り、自身が貫かれる事を防ぐヴィオル。

そのシールドの前に軛は無残にも折れてしまう。

 

 「ヴィータ!!」

 「わかってらあぁぁぁ!!」

 「あぁ?」

 

上空。

この時を待っていたかのように、逆落としのように襲い掛かるヴィータ。

 

 《Raketenform》

 「ラケーテン……ハンマアァーー!!」

 

そして、今夜何度目なのか分からない二色の魔力の本流。

そして再び距離を開く。

 

 「あと一押しだってのに……」

 

ヴィータは奥歯をかみ締めた。

 

そう。あと一押しだった。

リミッターは外した。これであの盾は貫けると思っていた。

だが違った。

 

あと一押し足りない。

 

 「一押しくらいなら、私に任せなよ」

 

声がした。

声のする方、自分たちの後ろに視線を移す。

 

 「アルフ!?」

 

そこに居たのはフェイトの使い魔、アルフだった。

だが、その容姿はヴィータたちの記憶と少しの差異があった。

 

 「なんで……大人?」

 「後押しや補助は、使い魔の役目だし――ねぇ……ザフィーラ!!」

 「守護獣だ!!」

 

ヴィータの言葉は聞こえているだろう。が、アルフは無視をしてヴィオルに突っ込む。

ザフィーラも律儀に突っ込むと入れつつ、再び鋼の軛をヴィオルに打ち込む。

 

 「一人増えた程度で、俺の盾を破れれるつもりかよぉ!!」

 

今回もまた、防がれた。

 

だが、今回は違った。

 

 「バリア――ブレイクーー!」

 

ヴィオルの視界の隅、そこからアルフの攻撃が決まる。

 

所詮使い魔。あのチビにさえ気をつけて置けば。ヴィルはそう思っていた。

だがそれは、アルフの拳が、自身のシールドに触れた時に間違いだったと感じさせられた。

 

 「っ、なに!?」

 

ヴィータには劣る。だが、予想していた以上の威力がアルフの拳にはあった。

 

ヴィオルは知らない。

アルフのこの攻撃は、少し時を遡れば、ヴィータのシールドをも破る威力があると言う事を。

 

そして本当に、この一押しさえあれば――。

この暫くの隙があれば――。

 

 《Gigantform》

 

既にカートリッジ、魔力共に無かったからツェアシュテールングスフォルムは無理だったが、関係はない。

その程度で、この千載一遇のチャンスをヴィータが潰すはずが無かった。

 

 「ギガント……ハンマアァァァ!!」

 

繰り出された、己に残る全魔力を込めた一撃。

 

再び巻き起こる魔力の本流。

しかしその規模は比べ物にならない。

 

ヴィオルとヴィータ。

共に魔力に飛ばされそうななりながら、本流に耐える。

 

そして――シールドに亀裂が入った。

 

 「はああぁぁぁぁ!!」

 「クソクソクソ……クソガアァァァァァ!!!」

 

シールドがガラスのように砕け、ヴィオルにアイゼンが直撃した。

 

 「ぐふっ!?」

 「沈めーーー!!」

 

そのまま振り抜き、ヴィオルは海面に叩きつけられた。

ここに――、鉄槌と盾の勝負は決した。

 

 

・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

 

 

アースラからの全戦域放送が聞こえたとき、既にシグナムの元には援軍が到着していた。

 

 「……アギト、どうやってココに来た?お前が来るのは明日の筈だろう?」

 「アタシもそのつもりだったけど、ルールーがイヤな予感がするって言ってこいって言うから来たんだよ」

 「そうか。感謝せねばな……」

 

実際、シャマルの感知も少しずつズレが生じ始めていた。

無理もない。

風とは例え微量でもあたり続けていれば体力が削られていく。

それを防ぐ為にはシグナムに当たらない程度の距離で展開させるしかなく、必然的に広域になった。

広域捜査が、負担にならない筈は無かった。

 

そして視線を移せば、そこに居るのはこちらをただ見ているだけのエストラ。

正直、シグナムはアングよりエストラの方が気味が悪かった。

 

六課に攻め込んできた時もそうだった。自分から仕掛けてくることは、殆どと言ってないのだ。

何がしたいのか分からない。

 

 「アギト。早速だが、行けるか?」

 「当たり前だ!!」

 

そして、二人はユニゾンする。

上着は消え、下に来ていた服は紫、髪はオレンジへ変色し、背中に小さな炎翼が現れる。

 

その姿を確認すると、エストラは再び動きを開始する。

手をシグナムへ向ける。

 

これは魔力弾を打ち出す構え。

 

 

――魔力を探れば、魔力弾が来る方角は分かる。今のシグナムなら、そこから更に詳細な場所を知ることが出来る。

 

 「はああぁぁぁ!!」

 

レヴァンティンを持っていない左手を剣を模した炎を作り出す。

そして、大きく横になぎ払う。

 

現れるのは紅蓮の炎壁。

シグナムはその壁を前に立ち止まり、レヴァンティンを構える。

 

そして――炎壁に三つの穴があいた。

刹那、シグナムが駆ける。

 

エストラも接近を許さない。右手の平を向ける。

だが――。

 

 「なにっ!?」

 

シグナムが残像を左右に広げ、エストラの視界から消えうせる。

エストラも一瞬動きが止まる。が、直ぐに左右に気を配る。

 

 「こちらだ!」

 

残像を残すほどの速さで上空からエストラの目の前。

攻撃をせずに、目の前まで降りてくる。

 

 「剣閃(けんせん)烈火!」

 

左手に剣を模した剣を携えたまま――。

任意空間をなぎ払う中距離魔法。

 

その任意空間を一点に集中、零距離攻撃――!!

 

 「火龍―― 一閃!!」

 「――づぅっ!!」

 

エストラはシールドが間に合わず、紅蓮の炎に飲み込まれ、魔法独特の爆発を起こした。

 

 

 

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