魔法少女リリカルなのはStrikerS WitH 2nd 作:八神煌斗
ユリアside――――――――――――――――――
結果だけ言うと、マジックホールは閉じた。
暴走の影響も、海鳴に突発的な暴風が吹き荒れたって程度。
何本か古い木が折れたり、屋根の瓦が飛んだって話を聞いたくらい。
大きな問題にはならなかった。
――全体的に見たら。
事件から五日。地球時刻で12月25日。日本はクリスマスっっていう年に一度の聖なる日。
ウィズは、まだ帰ってこない。
この五日間、私達は交代でウィズを探してる。
本局にはクロノが艦の修理に梃子摺っているって言って何とか期間を先延ばしにしてる。
本局からは期間命令が何度か来てたみたいだけど、って事になってる、らしい。
でも、明日が限界。
本局が、明日中に治らなかったら迎えを寄越すみたい。
本当は治ってるから、遅くても明日にはココを発たないとダメ。
昨日までは皆やっけになって町を探し回った。
でもウィズの魔力の残滓すら見つからなかった。
その反動からか、今日は皆、アースラに残っていた。
……ハッキリ言いましょう。
みんな、どこかで諦めちゃったのね。
各言う私も、正直あの魔法を使って無事に済むなんて思ってなかった。
ふと、思い出すのはあの日の白の極光と、はやて。
あの日は本当に大変だった。
はやては戻って来た途端飛び出そうとした。
・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
「ええ加減、どいたらどうや」
「何度言われようと、そんな気サラサラないわね」
「どけって言ってるのが、分からんか?」
「分からないわね」
転送ポートの前で、睨み合う。
少し離れた所ではなのはたちがどうしていいのか分からないって言った表情でコッチを見てる。
ま、なのは達も感情論だけで言ったら直ぐに飛び出したいんだろうし。
自分を制御できてるだけで良しとしましょうか。
「部隊長命令や、そこをどけ」
「無理。私、管理局員じゃないから」
まさかココで部隊長権限を出してくるとは思わなかった。
相当頭に血が昇ってるわね。
本当は私だって直ぐに飛び出してあのバカに一発くれてやりたい。
でもそれはしない。
アイツがそれを望んでないっていうのが分かるから。
はやてだって、それが分からない筈がない。
……ここは少し説得でもしてみようかしら。
そういうの苦手なんだけどなぁ。
「ウィズが何を考えてあんな事をしようとしてるか。はやてこそ分からないの?」
「分かってる。分かってるけど、そんなん関係あれへん!」
叫びはまで、悲鳴にも似ていた。
その時だった。私の後ろに、シグナム達が現れたのは。
「ウィズが死ぬことあらへん!なんであの子一人が全部背負わないかんねや!?」
「背負うんじゃ無いでしょうが。アイツが自分で、アンタを守ろうと……」
「わかってる!分かってるけど……私はイヤなんや!」
分かってはいたけど、私の言葉ははやてには届かなかった。
私もお母さんと離れ離れになってるから、そう言う気持ちは分からないでもない。
だけど本当に意味で理解は出来ない。
私はお母さんの死体を確認した訳じゃないから。
まだ希望が持てる。
「どうしてもどかへんってなら……」
途端、はやて目が据わった。
「はやてちゃん!」
「主!」
はやてが取った行動に、ブリッジが凍りついた。
なのはとシグナムが叫んでるけど、はやてはそんな事お構いなし。
はやては……シュベルトクロイツを私に向けた。
「力づくで、どかしたる」
「大分錯乱してるわね」
私達を中心に、空気が凍っていくのが分かった。
けど、私は目の前のはやてから目を放さない。
はやては本気。
後ろにシグナム達が居るのに、私の隙を伺ってる。
言うなら一触即発の空気。
ここで隙を見せたらヤられる。
ここは、無理しないといけないか。
そう思ったときだった。
モニターが、真っ白に染まったのは。
「――っ。ウィズ!?」
はやてが視線をモニターに移した。
「主、スミマセン」
その瞬間を狙って、シグナムが賭け、はやての意識を刈り取った。
・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
それから意識を取り戻りたはやては、私に一度謝りに来た跡、部屋に篭った。
碌に食事も取ってないみたい。
交代で皆が食事を持って行ってるけど、一、二口食べただけで、まったく食べてないに等しい。
で、今日は私の番。
はやての部屋の前まで食事を片手に来た。
「はやて、食事よ。……はやて?」
返事が無い。
篭ってるって言っても、いつもは返事もするし招き入れてもくれる。
私も何度か話をした。
……見え見えの空元気で。
「あけるわよ」
鍵が掛かってる訳でも無かったから扉を開けて中に入る。
中もぬけのカラだった。
こりゃぁ……外に出かけたわね。
机の上に立ち上げっぱなしになったディスプレイを見て確信した。
はやてside――――――――――――――――――
【ウィズを探してくる。】
それだけ打って私は海鳴に降りた。
「……なにやってんねやろ、私」
自嘲気味に、一人呟いた。
朝、クロノ君から食事を持ってきてくれた時に、明日帰るって事を聞いて上着だけを持って飛び出した。
今更焦って探して、どうするって言うんや。
五日間、無駄に過ごしたくせに、何今更……。
「……さむ」
羽織っていたコートの前を全部止めなおす。
もうお昼過ぎてるし、時間的には温かくてもおかしくないと思うけど。
なんて考えてると、不意におなかが鳴った。
こんな時でもおなかは空くらしい。
最近食べてなかったのに、ずっと歩いてるって言うのもあるんやと思う。
とりあえず、商店街にでも行っみよか。
何かあるやろ。
そう思って商店街まで来て、私は失敗した、と思った。
「今日、クリスマスなんや……」
あちこち綺麗に装飾された店の看板が並んでる。
ケーキを街頭販売してる店も有るし、ツリーを飾ってる店もある。
そう言えば、サーチャー設置してるときにも数は少なかったけど、飾ってる店が多かったことを思い出した。
ふと目に入ったんは、一軒のコンビニ。
五日前、ウィズとお昼を買ったコンビニ。
私は居た堪れなくなって、商店街を後にした。
それからはまた海鳴の町を虱潰しに歩き回った。
けど、なんの手がかりも見つからへん。
……当然やな。
今まで、シグナム達が必死になって探し回って見つからへんかったのに、たかが5、6時間程度で見つかる訳あらへん。
もう辺りも暗くなってきた。
そろそろ、潮時かも知れへんな。
そう思ったとき、私の目の前に白いモノが映った。
「雪……か」
これでホワイトクリスマスや。
けど、実を言うと私はあんまり雪は好きやあらへん。
アインスが言った日に降ってたから。
なのはちゃんが墜ちた時、降っていたから。
そして……今、降ってきたから。
「帰ろ」
足を転送ポートのあるコテージに向けた。
その時やった。通信機が鳴ったのは。
『はやて、聞こえるか?』
「クロノくん?」
出るとクロノ君やった。
通信言うても、携帯電話をそう変わらない端末。
音声しか伝わってこうへん。
『ついさっき、微弱だが魔力を感知した』
「……それくらい珍しいことはないやろ」
管理外世界言うても、魔力を持ってる人が居ないとは限らへん。
私やなのはちゃんが良い例や。
それが微弱で一瞬なんやったらそれこそワザワザ通信してくる意味があらへん。
――っ。
フと、頭をよぎった。
「まさか、その魔力ウィズか!?」
『……いや、残念だが違う』
ある意味最後の望みやった。
それが目の前で音を立てて崩れ始めた。
「……なら、なんやねん?」
『その魔力……リィンフォース、アインスの魔力なんだ』
「場所は!?」
反射的に叫んでた。
崩れた先に見えた光。
この光りを、消すわけにはいかへんねや!
『場所は――』
「はぁはぁはぁ……よりによって、ココかい……」
乱れた息を整えながら呟いた。
クロノ君から場所を聞いて、直ぐに走り出した。
ボタンを全部止めてたコートも、今は全開や。
それくらい熱い。
「ホンマにココやねんね?」
『あぁ、その辺りのはずだ。フェイトたちもソコに向かっている』
「先に調べ始めとく。じゃ、切るで」
繋いでた通信を切って、私は反応のあった地点……あの丘への道を登り始めた。
「……あった」
それは直ぐに見つかった。
私はそっと、各を拾い上げて、胸の辺りまで持ってくる。
コレがアインスの核の筈や。
――だけど、ウィズの姿は無かった。
「あかんな」
頭によぎった悪い考えを振り払うように首を振る。
アインスがココに居たんや。
きっと近くに居るはずや。
切り替えてかな。
……足音が聞こえた。
「ウィズ!?」
「あ……」
振り向いた先に居たんは……なのはちゃんやった。
「ごめん」
「ううん。謝ること無いよ。……それが?」
「うん。アインスの核やと思う」
そっとなのはちゃんに渡す。
「アースラに連れて行ってあげてくれへん?私はもう少し探すから」
「……わかった」
最後に、フェイトちゃんたちもこの辺りを捜索し始めてるって事を私に伝えてなんはちゃんはアースラに戻っていった。
私も早く探さな。
手がかりは見つかったけど、残り時間ももう見えてる。
急がな。
もう街灯も点きはじめてる。
「って、ここはもう少し街灯増やしたほうがええやろ」
とりあえず、コレくらい軽口を叩けるほどには元気になった、つもり。
にしても、本当にコレは街灯いるやろ。
いくら山道やからって、先が殆ど見えへんやんか。
本当は走って降りたいのに、危なくてそんな事できへん。
次の街灯まで結構距離あるしなぁ。
「ん?」
人影が見えた。
って言っても、当たり前か。
背丈からしてもなのはちゃんなんは見て明らかやし。
なのはちゃん、こういうの無理な人やからなぁ。
ホンマにゆっくり歩いてる。
ってコッチに向かって歩いてきてへん?
「……え」
私は足を止めた。
その近づいてきたから分かった。
なのはちゃんじゃ無い。
なのはちゃんは、あんなに髪は短くない。
あの髪型をしてるんは……。
人影が、街灯の下に来て、光りに照らされた。
「あ、はや姉……」
声を聞いた途端に、私は走り出して、目の前の男の子、ウィズに抱きついた。
「と、とぉーー!?」
その勢いにウィズが負けて二人一緒にその場に倒れこんだ。
「テテテ……。大丈夫――」
「ウィズ。ウィズやねんな!?」
痛がってるけど関係あらへん。
上半身だけ起こして、ウィズの顔を見て聞く。
すると、ウィズは小さく微笑んだ。
「うん。ただいま。はや姉」