魔法少女リリカルなのはStrikerS WitH 2nd 作:八神煌斗
「体重い~、頭いたい~……」
《相棒、そのうめき声やめてくれません?なんだか呪われそうです……》
ベッド横の机に置いてあるアテナがそんな事を言ってきやがった。
因みにレイラはデバイス調整ルーム。
アングとの戦闘中に負傷、それが結構重要な部分だったらしく昨日から預けっぱなし。
「マスターを心配しないヤツなんか呪われちまえ」
《してますよ、毛ほどには》
「それだけ!!?あ、叫んだらまた頭痛が……」
そして起こしていた体をベッドに沈める。
俺は今、六課の自室で静かに療養中でございます。
二日前……って、コッチじゃ一週間前か。
アングとの戦闘でコレでもかって程体を酷使した上に、封印魔法まで使った俺の体は色々ボロボロだった。
まぁ、言ってもアングにやられた時みたいに酷くはない。
既にユリアに調整はしてもらったから、今苦しんでるのは言うなら魔力の筋肉痛ってヤツだ。
《まぁ、生きてただけで良しとしましょう。その痛みは代償と言う事で》
「お前……いい気味だ、とか思ってねぇか?」
《……今だから思えることですよ》
「やっぱり思ってんの!!?」
あの時、死にたくないって思った瞬間から俺の記憶は一度とんでいる。
次の記憶って言ったら、あの丘の森の中に居た。
すぐにはや姉の魔力を感じて丘を登ってはや姉に会った。
そんな感じ。
「でさ、俺が助かった理由って……本当にわかんねぇのか?」
《何度も言いましたが全て私の予想でしかありませんからね》
「だよなぁ……」
俺が助かった理由。
それは単にアインス姉さんのお陰、と言うのがアテナの予想。
俺の意識が壊れる一番の原因は、俺自身が耐えることの出来ないその魔力量。
それはあのウィズ(ダミー)も言っていたことだ。俺にもわかってる。
しかし俺は実際にココに居るし、記憶も確りある。
ここでアインス姉さんが関わってくる。
俺が受け止め切れない自分の魔力、そして奔流がアインス姉さんの中に流れ込んだ。
それはあの核が俺の魔力を吸い込み始めた、との事。
もともとアインス姉さんのユニゾン機能を復活させたのも俺の魔力だったからそれはあってもおかしくない、らしい。
その結果、流れ込んだ魔力を姉さんが調整してアテナが必要とする分を姉さんが随時吐き出し、俺が自壊することが無かった。
ココまでは予想できる。だけどこの先が予想できない。
俺を含めアテナ、姉さんも五日間の記憶が無い。
一番に目が覚めたのは姉さんだったらしく、魔力を吐き出し、居場所を伝えたとか。
色々謎は残るんだけどな。
聞いたらはや姉は俺が倒れてた近くを通ったって言うし。
あぁ、そうだ。
噂のアインス姉さんだけど……。
「外まで声が聞こえていたぞ。もう少し病人らしく出来ないのか?」
扉が開いて、そこに立っていたのはアインス姉さん。
この通り、確り存在していたりします。
コレも俺の魔力を吸い取ったお陰らしい。
まぁ、存在できているってだけで、戦闘は出来ないらしいけど。
「あぁ、いやコレはアテナが――」
《そうなんです。アインスさんからも何か言ってやってください》
「えぇ!?そこれ俺!?……あぁ、頭が」
「……なんだか二日酔いのようだな」
あぁ、言われちゃったよ。
それだけは考えないようにしてたのに……。
「なんなら水もいるかぁ?」
「いりません……」
アインス姉さんの後ろからひょっこり顔を出してからかって来たのははや姉。
その手には本当に水の入ったコップを持ってるところが確りしてる。
《その水を貰う相棒もチャッカリしてると思いますよ》
「同感だ」
「姉さんまで!?ってかチャッカリ!?確りじゃ無くて!?」
「それだけ声出せ取ったら、もう大丈夫やな」
両手を腰に当てて頷くはや姉。
いや、声出してるんじゃなくて出させられてるんだけどね。
特にアテナに。
《私ですか!?》
「やっぱ自覚無しかこの野郎!!」
「あー。それくらい元気やったら大丈夫やな」
「そうですね」
「ん?」
アテナと言い合ってるときに、はや姉とアインス姉さんが頷き合ってた。
あぁ、そうそう。
アインス姉さんはそのまま皆にアインスって呼ばれてて、アインス姉さんもはや姉の事を主って呼んでる。
呼び方についてはなんか色々有ったらしいけど、俺は知らなかったりする。
聞いても教えてくれないんだ。
って、そうじゃなかった。
「アインス」
「はい。主はやて」
はや姉が合図すると、アインス姉さんが俺に松葉杖を渡してきた。
俺は松葉杖と使って立ち上がる。
まぁこれなかったら少ししんどいだけで、歩けないって事は無いんだけどな。
「さ、キリキリ付いといで!」
「いやあの、俺まだ松葉杖馴れてないんですけど!?置いてかないでくれませんか!?」
《相棒、それ私のセリフです!!》
あぁ、悪い悪い。
で、俺が連れてこられたのははや姉の部屋。
「……なに、これ?」
はや姉の部屋ではあったんだが、姉さんズは全員勢ぞろいしてるし、FW達も揃ってる。
だけどそれだけじゃない。
なんかずっごくキラキラしてるし、モミの木とか飾ってあるし、豪華な食事が一杯並んでるし。
うん。簡単な話、パーティー的な何か。
ってか確実にクリスマス会とかだ。ツリーあるもん。
てっぺんにサンタ坊かぶってるもん。
「あ、ウィズさん!」
両手に骨付き肉を持ったスバルが俺に気づいて声を上げた。
当然、そこに居たみんなの視線は俺に集まる。
「あー、スバル。色々言いたいことはあるけど……とりあえず行儀悪い」
「えへへ。だって美味しいんですよ?」
言われなくてもその幸せそうな顔だけで十分分かるよ。
分かるからスバル。
今は俺じゃなくて後ろに居るティアナに気づこうな。
「スーバールー?」
「うひゃぁ!?テ、ティア!?」
「ちょっと来なさい!」
「え、え?なんで?なんでえぇぇぇ!!?」
ティアナに耳を引っ張られながら、部屋の隅に連行されていったスバル。
多分お説教させるんだと思うよ。
仮にも上司二人の前にそんな格好で出てきたんだから。
「まったく、騒がしい奴らだな」
「ヴィータちゃん、口も周りに一杯ついてる」
「マジか!?」
ヴィータ姉さんとなの姉。
「もう歩いて大丈夫なの?」
「テスタロッサ、私がそんな柔な鍛え方すると思っているのか?」
「あ、それは……思わないです」
フェイ姉とシグナム姉さん。
「私がちゃんと面倒みてるから健康面は大丈夫ですよ」
「……俺が確り料理を作らせないようにしているから大丈夫だ」
「ザフィーラそれどういう意味!?」
シャマル姉さんとザフィーラ兄さん。
皆が俺の方に寄って来た。
「酒持ってこーーい!!」
「バッテンチビ!また一本開いたぞ!!」
「ユリアさん飲みすぎですーー」
……向こうで顔を真っ赤にしてどっかり椅子に座ってる酔っ払いは別。
足元に転がってるビン、缶は数えない方向で。
つーかお前飲めたのか……。
いや、どっちかって言うと……飲まれてる?
「体は一応一人でも歩けるくらいには回復してるんだけど……なにこれ?」
「なにって、パーティーや。クリスマスパーティー」
「いや、だから……なんでこの時期に?」
今日は確か27日だろ。
時期的には正月準備の方が大事だと思うんだけど……。
「そやな。最初は餅つき大会も候補にあがってたんけどなぁ。今年は買って済ますことにしたんや」
「まぁ、イベントがどっちだったかはこの際いいんだけどさ」
俺が聞きたいのは何でイベントを開きたくなったか。
そっちなんだよなぁ。
いや、はや姉も分かっててそう答えたんだろうけどね。
だっていつものニヤニヤした表情だもの。
「ホンマの事を言うと……ウィズ、アンタのせいや」
「……俺?」
指差されて、つい聞き返した。
他の姉さんたちを見ても何も言わないで頷いただけ。
えー。
なにこの疎外感。
「ウィズ、コッチに来る前言ってたよね。ミッド(こっち)でもパーティーしたいって」
そんな時、口を開いたのはフェイ姉だった。
「あー……そう言えば」
これは姉さん達が全員ミッドに渡ったときだ。
俺だけ一つ違うお陰で一年間ミッドに来るのが遅れた。
まぁ、それでも、姉さん達は入局一年目だったから忙しかったけど、時間はあった。
だからイベント事の度に地球に戻ってきてくれていた。
確かそん時に言った気がする。
それも俺が入局直ぐにあの二年間に入ったからそれも叶わなかったけど。
……あ。
「もしかして、それで?」
また皆頷いた。
「今では皆忙しいからな。今年逃したら出来るか分からないと言うのが本音だがな」
「昨日帰ってきてはやてやなのは達が頑張って作ったんだからな」
シグナム姉さんにヴィータ姉さん。
ヴィータ姉さんは最後に「アタシも手伝った」とか言って腕組んで何度も頷いている。
「ありがとう」
素直にお礼を言う。
だって、嬉しいじゃん。
ソコまで捻くれてないつもりよ?
そして暫く皆と話して、皆はまた各々散っていった。
まぁ、散って行ったって言っても部屋の中だからそんなに離れてないけど。
ちなみにアテナもシャーリーさんがレイラと一緒に持ってきたアナザーで飛んでいった。
何でもレイラも前で旨そうに食べてやる、とか言ってた。
いい性格してるよ、本当に。
「ウィズは椅子とか有ったほうがええよな?」
「あ、うん。ありがとう」
はや姉が椅子を持って来てくれた。
正直歩けるだけで体は本調子じゃないからマジで助かりました。
俺は持ってきてくれた椅子に座って、ため息を一つ。
「疲れたか?」
「ん?まぁ……そう言う訳じゃないけど……」
俺のため息が聞こえてたのかはや姉がそう聞いてきた。
「去年まではこんな事出来るなんて思ってなかったからさ。なんて言うか、信じられない。みたいな」
あの二年間は殆ど毎死ぬか生きるかの中で戦ってたからなぁ。
実際自分で言ったことも忘れてたくらいだし。
「……ウィズ。その事やねんけどな」
はや姉の口調が少し変わった。
「六課解散したら、私の部下に付かへんか?」
「……は?」
なんて事を言ってきた。
「私な、特別捜査官に戻ろうと思ってんのよ。それで、捜査官補佐って形でどや?」
「いや……どや?って言われても……。嬉しいんだけどさ、何で俺?」
俺なんかよりもっと良い人材なんて腐るほど……とはいかなくても居る。
そもそも、この六課。
巷じゃ奇跡の部隊なんて言われてるんだ。
多分はや姉が一声かければ、何人も募集してくるだろう。
それも俺より優秀な人が。
「ん~。まぁ私の我侭、くらいに思っておいてくれたらええわ」
「我侭、ねぇ」
背もたれに深く背を預けて考える。
シグナム姉さんに言われたときから進路については考えていた。
正直に言って、はや姉の下に付くことも考えてた。
俺にとっても凄く魅力的な提案。
でも……。
なんでか分からねぇけど、心のどこかでそれでいいのかって思ってる。
「ゴメン。少し考えてもいいかな?」
「謝ることあらへん。むしろ即答しなかった分逆に安心したわ」
笑って、俺の頭の上に手を乗せて言ってくれたはや姉。
「で、コッチは即答して欲しい事やねんけど……」
手を退けて俺の前まで移動、椅子に座って低い視線を合わせる為にしゃがんだ。
「無茶するのは良え。でも、一人命賭けるんはもうせんといて」
かなり真剣な声、そして表情。
回りの賑やかな声も一瞬聞こえなかった。
「ええか?」
「……うん。分かってるよ」
俺だってあんな思い二度としたくない。
あの意識が薄れていった時の事を思い出しただけでも背筋はゾッとするし、まず思い出したくも無い。
あの二年間より、もっと恐ろしかった。
それに……。
「よし、ええ返事や!ほんなら、ご飯食べに行くで!」
「ちょっ、俺まだ上手く動けないんですよ!?」
「関係あらへん!」
「マジですか!!?」
俺は、まだはや姉の横に立っていたいから……。