魔法少女リリカルなのはStrikerS WitH 2nd 作:八神煌斗
今俺たちは向かい合うように座っている。
シャマル姉さんは何時もの定位置、デスクのイスに。
俺とはや姉は近くの長いす。そしてユリアはさっきまで座っていたソファー。
シャマル姉さん以外不思議に向かい合う形になったんだな。
「話戻すけど、ユリア。何でウィズに会いに来たんや?」
暫らくしてようやく脱線していた話が戻りそうだ。
「ウィズが狙われたからよ」
「狙われた?」
シレッと言うユリアにはや姉は怪訝に聞き返す。
また話がとんでもない方向に飛びそうだ。
「そ。私を追ってた奴等……って言ってもウィズしか見てないんだけど」
あの赤髪と白髪か。
俺でもすぐに只者じゃねぇって感じた。
正直悔しいが、俺じゃ勝負になるかすら怪しい。
「そいつらがウィズ、正確には能力なんだけど。それを狙ってるのよ」
俺の能力。
それは【封印の力】
俺自身使ったことねぇし、力自体も厳重に封印されているから実感なんて全く無いんだけど。
「それがホンマやとして、目的を知ってるのは何でや?」
「あなた、何でや、ばっかりね」
「う……し、仕方ないやろ!」
まぁね。と、自分からツッカかといて流すユリア。
はや姉は明らかに不機嫌な顔をしている。
仲良いね、二人とも。
「私も同じグループに居たからよ。情報を掴めるのは当たり前でしょ?」
「はぁ……」
「む。何よ、そのため息」
「気にしないでくれ」
これがため息つかずに居られるかってんだ。
もう一々反応してたんじゃ身が持たない。
はや姉も隣で頭を抱えてるし、シャマル姉さんは机に突っ伏してる。
何であなたが一番疲れてるのでしょうか?
「それで結構前から探してたんだけどね、ウィズ、ココ最近頭痛とか無かった?」
「そんなの……あ」
あった。アグスタ警備の任務のとき。
あれはてっきりアイスマン関係だと思ってたけど……ユリア達のせいだったのか。
「ウィズってば次元世界転々としてて居場所特定できないし。ちょっとした強攻策ね。それも失敗だったけど」
次元世界云々ってのは、多分あの二年間の事を言ってるんだろう。
ロストロギアを破壊、確保する為に別次元世界を飛び回ってたしな。
ミッドに滞在したのも長くて5日。怪我の治療で10日だっけか?
「そんなことまで知ってんのか……」
「だから今の今まで、正確な居場所が特定できなかったのよ。だけどつい最近、ウィズの居場所特定るることができた」
「スカリエッティの放送やな?」
「ご名答」
はや姉の質問に、後ろに音符が付きそうなくらい上機嫌な声で人差し指一本立てて答えるユリア。
もうシャマル姉さんは聞くことに徹することを決めたようだ。
それにしても、あの放送か……。
確かにあん時『起動六課の部隊長殿!』とか『神崎ウィズ!』とか言ってたな。
しかもその後六課としてゆりかご戦で結構派手にドンパチやったからなぁ。
居場所を見つけらるのは当たり前か。
「で、落ち着いてきて緩んでるだろうって事で今日辺り攻め込む予定だったのよ」
「さらりと恐ろしいこと言うとるな?」
「そこで私はウィズを守るため、前日……昨日組織を抜けたって訳。お分かり?」
「そこや!」
「うお!?」
突然はや姉が大声をだした。
今まで少し重い内容って事もあってユリア以外は比較的声が小さくなっていた。
そこで突然、しかも隣で大声を出された。
驚くなって方が無理だろ?
「さっきから言ってるウィズを守る。とか、守護騎士とか……どういうことや?」
それは俺も気になっていた。
守ってくれるのは情けない気がするけど……そうなる意味がわからない。
いくら母さんのクローンだからって、意思は個人にあるモノだ。
つまりユリア自身の意思で俺を守ると言ってくれてる事になる。
「頼まれたって言うのもあるけど……単純に私がそうしたいからよ」
「頼まれたって誰に?」
「あなたのお母さんによ」
もう驚かないぞ。
飛んだ回答が帰ってくるのは何となく分かってたからな。
「私が生まれた日、つまり生態ポットから出た日だけどね。そこにお母さん、アリヤが居たのよ」
そしてユリアか自分の過去を話し出す。
「その時私はある程度記憶も受け継いでてね。思いっきり反感したのよ」
腕を組み、思い出しながら懐かしそうに語るユリア。
そして俺はその反感する姿が簡単に想像できて、不謹慎だけど笑いそうになった。
「ま、ここからはよくある話。お母さんに接して私も変わったって訳」
よくある話かは分からないが、言いたい事はわかった。
だけど、それが俺を守るって事とどうつながるんだ?
全く接点がないように思えるけど。
まさか母性ってガラでもないだろうに。
「話は最後まで聞きなさい。私が生まれてから三年後……ひとつの事件が起こったの」
《(相棒)》
「(?アテナ?)」
ユリアの話の途中で今まで黙っていたアテナがワザワザ念話で話しかけて来た。
「(何だよ一体)」
《(ユリアさんが生まれた三年後、つまり新暦69年。分かりませんか?)》
「(全く)」
悪いが今回はふざけてる訳でもなく本当に分からない。
69年。確かはや姉が上級キャリア試験に受かった年だ。
でもこれが関係ないのは明白だし。
《(あの発信者不明の研究日誌ですよ)》
「(研究日誌……あぁ!)」
思い出した。
六課にきて初めてレジアスのおっさんに頼まれたときだ。
たしかプロジェクトF.A.T.Eって明記されてるヤツだったな。
《(新暦69年 2/5
ヤツらが反乱を起こした。この記録を、研究成果を誰かが受け継いでくれることをねg。この一文。おそらくユリアさんの言ってる事件と同じものかと)》
ヤツらが反乱。これを前文から判断すると造られていた者たちだと思う。
ユリアの言うことは大よそ、俺が予想した内容と同じだった。
この二月五日。
ある人物が作られた者たちを引き連れ反乱を起こしたらしい。
この騒動が起きたとき、ユリアは母さんと少し離れたところに居て気づくのに遅れ、気づいた時には既に施設は火の海。
その中で造られた者たちが、造った者達も復讐をしていた。
「この時の私は自分でも認める程のマザコンでね。一緒に逃げようって言ったんだけど」
母さんはそれを拒んだらしい。
自分を逃がせばユリアも追われる事になるから、と。
結局ユリアは母さんを説得できずに母さんは別の脱出口から逃げることになったのだと言う。
「その別れ際に言われたのよ。『アナタとウィズは兄妹、どちらも私の子。兄妹は助け合うの。だから何時か、めぐり合ったら助け合いなさい。約束よ』ってね」
この言葉を最後にユリアと母さんは分かれたのだという。
そしてユリアは母さんの言いつけを守り、俺を守れるようにと力をつけ、今回俺を助けに来たらしい。
「なぁ、今の話やと今回ウィズを狙ってるのはかなりの人数がうるんとちゃう?」
すべての話を聞き終え、はや姉がユリアに問いかけた。
今の話がすべて本当ならFS計画で造られたヤツらが敵に回ると言うことだ。
「それは心配ないわ。もともと研究途中の技術。反乱の首謀者共々殆どが死んだわ」
その一言に、苦しくなる。
俺だって同じ方法で作られたのに、苦しい思いもせずに、楽しい毎日を送っていた。
だけど、俺の知らないところで、苦しんで死んで逝ったヤツも居る。
くそ……。
「今残ってるのは三人……そんなもんじゃない?」
「なんや、それならどうにかなりそうやな」
「本当にそう思う?」
はや姉が安心した声を、ユリアが正面から打ち砕いた。
ユリアの目は、真剣そのものだった。
「逆に今まで生き残ってるって事は実力も相当なものよ。下手をしたらSSランクいっててもおかしくないわね」
本当に笑えない。
SSクラス魔道師が三人。
しかも全員がレアスキル、または変換資質持ち。
荷が重過ぎる。
「ま、安心しなさい。私がちゃんと守ってあげるから」
「お、おう」
俺に歩み寄ってきて肩を組んでくるユリア。
あまりに突然で適当に返した。
それにしても何でかなぁ。
隣からの視線が痛いよ。