魔法少女リリカルなのはStrikerS WitH LAST 作:八神煌斗
「……出遅れた」
《今回は特にヘタレが影響しましたね》
《……ハァ》
「…………」
《重症ですね》
ただいま俺は自室にて頭を抱えている。
それはもう俺人生最大の危機だ。
ごめん、それは言いすぎた。
行き成りだが俺の抱えている問題。それは今日と言う一日に要約される。
今日は地球で言う大晦日。
こんな特別な日をはや姉が放っておくはずも無く、案の定開かれたイベント。
その名も【大晦日・大かくし芸大会!ポロリは自己責任】
後半は意味が分からないが、名前のとおりかくし芸を疲労しなければならない。
条件は一つ。
二人一組であること。
ここまで言ったら分かるだろう。
組む相手が居ない!
因みに参加しない、と言う選択肢は無い。
「参加しない人は……フフッ」
ムリムリムリムリ!!
《あぁ、相棒の首がすごい事に……》
《何かが降りたか?》
「お前ら、少し黙ってろ」
《あ。相棒ダメ。その眼はダメ》
《む……むぅ》
俺のことを考えずにペチャクチャ喋るデバイスに注意をして再び考える。
そ、その時部屋をノックする音が聞こえた。
こんな時にいったい誰だよ、と思いながらも姉さんズだったら後が怖いので直ぐに扉を開ける。
そこに居たのはやっぱり姉さんズだったんだけど……。
「どうしたの、フェイ姉?」
「ウィズ~~……」
なぜか居たのは涙目のフェイ姉でした。
「俺と組んで欲しい?」
「うん。お願い!」
何故か。
皆もそうだと思うが、元々なの姉と組む気だったらしいのだが。
少しビックリ。ヴィヴィオと組んだらしい。
確かに言われたらその組み合わせも有るけど……予想GUYです。
そしてフェイ姉は俺と同じく出遅れ、シグナム姉さんを筆頭にパートナーが居るので断られた。
俺が最後の砦だったらしい。
最後、と言うのが少し気になるけど……正直助かりました。
俺も自分の状況を話し、自分でも予想してなかったフェイ姉と組むことになった。
「で、何にする?かくし芸だから一発芸とかはしなくても良いと思うけど……」
「そもそも俺たちが一緒にできそうな事がそんなに無いような……」
「ん~……剣舞?」
「ごめんなさい、勘弁してください」
「土下座……そこまで?」
絶対に模擬戦になります、はい。
五体満足で新年を迎えたいんです。
その後も特に案は出ずに時間だけが過ぎていく。
この二年そういう事からは離れてたから俺は特に出てこない。
そんな時突破口を開いたのは、アテナだった。
《そういえばフェイトさんは歌が得意ではなかったですか?》
「え?私そんな得意じゃ……」
《でも10年前のお花見では歌を披露してましたよね?》
「う……」
ああ、そういえば。
フェイ姉達と出会って最初の春、全員集合でお花見をした。
その時に確か歌ってた。
ふむ。方向性が見えてきましたよ?
そして時は進み――六課食堂。
立食パーティーの様に各テーブルに料理が乗っていて、各々好きなようにしている。
そして一番の上座には特設ステージと【大晦日・大かくし芸大会!ポロリは自己責任】と何となく滑った感じの幕。
さて、好きなようにしていると言ったが、殆どが二人一組。
かくし芸のネタ合わせをしているんだろう。
こうしてみると誰が誰と組んでるか大体わかる。
WFはスターズとライトニングに分かれてるし、シグナム姉さんはヴィータ姉さんと。
はや姉はリィンでシャマル姉さんはザフィーラ兄さん。
で、俺のパートナーのフェイ姉だが……今はここに居ない。
もう予想も付いているだろうから言うが、舞台衣装を急ピッチでレイラとバルディッシュとで構成中。
なんでレイラかって?
あいつ黒が好きだからその辺のデザインは上手いんだ。
逆に白ならアテナだけど。
『さて、みんな!楽しんでるかー?』
はや姉はいつの間にか舞台に上がっていて、マイクを握っていた。
『さて、そろそろエエ頃やしかくし芸大会、はじめるでーー!!』
「おーーー!!」
六課の皆もいい感じに出来上がってるな。
こんな時に襲撃されたら――いや、大丈夫だろうな。
逆に怒りに任せていつも以上の戦績をあげそうだ……。
「お、トップバッターは行き成りライトニング組か」
《何でも漫才をするらしいですよ》
……はや姉の入れ知恵だろうな、絶対。
なんて考えている内に、漫才は始まった。
「この書類ホントに重いわー」
……関西弁?
「あ、キャロ。重そうだね。僕が持ってあげるよ」
「そんなええですよ」
「そんな事言わないで。ほら」
「あ、ありがとう」
「いいよ。キャロの為に何かしてあげたかっただけだから」
それを聞いたキャロは少しエリオから離れ……
「ほれてまうやろーーーーー!!」
キャローーーー!!?
なんてネタやってんだ、アイツ!
フェイ姉がいたら確実に泣くか何処かに行っちゃうよ!?
はや姉……あぁ!ニヤニヤしてる!? 犯人だな絶対!!
地球出身組みは唖然としてますよ!?
《一枚殻を破った見たいでしたね》
「俺はキャロが元ネタを知らないことを願うばかりだな……。で、次は?」
《暫くは相棒と関係が薄い……あ、二組空いてスターズ組の二人ですね》
「ならそれまでは飯でも食ってるか」
《私も食べたいですー》
「無理だろ」
《アナザーと取りに行きましょう!》
「イヤだ、メンドクサイ」
《バッサリですね!!?》
そんな事を話してる内に、スターズ組の番になったんだが……。
「なんで怪獣?」
《しかもスバルさんが別に居るということは……》
ティアナか。
何でアイツが怪獣のきぐるみなんか……あ。恥ずかしいから顔まで隠してるのか。
アイツの事だからスバルに押し切られた、とかその辺だろ。
「出たな怪獣!このスバルーマンが退治してやる!」
「ガオーー」
……ティアナ棒読み。絶対に中で顔真っ赤にしてるんだろうなぁ。
あとスバル。【マン】だと男だからな。
「食らえ!ロケットパーンチ!!」
そう叫んで突き出した右手はスバルから離れ……って!?
「ギャーー!!?」
文字通りロケットパンチは怪獣の頭部に直撃。
マジっぽい悲鳴を残してその場に倒れた。
でもそんな事より……。
「何で手が飛んだの!?」
《相棒。よく見てください》
「ん?」
アテナに即されて改めてステージを見る。
そこにあったのはスバルの手……もとい、リボルバーナックルが一つ。
母さんの形見だったんじゃ?
と言うかティアナがさっきから打ち上げられた魚みたいにピクピクしてるんだが……。
大丈夫なの……あ!シャマル姉さんが動いた!
担架まで来た!?
《なかなか楽しい宴会ですね》
「俺はもう先を見るのが怖くて仕方が無いけど?」
とまぁ結局、俺の予想は大きく外れることは無く――。
――なの姉ヴィヴィオペアでは緊張したヴィヴィオを笑った局員を桃色の砲撃が襲い
――シグナム姉さんとヴィータ姉さんペアは演舞が戦闘に移行。隅で正座。
――はや姉リィンペアはアウトフレームで出てきたリィンに向かってはや姉が「大きくなっちゃった!」と言ってその場を冷却
――シャマル姉さんとザフィーラ兄さんは、火の輪潜りで兄さんに引火。
《ザフィーラさん。人間形態になったとき、ハ――》
「それ以上いうな」
さっきすれ違ったけど、あんな眼をした兄さんは始めてみた。
シャマル姉さんが後ろで必死に誤ってたけど一切聞こえてないみたいだったしな。
「ん?そういやユリア見てねぇな……。アインス姉さんも」
《あぁ、それなら向こうに居ますよ》
アテナに言われた方を見る。
「ほらぁ、アインスも飲みなさいよぉ~~」
「いや、私は遠慮しておこう。それよりそろそろ私たちの番だが?」
「んなの関係ないわよ!私はまだまだ飲み足りないんじゃーー!!」
「……はぁ」
……絡み酒。
しかも酒癖ワリィなアイツ。
ん?
アイツこの前も飲んでばっかでべべれけになってなかったか?
いや、気にしたら負けなんだろ、うん。
『ウィズ……』
「あ、フェイ姉」
ユリアから目を逸らして、音楽データの確認をしていると、通信が入った。
モニターに映っているフェイ姉は顔が真っ赤です。
「どしたの?……まぁ、何となく予想できるけど」
『そっち行くの恥ずかしいから、出てきてくれない?』
「……後で全員の前に立つんですけど?」
『うぅ~~……』
あ、通信切れた。
「大丈夫なのかよ?」
《とりあえず迎えに行きましょう。そろそろ順番なんですから》
「だな」
そして食堂から少し離れ、フェイ姉が居るはずの部屋に入る。
……まぁ、言葉をなくしましたよ。
いつもストレートに下ろして先の方で纏めている髪はボニーテイルにしている。
バルディッシュとレイラの合作だろう黒が基本色のカジュアルと言うかワイルドと言うか……。
袖なしヘソだしの上着に、ミニパンツ。
ニーソクッスに手袋。
……うん、やっぱりワイルドって方が似合ってんな。
「ってか良く着たね、それ」
「……バルディッシュとレイラがこれ以外作らないって」
デバイスに脅されたと。
いや、俺が言えたことじゃないんだろうけどね。
「じゃぁ最後に合わせとこうよ。一回しか合わせてないからさ」
「うん。そうだね」
俯いていたフェイ姉も気持ちを切り替えて、両頬を軽く叩いた。
俺はこの為にアテナにプログラミングしたソフトを起動させようとして……。
《お二人さん?やる気になったところで本番ですよ?》
「マジか!!?」
時間が来たようでした。
「うおおおおぉぉぉぉ!!!」
うん。上の誰かの叫び声。
それを何倍にもしてくれ。それくらい、男共が叫んでる。
六課にこんなに男が居たのかってくらい叫んでる。筆頭はヴァイスさん。
それに加え女性局員もキャーキャー言ってるもんだからフェイ姉の顔がまた真っ赤になったんだよ。
《……とりあえずプログラム起動しておきますよ》
「……うん。よろしく」
元に戻るのを待ってたら新年迎えそうなのでアテナの音楽プログラムを起動。
俺の脇辺りの高さに俺を囲むように半透明の鍵盤が現れる。
コレがさっき急遽組んだプログラム。
って言っても元々あの二年間に数少ない俺の娯楽として作ってたから大きなプログラミングはしてねぇけどな。
……誰だ、プログラミングが娯楽なヤツは根暗って言ったの。
《私です》
《私は思っただけだ》
「お前らか!!?」
チクショウ。最近はそうでもないんだぞ。
昔は色々あったんだよ、色々。
多少気分は落とされたが、逆に会場はフェイ姉のお陰で最高潮。
俺は鍵盤に手を添える。
「フェイ姉。始めようか」
「う、うん」
フェイ姉も多少顔は赤いままだが、マイクを握って深呼吸。
俺はそれを確認して、音楽をかなで始めた。
始めは前奏。
そして……フェイ姉の歌が重なる。
I Love you 届いてこの思い
きいといつかは 叶うよね
こんな気持ち せつなすぎるの
始まりなんてわからないの
名前も平凡で どこにでもいそう
でも何万人いても私 きっとキミを見つけるよ
素直な キモチとじこめ
殻にこもった自分がイヤで
気のないフリするそのたびに
ただ痛みが増えてく
キミは何を願うの?
そばにいてほしい
ずっと ずっとそれだけなのに
恋の抑止力
ほらGameの始まる
見つめあえばそらわかるでしょ?
はじまりのベルが鳴る
Listen To My Heart
声にならないこの声
とめて 恋の抑止力
伝えたい 私のすべて
恋の抑止力
ほらGAMEのはじまり
まっすぐな想いがほら 今あふれ走り出す
ひとりなんてもうやだよ 見てよ私のこと
全部キミへと繋がるの どんな未来も過去もずっと ずっと…
この出会いが 世界を変える
放課後クラスに 今はふたり
神様がくれたチャンスよ 時間はただ過ぎてゆく
きっとこのまま ふたりは素通り
背中合わせで 離れてゆく…
I love you届いてこの想い
きっといつかは 叶うよね
こんな気持ち せつなすぎるの お願い止めて…恋の抑止力
演奏が終わる。
一瞬の間。
そして爆発するような歓声が沸きあがった。
その後、当たり前のようにアンコール。
二曲ほど歌った後、ステージを降りた。
「やったね、ウィズ」
「うん。フェイ姉もお疲れ様」
結果、俺とフェイ姉ペアは見事優秀賞を獲得した。
したのはいいんだけど……。
はや姉に声をかけられて六課の隊舎から出たときだった。
ここは都市から少し離れてるお陰で星が良く見える。
寒い風に晒されながら、はや姉から聞かされた言葉は俺を拍子抜けさせた。
「え?もう年変わってるの?」
「そやで?フェイトちゃんが歌ってる……二曲目のときやったかな?」
はや姉から既に年が変わって事を聞かされました。
「うわぁ……。なんかイヤだ」
気づいたら年が変わってるとか、寝て年を越すのと変わんねぇし……。
「そんな事いわへんの。ウィズ。あけましておめでとう」
笑いながら手を差し出してきたはや姉。
新年の挨拶で握手もなんだか編だなって思いながらも俺は……。
「あ、うん。おめでとう」
はや姉の手を握り返した。