魔法少女リリカルなのはStrikerS WitH LAST   作:八神煌斗

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11.歯医者

 「索敵状況は?」

 《此方ではキャッチ出来る範囲には居ません》

 《同じく。索敵範囲内に反応は無い》

 「了解。そのまま索敵しておいてくれ」

 《了解です》《了解した》

 

 

物陰に隠れながら、アテナとレイラの報告を聞く。

索敵も乱用しすぎると居場所がバレるからたまったもんじゃない。

 

もう少し向こうが無能なら常に索敵しておけるんだけど……くそっ。

 

思うように動けないったらありゃしねぇ。

 

 

 「おじいちゃん……」

 「大丈夫だヴィヴィオ。絶対に逃げ切ろう」

 

 

俺の腕の中に居るヴィヴィオ。

少しでも安心出来るようにやさしく声をかけてやる。

あんな小さい事がまさかこんな状況になるなんて思って無かったんだろう。

俺だって思ってなかった。

 

過ぎたことを悔やんでも仕方ない。

とにかく何があってもヴィヴィオと二人無事に出る。

 

とりあえず、出口までの距離はあと少し。

外に出てインビエルノで郊外まで出ればこっちのもんだ。

向こうも大きな動きは出来ないだろう。

 

 

周りに誰も居ない今のうちに一気に行くか。

 

 

そう思い、ヴィヴィオを抱き上げ、立ち上がったとき――。

 

 

 《相棒、魔力反応です!!》

 「な――っ!? しまった、バインド!?」

 

 

体を緑色のバインドで締め上げられる。

そして同時、首に感じる冷たい感触。

 

 

 「やっと見つけたわ」

 「皆に連絡してくれ。……さぁ、観念しろ」

 「く……」

 

 

ここは大人しくするしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今の俺はとある部屋の中央にバインドで椅子に縛りつけられている。

ヴィヴィオは縛り付けられては居ないが、二人の女性に囲まれている。

 

 

 「いーやーだー!!」

 「いい加減観念しー!」

 「あいたぁー!?」

 

 

拳骨で頭を殴られた。

……はや姉に。

 

 

 「暴力で解決しようとするのは駄目だと思います!」

 「ほぅ。未だに自分の立ち位置が分からないみたいだな」

 「いや、俺はただ平和的解決を――そのレヴァンティンは仕舞ってほしいな!?」

 

 

因みにもう分かってるとは思うが、ヴィヴィオの周りに居る女性はなの姉にフェイ姉。

 

 

 「いやー! おじいちゃんも行かなくていいって言ってくれたもん!」

 「あのねヴィヴィオ。ウィズ君の言うこと全部信じちゃ駄目だよ」

 「うん。あんな風になったら駄目だ」

 

 

駄々をこねるヴィヴィオに二人がかりで説得している。

でもな、フェイ姉。あんな風ってなにかな?

 

 

 《何なら代弁しましょうか?》

 「いや、薄々分かってるからいい」

 《ヘタレ、と言う事だろうな》

 「レイラが言っちゃった!?」

 

 

でだ。

なんで俺……というか俺とヴィヴィオがこんな目にあってるかと言うと……。

 

 

 「全く……いい加減観念したらどうだ。医務室でシャマルが待っているぞ」

 「だから大丈夫ですから。うん、これ本当」

 「ならこれを銜えてもらおか~」

 

 

そう言うのは意地悪な顔をしたはや姉。

その手にはキンキンに冷えてるだろうアイスキャンディ。

 

 

 「謹んで遠慮させてもらいます」

 「大丈夫やって。何ともないんやったら美味しいだけやから」

 「いや、そんな奢ってもらうなんて悪い――」

 「ゴチャゴチャ言わんでさっさと銜えーー!!」

 「も、モゴーー!? っ~~~!!?」

 

 

銜えた途端に口に走る痛み。

何て言うか……キーン!ってやつ。

 

 

 「(お願い、取ってください!!)」

 「ほれ。これでも大丈夫っていうんか?」

 

 

喋れないので念話で頼んだ。

意外にもはや姉はあっさり取ってくれたんだけど……いい顔でそんな事を言ってきた。

 

 

 「いやでもさ、虫歯くらい放っておいたら治るって思うんだよ」

 「ヴィヴィオもー!」

 

 

なの姉達に挟まれながらも手を挙げながら言うヴィヴィオ。

 

味方が居るのは嬉しい。

嬉しいけど……なんだろう、皆が俺を睨んでる気がする。

 

 

 「困ったおじさんだね」

 「ヴィヴィオに悪影響を与え始めてるね」

 「あ、ちょ……なの姉、フェイ姉? 目が怖いですけど?」

 

 

いつの間にかレイジングハートとバルディッシュを構えてるし!

しかもコッチ向けてませんか!?

 

 

 《確実に向けてますね、お二人とも》

 《魔力も集まりつつある。マスター、今までありがとう》

 

 

魔力が集まってることくらい見れば分かります!

それにレイラ!今までって何かな!!?

 

 

 「ウィズ君、久しぶりに私達のしつけだよ」

 「久しぶりだし、シッカリやらせてもらうね」

 「あ、やめ……ひ、ヒィィイイイィイィィ!!?」

 

 

 

 「おじいちゃん大丈夫ー?」

 「もう俺の味方はヴィヴィオだけだよ……」

 

 

ぐたっりしていた俺にヴィヴィオが心配してくれる。

なの姉とフェイ姉もさすがにやりすぎたと思ったのか、目線を逸らして気まずそうにしてる。

 

 

 「なのはママもフェイトママもめっ、だよ」

 「あ、あはははは……」

 

 

ふむ。なんか新しい光景だな。

なの姉とフェイ姉の二人がなんかタジタジだ。

 

 

 「で、ウィズ?」

 「……なんでしょうか?」

 

 

スッゴイ笑顔のはや姉に呼ばれました。

その笑顔がスッゴク怖いんですけど、そんな事も言えないから素直に返事する。

だってまだ椅子に縛られたままだもん、シグナム姉さんレヴァンティン構えたままだもん!!

 

 

 「一応~聞くけど、ちゃんと歯は磨いてた……やんなぁ?」

 「み、磨いてた、磨いてヒィィィ!!?」

 「分かっていると思うが嘘を付けばどうなるか……分かってるな?」

 

 

く、首筋にまた冷たい感覚が!!?

あ、今プツって鳴った!!なんか首に伝ってる!!

 

 

 「おじいちゃん、嘘付いたの?」

 「ソレを今シグナムさんが聞いてるところなんだよ、ヴィヴィオ」

 「ヴィヴィオは嘘を付いたらダメだよ?」

 

 

あ~、コラコラ。

俺を反面教師みたいにしてヴィヴィオに教育しない。

今回は本当に嘘付いてないんだから。

 

 

 「あ、アテナ! お前からも何か言ってくれ! 主に俺の無実を!!」

 

 

情けないが、今の俺の状態では言葉に信憑性なんか皆無なので援護を求める。

 

 

 《確かに歯はちゃんと磨いていましたね》

 「ほんまか?」

 《まぁ、その後に色々食べてましたが》

 「……へぇ?」

 「ギャアアァァァァ!!? 何言ってんの、何言ってんの!!?」

 

 

背中任せたら後ろからザックリいかれたんですけど!!?

 

 

 「ウィズ?」

 「う、嘘です! アテナが言ってることは全部嘘だから!」

 《む……因みに歯磨きの時間の極端に短く、歯磨き粉は苦いと言う理由でごくごく少量でした》

 「いやあぁぁぁぁ!!!??」

 

 

だって苦いんだもん。

 

って違う!!

 

 

 「あんたまだ歯磨きできなかったんか……」

 「その同情と哀れみを含んだ顔をどうにかしてください」

 

 

ぶっちゃけ怒られたほうがましだった。

みんなみんな可愛そうな視線を送ってくるもんだか……うん。

言葉にできない。

 

 

 「おじいちゃん、歯磨きできないの?」

 「はぅ!?」

 《あ。相棒になにか突き刺さりましたね》

 

 「小さい子は素直だからな」

 「シグナム、それ何か違います」

 「そうか?」

 

 

さて、話はそれてねぇけど逃げれる雰囲気なんじゃね?

なんて一瞬思った俺を殴り飛ばしたい。

 

何年姉さんたちと付き合ってきたんだよ、って話ですよ。

ここで逃げたもんなら俺は死ねる。

 

物理的に。

 

 

 《じゃぁ逃げます?》

 「お前今まで何聞いてた!?」

 《今ならバインド解除に手を貸しますよ?》

 「……マジか?」

 

 

どこまで行っても俺は変われないらしい……。

目から流れたのは汗だと思いたい。

 

 

 「いや、やっぱりいい。死にたくねぇし」

 「ほぅ……貴様は死んでみたかったのか?」

 

 

 

 

 

 「なんかもう……ホントスミマセンでした」

 

 

5分後、とりあえず全力で謝ってみた。

その間に何があったかは想像してほしい。

 

いや……思い出させないで欲しい。

 

 

その後はまぁ、結局俺ごときが姉さんたちの鉄壁の陣営に勝てるはずも無く歯の治療をされました。

 

 

 

 

 

で、その夜。

 

 

 《それで相棒?》

 「ん~?」

 

 

自室のベッドに寝転んでいた時にアテナが声をかけてきた。

俺は体を起こし、ベッド横にある台の上に置いていたアテナを見る。

 

 

 《もう六課解散まで一ヶ月切りましたが、どうするんですか?》

 「あ~……そのことか」

 《はやてさんからも催促のメールが来てますよ。今日明日中に提出しなければ自分の下に付かせる、と》

 

 

それはそれで魅力的なご意見で。

 

ってか本人はそうなると思ってるんだろうな。

どれだけ奇跡の部隊に所属していたっても、一ヶ月切ってるし。

何より俺の事はJS事件で管理局に知れ渡っている。

この時期に俺の事を受け入れてくれる部隊は少ないはずだ。

 

 

でも……

 

 《相棒。決まっているなら早く言ったほうがいいですよ?》

 「やっぱ分かるか?」

 《相棒とは長い付き合いですからね》

 

 

なるほど。

そりゃ納得だ。

 

 

 《因みに私は何を言っているのか分からん》

 「それ言う必要あったか?」

 《私を忘れてるのでは無いかと思ってな》

 

 

正直忘れてました、はい。

だって最初の方にちょこっと出ただけだもん。

 

……ん? 最初の方ってなにさ?

 

 

 《とりあえず、明日にでもちゃんとはやてさんに言ってください。いいですね?》

 「あぁ。分かってるよ」

 

 

明日……いや、今からでも行ってちゃんと言わせて貰う。

 

俺の考えをしっかり言って、納得してもらう。

納得して欲しいな。

 

 

 

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