魔法少女リリカルなのはStrikerS WitH LAST 作:八神煌斗
「っ……」
まさか、まだ稼動していたなんて……ミスった。
抜け出す事はできたけど……ココから出てもアイツは追いかけてくる。
……巻き込みたくない。
コレは私たち兄妹……いえ。
私、親子の問題。
「――っ!?ここも時間の問題かしら……」
後ろから魔力を感じた。
ココにいい場所だと思ってたんだけど。
そろそろ、本気で脱出しましょうか。
私は疲労が溜まった体に鞭を打ち、再び立ち上がった。
Side out
一週間前、ユリアが姿を消した。
始めはただ一人でフラッと出かけただけかと思ってたが、こうも長期間だと違うだろう。
そもそもあのユリアの誕生日会の日、様子がどうもおかしかった。
俺たちはユリアの捜索を始めた。
一週間。
それだけ経っていたらもうミッドに居ない可能性もあった。
一般市民にも転送ポートの使用許可を取るには十分すぎる時間だったからだ。
だけど、その心配も杞憂だった。
目撃情報は思いのほか早く、被害情報や苦情と共に向こうからやってきた。
「ここですね」
「だな。……っつかアイツはこんな所で何やってんだよ」
バイクから降り、辺りを見回す。
目撃情報が集中しているのは今俺が居るここ。
ミッド郊外の廃墟街。
街としての機能はほぼゼロ。概観は保っているけど、壁も床もあちこち砕け落ちているビル。
多分まともに機能してるものって言ったら今俺が立っている高速道路だろうな。
ま、この道路も通行止めになってるから、使われてはいねぇんだけどな。
「ユリア、大丈夫かなぁ」
「その辺りも含めて聞き出せばいいでしょ」
俺の隣でティアナとスバルが会話を交わす。
この二人を連れてきたのははや姉の指示。
まぁ、それはこの場所と、ユリアと一緒に来た苦情も関係してるんだけど。
ここでは日頃から俗に言う暴走族がレースをやっているらしい。
郊外って事もあったし、何故か騒音も……最低限しか出さないヤツらだったから管理局も注意はするけど、大目に見てた。
だけど最近、それがどうも違うらしい。全てが逆。
典型的な暴走族に成り下がった。
それがユリアの目撃情報と重なってだ。
それにもう一つ。
その族の中に魔道士落ちが居るとの報告もあった。
そいつはバイクに乗りながら魔法行使なんて意図も簡単にやってのけるらしい。
俺が言うのもなんだけど、ソレって結構難しい。
事実俺も、そんな大きい動きは出来なくなるし、魔法もアテナの負担が大きくなる。
陸士部隊でそんな事をする機会なんてまず無いから翻弄されまくり。
空や海が出しゃばることもなし。
そこで俺たちに矛先が向いてきた。
その情報の中にユリアらしき人物が見えたのは本当に偶然。
現場の状況を考慮した結果、選抜されたのが俺とティアナ、スバルの三人だった。
眼には眼を、って感じで俺が一番に選ばれた。
ティアナたちは自分から申し出た。
なの姉たちが最初は出ようか、って話になってたんだけど、調度いい経験だろうってことでOKサイン。
俺たち三人でこの事件を調査することになった。
「さて、たまり場まであと五分もねぇな。ちゃちゃっと行くか」
「はい」「はい」
休憩終わり。
俺はインビエルノに跨り、ティアナももう一台のバイクに跨り、スバルはその後ろ。
因みにこのバイクはヴァイスさんが最近買ったやつ。
一番に乗ったのはティアナになっちまったけどな。
さて……何か情報が掴めるといいけどな……。
道路に設けられたパーキングエリアの一箇所をたまり場にしているらしい。
そのパーキングエリアは他の所に比べ駐車場も少し狭く、コンビニを2~3倍した程の建物が一件、建つだけ、との事。
俺たちは情報通りにソコにたどり着いたんだが……。
で、たまり場に付いたんだが……。
「管理局員が一体なんのようだ?」
正面から乗り込んだお陰で、族に囲まれてしまいました。
《(どうします?シメちゃいますか?)》
首にかかっているアテナが念話で物騒なことを聞いてきた。
スバルとティアナにも聞こえたのが、噴出した。
「(アホか。ユリアの事も聞かねぇとダメだし。そもそも一般人への攻撃は許可されてねぇよ)」
《(黙ってれば分かりませんって)》
コイツ、いつか捕まると思う。
最近あまりにしつこいからアウトをリィンと構想してたけど……本気で破棄しようか悩む。
絶対に俺の見てないところで何か事件起こす。
「おい。黙ってねぇで何かいったらどうだ!?」
ずっと念話をしてたせいで向こうが痺れを切らして声を荒げてきた。
一瞬スバルの肩が跳ね上がる。
お前の方が全然強いからビビることねぇのに。
「なら率直に聞くぞ?最近コイツを見なかったか?ユリアってんだけど」
制服からユリアの写真を一枚取り出してリーダーだろう男に見せる。
なの姉が俺に渡してくれたやつだ。
撮ったのは多分クリスマスパーティーの時だと思う。
ついでに言うとユリアは酔ってないっぽいから最初の方に撮ったんだろう。
なの姉がユリアの後ろから両肩を持って笑ってて、ユリアは驚いた顔。
多分なの姉が行き成り撮ったんだろうなぁ。
《(相棒相棒。そんな簡単にそれ見せちゃってよかったんですか?)》
「(あ?なんで?)」
と、答えを聞く間もなく、次の瞬間にその意味を俺は理解した。
「おい!これ高町なのはじゃねぇか!!?」
「本当だ!……って、この隅に写ってるのって……」
「あぁ、間違いねぇ、フェイト・T・ハラオウン!」
「おいおい、プライベート写真かよ」
俺たちそっちのけでその写真に群がる族共。
そりゃリーダーの近くに居なかったヤツはその場に留まってっけど、その眼はチラチラそっちを見てる。
そういやなの姉たちのプライベート写真なんて、その手のやつらからしたらこれ以上無いレアアイテムか……。
さっきまでの殺伐とした空気はもうねぇけど……今度は緩みすぎだ。
手に持った写真もどうしていいか悩むし……。
どうしたもんか。
そう考えてた時だった。
《相棒!!》
「――っ!?」
アテナの声を荒げた瞬間、俺でもハッキリ感じれる程の魔力を察知した。
ティアナたちも感じたようで、俺達はその場から後ろに跳ぶ。
刹那、俺の居た場所にいくつもの魔力スフィアが打ち込まれた。
逃げ遅れた族の何人かにもそのスフィアは当たる。
「ちっ――。上か!」
俺たちの目の前に経つ建造物、その屋上を見上げる。
ソコには10は有るだろう人影。
そしてその中の一人、白髪、眼帯の20代後半に見え体つきの良い男がコッチに杖を向けていた。
「おいテメェ!何しやがる!!?」
俺たちを囲んで居たうちの一人が声を荒げた。
既にコイツらの標的は俺たちからあの集団へと変わっている。
「――何をする?」
静かに、その眼帯の男は口を開いた。
それだけなのに、辺りに緊張が走った。
アイツはマズイ。
ソレだけが分かった。
「面白いことを言うじゃないか?管理局にココを感づかれた無能共はどこのドイツだ?」
「ぐっ……」
一瞬、俺たちを一瞥し、再び回りの俗に視線を戻す。
「(ウィズさん)」
「(テイアナか?)」
これからどうするか、そう考えてるときにティアナから念話が来た。
「(報告にあった魔道士落ち、それが……)」
「(アイツ……いや。上に立ってる奴ら全員って考えたほうが良いかもな)」
「(私もそう思います)」
現状を見るに、このグループは二つに分かれている。
あの上に立ってる奴らと、俺らを囲んで居た奴ら。
魔道士落ちが眼帯のアイツだけじゃない、そう考えるのが自然だろう。
「契約忘れたわけじゃぁ、無いだろう?なら、テメェらに与えた仕事、ソレくらい全うしろや」
契約?仕事?
気になる単語がいくつか出てきたが、俺が口を挟む間もなく、上に立っていた奴らは位置を変えたんだろう。俺たちの視界から消えた。
「ち、チクショウガァァ!!」
「――っ!?」
途端、一人の男が叫んだ。
その手には……ナイフ。
そのナイフを構え、一直線に俺に向かって走り出してくる。
「――ちぃっ!」
《ダメです、相棒!》
「あん?――!?」
迎え撃とうと構えた時、アテナが叫んだ。
そして俺は気づく。
後ろからも、別の男が……質量兵器、名前なんてわかんねぇ。
銃を構えていた。
どうする!?
一瞬の隙が出来た。二人を同時に撃退は出来ない。
「ウィズさん!」
横から声が聞こえ、青い光耀が眼の端に見えた。
――取る行動は決まった。
俺は身を屈めつつ、反転。アテナをノーマルソードで展開した。
《blanco Sphere》
そして剣先を向け標準を定める。
刹那、頭の上を、一つの、スバルの拳が通り過ぎ、ナイフの男に吸い込まれるように直撃した。
《fire!》
そして俺は目の前の銃の男にスフィアを打ち込んだ。
《相棒、一般人への攻撃は認められてはいないのではなかったですか?》
「……黙ってたらバレねぇよ」
《いつか捕まりますよ?》
お前が言うな、お前が。
……んまぁ、正当防衛だし大丈夫だろう。多分。
「ぐはぁ?!」
「あん?……うわぁ」
なんて暢気に考えてる間に、俺たちを囲んで居た族たちは倒れ苦しんでいた。
そして俺の後ろで小さく息を吐き出した二人。
仕事が速いのね。
「ウィズさん。どうしますか?」
直ぐに俺に指示を仰ぐティアナ。
後ろでスバルもコッチを見ている。
「とりあえず中に入るぞ。あの魔道士落ちを捕まえる」
「はい!」「はい!」
そして三人で向き直った。
――その時だった。
なんだこの音は……?
何か重い、腹に響くような音。
聞きなれた気もするが、壁に遮られているのか分からない。
二人も気づいてるみたいで耳を澄ましている。
「はっはぁーーー!!」
「っ!!?」
刹那、不愉快な叫び声と共に壁を砕く音。
そして、バイクのエンジン音。
さっきの眼帯の男と、その部下たち。
そいつらが漆黒のバイクに跨り、飛び出してきた。
タイヤ部分から火花を撒き散らし、真っ直ぐコッチに向かってくる。
「このまま逃げるきか!?」
「させない!」
声を上げたのはティアナ。
俺の横に立ち、クロスミラージュを構える。
「クロスファイア……」
「テメェ等、撃てぇ!!」
しかし、一瞬。
一瞬向こうの方が早かった。
後ろについていた部下のような男たち。
そいつ等が一斉に魔力スフィアを撃って来た。
なの姉たちに比べれば術式も緩いし威力も無い。
だが、コッチが驚いていた、その隙を付かれたのも事実。
《Hyperion(ハイペリオン)》
防ぐしか手は残されていなかった。
俺が一つ、自分に。アテナがティアナとスバルを守るように一つ。
二つを張り、全てを防ぎきる。
だが――。
「はっはぁ!!」
防ぎきることがやっとだった俺は、真横を笑いながら通り過ぎる男たちを全員逃してしまった。
「くそっ!」
ハイペリオンを消し、後ろを向くが既に姿は見えず、音が遠ざかっていくのみ。
あいつ等を今すぐ追いかける事はできる。
出来るが、ティアナたちは?
ライドバトルは普通の戦闘とは違う。
少しのミスが命取りだ。
ここは二人を置いて、俺だけで――。
だけど、二人は違った。
俺を見ている。
指示を、次に自分たちがするべきことを聞く為の。
ソレを必ずやり遂げるという、強い眼差しで。
「……乗れ!直ぐに追いかけるぞ!」
「はい!」「はい!」