魔法少女リリカルなのはStrikerS WitH LAST 作:八神煌斗
ユリア side――――――――――――――――――
「しつ……っこい!――create(クリエイト)・ave(アヴェ) !――」
作り出すアヴェは小さく、数も少ない。
あくまで攻撃目的じゃなく、足止め、牽制目的。
だけどそれも、いとも簡単に、全て切り伏せられてしまった。
ただの魔力へと四散していくアヴェを見て、私は舌を鳴らした。
「分かってても、ムカつくわねぇ……!」
どれだけの窮地に立たされても、口調だけはいつも通りに。
自分で決めた最後の壁。
これだけは絶対に壊さない。
「何よその眼は。私一人なのがそんなに不満?」
そう言うけれどヤツの眼に写ってるのが不満じゃ無いことくらい分かる。
ヤツの眼に映ってるのは羨望。そして絶望。
今の私の状況に対する、がつてのヤツが望んだはずの未来に対する羨望の眼差し。
……一瞬、一瞬だけどここに来る前、なのはには一言、強力を求めようか悩んだ。
けれど、私はソレをしなかった。
なのはに……いえ。
六課の連中に言ったら、絶対に引き止めるか、一緒に来たでしょうから。
でもコレも表面上の理由に過ぎないのよね。
だって私にも話さなかった本当の理由が分からないから。
唯一分かるること。
今対峙しているコレは
コレは、私が切らないと、意味が無いということよ!!
「はあああぁぁぁぁ!!」
side Out ――――――――――――――――――
「邪魔だアァァ!!」
目の前から襲い掛かってきた奴らを全てなぎ払い、更に前へと進む。
――風景が後ろに、凄い勢いで流れていく。
普段からバイクに乗っている俺でも、多少の恐怖を覚える速さ。
一瞬のハンドル操作が、俺の一瞬先の運命を左右する。
だが、それでもスピードを緩める訳にはいかない。
緩めでもしたら、目の前のヤツらを見逃してしまう。
見逃せば、奴らは姿を眩ますのは確実だ。
そうなれば事件は解決したことにはならないし、何より……。
ユリアの手がかりが無くなる。
「そうは……させねぇ!」
アクセルを絞り、更に速度を上げる。
《相棒!速度を上げすぎです!》
「んなこと言ったって、あいつ等の速度を考えろよ!?」
実際、アテナの言う事は正しかった。
俺はインビエルノで今のような速度は出したことが無い。
だが、それと同等に奴らは速かった。
今アクセルを絞り、ようやく速度が並ぶか、それほどの速さ。
テクニックがある訳じゃない。客観的に見ても俺の方が上だろう。
なら今のこの差は何か。
経験だ。
あいつ等は最近毎日、この道を走っていた。
当然、この道の走り方を熟知している。
それが、明白な差だった。
《そうは言ってもです!この綱渡りは危険すぎます!》
「なら一体どうしろって言う――っ!」
言葉を飲み込み、ほぼ反射的にハンドルをきる。
瞬間、俺の頬をかする様に数個のスフィアが通り過ぎた。
後ろで爆発音がする。
スバルとティアナがどうなったのか。そもそも付いて来ているのか。
気になったが今の俺には後ろを見る余裕が一切無い。
それほどまで、俺は経験したことの無い速度で今走っている。
《第二射、来ます!》
「――っ!」
後ろに意識を割いていたせいで一瞬反応が遅れた。
「ちぃっ!アテナ!」
《ハイペリオン!》
避けることができないなら防ぐ。
衝撃でバイクが揺れる事に備え、重心を低くし、備える。
しかしその予想は大きく外れることになった。
「なっ――」
二度目に撃たれたスフィアは俺の俺たちの間に着弾、爆煙を巻き上げた。
俺を狙うんじゃなく、前?――眼くらましか!
《相棒、罠です!》
「分かってるけど……でも!!」
旋回……ダメだ!スリップして転ぶのがオチだ。
なら迂回……くそっ!
元高速道路だけあって、早々道が分かれてる訳でもねぇか!
《私を接続してください!》
「駄目だ!奴らが待ち構えてたら対抗できねぇ!」
レイラは今、六課で調整中で持ってきていない。
アング戦での負傷がシステムの根幹付近まで来ていたらしく、ランスへと可変が出来なくなっていた。
だからこそ、六課に置いてきたんだが……!
「ウイング・ロード!」
「っ!」
声と同時、俺の右手に蒼い道が、砂埃を迂回するように大きな曲線を描いた。
《驚いている場合じゃありませんよ!》
「――だな!」
ハンドルをハンドルを右に切り、体も傾ける。
進路方向を変え、俺は青い道を滑走する。
「いた!」
迂回した青い道の上で下を見る。
そこに見たのは案の定、俺を討つ為に待ち構えていただろう二人の影。
現れた第二の道を走る俺を唖然と見上げている。
「だからお前たちは駄目なんだよ」
《相棒もまだまだ人の事を言えた義理じゃないでしょうに》
「うるせぇ」
《ま、言う事ま間違ってませんけどね》
更にアクセルを絞る。
あの二人は既に俺の眼中には無い。
なぜなら――。
「スバル!」
「うん!」
俺とは逆、左側に再び現れる蒼い道。
そしてソコを滑走する二つの影。
その見ていない、気づいていない影こそが、お前たちを討つ相手だ!
「クロスファイア……シュート!」
「うごっ!?」
影の一つ……ティアナが撃つオレンジのスフィアは真っ直ぐ待ち構えていたうちの一人に直撃した。
当然、もう一人はそのうめき声に反応してそっちを見る。
だが既に遅い。
その男の上に、一撃くれてやるためにもう一人。
俺の仲間が頭上から攻撃を仕掛けている。
「はあぁぁぁ!」
「なっ――ぐふぅっ!?」
スバルに殴り飛ばされ、バイクから転げ降ちる男。
俺はソレを横目で確認しながら、再び高速道路に降り立つ。
ハンドルをひねり、横向きになるように停止させる。
直ぐに、ヴァイスさんのバイクに乗ったティアナ。
自身のデバイス、マッハキャリバーで走るスバルが俺に並ぶ。
「スバル、ティアナ。助かった!」
「いえ!それより早く、先頭を追いかけましょう!」
「あぁ……!」
視界の隅に、見えた。
スバルが殴り倒した男。
その男が身を起こしながら、その手にスフィアを形成しているのが。
「スバル、避けろ!!」
「え――っ!?」
刹那間に合わなかった。
スバルは体をヒネルように避けようとしたのだが、右肩にかする。
「くっ!」
直ぐにティアナがスフィアを打ち込み男は今度こそ気絶した。
「スバル、大丈夫か!?」
「はい。掠っただけですから、任務に支障はありません」
そう言うスバルだが、見るからに顔をゆがめている。
左手で右肩も抑えてるし、いくら掠っただけ、とは言っても痛みは有るんだろう。
本当はココで休ませておきたいけど、言う事聞くようなヤツじゃないってのは分かってるし。
「あんまり、無理すんなよ」
とだけ言っておく。
大丈夫。
いざとなったら俺が守ればいいだけだ。
絶対に、守りきればいい。
「ウィズさん!あそこ!」
ティアナに急かされ、前を見る。
そこには俺たちはソコで討たれるだろうと、傍観に徹して、止まっていた奴らが慌ててバイクを走らせていた。
「逃がさねぇ!スバル、もう一発ウイングロードだ!」
「え?……っ!はい!」
無理をさせてるのは分かる。
でも、今はソレしか思いつかなかった。
一瞬、俺の言う意味が分からなかったようだが、直ぐに理解し、再びスバルが一本の蒼い道を空に向かって伸ばす。
俺はその道のが終着点へとたどり着く前にアクセルを吹かし、道を走り出す。
「……見えた!」
相手より上の位置を確保した俺は簡単に奴らを視認することが出来た。
そして同時に、この先の道路がどの様なつくりになっているのかを確認する。
頭の中では次にどう動き、
《って相棒!前、前!!》
「んぁ?なんだ……とぅ!!?」
《マヌケな声出してる場合じゃありませんよ!!》
「わかってるよ!!」
俺の目の前に広がるのは一面の青い空に眼下に広がる廃郊外。
まぁ、人間イザとなると冷静になるもんだなぁ……て!
「んな訳あるかぁ!!」
《だから私はスピード出し過ぎって言ったんですよぉ!!》
そう。俺の目の前には一つ足りない。
ウィングロードだ。
俺がそれだけスピードを出したなんて事は無い。
原因はスバルが負った右肩の怪我だろう。
いくら掠っただけでも、それで魔法の効率が悪くなることだってある。
スバルが悪いんじゃない。
でも……。
このままだと落ちる。
絶対痛い。
「ズバル!ウィングロード!早く!!」
《聞こえるはず無いでしょう!!あぁ!こう言ってる間にぃぃ!!》
「ぎゃああぁぁぁっ!」
なんて馬鹿言ってる間にウィングロードは無くなり、俺は宙へと飛び出した。
「だあぁぁぁぁ!!?アテナお願い、何とかして!メンテしてあげるから!!」
《いつでもメンテで釣られると思わないでください!》
「じゃぁメンテ無しでいいんだな!?」
《……とりあえずウイング展開したらどうですか?》
「それだ!!」
やっぱり単純だなぁ、と思いつつ、アテナを直ぐに待機モードへ変更。
指輪となったアテナをハンドルの間に差し込む。
《接続を確認。ウイングソード、展開準備OKです》
「よっしゃ!ウィングソード、展開!」
《了解。ウィングソード展開します!》
イングエルノの両側部が変形し、そのから白銀の圧縮魔力刃を展開させる。
これでも飛ぶことは出来ない。
もともとちょっとやそっとの事で壊れるようなインビエルノじゃない。
なら後は俺の問題だ。
ウィングを展開したおかげで俺は多少の空中での移動手段を手に入れた!
《空中ではバランサーは機能しません!お願いします!》
「おうよ!お前はウィングの形成に集中してろ!」
そして俺は座席に片足を乗せ、半身を取る。
要領はスケボー。
体の重心で左右に動き、残りのヤツラまで追いつく!!
「――って、スピード速ええぇぇぇぇ!!」
《喋ってると舌噛みますよ!》
いくらウィングを羽代わりにしたからと言ってもインビエルノには飛行機能は無い。
つまり落下速度がほんの少し遅くなっただけで、落ちる事には変わりない。
いや、逆に羽が出来た分角度をミスったらそれは凄い勢いで落ちるだろう。
「くそ、後悔今更ってことかよ!」
悪い予想を首を振って、消し払う。
ココまで来て後戻りは出来ねぇ!!
覚悟を決め、前傾姿勢に体制を変え更にスピードを上げる。
スピードは更に上がるが、前傾姿勢を取った分姿勢制御が取りやすくなった。
これでヤツ等に追いつける。
だがリーダー各の眼帯の男も逃げ切れないと観念したのか。
その場で急制動をかけ、片足を軸に火花と砂埃を上げながら半回転。
先ほど持っていた杖を取り出し俺に向けてきた。
《相棒!》
「大丈夫だ!」
更に重心を前へ。
このタイミングで落ちました、じゃ笑い話にもならねぇ。
だが、その間にも、眼帯の男は杖を中心に魔力スフィアを作り始める。
数は驚くほどではないが、確実に平均よりは作っている。
そしてそれは、主の命令を受け、俺に向かい飛来する。
俺と眼帯の距離は目測で50メートル弱。
あのスフィアを交わせば俺の勝ち。
交わせなければ負け。
簡単な構図だ。
「ハイペリオン!」
展開したのはアテナではなく、俺自身。
前に展開して飛来して来るスフィアを防ぎきる。
それを見てか、再びエンジンをふかし始める残りの二人。
「これ以上逃がすか!アテナ、いくぞ!」
《デバイス使いが荒いですよ!?》
「うるせぇ!」
同時、俺はアテナをハンドルから抜き取り、テクニカルに展開する。
ウィングは勿論消えるが問題は無い。
「っ――!?なに!」
驚きは眼帯野郎の声。
俺はインビエルノを踏み台に、ヤツラに向かって突貫したのだ。
勿論、インビエルノを待機状態にして腕に戻すものも忘れない。
「ちぃ!」
覚悟を決めたのか、コレがチャンスだと思ったのか。
再び俺に打ち出されたスフィア群。
だが、ソレに誘導性が無い事はさっきので確認済みだ。
だからこそ、俺はインビエルノから降りた。
「アテナ!」
《ハイペリオン!》
左右に縦に作り出される足場(ハイペリオン)。
俺はソレを蹴り、左右に体を振ることで全て交わす。
ヤツとの間に遮蔽物……邪魔なものなもうねぇ!!
《sword donce》
「シングル・カラーズ……特盛りぃ!!」
打ち出す。
特大サイズのシングルカラーズ。
それは二人巻き込み、爆発を起こした。
そして俺は、自分の足で道路に立った。