魔法少女リリカルなのはStrikerS WitH LAST 作:八神煌斗
「ここ……か」
《罠の類は無いと思いますが、注意はして置いてくださいね》
「分かってるって」
例のヤツらを全員捕まえた後、俺は廃施設に来ていた。
ユリアがあいつ等の前に現れたのは一週間前。俺たちの前から姿を消した日と重なる。
なんでも突然現れ、我が物顔でやつ等の拠点を寝床にしていたらしい。
そして朝早くに姿を消して夜にフラリを戻ってくる。
その繰り返しだったらしい。
そんなある日、メンバーの一人がユリアを見かけ後を付けた際、この施設を見つけたらしい。
尾行に気づかなかったのか、放っておいたのか。
ユリアの場合どっちの可能性もあつから何とも言えねぇけど。
「にしても、ここって……」
《管理局が保持していた施設ですね。現在は別所に移設しているので破棄されているはずです》
「だよなぁ」
そんな所になんの用があったのか。
全く予想できない訳じゃねぇけど、どっちにしろ本人に聞かなきゃわかんねぇか。
「よし、入るか」
因みにスバルとティアナにはヤツ等の見張りを頼んでおいた。
スバルの怪我のこともあるしな。
施設の中は妙に暖かかった。
っても、そとよりは寒くないって程度だけどな。
暖房が効いている様子もないし、考えられる事っつったらどっかで機械が稼動してるってところか。
警戒を一層強め、一歩踏み出した時だった。
大きな爆発音と共に、俺の目の前の壁が崩れたのは。
「っ!?なんだ!?」
《――!相棒!この魔力、ユリアさんのものです!》
「はぁ!?マジかよ!」
こんな所で何やってるんだ。という考えと同時にヤバイ状況なのも分かった。
俺は急いでセットアップをし、未だ爆煙が充満するソコに進入した。
「――ユリア!?」
暫く進む、なんて所じゃなかった。
崩れた壁を跨いだ瞬間、俺はユリアの姿を確認した。
「……ん?あぁ、ウィズじゃない。どうしたの?」
「そりゃこっちのセリフだよ!一体何があったんだよ!?」
当の本人は疲労してる様子はあったがいつも通り俺に話しかけてきた。
だがいつも通りなのはその口調だけ。
ジャケットはもうボロボロだし、疲れが前面に出ている。
「大声出さないの。そうね、とりあえず外に連れてってくれない?」
俺に対する言葉遣いもどこか弱々しい。
とりあえず言われたとおり、ユリアの肩を担ぎ施設外まで連れ出す。
「おもっ……」
「アンタ、覚えてなさいよ……」
「いや……さすがに全体重を任かされるとだな……」
いくら軽くってもソレはキツイって。
コレでも戦闘後なんだぞ?
《ユリアさん、微力ながら私も……》
「お前まで!?」
《女性に体重の話は禁句ですよ!それが例え身内でもです!!》
あ~……そう言えばはや姉とかそんな事言ってたなぁ。
いつだっけ。
アリサさんに体重聞いたとき……だったなぁ。
いやはや、あの時はこの上なくリアルに死を感じたなぁ……。
って、そうじゃねぇって!
「で、お前は六課飛び出して今まで……つかここで何してたんだよ?」
そう聞くとユリアは口を閉ざした。
だんまり……って訳じゃなさそうだな。
何から話していいか考えてるって所か?
施設に入ってすぐの所だったから特に時間も掛からなかった。
外に出てとりあえず壁にユリアをもたれさせる。
「あんたの誕生日聞かれたときに、お母さんの記憶を覗いたでしょ?」
「ん?あぁ、そうだったな」
唐突に説明を始めたユリア。
呼吸は落ち着いたみたいだし、話をゆっくり聞くことにする。
にしても……なんだ、この不快感。
ユリアに対するもんじゃねぇし……なんかムカムカする。
「あの時に少し見えたのよ、ココがね」
「ココって、この施設のことだよな?んでも何でそんなにボロボロになってんだよ?」
「今から話すから少し待ちなさいよ」
いつもの嫌味にも全く覇気がない。
こりゃ相当まいってるな。
「ここね、アンタが生まれた……ううん、作られた場所なのよ」
「……は?」
「あぁでも勘違いしないでよ。誕生日調べるために来たんじゃないから」
「ちょ、チョイ待ち!」
急に饒舌になったユリアに静止をかける。
話がぶっ飛びすぎて付いていけない。
だがユリアは話をやめない。
「時間ないんだから黙って聞きなさい。生まれた場所って言ってもアンタの元が生まれた場所よ」
「俺の元……?」
「そ。実験体番号24番。そいつが出来たからアンタやトウギが生まれたの」
俺は黙ってユリアの話を聞く。
時間が無いって言うのも気になるけど、ウソは言わないやつだ。
本当に時間が無いんだろう。
「つまり、ここにお母さんも居たのよ。だから何かお母さんの品でもあるかと思ったら居ても立っても居られなくてね」
「それで飛び出したのか……。でもなんで何日も帰ってこなかったんだよ?」
「電気が生きてたのよ。だからもしかしたらお母さんが今でもココに顔を出してるんじゃないと思って……」
その言葉を聞いてハッとした。
そうだ。コイツはその見かけと性格で忘れそうになるけど、まだ10になってない子供なんだ。
それが母さんの手がかりがあればこんな無茶をして当たり前だ。
「それで入り浸ってたんだけど……その時に厄介なのを起こしちゃってねぇ」
「厄介なの?」
と、ユリアが言うと同時。俺が首をかしげた瞬間に施設の壁の一部が吹き飛んだ。
「ちっ。もう少し持つと思ったのに……」
「あ、おいっ!」
フラフラの体に鞭打つように、壁に手をかけながら立ち上がるユリア。
俺にはもう入ってくる情報が多すぎて展開が速すぎて付いていけていない。
ただ、さっきまでの不快感は増すばかりだった。
壁に開いた穴から煙が湧き上がる。
そしてその中からゆっくりとした動きで現れたのは……一つの人型だった。
それは煙で見えないのではなく、姿を確り見ての表現だった。
例えるなら服を着ていないマネキンがピッタリくる。
ただ色は紛れも無い銀色だけどな。
「create(クリエイト)ave(アヴェ)」
ユリアが叫び、作られたアヴェが次々に人型に攻撃に掛かる。
「おい!何なんだよ、アイツ!」
「さっき言ってでしょ!実験体番号24。アンタの設計図の基盤になったモノよ!」
「はぁ!?」
あんなのが、俺の元!?
俺はてっきり普通の人間だと思ってたぞ!?
「元々、24番は実験の過程で偶然で出来たものなのよ」
俺の動揺が伝わったのか、再びユリアが説明を始めた。
「だから生物とは言わない。ただ動くモノって意味では動物ってのがしっくりくるかもね」
くるかもね。じゃねぇよ。
目の前にはユリアのアヴェを食らったのに、何事も無かったように立つ24番。
眼はないはずなのに、俺たちを捕らえていると、何故か確信があった。
「私が変に弄ったせいで、眠ってたのを起こしちゃってね。今日ようやく逃げ出したのよ」
「今日……ようやく?」
さっきから頭に引っかかるナニか。
それが何か分からないが、今は目の前のヤツに集中するしかない。
「本当は私一人でカタをつけるつもりだったんだけど……」
「あぁ。アイツを野放しすんのはよくねぇって事くらいは俺でも分かる。――アテナ!」
《Technical Silhouette》
アテナをテクニカルに変え、ユリアの一歩前に出る。
「もう大分弱らせてると思うけど……油断はしないでよ」
「おうよ」
「ついでに、足引っ張らないでね」
「おう……おぉう!?」
ついに嫌味が出ましたか!?
このタイミングで!!?
「――っ!来るわよ!!」
「あー!!ちくしょう!!」
そして俺は24番に向かって走り出し、ユリアは一歩後ろに跳ぶ。
「create(クリエイト)ave(アヴェ)plunge(つっこめ)」
走る俺の横を数羽のアヴェが通り抜け、再び24番に突っ込んだ。
だが、結果は違った。
24番が手を横になぎ払うだけで、アヴェは真っ二つに切られ、爆発することも無く消滅した。
「止まらない!」
「――っ!」
ユリアの渇で止まりそうになった足に力を入れなおす。
「はあぁあぁぁぁ!!」
「create(クリエイト)ave(アヴェ)」
再び紡がれるユリアの呪文。
そのアヴェはやつからは死角、俺の影に潜ませていたものだろう。
その速度は今まで俺が見た中でもトップクラス。
だがそのアヴェでさえも、24番は体制を崩すとまではいかなかった。
アテナのグリップを握りなおす。
やつの体の硬さはアヴェを見て確認済みだ。
貫通力が自慢のアヴェでさえも、通用しない。
今展開しているのはテクニカル。
ノーマルにさえ若干攻撃力が落ちるシルエット。
――なら!
「アテナ、バスターソード!!」
《相棒!?》
「いいから!!」
バスターにするメリットが無いと踏んだのか、アテナは驚きの声を上げた。
説明してる暇は無い。
声を荒げて無理やり説得し、バスターソードに変形させた。
「カートリッジ!」
一発、カートリッジが排出される。
その間に俺は24番の懐に入り込み、体がずれない様に確り踏み込む。
「ソードダンス……サードカラーズ!!」
剣は地面でなくヤツの体に直接叩き込む。
「あああぁぁぁぁ!!」
後ろに飛ばされそうになるのを必死に堪え、アテナを振りぬく。
さすがに体全体に掛かる衝撃には堪えられなかったようで、24番はハデに吹っ飛ぶ。
そのまま施設の壁にぶつかり、砂埃と瓦礫の中に姿を消した。
「づっ!――ととっ」
そして俺の手を襲った軽い痺れと痛みにアテナを落としそうになる。
《そりゃそうなりますよ》
「アテナ?」
若干声のトーンが落ちてるいがしないでもないが、そこはスルーさせてもらう。
「もともと、その攻撃は下から上に衝撃が来るんでしょ?」
「ん?まぁ、そうだな」
次にふら付きながらもユリアもコッチに近づいてくる。
「自分に掛かる衝撃の向きは違うから、腕の負担も違ったんでしょ」
《その通りです。少しは私の方でも抑えられますが、筋肉への負担は前もって言ってもらわないとどうしようもありませんね》
「ぬっ……」
なんで行き成り俺は二人に責められてんだ?
いやそりゃねぇ、自分でも少し無茶かとは思ったけどさ……。
俺頑張ったんだよ?
褒めてとはいわないから責めないでくださいホント。
「ま、一応は良くやった、って所かしらね」
と、表情が一遍し柔らかく笑うユリア。
まだ若干砂埃が舞うソコを見ればどれだけココが使われてなかったか安易に想像できる。
「トドメ……刺さないとね」
消えそうな声が、俺の耳に入った。
それに俺は何も答えない、答えることが出来ない。
トドメを刺す……ソレは文字通りの意味。
あんな見てくれとは言え、殺すという事に抵抗が無い訳じゃない。
いや、どっちかってと抵抗が大半をしめている。
だけどアイツはこのままだと危険だ。
割り切らないといけない……。
「いいわよ別に。アンタは向こう行ってなさい」
俺の考えてることが分かったのかユリアが静かに言った。
まぁ、それだけ顔に出てたって事なんだろうなぁ。
「お前、気を使うこととか出来たんだな」
「ちぎるわよ?」
「ゴメンなさい!!」
直ぐに後ろを向く。
いや、シリアスな空気過ぎたから少しふざけただけじゃないですか。
思った万倍は怖かった。
ってかちぎるってなんだよ、ちぎるって。
よくそんな表現出てきたな。
《私としては相棒のKYさに驚きですよ》
「……お前に言われると立ち直れなくなりそう」
《そのセリフに私が立ち直れません。慰めてください》
「嫌だ」
《見捨てすぎですよ!!?》
なんて、いつもの会話をしながらユリアが終わるのを待っているつもりだった。
だけど……――。
「――え?」
俺の横を何かが通り過ぎた。
その何かは数メートル先まで地面を滑り、土ぼこりを巻き上げながら止まる。
それは紛れもなく、ユリアだった。
髪に隠れて表情は分からないが、ピクリとも動かない。
「っ――!!」
踵を返し、ユリアをやった本人に対峙しようとして……俺は弾き飛ばされた。
「ぐ……かはっ」
肺の中の空気が全て外に押し出された。
だが、押し出された分の空気を補充できない。
《相棒!早く立ってください!!》
声が聞こえるが、何を言ってるか分からない。
視界も触れて、意識が朦朧とする。
おそらく顎に攻撃を受けて脳震盪を起こしてるんだろう。
意識が切れるまで時間の問題なのは明白だ。
立ち上がろうと手に力を入れても震えるだけで、体制は一向に変わらない。
ヤバイ。
頭に最悪の結果が、俺の結末がよぎる。
――視界に影が掛かった。
「ゴメンなさい。これは私の役割(しごと)なのに……」
言う事を聞かない体に鞭打って顔を上げる。
「後は私に任せてね」
かすれた視界に映ったのは紫の髪。
そして俺の意識はそこれ落ちることになった。