色々話し合った結果、俺はセイウンスカイの仮の担当トレーナーになった。
(期間は選抜レースまで、それまでに俺の能力をセイウンスカイに示し正式な担当にならなくてはならない。できなければ俺のトレーナーとしての輝かしい未来は閉ざされることとなる。なんとしても認められねぇとな)
トレーニング初日、時間になってもセイウンスカイは顔を出さなかった。
(何をやってるかは大体想像がつくが、まさか初日から顔を出さねぇとは思わねぇだろ…)
(ヴー、ヴー)
携帯に着信が入ったことに気が付き、内容を確認する。
内容を要約すると、河川敷に魚の大群が現れたから釣りをするためにトレーニングを休む、ということだった。
結局その日セイウンスカイはトレーニングに顔を出さなかった。
「そもそもなんで河川敷に居るんだよ、最初からやる気ねえじゃねえか…」
「とにかく、まずはあいつのやる気を出させるところからか」
そう思い、どうしたらセイウンスカイがやる気を出すか思案する。
まず思いつくのはセイウンスカイの好きなものを買う、いわば褒美を与えるような方法。
(一時的にはやる気を出すかもしれんが、そう長くは続かねえだろうな。むしろそれが祟って更にサボり癖が酷くなるかもしれん、この案はなしだな。)
次に思い浮かんだのは強く訴えかけたり叱責する方法。
(あれはそういうんじゃないし、熱血的指導は好まないだろう。
むしろやる気をなくすのが目に見えてる。これは論外だな)
そこである方法を思いつく。セイウンスカイとてウマ娘であるのだから競争心はあるだろう。それに上手く火をつけることができれば…
そう思い行動へ移そうとしたが既に夜半を回っていた。
ウマ娘は基本的に寮生活であり門限もある。今日セイウンスカイに会うことはもうできないだろう。
仕方なく今日はもう床に就くことにした。
確か、セイウンスカイがトレーニングに励むようになったきっかけはなんだったか…そんなことを考えながら歩いていると
「あなたがスカイさんの担当トレーナー?」
「お前は…セイウンスカイのクラスメイトだったか?」
「その覚え方はかなり癪だから修正なさい!」
「私はキングヘイロー、一流のウマ娘よっ。『さま』をつけて呼ぶ権利をあげてもいいわ!」
キングヘイローが俺のところへやってきた。
一見プライドの高いお嬢様という印象だが、敗北を糧に目標へ突き進む不屈の精神を持ったウマ娘だ。セイウンスカイの友人であるこいつならやる気を出させる方法を知っているだろうか?
「それは遠慮しておく。それに、今はまだ仮の担当トレーナーだ。せっかくなったはいいが、スカイがトレーニングに顔を出さなくてな。あいつについてまだよく知らないんだよ」
「すっかり振り回されてるって噂は本当みたいね」
「なぁ、あいつのやる気を出すにはいったいどうしたらいい?」
「……ふんっ!そんなこと、キングに聞かずに、自分で考えたらどう?それがトレーナーの仕事でしょう?」
「悪い、それもそうだな。失念してた。」
(こんな初歩的なことを教えられるなんてな)
翌日、教師に頼んで授業を見学させてもらうことになった。
模擬レースが行われることとなり、結果はセイウンスカイがスペシャルウィークに差し返されて2着となった。
セイウンスカイは才能のあるウマ娘だが、キングヘイローだってスペシャルウィークだってそれは同じことだ。才能だけで勝てるほどレースの世界は甘くねぇ。皆必死なんだ。
今回の敗北はきっと足りないものがあったからだ。
…とにかく、あいつのあんな様子は見てられねぇ
「お前も凄い走りだったろ」
「でも、2着だ。足りてなかったんだ、仕込みも、仕掛けも…」
ハッとした。
今まで俺は、上手く行かないことを周りのせいにしていた。
自分がまだ未熟だと認めたくなかった。
ふと思い出したのは、サブトレーナー時代のジジィの言葉。
『我々が相手にしているのはアスリートであると同時に一人の人間だ。大人びている物が多い故に忘れることがある。貴様はそれが特に顕著だ!よく覚えておけ!』
結果を出すことに躍起になっていて、大切なものが見えていなかった。情けねぇ。
俺はあいつについて勘違いしてた。
トレーニングに来ねぇのはただのサボりってだけじゃねぇ。努力の方向性が違うだけだ。
俺はあいつのことをただ理解した気になっていただけだ。あいつはのんびり屋で、やる気がないように見える。だが、勝利には人一倍貪欲だ。でなければ中央に来ることなんかできねぇ。
(俺はまだ、セイウンスカイというウマ娘を知らなかった。トレーニングをするような段階に至ってすらない。要は必要なステップを飛ばしてんだ。そりゃトレーニングなんてできるわけもねぇか)
俺が知っているのはキャラクターとしてのセイウンスカイだけだった。俺はトレーナーとして、等身大のあいつに向き合わなければならない。俺とあいつに足りないものを探す必要がある。今度は、一緒に。
そのためには、一度腹を割って話さなくちゃな。
「なぁ、お前釣りが好きだったろ?明日、一緒に釣りに行かないか?」
「え、どうしたんです突然?もしやトレーニングで会えなくて寂しいからってデートのお誘いですか?いやー、セイちゃんは人気者で辛いなー!」
「そういうわけじゃねぇが、気分転換ってやつだ。それに、お前のことをもっと知る必要があると思ってな」
「まぁどうしてもって言うなら良いですけどー。」
「決まりだな。」
次の日、セイウンスカイと釣りをしに河川敷へと出かけた。
そして、二人で釣りを始めたのだが………。
「釣れねぇな…」
「あはは、トレーナーさん、中々釣れないね〜。」
「ま、気長に待つとするか」
「そういえばトレーナーさん、昨日私のことを知るとかなんとか言ってませんでした?」
「そういえばそうだったな。なぁスカイお前、夢はあるか?」
「夢ですか?そうですね〜猫ちゃんと一緒にお昼寝して暮らすことですかねー」
「トレーニングをサボるのは程々にしておけよ。」
「うぐっセイちゃんにはセイちゃんのペースがあるんですよー!」
「そりゃペースは人それぞれだがまだ1回もきてねぇだろうが…」
「そ、そういうトレーナーさんは夢、あるんですか?」
「露骨に話題を変えやがったな…俺はあるさ、担当を日本一のウマ娘にして日本一のトレーナーになるって夢が」
「え〜ほんとにー?」
「…まあ少しは金や名声も欲しいが…」
「えー不純…」
「いいんだよ、夢なんてなんだって。なりたい自分を想像してみろ」
「なりたい自分かー…」
「でも、時々思っちゃうんだよね、無邪気に夢なんて語れるほど才能ないなーって」
「でもお前、レースに負けたとき、悔しそうにしてたろ?あんな反応ができるなら、それはお前がレースに対して真摯に向き合ってる証拠だ。」
「夢ってのは基本、叶わねぇもんだ。レースなんてのは特にそうだ。何千何万といるウマ娘の中で出れるのは数十人、そのなかで勝てるのは一人だけ。報われねぇ努力だってある。だけどな、最初から無理だって諦めるのはダセェだろ。届かなかったとしても、努力してるその瞬間のお前はきっとしてないときより輝いてる。」
「そっか〜…」
「ねぇ、トレーナーさん」
「どうした?」
いつもののんびりとした雰囲気と打ってかわり、やけに真剣な顔で問いかけてきた。
「私、勝ちたい。スペちゃんに、キング、グラスちゃん、エル。皆に勝ちたい」
「いいじゃねえか。なら、トレーニングも頑張んねぇとな」
「え〜それはちょっと…」
「なんでだよ…」
「あははっ!」
「はぁ…」
日が暮れる頃、俺はスカイを寮へ送っていた。
「結局、トレーナーさん全然釣れてませんでしたね〜」
「うるせぇ、今日の主目的はそこじゃねえんだからいいんだよ。ほら、とっとと帰れ。門限の時間になるぞ。」
「あはは、揶揄っただけですよ〜。今日はありがとね、トレーナーさん。またね〜」
「あぁ、じゃあな。」
あの後色々教わったんだが全く駄目だった。
俺には釣りの才能がないのかも知れない。
……まぁ悪くねぇ時間だった。
全てを理解したわけじゃねぇがあいつのことも、少しは理解できた。
次は、もっと上手くやってやる。
多分次くらいに選抜レース編ですかね。
レース描写ってあったほうがいいんでしょうか?
それともパッと書いてサクサク進めて日常とかを書いたほうがいいのかな??
レース描写はあったほうがいいですか??
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あったほうがいい
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ないほうがいい