トレーニングを重ねれば、疲労が溜まる。だからこそ、休息を挟まないといけないわけだが…
スカイのやつ、俺が止めても聞きやしねぇ。
俺が見てないところでトレーニングしたりしてるのはステータスの上昇具合から見て取れる。そろそろ本格的に止めねぇとな。
「トレーナーさん、今日はどこを鍛えればいいの?」
「今日はトレーニングはやめだ。体を休ませろ。」
「いやいや、もうすぐ選抜レースだよ?それに、トレーナーさんだって勝ちたいならトレーニングしろ〜って言ってたじゃないですか〜。」
「確かに言ったが、今のお前はどう考えてもトレーニングするべきじゃねぇ。休息も必要なんだよ。そんな状態でトレーニングしたら怪我に繋がるリスクがあるし、非効率だ。」
「いやいや、セイちゃんは見ての通りピンピンしてますよ?元気があり余り過ぎて今すぐにでも走りたくてウズウズしちゃってますよ」
「ウマ娘にとって体は資本だ。それに、選抜レースは通過点にすぎない。そのために今後走れなくなったら意味ねぇだろ。お前は焦りすぎてんだよ。頭冷やせ。」
「でも…」
「とにかく、今日はトレーニングはなしだ。」
「………」
「はいはい、わかりました、わかりましたよ〜。じゃあ、今日はこれで解散ということで〜」
「いや、そういうわけにもいかねぇ。お前、俺に隠れてトレーニングする気だろ?」
「えぇ〜酷い。セイちゃんそんなに信用ないんですか?悲しいなー」
「お前が終わったあともトレーニングしてるのを見たってやつがいるんだよ。」
「うぐっ、い、いったい誰が…」
(まあほんとはそんなやついないんだけどな。)
「あーはいはい、わかりましたよー。」
「わかったならいい。今日は出かけるか。」
「それで、どこに行くんです?」
「あ〜そうだな…まあ適当にショッピングモールにでも行くか」
「絶対今考えましたよね?」
「いやいや、そんなことねぇって。」
「まあそういうことにしておいてあげますけど…」
そういうわけで、俺たちはショッピングモールで過ごすことにした。
「ねぇねぇトレーナーさん、この服可愛くないですか?」
「いいんじゃねぇの?」
「もー、さっきからそんな感じの返事ばっかり。ほんとに考えて言ってるんですか?全く、トレーナーさんは女心がわかってないですね〜そんなんじゃ一生彼女なんてできませんよ?」
「生憎、そんなもんは必要としてねぇ。誰かに縛られるなんざ御免だ。」
「強がっちゃって〜。」
「うるせぇ!大体どう答えりゃいいんだよんなもん、大体あいつら聞くだけ聞いて、自分の望み通りの答えじゃなかったらわかってないって不機嫌になるだけじゃねぇか」
「何か怒らせるようなこと言っちゃいましたか…?」
「別に。ちょっと熱くなっただけだ。」
「トレーナーさん、どこに行くんですか?」
「トイレだよトイレ。」
最悪の気分だ。忘れたと思ってたのに、今になって思い出しやがる。過去のこと引きずって熱くなるなんざバカみてぇだ。
あいつには全くそんな気なかったろうに、悪いことをした。
洗面台の鏡に映る自分の顔を見る。酷い顔だ。こんなものあいつに見せちまったなんて、情けねぇ。
こんな顔を見てれば嫌でも昔の記憶が思い起こされる。
飯は出てきたし、生活を送るうえで必要最低限のことはしてもらっていたが、両親は口を開けばいつも喧嘩してた。
『あなたは仕事から帰ってきたら何もすることがないんだから楽よね。』
『お前は仕事の責任を知らないからそんなことが言えるんだ。ただ子供の世話をしてるだけで甘えたことを言うな!』
『こっちは365日毎日家のことをやってるのに、あなたは全く手伝わない。こんな大人になっちゃ駄目よ、翔」
(俺を喧嘩のダシに使いやがって…)
どちらかが特別悪いわけじゃない。強いて言うなら両方だ。
とにかく、俺には居心地が悪かった。
他の家族には姉がいたが、あいつは俺のことが嫌いだった。ただ俺がそこにいるだけで気を悪くする。今思えば親のことや環境によるストレスで気が立ってたのかもしれねぇが、俺もそんなあいつのことが嫌いだった。
母親や姉が気分がいいのか知らねぇが俺に服について聞いてくることもあったが、どうせ意見なんて求めてねぇ。同意が欲しいだけだ。
「トレーナーさんまだかな…遅いなぁ」
「怒らせちゃったかな…」
俺にゃファッションなんざわからねぇ。適当に答えれば気を損ねる。真剣に答えても鼻で笑いやがる。
俺ぁどうすりゃよかった?
この世界に来てそれも少しはマシになったと思ったが、思い違いだった。
(とにかく、あいつにゃ悪いことしちまった。あいつにはそんなことわかるはずもねぇのに。なにか買ってやるか。)
「ん?」
「遅かったですね、トレーナーさん」
「ちょっと考えごとしてただけだ。」
「それより、悪かった。勝手に気を悪くするなんて、ガキみてぇなことして」
「おや?珍しいですね〜トレーナーさんが謝るなんて」
「何か欲しいものとかあったら俺が買ってやる」
「ん〜…急にそう言われてもな〜」
「あ、トレーナーさん、あれ見て!あれ!」
「あの雑貨屋さんのマグカップ、とってもキュートじゃありません?」
視線の先にはゆるいタッチで描かれた猫のマグカップがあった。
「しかも、マグカップを2個セットで買うとネコ型キーホルダーがもらえるんだって!」
「マグカップを2個買うだけであんなに可愛いキーホルダーが貰えるなんて…」
「でもな〜、マグカップ2個は使わないしなーうーん…」
「いいじゃねぇか。俺が2個とも買ってやるよ。ちょうど俺もマグカップは持ってなかったし、使わねぇんなら俺が貰えばいい。」
「いいんですか?」
「さっきは悪いことしちまったしな。」
「さっすがトレーナーさん!よっ男前!」
「変な煽て方してんじゃねぇ…」
「トレーナーさん、ちょっと遊んでいきません?」
視線の先にはゲームセンターがあった。
「ゲーセンか、懐かしいな。昔時間をつぶしによく行った」
「へぇ~トレーナーさんもゲーセンで遊んだりするんですね」
「昔の話だ。今はもう行く機会なんてなかったが…」
「あっあの猫のぬいぐるみ、欲しいかも…」
そう言いセイウンスカイはクレーンゲームを遊びに行った。
「う〜ん…全然取れませんね…」
既にセイウンスカイは10回ほどトライしていたが、取れる気配がない。まあこういうのは基本相当技術がない限りは結構な数チャレンジしねぇと取れないようにできてる、ビギナーには厳しいだろう。
「俺に任せとけって。こう見えて、クレーンゲームはちょっと得意なんだよ」
「おっ頼もしい」
「なんだこのアームは…?ふざけてんのか?」
結果は惨敗だった。
「あんな得意そうな雰囲気出してたのに…」
「悪いのは俺じゃねぇ!このアームだ!取らせる気ねぇだろうがこんなもん!」
「まあまあ、釣れないときだってありますよ。ここはおとなしく引き下がりましょうよ〜」
「断る!こんなとこで引き下がれるか、こうなりゃいけるとこまでいってやる…」
「絶対ギャンブルとかのめり込むタイプだ…」
「結局1万も使うことになるとはな…」
「しかも、結局最後は店員さんにほぼお情けで取らしてもらいましたもんね」
全く締まらねぇ。こんなんじゃ全然格好がつかねぇじゃねぇか。まあこいつにとっては、それも些細なことか。
「ほらやるよ、それ」
「いやいや、流石に一万円もかかってるのに貰えませんよ〜」
「逆だよ逆。一万もかかってんだ。ここは俺の顔を立てると思って受け取れ」
「えぇ〜トレーナーさんがそこまで言うなら頂いちゃおうかな〜」
「調子のいいヤツだな」
「今日はありがとうございました。トレーナーさん。セイちゃんの好感度が3ポイントも上がっちゃいました。」
上がるとどうなるんだ?と思ったが、無粋だと思い聞くのはやめておいた。
その後俺はセイウンスカイが帰ったのを見届けたあと帰路へついていた。
「一人が性に合うと思ってたが…誰かと出かけるってのも、悪いもんじゃねぇな」
そう、結局過去は過去。俺が今いるのはあそこじゃねぇ。
なら、あんなの引きずることもない。
たまに思い出して、あんな事もあったなって笑い飛ばすくらいがちょうどいい。
「そう思えたら、どれだけ楽なんだろうな」
静かな夜に独りごちる。
記憶の奥に眠る過去は未だ心を縛り付ける。
だが少し、ほんの少しだけその締め付けが弱まった気がした。
レース描写はあったほうがいいですか??
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あったほうがいい
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ないほうがいい