選抜レース前日、俺たちは仮担当期間中最後のトレーニングを終えた。
「最初のころはお前がちゃんとトレーニングするか心配だったが、杞憂だったな。ここまでよくやった。これなら選抜レースも確実だな」
「そりゃまあセイちゃんも負ける気はありませんけど、まだ始まってもいないのにちょっと油断しすぎじゃないです?」
「仮でも俺の担当だ。負けるはずねぇさ」
「そこまで期待されてるとちょっとプレッシャーかかるんですけど〜」
「俺ぁお前はやるときゃやる奴だって信じてるぜ? 期待してるぜ、奇術師セイウンスカイ」
「何その呼び方…」
「お前の得意なことをやれ。そうすりゃ勝利は確実だ」
「まあほどほどにがんばりますよ、ほどほどに〜」
迎えた選抜レース当日、俺は観客席でセイウンスカイの様子を見ていた。
「リラックスしてるな、調子は絶好調。だが…」
あいつの勝利を疑ってるわけじゃねぇが、レースに絶対はない。
そんなことを思っていると、あいつがこっちへ視線を向けてきた。俺に信じろって言いてぇのか?
「昨日あんなこと言ってたくせに、やる気満々じゃねぇか」
周りのトレーナーの話を聞く限り、普段の態度が原因なのかあいつはそこまで警戒されてない。好都合だ。
「見てろよ節穴共。その掌、すぐに返すことになるぞ」
『美しい青空が広がる絶好の良バ場になりました!』
【名勝負になる舞台は整いましたね】
『一番人気は5番レプリケーション、2番人気は〜…』
『ゲートイン完了、出走の準備が整いました』
『各ウマ娘、きれいなスタートを切りました!』
【誰が先頭に抜け出すか、注目しましょう】
『先頭争いは6番セイウンスカイ、1番アイゼンテンツァー、5番レプリケーション』
『セイウンスカイ! 逃げる逃げる、早くも先頭!』
先頭を取ったのは大きい。スカイの実力は完全に上位、順調にいけば負けることはまずない。
『2番手の位置で先頭をうかがうのは1番アイゼンテンツァー!』
『外から! 外から5番レプリケーション!』
『少し離れて4番ジュエルカルサイト』
1コーナーから2コーナーへ向かっていく。
『6番セイウンスカイ、軽快に逃げていきます』
『向こう正面に入って、先頭からシンガリまでおよそ10バ身』
『依然先頭は6番セイウンスカイ。2番手アイゼンテンツァー、2バ身差。少し離れて3番手に4番ジュエルカルサイト』
『意気揚々と先頭をいきます、6番セイウンスカイ!』
【少しペースが早いかもしれません。途中で息を入れられれば良いのですが……】
掛かるなんてそんなヘマ、あいつはしない。今回は特別な策を用いないシンプルな逃げ切りを狙うらしい。
そろそろ第4コーナーへ入る。
『先頭はあいかわらず、セイウンスカイ!』
【内からくるか、外からくるか! 最後の局面です!】
2番手との差はおよそ5バ身。そろそろ周りの奴らも気づき始めた頃か?
『中山の直線は短いぞ! うしろの娘たちは間に合うか!?』
セイウンスカイがスパートをかける。
『セイウンスカイ、リードを4バ身、5バ身と広げていく!』
『外から1番アイゼンテンツァー、さらにジュエルカルサイト! そして5番レプリケーション、懸命に追いすがる!』
だが、差が縮まることはない。
『しかし先頭はセイウンスカイ! 止まらない!』
『強い、強い! セイウンスカイ、圧巻の逃げ切りでレースを制した!』
『勝ったのはセイウンスカイ! 完勝!』
レース場は一瞬静寂に包まれる。
やつら、驚いて声も出ねぇらしい。
やっぱりお前は魅せてくれる。それでこそセイウンスカイだ。
レース後、あいつはトレーナーたちからスカウトを受けていた。
「素晴らしい走りだった! ぜひスカウトさせてくれっ!」
「セイウンスカイ、私と組みましょう!」
「うわわ、そんな一気に来られても…」
「あっ! トレーナーさーん! こっちこっち!」
あいつが声をあげると、視線が一気にこっちへ集まってきた。
「見たことないやつだな…新人トレーナーか?」
「こちらが私のトレーナーさんです! ということで、スカウトの件は申し訳ないけどなかったということで〜」
「なんだよ、もうすでに担当トレーナーがいたのか…」
そう言うと、トレーナーたちは一気に興味を失い帰っていく。
「いやあ危なかった。色んな人に囲まれてセイちゃん大変でしたよ〜」
「引く手あまたってことだろ? いいことじゃねぇか」
「またまた〜約束、覚えてますよね?」
「はて、なんのことやら」
「むっ、そっちがその気ならセイちゃんだって…」
「待て待て、冗談だ。これからもよろしくな、スカイ」
「よろしくお願いしますね、トレーナーさん」
これでようやく、俺はセイウンスカイの正式な担当トレーナーだ。
気分がいい。
後は食べて飲んで自由気ままに過ごしてやる。
「んじゃ飯いこうぜ飯。寿司でも焼き肉でも今日はなんでもおごってやらぁ」
「おぉ〜太っ腹。じゃあトレーナーさんのお財布空っぽにしちゃおうかな〜」
「…それだけは勘弁してくれ」
「いや〜お腹いっぱいですねトレーナーさん、ご馳走様です」
「たっけぇな…まあ今日くらいはいいか…」
俺はスカイを送っていったあと、家に帰った。
サブトレーナー時代の同僚に電話をかける。
『なぁ、今から俺ん家で飲まねぇか? 今日は気分がいい。お前の分も全部俺が出してやるよ』
『マジか? 珍しいじゃねぇか。随分ご機嫌だな。いいぜ、今からそっち行くから待っとけ』
明日が仕事なんてことも忘れ、同僚と夜更けまで飲み明かした。ジジィから昔パクっといたボトルも空けた。
結局財布の中身は空になった。
レース描写むずすぎる
レース描写はあったほうがいいですか??
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あったほうがいい
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ないほうがいい