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分かりやすく「KAME HOUSE」と書かれた家に微笑む。リューベの微笑みは後々の理想の手本が見られた事による喜びだったが、眼の前の二人には獲物を前にした不敵な笑みにしか見えていなかった。
「か、亀じいさん……あ、あいつって……!?」
「サイヤ人じゃ……しかも、今度は女のサイヤ人か!?」
老人と女性の反応から、意外な星では怖がられていると考えたその時、リューベのスカウターが急接近する4つの反応を捉えていた。
先程に速度で突き放してきた連中が速度を上げて追い付いてきたのだと考えながら、カメハウスの方をちらりと見やった。旧式スカウターの反応はその奥から来ている。
「……チッ、おいそこの白衣の人、そっちのジイさんと絶対に逃げるなよ。あとで話があるからな…」
「わ、わたし!? 何でよ…!! どうしてわたしなんかに用があるってのよ!!」
女の事を無視して、飛来してくる者達の方へ体を向ける。スカウターのロックオンサークルと同じ4つの光。一番先頭を飛んでくる者が最も戦闘力が高い。その者がラディッツを倒したもので間違いない。
やってきた4人の武闘家達に分かるよう、リューベは尾を解いて揺らした。ラディッツの件を知っている連中ならば、分かりやすい反応をするだろう。
「よう、案外速いじゃねえか」
「サイヤ人だ…! 本当に来た…!!」
「半年も早く来るなんて聞いてないぜ…!!」
剃髪頭の男と長髪の男の反応に、リューベは少し訝った。本当に来たとはどういうことか。
しかし、彼女がどういう訳かと聞こうとした時、最も前に居た男、ナメック星人らしき男が睨みつけながら問いかけてきた。
「きさま、もう一人はどうした?」
「もう一人? 何のことだよ」
「とぼけるな…!! きさまらサイヤ人は二人組で来るというのは知っているんだぞ!!」
それは恐らくラディッツ絡みの話であろうが、リューベからすれば知らん奴の存ぜぬ因縁であった。
「知らねえな。誰が言った?」
「きさまの仲間…ラディッツとかいう奴だ」
リューベは腕を組んで考え込んだ。ラディッツの仲間だというサイヤ人はもしや、噂にだけ聞いていた「エリート戦士のサイヤ人」なのではないかと。自分以外のサイヤ人を知らなかった彼女にとっては、噂で聞いただけの存在である。
そしてそこまで考えた所で、さらに面倒な事になりそうだと彼女は気付いてしまった。
こちらは向こうを噂でしか知らない。しかし恐らく軍の中枢に近いであろう向こうは「サイヤ人の脱走兵」として、こちらを知っている可能性があるのだ。
そんなサイヤ人が二人。どのような性格の連中であれ、好戦的かつ残虐で通っているサイヤ人なのだから、命令が有ろうが無かろうがまず間違いなく戦いになるだろう。
しかしリューベにとって、金にならないフリーファイトなど真っ平御免である。とはいえ、やっと見つけたバカンスの候補先をどこの星のヤツとも知れない連中が歩き回るようにもしたくないのも本音だった。
この間僅か0.5秒。素早く腕を解き、拳が肩の前に来るようにクロスに構えたリューベは、真紅の気弾を両手に現す。
「くっ!!」
「来るぞ!?」
技を警戒して構える武闘家達だったが、その動きはリューベにとっては都合の良い反応だった。
「じゃあな!!」
同時に掲げられた両掌に真っ白な光球が生じ、真夏の太陽よりも眩く輝いたことで、リューベ以外の者達は完全に目を眩まされてしまった。自慢の閃光弾である。
「わあああっ!!目が…!!」
「ま、まさか…目眩ましとは…!!」
三つ目の武闘家は一層苦しんでおり、老人もグラサンを貫通してしまったようであり、完全に全員の目がくらんでいるのならと、リューベは少し調子に乗ってみた。
「ハッハッハ…!! 愉快、愉快!! アハハハハハハ!!」
「ち、ちくしょう…待ちやがれ…!!」
武闘家達が呻く前で自慢の尻を一発引っ叩き、心底小馬鹿にしてみる。何せ彼女はここまで目潰しが綺麗に決まったのは久しぶりで、ウレシクて仕方がなかったのだ。
まだ眩さを放つ光球を空中に留めたリューベは、あっという間にその場を去った。
「あっ!」
その時、彼女は「逃げるなよ」と言った当の本人である自分が逃げた事に気付き、洋上で「あっ、やっちまったなぁ」と舌ベロを出し、ボリボリと頭を掻いた。
「…少しだけ時間が出来たな……資金の調達でも出来りゃ御の字なんだがなぁ」
そう呟いたリューベは、なんの気もなしに北を選び、青空と青海の間を飛んでいった。
◇
少し経って。所変わった此処はオレンジシティ。大陸南東部最大の街として知られるそこは立派な商業ビル街にターミナル駅、各公共施設や教育機関も揃っており、道路も広く綺麗で豊かな大都市である。
だが、そのオレンジシティはどういう訳か、警察消防も充実しているというのに犯罪がやたらと多いことで有名であり、流石に毎日ではないが、サイレンが鳴らない週は無いという。
そして、それは今日も同じことであった。
「ギャハハハハ!! じっとしてやがれ!!」
「ひいぃ〜っ!! お、応援求む、応援求む…!!」
警官隊へ向けて、赤いリボンマークが付いた古いマシンガンを撃ちまくる銀行強盗達。弾薬箱まで用意したフル武装は、最初からそのつもりであったかのようだ。
対する警官隊は精々拳銃かショットガン程度。幸いなのはパトカーが防弾仕様であったことか。
「邪魔くせえな、ふっ飛ばしちまえ!!」
「バカ、カネを詰めてる途中だぞ!! まだ取っとけ!!」
「なんだよつまらねえな!! マッポなんかさっさと吹き飛ばして黙らしちまえよ!!」
「防衛軍とやり合いてえなら一人でやれ大雑把野郎!!」
「だったら奥の奴らにさっさとカネを詰めろと言いやがれ!」
ビックリドッキリも良いところである。ズイ、と引っ張り出されたのはパンツァーファウストの類だ。防弾パトカー如き容易に吹き飛ばすだろう。
流石にパンツァーファウストなんてものを持ち出せば、次に出てくるのは国防軍だ。本来ハッタリに使う為の物を本当にぶっ放すのは留められたが、警官隊を怯え留めさせるにはトラックに据え付けたマシンガンで十分だった。
相手が悪くて役に立てない警官達は、防弾パトカーの裏で頭を抱えていた。強盗達のマシンガンが小口径仕様だったのが更なる幸運だった。本来の口径なら既に全員が穴ぼこだらけ、血の海にパトカーのスクラップが散乱していただろう。
それでも、警官は強盗のやたらめったらな射撃の隙を見つけては撃っていた。しかし撃てば狙われ、狙う暇は無い。どの車両もベコベコでボロボロ、エアカーなのでバッテリーからの出火が危惧されていた。
「く、くそーっ、応援が来ても同じことか…!?」
肝が据わっているベテラン警官も頭を出したくならない、無数の鉛弾が放たれている危険極まりない現場がここだ。デカい癖に機動隊の一つもないのかと一番文句をつけているのが警察自身である。
士気が残る警官が歯噛みしていたその時、空から降ってきた一条の紅い光がアスファルトを爆ぜさせた。
「な、なんだ!?」
強盗は射撃を止め、警官と同じように空を見上げた。そこには妙に際どいインナーに見慣れない鎧を着た、尻尾が生えた女が宙に浮いていた。
「う…浮いてる…!?」
重力を知らないかのように地上へ真っ直ぐ降りてきた女の姿を、皆が確かめる。
その女は、トランジスタグラマーのように出るところが出たボディをしていたが、女性的な豊満さよりも、男のボディビルダーじみた迫力のある、太い四肢と分厚い胴が目を引いた。
「筋肉の塊に……」
「オッパイとケツが付いてるぜ…」
強盗のガンナー2人は呟きながら呆然としていたが、その女が一歩踏み出した事で気を取り直し、マシンガンのグリップを握り直した。
「く……来るな!! 何だてめえ!! 蜂の巣にされてえか!!」
「ハチミツは出ねえぞ?」
「ふざけやがって、死ね!!」
「わっ、馬鹿!!」
片割れが感情の突沸に任せ、トラック据え付けのマシンガンが猛烈に火を噴き始めた。
10数秒も続いた連続射撃。本来やらないような撃ち方を続けたことで生じる問題に、本来は兵器のド素人である彼は気づくのが遅れた。
「なあっ……!? や、やべえ!! 焼け付いっ…!?」
射撃が止まった瞬間、強盗の眼前には、無数の鉛弾を受けて尚も全く無傷のままな女が、既に構えた状態で迫っていた。
一発、二発。素早い手刀が一基のマシンガンと一挺のサブマシンガンを粉々に砕き散らしただけでなく、二人のサイドアームの拳銃までもがスリ取られていた。
「ひっ!?」
「はっ!? はあっ!?」
「アンタは行儀が、アタシは手癖が悪いな…寝てな」
直後に響き渡る2発の銃声。奪われた拳銃で脛を撃たれた強盗二人は痛みに倒れ伏し、女はわざとらしいモデルウォークで銀行の中へと歩んでいく。
「な、何だ、テメェは!?」
唐突に現れた女へ、人質の抑え役は答えを待つよりも早くサブマシンガンを撃とうと構えたが、その瞬間に拳銃が顔面に投げられた。
「あがっ!」
「バカがよォ…」
バランスを崩した抑え役の真正面に立った女は、そのサブマシンガンのハンドガードを掴み、なんと紙の筒のように容易く握りつぶしてしまった。
「ひいいっ!?」
「銀行じゃ静かにな」
「ぱぁおっ!!?」
サブマシンガンのストックで下から股間を打たれた抑え役は、変な声と共に気を失いながら床に突っ込んでしまった。
「ほら、さっさと逃げやがれ!!」
「あ、ありがとう…!!」
「助かった…!!」
奇妙な女に促されて人質達が逃げていく中、金庫室に繋がる通路を見つけた女は、その通路に巻き添えを食らったか単純に殺されてしまったのか、数人の警備員が斃れているのも発見していた。
「ちぇっ…脆い連中だぜ…気分わりぃ」
左耳の機械が倒れている警備員全員の死亡を示した事で、女は苦い顔をした。
流石に体に数発も食らってしまっては無理も無いとも思ったその直後、まだ奥に残る強盗のうち一人が姿を現した。
しかし、その男は声を発する前に指先から放たれた見えないエネルギーに額を強く打たれ、壁に側頭部を強く打ってから倒れた。後遺症は気にしてやることも無いだろう。
「早く、早くしろよ!!」
「今やってるだろ!! 一枚と残らず持っていこうだなんて…!」
「あとどれくらいだよ…!!」
開きっぱなしの金庫室から聞こえてくる声。外の事は何も知らないようだ。女は居らず男3人。心拍も呼吸も早くて緊張しているようだが、耳は鈍っているようだ。
覗いてみると、几帳面か強欲か、リーダーの無茶な命令が祟っていたらしく、広い金庫室の奥で文句を言い合っていたことで、外の音が何も聴こえていなかったようだ。
これはとても都合良しと、女は一人の背中に鉛弾を撃ち込んだ。
「ぎゃあっ!!」
「いっ!?」
バラクラバの男二人はサブマシンガンを構えようとするも、カバンの札束で重くなった体で振り向くよりも早く脚を撃たれた。二人は体勢を崩した途端に素早く武器を蹴り飛ばされ、一人は顎に一発食らって崩れ落ちた。
「ひいいっ…!! ば、バケモンだ!!」
「待ぁ〜〜てや…」
「ぎいやああああ!!」
痛みを押して足を引き摺り逃げようとする強盗の一人の足が踏み潰される。女は、その万力よりも強い力で首根っこを引き掴み、引き寄せて問い掛けた。
「この星の通貨は? 通貨。カネの名前」
「ひっ…はっ、えっ…!? ぜ、ゼニーです……!!」
「そうか行け」
「ばわ!!」
女は最後の一人を分厚い仕切りの鉄格子に突っ込ませ、意識を明後日に飛ばした。
すっかり静かになった金庫室。その奥に置きっぱなしの札束で一杯になったショルダーバッグを覗き込んだ女は、100万ゼニーの札束を一つ手に取った。
「紙幣と硬貨か…ふぅん」
こっそりとポーチに200万ゼニーほどくすね、残っていた拳銃とその弾倉を投げ捨てて、金庫室を後にする。
悠々と銀行の入り口まで歩いてくると、すっかり疲れ切った顔をしている警官達が拳銃を向けてきた。
「き、君…と、止まりなさい…!!」
宙を飛んで現れ、マシンガンに対して無傷で煤もかすり傷も付いていない。機関銃を容易く叩き壊す様な存在に対して感じるのは、得体の知れない恐怖である。
だが女は止まらないまま、ふわりと浮かび上がった。その時一人の警官が驚きのあまり引き金を暴発させてしまったが、女はその弾を指先で掴み取り、逆に銃に当てて弾き飛ばしてしまった。
「おわあ!!」
「ああっ…!」
「もっとシャキッとしろよ…!! ほらぁ!!」
心底うんざりしたような顔で怒鳴った女が銀行の方を指差すと、我に返った警官達が確保の為に突入していく。
「ご…御協力…感謝します…?」
「アタシにそれを言う前に、そんなチャチな装備で機関銃とやり合えって言ってくるお上に文句言えよな」
定型文じみた感謝の言葉をあしらうと、女は紅いオーラを纏い、戦闘機の様な速度で飛び去ってしまった。
呆気にとられる警官と野次馬達。その日からオレンジシティは、その謎の女についての噂が多く話されるようになり、ヒーローだとか宇宙人だとか、本当は映画の撮影で全部トリックなのだとか、様々な憶測が飛び交うようになった。
そして、オレンジシティ警察はその年から装備の増強が行われ、検挙率と治安が向上していくのであった。
◇
○
◇
「ひい、ふう、みい、よぉ……めんどくさ。フフフ、初期資金としちゃ悪くねえかな」
オレンジシティで見かけた強盗騒ぎで、どさくさ紛れにポーチにねじ込んでくすねて来た、200万ゼニーのピン札の束。金銀財宝も良いが、やはり仰げて涼しい札束の方が気分が良い。
「さて…アイツ等はどうするべきかな」
ギったとはいえ、途中で金ができたのだから前金扱いで少しは相手をしてやっても良いかと考えたが、下手に痛めつけて要らぬ恨みを買う気はない。
かといって、ずっと追われっぱなしも嫌である。
どうしたものかと考えたとき、リューベは地球の武闘家達が、スカウターも無しに自分の位置を正確に把握してきていた事を思い出した。
「エネルギー探知を自力でやってるってのか…? 面白いな」
スカウターでの反応はまだ少し距離があるが、彼ららしき反応は確かにリューベの所へ向かってきている。
スカウターのように一々ボタンを押したり、定期サーチさせたりする必要がないのなら、それはとても便利である。
「む…戦闘力1021…戦闘力が変動して…他も速度も上がったな?」
先頭はやはりあのナメック星人だろう。今までよりも速度を上げてこちらに向かっている事から、相手が動いているか否かも判別できるのだろう。
「……ふぅ、分かった、分かったよ……相手してやるよ」
何をどう感知しているのかはサッパリな以上、ずっと逃げ回ってもバレっぱなしなのだろうが、それ自体はこちらもスカウターを使っているのだからお互い様だった。
そして事情を察するなら、彼らにはあまり時間が無いのだろう。一日でも惜しいのなら、この日のうちに色々と済ませてしまった方が双方ともに都合が良い。
そう考えてリューベがやってきたのは、スピニッチ荒野の自分の宇宙船から少し離れた辺りであった。
「…来るな?」
宇宙船から持ってきた数本の酒とともに、小さな岩に腰掛けて武闘家達を待ち受けた。
スカウターを外して目を閉じ、意識してみればなるほど、何かを感じるような気がしなくもない。だが、戦いで使えるレベルには程遠いと感じて、スカウターを着け直した。
感じた何かは酒のせいかとも思っているところに、飛来した武闘家四人。降り立ってきた彼らに微笑みを向けていると、ナメック人が額に冷や汗を滲ませながら、苛立ちの籠った顔を向けてきていた。
「もう逃さんぞ…!!」
「ハハハ…もう逃げねえよ」
リューベは瓶に残ったジンを全て飲み干し、スカウターの動作音と共に目つきを変えた。
「島じゃバカにして悪かったな。ワケあって気が変わったんで、軽く相手してやるよ…」
空き瓶をトン、と置いて立ち上がり、ゆっくりと構えたリューベは、地球の武闘家達がまだ一度も感じた事の無い程の「気」を放つのだった。
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リューベ視点だと原作キャラの名前を出しづらく、原作キャラ視点だとリューベの名前を出しづらく…と結構悩んでます。さっさと話を進めて自己紹介でもさせたほうがいいんですかね。
そんでリューベが拳銃を使った件については、とりあえず持ったんだから使ったれ、の精神です。