そんで今さらですが、戦闘力の変動に関しては結構適当で考えてしまってます。ラディッツ戦での上昇幅がベースになっていたりもするので、結構不安定です。
その辺りもどうか、よろしくお願いします。
◆
このような状況でなければ、心地よい風に昼寝でも決め込みたいと思ったが、真剣な顔をした四人の武闘家が目の前にいるのでは、そうもいかない。
腰を落とし体重をかけて構えるリューベは、武闘家に手を抜いて戦えば礼儀を欠くが、本気で戦えば殺してしまうと、なんとも難しい状況であることを確認し、どうしたものかと舌打ちした。
だが、にらみ合い続けているわけにもいかない。リューベはナメック人に向けて気弾を放ち、戦いの火蓋を落とすことにした。
「全員纏めて掛かってこいや!!」
(順番はめんどくせえからさ…)
「ずあっ!!」
ナメック人が気弾を弾くと同時にリューベは飛び退いて距離を取り、名も知らぬ武闘家達四人は互いに目配せし、構えた。
「行くぞおまえら!! 気を開放しろ!!」
「ああ!!」
「行くぜ!!」
「はあっ!!」
スカウターが激しく反応し、上昇していく戦闘力にリューベは感心する。スカウターの計測が終わるか終わらないかの瞬間には、既に前後左右を四人が囲み、素早く鋭い連撃を繰り出していた。
「一対多数は久しぶりかな……!」
これほどの連撃は、宇宙でもそう体感できない。前後左右に、上段下段に真上。流石のリューベも受けそびれるが、ダメージが通ってくる感覚はまだあまりない。
だが、戦闘力の数字だけではないそれぞれの実力があるのだろう。リューベはそれを直接確かめるべく、1対1の状況を作ることにした。
「ちょっと退きな!!」
「どわっ!」
「うわあ!!」
「み、皆!!」
リューベはナメック人、三つ目、禿頭の三人をタックルで吹き飛ばし、まずは長髪の男とのサシに変えた。
長髪の男はすぐに拳を構えた。狼かなにかを象った「擬獣拳」と見たリューベは、少し体を後ろに引いて構え、手招きした。
「来な!」
「く、くそーっ!! やってやる!! 食らえ!! 新・狼牙風風拳!!」
長髪の男が繰り出したのは、牙を剥いた狼を幻視するほどの気迫を放つ、素早い連撃。
目測で秒間10発以上にもなる連撃を見切りつつ、逸らしたり弾いたりして的確に防いでいく。並の人間であればあっという間に顔が腫れ上がるか、顔がズタズタにされるか、体中がヒドい痣だらけになる程の技であることは確かであった。
「打撃がお得意かい……ほら足ッ!!」
「はっ!? うわっ!!」
技は良いが、彼はどうにも足がお留守らしい。下段回し蹴りを予告して避けさせるが、今度は上体の動きが止まっている。彼は相当な達人であることは確かだが、流石に癖が目立っている。
「悪い癖だ!!」
「ぐぁああーーーっ!!」
攻撃を意識し過ぎて足が止まる。蹴り技が主体ではない事もあるのだろうが、これは悪い癖である。
回し蹴りの回転の勢いを乗せた双掌打をがら空きの胴体に打ち込まれた男は、遠くの岩山へと吹き飛んでいった。死にはしない筈だが、戻ってくるかは少しばかり賭けた。
長髪の彼が吹っ飛んでいったとほぼ同時に、禿頭と三つ目の男が復帰してきた。あとのナメック人は少し距離を取っており、何やら狙いがあるのは一目瞭然だったが、リューベはあえて無視をした。
「おりゃあっ!!」
「遅い!!」
やはり比較的軽い。リューベは数度攻撃を受けてみて、禿頭は格闘術よりも別の物に長けているのだろうと考えた。見た目でも、怪力というタイプでは無そうに見える。
(それぞれ得意が違ぇな…? …三つ目のやり手はともかく、あのナメック人は何を考えている…?)
二人の攻撃を捌きながら、ナメック人が掛かってこない理由を推測していたリューベだったが、彼女は嫌ほど目に入って気になる輝く頭が、丸刈りにしたものであると気付いた。
灸の跡である「戒疤」が付いた頭を、彼女は何処かの星の僧侶戦士にも見た覚えがあった。目の前の彼もその類の者だと考え、前後から来る攻撃を弾いて距離を取ると、その禿頭の武闘家に問いかけた。
「なあ、アンタ僧侶か?」
「い、一応元は武道寺だけど…それがどうした…!」
別段どうとやかく言うつもりも無く、ただ気になっただけだったのだが、リューベはやけくそで理由を付けた。
「いやあなんだ、その、チビのハゲって認識じゃあ悪いかと思ってよ…」
「そ…そうか……身長に関してはお前も大して変わらないじゃないか!」
そう言われればそうなのだ。身長150と少しのリューベと、目の前の頭ツルツルの坊主とでほとんど全く目線の高さが変わらない。
実際にリューベは、無駄に出る所が出て縦に育たなかったことは気にしていたし、酒場で何度馬鹿にされたか分からなかった。気にしないようにはしていた筈のそれを思い出した途端、彼女は余所で「そんな理不尽な」と引きながらも、光るチビに向けてほんのちょっぴりキレた。
「………アンタ覚えてろ!!」
「いいっ!!?」
八つ当たりを理由に、リューベは彼に向けて少し攻めてみた。どうも危険に対してはかなり敏感らしく、体全体を使った確実な回避行動は、大ぶりな動きになりがちなパワータイプだったのならやりにくい。
だがそれ故に、追加の回避行動には移りにくいだろうと見たリューベは、彼が着地する瞬間に気弾を地面に当て、爆風で大きく吹き飛ばした。
「うわあ!!」
「クリリン!!」
剃髪頭の名を聞くことが出来たリューベは、今度は三つ目の男に狙いを定める。武道家としては相当に出来る者だと、スカウターで一々測らずとも分かる。
「お相手頼むぜ」
「くそっ!!」
リューベは空振りをして三つ目の男の反撃を誘い、攻めの起点とさせる。やはりと言うべきか、彼の攻撃は特定の流派の下で長く修練を積んできたのだと分かる堅実な攻めであった。長髪の男のものと同等に鋭い突きではあるが、あちらとはまた違った形で読みやすい。よく言えば実直な拳であろう。
だが、彼が距離を取って気合を込め始めた途端、リューベは驚くべき、かなり珍しいものを目にすることになった。
「かあああああっ…!!」
「いっ!?」
三つ目の男の背が盛り上がったかと思うと、なんと一対の腕が生えてきた。いきなり四つ腕になったことに驚いたリューベは、悪ぶった演技も忘れて目を丸くした。
「き……キッショ!! 何で生えんだよ!?」
「はぁあああああっ!! 勝手に想像してみるがいい…行くぞ、四妖拳っ!!」
四つ腕による素早い猛攻。一人から二か所同時の攻撃が来ると言うのは中々無い。驚きが抜けないまま受け続けていると、突然横から頭を蹴り付けられた。
「女の顔蹴りやがって、誰だ!」
不意討ちを食らったリューベは、彼らに地面へ転がされたことではなく、曲がりなりにも女の顔に容赦なく蹴りを入れたヤツにほんの少し腹を立てた。
「戻ったぜ、天津飯!!」
蹴りの正体は、先程吹き飛ばした長髪の男の復帰の挨拶だった。側頭部を擦り、土を払いながら「女好きだろうによ…」と洞察交じりの呟きと共に立ち上がったリューベを前に、二人は息を整え構え直す。
「行くぞ、ヤムチャ!!」
「おうっ!!」
ヤムチャと天津飯が同時に向かっていく後ろで、気を高めながら片腕を高く挙げたクリリンは、集中しながらも強い焦りの中に居た。
(まだ未完成の技だけど、ぶっつけ本番でやってみるしかない…!! 頼む、出来てくれよ…!!)
これは試作の技。まだ未完成で溜めもかなり長く、通じる保証もないが、自分達の「本命」のためのつなぎになるならば良いだろうと、選んだ技だ。
「はああああっ…!! 気円斬っ…!!」
強く固めた気の円盤の縁を、超光速回転させて刃に変える。
「とぉおあああーーっ!!」
「おぉああああっ!!」
「チッ、やるじゃねえか…」
ヤムチャと天津飯による、延々と続く連打に反撃せず捌き続けるリューベだったが、実質3人からの猛攻の中で「二人」に気を向けられるほど、脳のキャパは残っていなかった。
「はいいぃーーっ!!」
「むっ…!」
ヤムチャの掌底に大きく下がりながらも前を見据えているリューベの直前で、四妖拳を解いた天津飯が構え放ったのは、なんと「もう一つの太陽」だった。
「太陽拳!!!!」
「うぅわっ…!! ちくしょう、仕返しか…!!」
ほぼ至近距離で、太陽を思わせる強烈な閃光が放たれる。反応が間に合わずに目を完全に眩まされたリューベがよろけると、片足が突然ずるりと沈み込んだ。
それは先程クリリンを吹き飛ばした時に撃たれた、彼女の気弾が開けた穴。よろけて踏み込んだ拍子に、足が嵌り込んだのだ。
(げえっ!!)
「クリリン、今だっ!!」
「はぁーーっ!!」
舞空術の勢いを乗せた素早い気円斬のエネルギー反応を捉えたスカウターは脅威を表示するが、見えないリューベには何の意味もなかった。
(…!!)
向きも距離も分からない彼女には「跳ぶ」か「飛ぶ」という選択肢があった。だが、脅威が跳んだ先に来ている可能性も考えてしまった彼女の身体は、致命的なほど動きが止まっていた。
これは間違いなく当たる。誰もがそう確信したとき、リューベは目を閉じたまま両の手に強くオーラを纏わせ、気円斬を受け止めてしまった。
「ああっ!?」
「そんな、止められたあっ!?」
(見えねえが…何故か分かった…!! そしてこいつは斬撃技だな、この感触!!)
金属同士が激しく擦れ合うような音が荒野に響き渡る。リューベの体は土を割りながら気円斬の勢いに押されて滑っていくが、次第にその勢いも弱まっていく。
「まだだっ!! はあああっ!!」
ダメ押しとばかりに天津飯が構える。そうして現れたのは二人目の天津飯であった。二人目の天津飯は気円斬との押し合いで動けないリューベの背中に回り込み、身長差に悩みながらも羽交い絞めにした。
彼の分身術は戦闘力が等分されてしまう弱点があるが、締め技ならそう簡単には解かれまい、という狙いだった。
「な、なんだ!?」
「ピッコロッ!! 今だ!!」
分身の天津飯がピッコロへ叫んだ時、ピッコロは激しく荒ぶる気とスパークを纏った指を、額から離した所だった。
「ちょうど溜まったところだ!! よくやったぞおまえらぁ!!」
凄まじい勢いの戦闘力の変動にスカウターは耐えきれず回路が焼き切れ、煙を発してビープ音と共に表示が消える。視界が戻りきっていないリューベにとって、それは脅威を伝えるには十分過ぎた。
(遊び気分は不味かったな…!! そりゃそうか!! くそ、まだ見えねえ…!!)
視界はまだ不全だった。だが、先程の様に強い「何か」を感じ取った彼女は無意識のうちにピッコロが居る方へと顔を向けていた。
ピッコロは左手を支えにして右腕を突き出し、気が迸る二指を真っ直ぐリューベへと向けて叫んだ。
「食らいやがれっ!! 魔貫光殺砲ーーーッ!!」
螺旋を纏った高速のレーザービームが指先から迸る。かつて格上であったラディッツを、彼の最大のライバルと共に葬った技は、真っ直ぐリューベへと突き刺さろうとする。
格上殺しの実績があるその技を最も疑わなかったのは、今だその技を見たことが無かった3人ではなく、放ったピッコロ自身であった。だが彼はそれ故に、余計に驚かされてしまうことになった。
「ああっ!! ば、馬鹿なっ!!」
なんとリューベは、羽交い絞めにされたまま受けていた気円斬を掴み動かし、シールドに使ってレーザーを逸らし弾いてしまったのだ。逸らされたレーザーは空高く昇り、雲を穿って消えた。
驚くべき所業だが、これは実際リューベにとっても賭けであった。どれほどの威力か推測できない以上体で受ける事は危険極まりなく、自ら弾くのも弾いた先に地球の戦士が居れば、結果が予想できる。
「ぬっ…!!」
推定戦闘力は幾つ程だったのだろう。盾に使った気円斬を通して受けた衝撃から、少なくとも3000以上にはなるほどのエネルギーが込められていただろう。
弾き逸らした衝撃で分身ごと浮かされたリューベは、一瞬背後からの締め技が緩まった事に気付いて振りほどき、その手に受け続けていた気円斬をそのまま振りかぶった。
「返送だ…!!」
「ぬっ!? ぐわあっ!!」
強く感じる方向へ、半ばヤケクソ気味の途轍もない豪速で投げられた気円斬は、ピッコロの方へ向かっていった。回避が間に合わなかったピッコロは右前腕を切断され、尚も勢いが残っていた気円斬は、その先の切り立った岩山の頂上を斬り飛ばして消えていった。
「ピッコロ!!」
「気にするんじゃない!! この程度再生できる…!!」
右腕を即座に生やしたピッコロは構えを崩さなかったが、強く歯噛みしていた。今の己の最高の技が、味方の技を利用した形で防がれてしまったことはまったくの予想外だったのだ。
「退け、ムッツリ!!」
「ぐわっ…!!」
皆が呆気にとられる中、冗談を飛ばしながら天津飯の分身の腹に数発食らわせて分身を消したリューベは、視界が戻ってきたことを確かめつつ、中が切れて役立たずになったスカウターを外した。
「こんなに良い連携でヒヤっとさせてくれるとは想像もしてなかったぜ……パクった200万ゼニー分の価値は間違いなくあったな…」
「くそ…!!」
何処かへ歩んでいくリューベを注視しながら構えを解かないピッコロ達だったが、囲んでも歯が立たず、真っ向勝負では遊ばれ、味方を囮にしてまで溜めに溜めた技は防がれた。
「あともう少しだったのに…!!」
「…!」
負けを確信した顔をし始めたヤムチャとクリリンの顔に気付いたたリューベは、戦う前に座っていた岩に歩きつつ、後ろ頭を掻きながら言った。
「…やめるぞ!」
リューベの一言に、全員が固まる。何を言ったのかよく聞こえなかったのかもしれないと、岩に座り込んだリューベはもう一度、更に声を張って叫んだ。
「もうやめだ、やめだ!! やめ、終わりだ!!!!」
「ええっ!?」
「何だって!?」
地球の命運をかけた戦いをしている筈だった地球の戦士たちは、なんと敵の筈の相手から唐突に告げられてしまった戦闘終了の言葉に驚愕した。
まともにクリーンヒットは不意討ちの一発のみ。連携による足止めから、魔貫光殺砲による確実な撃破を狙った作戦は、咄嗟の奇策によって最後の最後で破られた。その結果、倒そうとしていた相手はスカウターの破損以外はまったくの無傷と言ってよかった。
事実上の完敗。誰一人欠ける事は無かったが、それが運なのか、完全に小鳥をいたわるかのような手加減の結果なのかは、分からなかった。
どう見ても余裕たっぷりの様子のサイヤ人に、地球の武闘家達は「勝てない」と思わされてしまっていた。
目の前にやってきた四人が、複雑に感情が入り混じった顔をしているのを見たリューベは、岩陰で倒れていた酒瓶を取りながら頷いた。
「ハハハ……やっと話が出来るっぽいな?」
少々眉をハの字にしてそう言ったリューベは彼らの警戒を少しでも解くべく、薄ら笑いや微笑みではなく、歯を見せた満面の笑顔を見せてやったのだった。
◆
Z戦士達をもっと上手く動かせたらよかったんですが、時系列上の強さ問題もあり、戦闘力の差が結構なものですし、半ば無理矢理戦わせた形なので、かなり苦しいものになりました。
戦闘描写も同じような表現を繰り返してしまいそう(やってる)ので、結構悩ましい所です。Z戦士達も一部「ここ動けるでしょ」って場面や、ちょっと無理矢理な部分があるので、全体構想だけじゃなくて細かいプロットも考えなくちゃダメですね。
ベジータ戦までどうにか持ってくれればいいんですが、とらぬ狸のなんとやらで複雑なナメック星編なことを思うと、ちょっと恐ろしく感じてます。