ギャル宇宙人襲来! 作:匿名の筆者
「質疑応答は既にあっちでウチの仲間がしてるからさ〜、ウチはさ、ちゃんとした地球の姿が見たいな。ほら、コンピューターとか!」
宇宙人は─── ギャル口調である───
SF作家が仰天するような情報は、既に日本中に知れ渡るところにある。
翻訳の問題は多々あるが、それは事前学習の不足であり、そちらに非は無いと【全権大使】が語った。
地球に訪れてから早くも三ヶ月、日本政府は彼女(性別は不明だが、一人称より断定)の要望を応えるべく、ありとあらゆる研究者と問答を交わした。
アンドロイドではない宇宙人は彼女以外におらず、全権大使でさえ機械だ。
それが一体何を意味するのかなど、少し考えればすぐにわかることだ。
宇宙人と呼べる存在は機械以外には彼女のみ、ということを意味する。
タスクフォースの面々は頭を抱えるよりも行動することを選んだ。
日本政府より発せられた命令はただひとつ。
彼女を絶対に満足させ、日本のコンピュータ技術を示せということのみ。
そのために選ばれたモノは富嶽。
既に二週間前から、より完全な保守点検を完了させており、計算能力の最適化を済ませている。
あとはただ一つ、人物像に祈りを捧げることのみ。
翻訳の都合か、各国の言語でフランクな応接をしているが、そのために彼女がどのような性格なのかを測りかねている。
これでもしも【彼女】から日本が侮られでもしたのならば日本政府がタスクフォースを即座に解散させるだろう。
「円周率ってヤツをさ、一秒間にどのくらい計算できるかちょっと見たいな!」
大チャンス─── 彼女は、同じ質問をした ───
エルキャピタンというスーパーコンピューターの性能を聞く時と、一言一句同じ質問をした。
気象データ、地球の大気……あらゆる計算が課せられることも想定していた。しかし、もっとも可能性が高いと分かっていたのが円周率。
タスクフォースの面々は命令を下した。
事前に行ったテストと絶対に同じ成果を出せ、と!
絶対という言葉を使う事は日常と化していたが、特に念を押すために絶対という言葉を用いた。
スーパーコンピューターの分野においてアメリカは非常に先進的。しかし、勝てないとは口が裂けても言えぬ。
この二週間という準備期間において気象データ、核分裂の演算、ありとあらゆる備えをすることが出来た。円周率の準備も当然ながら整っている……
「あ、そうそう、このモニターが計算結果出てくるヤツ?」
「そうでございます」
「桁数をカンマ付きで表示し、こちらは最先端のGPUを用いて反映─」
「ふーん。じゃ、なんでもいいけどとりあえずやっちゃって!」
彼女は戦慄するほどの素早さで、こちらを遮るように…… 円周率を示せと言ってから、この早さでスーパーコンピューターの回答を要求した。
円周率のために調整していなければ、転換をするには完全に対応不可能な時間で要求していた。
タスクフォースの面々は歓声をあげそうになったところを無理やり抑え、ハッとした表情で理性を取り戻す。
スーパーコンピューターは待機中だが、このわずか一秒、一秒で日本の立場が決定的に変わる!
もしも失敗したのならば、もしも失敗したならば!
関係者全員の頭の中を過ぎるのは全てそれに尽きる。
「おおー、桁数上がっていくね」
「おお、うん」
限界までチューニングを施し、平時から+300%のスタッフ緊急動員を用いた二週間。そのすべての成果を確かめるように、
ピーッ、ピーッ、というタイマーの音が鳴り響く。
「ああ、こんなもんね」
彼女の感想はこれだけだ……タスクフォースの悪夢は再びやってくる。
ここからまだ何が言われるか分からない!
それが次に何であるかなど推測できるはずもなく、ただ勘である。
「うん、満足。んじゃとりあえず大使館に戻るから、今日はあんがとねー」
やってきた大使館職員と、説明をしていた理研職員はエントランスで別れた。
この会話の数で、この圧倒的な、もはや次の瞬間には自分の首が飛んでいるのではないかと疑うような圧。
もしここで『今日の富嶽の計算速度、いかがでしたか?』なんて余計な愛想笑いを理研職員が浮かべたら、彼女から『うーん、アメリカよりちょっと遅かったかな〜』とか身も蓋もない追撃が飛んでくる可能性もあったのだ。厳命しておいただけあってか余計な口を滑らせることは無かったようだが、タスクフォースの心中にはこの焦りがあった。
これ筆者の独り言なんですけど、富岳って何かしらの権利に引っかかりますかね?ってちょっと心配なので、旧字体の富嶽にしています。
一部の固有名詞は差し替えていますが、問題がないと判明次第、変更いたします。
2026/07/24 06:49:04