帝国学園の午前中の講義を終え、私は1人きりの屋上で過ごしていた。
(疲れた)
壁に寄り掛かりながら、疲弊している体と心を休める。
(特別な扱いをされても困る。私は孤児だったのだから)
私、コハク・フィールドの両親は私が物心をつける前に亡くなった。他国との戦争で命を落としたとか、部下に殺されたとか、様々な理由を説明されたが、両親の死去に関する具体的な原因は未だにわからない。
君の両親には世話になった。朕が引き取ろう。
両親が死去後に身寄りがなく孤児となった私の引き取り手に名乗り出たのは、皇帝陛下で、陛下は私に時々セクハラをしかけながらも、大切に育ててくれた。
(学園に入学してからは特別扱いの日々)
帝国学園に入学してからは教諭からは特別扱いを受ける様になり、教室は他の生徒とは別、実技+筆記を担当教諭に教わりながらも共に過ごす仲間はおらず孤独な日々。
(午後の授業、受けたくないなぁ)
他国が攻めてきて授業が中止にならないだろうか。そうなったら前線に派遣されそうだからと思うと、午後の授業を抜けるいい口実はないだろうかと考えていると。
がしゃり
屋上の扉が開くと金髪の女性が入ってきた。
「あ……」
女性は屋上で目をつむっている私を見つけると気まずそうにする。
「ごめん。誰もいないと思ったから」
女性は謝ってから扉の方に体を向けて戻ろうとする。
「……いいよ」
「え?」
「私、ここで休んでるだけだから。空気として見てくれたらいい」
女性の名前はテラコマリ・ガンデス・ブラット。貴族の出身で一族の系譜は教科書に登場するほどの有名人で学園に通う生徒ならその名を知らない有名人。
「じゃあ……お邪魔するよ。えっと」
「……コハク」
「コハクか。よろしく」
テラコマリさんは私の近くに腰を下ろし、手に持っていた本を楽しみにしていたように読み始める。
「本が好きなの?」
「うん。興味があるならお勧めの本を教えてあげるけど」
空気として扱ってほしいといっておきながら、自分から声をかけるのも変と思われるかもしれないけど。
「私も本を読むから」
「どんなのを読むの?」
「……色々」
読書仲間ができるのは嬉しい。教室で休み時間に1人きりで読書しているのも退屈になってきたから。
「コハクはいつもここにいるの?」
「昼休みはいつもいる」
「また来てもいい?」
「……いいよ」
孤児と名家。育ちの違いはありながらも共通の趣味を持っているのはやっぱりうれしいと思いながら、私たちは昼休みに屋上で過ごしながら好きな本の話をしていった。