ムルナイト帝国、宮殿七紅府・血濡れの間。
「……ほんと、濃いメンバーが集まったね」
軍服に身を包んだ吸血鬼たちは血走った目で閣下の到着を待っている。
「コハク少佐、閣下はまだなのかよ?」
金髪の髪をした少年、ヨハン・ヘルダースは拳に炎を魔法を灯しながら尋ねる。
「集合時間まではまだあるでしょ」
「ふん。1分でも遅れてみろ」
階級は中尉で天才と呼ばれている彼の周囲には腰巾着の吸血鬼が集まっている。
(幼女誘拐犯、宮殿爆発犯、殺人犯。その他にも他で問題を起こした吸血鬼)
用意された資料に目を通しながら部下となる第七部隊のメンバーの経歴に目を通す。
幼女誘拐の罪で左遷されてきたカオステル・コント。階級は中尉
殺人の罪で左遷されてきた獣人のベリウス・イッヌ・ケルベロ。階級は中尉
宮殿爆破の罪で左遷されてきた。メラコンシー。階級は大尉。
(この人たちも私の部下になるわけだし、一応いっておくか)
資料を机に置いてから、私は壇上に上がると部屋に集まる吸血鬼たちに告げる。
「……全員に最初にいっておくけど、私たちのトップに立つ人は強いから。下剋上は好きにすればいいけど、殺されたとしても恨みはこっちに向けないでね」
部下の数は500人。吸血鬼は上昇意識の塊で部下から上司への下剋上は日曜茶飯事。
「少佐よりも?」
「嘘だろ……?」
「あの人よりも強いってヤバくね?」
普通に強いよ。本人が自覚してないだけで。
「閣下を迎えに行ってくるけど問題を起こさないでよ」
「起こしたら?」
「……首謀者を含めた全員を氷漬けにして魔核の範囲外の地域で放置する」
部屋を出る前にヨハンがやれるもんならやってみろと叫んでいた。大半は下剋上をしたとしても無駄と理解しているだろうし、無視していいか。
帝国軍の武官が自由に出入りできる東棟。ムルナイト帝国のカレン・エルヴェシアス皇帝との話を終え、軍服に着替えたコマリさんと専属メイドのヴィルヘイズ特別中尉が待つ場所へ。
「コハク……何でここにいるの?」
「……この格好を見たらわかるでしょ」
「軍に入ったの?」
「そう。私も第七部隊だから」
軍服に着替えたテラコマリさん。会話をするのは3年ぶりで話す前は上手く言葉が出てくるか不安だったけど。
「私の階級は少尉。事情は陛下から一通り聞いてるから」
「陛下がコマリ様の部屋に忍び込んだ後に契約したのも知ってるみたいですよ」
「知ってるなら何で止めないんだよ!?」
「……私は日常的にセクハラを受けてるから」
「被害者側かよ!?」
あの人、日常的に私が寝てるベットに侵入してくるからな……。
「コハクは下剋上する……?」
「してほしいならするけど」
「するなよ!?」
コマリさんの事情については皇帝陛下とコマリさんの父のアルマン・ガンデス・ブラット宰相から聞いている。
「しないから安心して。部屋に皆、集まってる。一部の馬鹿が暴走してるけど」
「止めなかったの?」
「初日にわからせたけど、あの人たちは放置したほうがいいと思った」
一部の部下は初日に氷漬けにして殺した。魔核で生き返ったけど、その後も同様だったので放置したほうがいいと思った。
「少し背が伸びた?」
「少しだけね。コマリさんは……………」
「おい。何だ? その間は」
変わってないみたいですね。
「むー……」
「……何?」
「会うまでは敬語で話すっていってたのに」
ヴィルさんは敬語なしで話している私を見ると頬を膨らませる。
「敬語の方がいいならそうするけど」
「自然でいいよ」
「……そう?」
陛下には敬語で話しているけど、部下や側近には敬語ではなく普通に話してるから、敬語よりも普通に話せるのは楽。
血濡れの間の扉の前に到着。コマリさんが扉を開けようとするが、扉が開かない。
「……何やってるの?」
「あかないんだよ!? 悪かったな。非力で!」
コマリさんは体重をかけて扉を開ける。
「死ねや! 大将軍閣下ァーーーーーーーーーーー!!」
ヨハンはコマリさんの姿が見えると全速力で扉の前に賭けだす。
「ちょっ!? きゃあああああ!!」
「ひゃはは! 僕の業火でテメェの髪の毛を燃やしてゴベギャッ!!」
ヨハンは拳に炎を灯しながら扉に首を挟まれて窒息死。コマリさんは恐怖で震えながらヴィルさんに抱きしめられていた。
(ドヤ顔で勝ち誇った顔してるな……)
ヴィルさんがこちらにコマリさんはわたしの物ですって勝ち誇った顔を向けてる。秘密を共有してる中じゃなかったら凍らせてる。
「この中で血の気が多いのが今、コマリさんが殺した吸血鬼」
「間違いなく下剋上されるじゃん!? 教えてよ!」
私にも反抗的だったからね。