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――接触/帝國海軍
1900年代の後半に入った日本帝國は、国難と言う言葉こそ相応しい国家の存亡が掛かった大戦、
とは言え
戦勝によって日本帝國は欧米列強から
それを、只の評価と笑うなかれ。
欧米列強と伍せる文明国と言う評価があればこそ江戸時代末期に締結されていた
故に、その看板を汚す訳にはいかなかった。
又、戦争が生んだ問題はそれだけではなかった。
実態としては引き分けに近い辛勝であったとは言え、兎も角として日本はロシアに勝利した事が日本国内の空気を炙ってしまっていたのだ。
アジアの国家として、非欧米の国家として日本は
それは、本質的には
それ自体は悪い事では無い。
だがそれも、過度と言える状況であれば話は別であった。
又、陸軍と海軍では英雄と軍神が隊伍を組む状態であり、特に若手将校が浮つく所がみられていた。
一等国には、その名誉に相応しい軍備が必要であるとかの主張だ。
何とも頭の痛い話であった。
とは言え、国家の興廃と言う極めつけの難事が終わったという事で概ね、陽性の空気があった。
そんな日々。
ある種の浮ついた空気の中で、ある日本帝國海軍の将校 ―― 海軍省所属の少佐は、妙な仕事を押し付けられていた。
面会であるという。
「山師の類ですか?」
面会の命令に応えたその声に、ウンザリといった色が強かった。
だが命令した大佐の側に、それを咎める気配は無かった。
さもありなん。
何故なら日露戦争終結から此方、日本帝國の未来を憂う士であるという
とは言え、十把一絡げに拒否する事も出来ない。
平時である今現在、天井に達している国軍の人気と信望とを好んで削れる訳では無いのだから。
主に予算的な意味で。
海軍の整備には金が掛かるし、
しかも、最近では欧米列強が海軍力の拡充を計画しているという話も伝わってきているのだ。
帝國海軍に戦争の英雄ですとふんぞり返っている余裕など無いのだ。
とは言え週に1人と言う勢いで、売り込みが来られては厭きるというのも人間としては当然の話であったが。
「マァ、そう言うな。今度の
「先月のが酷すぎましたから。過信はしませんよ?」
「第2石炭の山師か。モノに成れば良かったのだがな」
「原油に水と砂を混ぜて人造石炭を作るとか、正気とは思えませんよ」
「はっはっは」
心温まる対話から数日後、海軍少佐は面会者に会う事となる。
「どうも初めまして」
そう挨拶をしてきた面会者は中肉中背の、特徴と言うモノの乏しい男性であった。
綺麗に撫で付けられた髪。
黒縁のメガネ。
柔和な表情も含めて、特徴が乏しかった。
只、妙な若さがあった。
だが若者と言うには、余りにも落ち着きがあった。
又、着ている背広にも何というか、違和感があった。
濃紺のソレが背広だと言う事は理解するが、生地と言うか仕立てが、何というか違っていた。
総合して、海軍少佐から見た面会者は正しく
「今日はお時間を頂き、有難う御座います」
「いえいえ、御國の為に良い話があるとなれば、吝かではありませんよ。えっと__ 」
「はい。山田大郎と申します」
そっと差し出された名刺には、医療史学術研究員の肩書と山田大郎の名が書かれていた。
「?」
染み皺どころかくすみすら無い、真っ白な見たことも無い紙。
少しだけ指に力を入れるが、名刺は歪まない。
硬い。
そんな事を頭の片隅で考えながら海軍少佐は言葉を操る。
「さて、残念ですが時間は有限です。御國の為とはどのような事でしょうか」
受付でも、事前に何を主張しようとしているのか伝えられていなかった。
だからこその質問。
山田大郎は、薄く笑って答えた。
「未来」
――行動/山田大郎
山田大郎。
日本人の名前の最大公約数的な、あからさまに偽名にも思える名前であるが、本名もそのまであった山田大郎は令和日本の政府に雇われた調査官であった。
担当地区は本州東北地方。
豊とは言い辛い寒村を巡っていた。
特に、日露戦争末期の1905年に発生していた大凶作、天明以来の大飢饉とも言われるソレの傷痕は深く大きかった。
それらをつぶさに見て回ったのだ。
日本国政府との契約時に、
否。
山田大郎だけでは無かった。
日本帝國の地方を廻っていた若手の調査官たちも等しく、自分たちの祖と等しく見える発展途上国としての日本帝國の状況に苦悩していた。
そうであるが故に山田大郎の発した、人としての善性の発露に、賛同する事となったのだった。
無論、それが最善の結果を齎すとは限らない事 ―― 未来情報を渡す事による
或いは人間性の問題とも言えた。
日本帝國に派遣されていた調査官は、それぞれが有能であり、或いは善意と言うモノを素直に信じられる善良な人間が多かったが為に、ある種の楽天的な考えから行動してしまった、と。
素直に、自分の曾祖父母たちの世代に当たる人たちが、自分たちにとって問題とならない事で塗炭の苦しみを味わうが如き事になっている事が受け入れられなかったとも言えた。
今現在で大変な思いをしている人間をその目で見ていたが故の結論とも言えた。
兎も角。
日本帝國に滞在していた調査員たちは一致団結して、日本帝國に接触する事を選んだのであった。
尚、勿論ではあるが日本国政府には無報告であり、完全な事後報告であった。
余談ではあるが、山田大郎と仲間たちが日本帝國海軍を最初の接触先として選んだ理由は、実に単純な理由であった。
調査員の中に
――対応/日本国政府
日本帝國政府との接触と、日本国の存在を告げたという事後報告を受けた日本国政府は盛大にブチ切れる事となる。*1
内閣官房の
とは言え、第一報に添付された資料 ―― つぶさに集められた1900年代当時の日本帝國の
数字の上での日本帝國。
情報で見るだけの日本帝國ではない
気取った現実主義者が嘯いていた、歴史を知る為の観察対象等と言う言葉は、簡単に吹き飛ばされていた。
人間が持つ素朴な善性由来の感情。
何か支援するべきではないのか、何か支援が出来るのではないのかと言う
幸いな事に
故に日本国政府は、事後承諾で行動を行ったという点で山田大郎とその一派に懲罰を与える*2と共に、日本帝國との交渉を行う事としたのだった。
――対応/日本帝國
突如として降って湧いた、100年から先の日本と言う存在からの接触は、日本帝國政府にトンでも無い混乱を齎す事となった。
勿論ながらも簡単に信じた訳では無い。
だが、山田大郎が最初の接触の場で見せた
最早、疑念も誤解も抱く余地は無かった。
とは言え、簡単に本当の事であると受け入れるのは難しい為、日本帝國政府は信用できるモノを選抜し、
建前としては、受け取った親書の返礼を送る為、であった。
親書と言うモノの重さを利用した、正しく皇室外交であった。
勿論、日本帝國政府の腹の内を日本国政府も理解し、そして快諾する事となる。
明治の元勲を代表とした代表団の存在は、面倒事を避ける意味で大々的に公表された訳では無かった。
秘密裡めいた行動。
だが、それでも日本国が用意した船で
アメリカに留学した経験者は、ニューヨークの摩天楼もかくやと驚いていた。
道路規制などを行わずに行われた一巡は、広い道を埋め尽くす車の量に圧倒されもしていた。
決して日本国は夢幻の存在ではないと理解するのであった。
随員に含まれていた
尚、日本国側は日本帝國の興亡、或いは破滅的となった太平洋戦争への歴史が日本帝國側に
歴史問題が発生しない様に。
或いは、予断を許さない事にならぬ様にとの配慮であった。
アメリカとの全面戦争と敗戦、そして同盟国となった ―― アメリカ軍が駐屯している日本国の状況が感情的な反発などが生まれない様に、としてだ。
結果として、
日本国に派遣された秘密裏の外交団が集めた情報は、それが短時間の滞在で得られたモノであったが日本帝國には値千金の価値あるモノとなった。
とは言え混乱自体は発生した。
特に、国号から帝國の名が外れている事が、100年の間に
とは言え、天皇陛下は国家の象徴として存続しており、更には世界的強国として居ると聞けば安心めいたモノが湧くのも事実であった。
取り合えず日本帝國の指導者層たる
先ずは、何故に日本国が居る理由を尋ねた。
そして日本国の目的を尋ねた。
日本国側は回答した。
2つの日本が繋がった
そして続けた。
原因は判っているが原理は不明。
何時まで存在しているかも不明。
現時点で、調査を行っているが何かが判明するかもわからないとも続けた。
そして日本国の目的は、一言で返していた。
日本国の祖に極めて似た日本帝國の繁栄と安寧であり、その為の助言を行いたいのだと断言したのであった。
ある種、こっぱずかしい程に純粋なお題目であったが、そうであるが故に、日本帝國側の代表たちは納得する所があった。
日本国政府の怒りは、
最大の同盟国であるアメリカと、最大の仮想敵である中国が共に混乱しているのだ
仮想敵である中国の混乱事態は、2020年代に入って
だが同時に中国が過度に混乱する事は、周辺国に悪い影響が出る事となる為、出来れば混乱の果てに
死んで欲しいが、死ねとは思っていない。
何とも微妙な塩梅の感情と言えた。
だが、中国の混乱は、その日本国政府の願いを超える形で進行していた。
中国政府は中国らしい傲慢な態度で異世界の先の国家と接触し、
どうやら中国同様に
兎も角。
兵員の動員と
勿論、異世界開発に関する情報公開に関して、領土領海領空及び
だが、それを捕捉する情報が齎された。
中国政府が内々として
間違える筈も無かった。
日本と台湾、そしてアメリカは警戒しつつも
対してアメリカ。
此方が繋がった異世界は魔王と言う悪、抑圧者が居る世界であり、|人間 ―― 人間種《ファンタジー的諸種族を含めたヒューマノイド》は暴力と恐怖によって支配されていたのだ。
何というか、まだ接触したばかりで
魔王とその一党は
アメリカ大統領は一応として、接触時に交渉を持つ事も考えてはいるとは言っていた。
だが同時に、アメリカが異世界の
諸外国の何れもが、アメリカと異世界が戦争になるのだと理解していた。
実際問題として、アメリカが繋がっている異世界は資源開発が殆ど行われていない為、アメリカにとっても宝の山であり、そうであるが故に退く余地が無いというのが現実であった。
又、別の見方での問題もあった。
それは彼我の逆転であり。
即ち、魔王とその軍勢にとって
世界と異世界の関係性は決して一方的、一方方向でのモノでは無いのだから。
ある意味で自衛的、或いは攻勢防御と言う考え方であった。
兎も角。
アメリカ政府は
そうであるが故に、日本を含めた
日本国政府内の
何故なら、法的対応をする上での
山田大郎とその一派、日本帝國に情報収集の為に派遣されていた調査員は、特に何かの期待を背負ってと言う訳でも無かった為、特措法の類も作られずに派遣されていたのだから仕方が無い。
行動の
否。
そもそも、罰則が必要となる状況が想定されていなかったというべきかもしれない。
かくして、日本国政府内の特定な人々は実に官僚的な対応を以って山田大郎とその一派に対する事となる。
即ち、日本帝國との交渉、対応その他といった現場作業の労を押し付けるという形であった。
+
はーい
山田
ここはご注意クダサーイ
前にpixivでチロっとやった奴の再演と、しっくりと逝かなかった令和と昭和のやり直しです。
やっぱり状況説明、流れってのは作者にも必要だよナァ
等とですね
ではでは~