劣化アインズの夫婦の旅   作:Revak

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第11話

 

「ほぉ、そんなアイテムがあるのか」

 

 夜になっても宴は続いていた。

 ドラゴン・タスクの全員が参加しており流石に子供には酒を飲ませてないがそれ以外の全員は酒を飲んでいた。

 と言ってもクレマンティーヌは飲み食いしていない。アンデッドなので飲食不可なのだ。

 だがベルディアは食事をしていた。なぜできるのか、というとフレーバーテキストが実体化したからだ。

 記述に"左手に頭を持って右手で器用に食事をする"という一文があった為食事が出来ている。と言ってもバフは得られないが。

 

「しかし酒の大壺か。食料を無制限で出せるアイテムは珍しいな……」

 

 ユグドラシルにも食料を出すアイテムはある。ダグザの大釜というアイテムでユグドラシル金貨を消費して食料を作り出すアイテムだ。

 と言ってもバフ効果のある食材は作れないしどんな食料だとしても金貨を消費するという欠点もある。

 だがこの酒の大壺はコストなしで味が悪い酒を量産可能だ。

 

 ベルディアはどうせ無限に出るのだからとぐびぐび飲んでいく。酒は毒の一種判定なのでアンデッドであるベルディアは無効化出来る。

 それをクレマンティーヌは羨ましそうに見ていた。同じアンデッドなのに飲食できる上司が憎い、と。

 

「それじゃあ、他の部族にも宣戦布告をするぞ」

 

 ベルディアがそういうとゼンベルが目を点にした。

 

「そ、それはまさか……他の部族を滅ぼすのか?」

「いや違うが。全ての蜥蜴人(リザードマン)を統一し、俺が支配するんだ」

「あー、そう言う事か……いいぜ。俺たちも手伝うぜ」

「いや、それには及ばない。下手にお前たちだけ先に支配して先兵として使えば他の蜥蜴人(リザードマン)と確執が出来るだろう……それは避けたい。俺の配下と順に一つずつ集落を落としていくつもりだ」

「なるほど、わかった」

 

 ゼンベルはそう納得すると酒を呷ったのだった。

 

 

 

 

 ■

 

 ベルディアとクレマンティーヌが去ってから数日。その間グリーン・クローの集落は平和だった。

 ザリュースたちもあのアンデッドたちは何だったんだろう、と思いつつ大したことではないと思っていた。

 そんなある日、空が急に暗くなる。黒い雲に空が覆われたのだ。

 

「戦士でない者は避難をしろ!」

 

 集落の中心で族長シャースーリュー・シャシャが叫んだ。

 

 空から一体の悪魔がやって来た。

 

 朱眼の悪魔(ゲイザー・デビル)と呼ばれる悪魔である。

 朱色の三つ目。悪魔らしい黒い体に蝙蝠の翼、悪魔の角を持っている。

 

「偉大なる主からのメッセージを伝える」

 

 ゲイザー・デビルはそういうと口をにたりとした。

 

「これより七日後、この集落を攻め落とす。汝らは二番目の供物となる。偉大なる主に蹂躙され、その支配下に加わるのを待ち望むが良い」

 

 それだけ言うとゲイザー・デビルは飛んで去っていき、雲も去った。

 

 これは厄介事だ、とザリュースは歯ぎしりをした。

 

 

 

 

 

 ■

 

 五日後。

 蜥蜴人(リザードマン)は史上初の四部族連合を成した。

 ザリュースとシャースーリューが他の部族と交渉に行き、同盟を組んだのだ。

 だが、ドラゴン・タスクは加わらなかった。なぜかというと居なかったのだ。

 ドラゴン・タスクの集落は人気が一切なく、まるで突然疾走したかのように誰も居なかったのである。

 既に滅ぼされた後にしては破壊痕が無いし、血の臭いもしなかった。そのことを警戒しつつザリュースたちは準備をしたのだ。

 

 そしてついに湿地帯に悪魔の軍勢がやって来たのだ。

 

 ゲイザー・デビル。ヘルハウンド。オーバーイーティングにインプにデビル。多種多様な悪魔の軍勢。

 

「……あれが指揮官か」

 

 そして最奥に控えるのはオーバーロード・ジェネラルのベルディアだ。

 圧倒的強者のオーラを放つ怪物を前に族長たちとザリュースは怯えそうになる。だが気合で耐えた。

 生者の特権だ。勇気があれば何でもできるという気概が湧いてくる。更に愛する者がいるとなればなおさらだ。

 

「行くぞ! 祖霊に勝利を捧げるぞ!」

 

 シャースーリューの叫びに蜥蜴人(リザードマン)たちは雄たけびで返した。

 

「突撃ィィィィィ!」

 

 構える悪魔軍に対し蜥蜴人(リザードマン)の戦士たちが突撃する。

 

「迎え撃て、悪魔軍」

 

 ベルディアがそう指示を出すと配下の悪魔たちがにたりと生者を甚振れることに対し歓喜し顔をゆがめ、待ち構えた。

 

 この悪魔たちはティカやルドガーたちが特殊技術(スキル)で召喚した悪魔たちだ。

 高位の悪魔は自身より下位の悪魔を召喚することが出来る。ただポイント消費性に近く上位を一体召喚するか下位を複数召喚するか選ぶタイプだ。

 一度使用したら二十四時間経たないと回復しない。

 その特殊技術(スキル)を持って召喚した悪魔なので時間経過でも勝手に消えるが、それでも二時間程度は持つ。

 

 悪魔たちが雄たけびを上げ迎撃した。

 

 

 

 

 

 蜥蜴人(リザードマン)と悪魔軍は蜥蜴人(リザードマン)側が優勢に進んだ。

 何せ悪魔側はベルディアからの命令で殺しすぎないように、という命令が下っている。本気で殲滅をするならば容易く終わっていただろう。

 

 しかし蜥蜴人(リザードマン)側にそんなことはわからない。決死の覚悟で挑む。

 ヘルハウンドの炎で焼かれ、オーバーイーティングに食われながらも彼らは道を切り開く。

 

 そして──その隙間を族長とザリュースたち精鋭部隊が突撃した。

 クルシュはいない。彼女は万が一の為の予備だ。

 

「ウォォォォォ!」

 

 雄たけびと共に悪魔たちを薙ぎ払いながら突撃し、ザリュースがベルディアに斬りかかった。

 ベルディアは容易くくろがね砕きで防ぐ。

 

 すぐさまザリュースは飛びのき距離を取った。

 

「お前たちが族長か?」

「そうだ……! 我らこそが蜥蜴人(リザードマン)の希望! ここでお前を討つ!」

「やって見せろ、蜥蜴人(リザードマン)──だがその前に。勘違いしているかもしれないからこういっておこう」

 

 その言葉にシャースーリューたちは目を潜めた。

 

「なんだと?」

「こちらの目的は蜥蜴人(リザードマン)の占領であって殲滅ではない。殲滅ならば俺が出て皆殺しにして終わっていただろう?」

「……なるほど、占領か」

 

 その言葉に一瞬ザリュースは降伏というのが浮かび出た。

 だが、今降伏するのは悪手だ。蜥蜴人(リザードマン)の力を見せていない。

 価値の無い家畜として扱われるのが目に見えている。

 ならば──

 

(この強大なアンデッド相手に一矢報い、力を示す!)

 

 そう全員覚悟を決めた。

 一番硬いキュクー・ズーズーが前に出る。

 彼は呪われた鎧白竜の骨鎧(ホワイト・ドラゴン・ボーン)を装備している。

 この鎧は着用者の知能を吸い取る代わりに防御力を上げる装備である。

 本来なら着用者は白痴になるがキュクーは会話可能なほどの知能を残している。

 その防御力は蜥蜴人(リザードマン)随一でアダマンタイトにすら迫るだろう。

 

 キュクーは両端に刃のある槍で持ってベルディアを攻撃する。

 ベルディアは身軽に動き槍の刺突を回避する。

 

 その横にザリュースが移動する。

 ザリュースが横から斬りかかった。ベルディアはくろがね砕きで防ぐ。

 

 その隙を突くようにスモール・ファング族長スーキュ・ジュジュがスリングショットで攻撃を放つ。

 礫による攻撃だ。だがベルディアに届く前に謎の障壁によって防がれる。

 

 ベルディアは魔法効果の付いてない遠距離攻撃の無効を装備によって得ている。スーキュの攻撃は無意味だ。

 レベル百ともなるとそう言った攻撃に対し耐性ぐらい得ている物だ。

 

(二、三人は殺すか)

 

 ベルディアはそう判断しキュクーに迫る。

 圧倒的高速移動を前に全員一瞬硬直してしまう。それが不味かった。

 ベルディアは右手のくろがね砕きでキュクーを縦に両断した。

 アダマンタイト程度の鎧ならば伝説級の武器、くろがね砕きで斬り裂けるのだ。

 

 次だ──とベルディアが武器を構えると同時にザリュースが凍牙の苦痛(フロスト・ペイン)を振るった。

 

〈氷結爆散〉(アイシー・バースト)!」

 

 凍牙の苦痛(フロスト・ペイン)の持つ能力の一つを発動した。

 〈氷結爆散〉(アイシー・バースト)は範囲攻撃の魔法攻撃だ。一定範囲を凍結させ更に冷気ダメージを与える。

 

 ベルディアには凍結による拘束は通じないが冷気ダメージは通る。といってもアンデッドなので冷気に耐性があるので半減されるが。

 

「無駄だ」

 

 ベルディアはそう言いザリュースの首を跳ね飛ばした。

 

 次を──と残るヒーラーであるシャースーリューを探すが視界内に居なかった。

 どこだ、と思考すると同時に背後に気配を感じとる。

 

 背中に一撃喰らった。

 

 だが、ベルディアの鎧によって防がれる。ノーダメージだ。

 

 ぐるっと振り返りながらベルディアはくろがね砕きを振るい上下に切断した。

 

「止めだ」

 

 ベルディアは飛ぶ斬撃を放ちスーキュを真っ二つにして殺した。

 

「そんな……」

「族長たちが……」

 

 蜥蜴人(リザードマン)たちはそれを見て絶望する。

 もはやこれまで、か、と。

 

 ベルディアはすぅ、と息を吸ってから大声で叫んだ。

 

「聞け! 蜥蜴人(リザードマン)共! お前たちの族長は死んだ! ──だがお前たちまで無意味に殺戮をするつもりはない! 降伏するならば武器を捨てよ! ──悪いようにはしないとお前たちの祖霊に誓おう!」

 

 ベルディアがそう叫ぶと少し考えた後、蜥蜴人(リザードマン)たちは武器を捨て、降伏を選んだ。

 こうして蜥蜴人(リザードマン)たちはティカの支配下に加わるのだった。

 

 

 

 

 

 ■

 

 まどろみの闇の中から、ザリュースはひっぱりあげられた。

 

「ここ、は……」

 

 空を見る。

 そこには青く澄んだ空が浮かんでいる。

 

「起きたのね……レベルダウンの仕様はあまり変わってないみたいね」

 

 蜥蜴人(リザードマン)、シャープエッジの集落にて。

 ティカがメアリとベルディアを連れ来ていた。

 

「あ、なたは……?」

「貴方が戦った騎士、ベルディアの主人よ。あなたたちを支配する者でもあるわね」

「あなた……様が復活の魔法を……?」

「……そうよ。私の力で復活したの、貴方は」

 

 嘘だ。

 ティカに他者を蘇生する魔法はない。ワンド・オブ・リザレクションは持っているが使用回数制限があるアイテムなので勿体なく使っていない。

 メアリが<真なる蘇生>(トゥルー・リザレクション)を使い蘇生させたのだ。

 ザリュースは多少のレベルダウンと多少の金貨の消費の身で復活を可能とした。

 

 ベルディアという強大なアンデッドを従え、復活すらたやすく行使する存在。そんなものは──神ではないか。

 

 ザリュースは姿勢を正し、片膝をついた。

 

「偉大なる御方。忠誠を誓います」

「えぇ、これからよろしくね。ベルディアが殺した奴らは復活させるから、今後仲良くしてね」

「畏まりました」

 

 こうして蜥蜴人(リザードマン)は完全に支配下に入るのだった。

 

 

 

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