劣化アインズの夫婦の旅   作:Revak

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第12話

 

「……?」

 

 リ・エスティーゼ王国王都に冒険者チーム漆黒の剣は来ていた。

 ランクが金にまで上がり、相応の実力と装備を得た彼らは王都まで観光とクエストに来ていた。

 今の自分たちが首都でどこまでやれるか、という実力試しを兼ねている。

 

 そしてニニャとダインは王都を観光していたら裏道に入ってしまった。

 

 ある店の裏手から男が出てきて、大きな袋をゴミ捨て場に捨てた。

 

 何故か、ニニャはそれを注視していた。

 

「ニニャ?」

 

 ダインが様子が変なニニャを案じて声をかけるが、聞こえていなかった。

 

 ニニャは小走りで袋に近づき、袋の口を開けた。

 

 そこにはボロボロの女が入ってた。

 歯は砕け、顔は傷だらけ。足の健は切られている。

 

「ああ──」

 

 ニニャは──いやセシーリアはその姿を覚えていた。どれだけボロボロになろうと忘れるものか。

 

「姉さん──」

 

 

 そこにセリーシアの姉──ツアレニーニャ・ベイロンが入っていた。

 

 

 

 

 

 ■

 

 ティカとルドガー、ハムスケの三人は王都に来ていた。

 目的は観光だ。一国の首都という物を見てみたかったのだ。

 

 因みに行くのにプルトンが引き留めて来た。有力な冒険者が王都に取られると思ったのだろう。

 それを振り払って二人は観光に来たのだ。

 ティカはどこかに永住するつもりはない。別荘ぐらいならば作ってもいいかも、とは思っているがそれに相応しい場所を見つけてはいないのだ。

 

 

 この後はエ・ナイルウにも行くつもりだ。そこのナイウル焼きが絶品らしいのでそちらも楽しみだ。

 

 王都をティカとルドガーは観光した。ハムスケは置いて来た。目立つので邪魔になるのである。

 

 ラキュースに案内してもらい、ガゼフと会ったり観光を楽しんだ。

 

 そして観光三日目。たまには一人で出歩こうか、とティカ一人で外に出た。

 一人とはいっても影にシャドウデーモンが入ってるので一人ではないが。

 

 そして歩いていると知り合いを見つけた。

 

(ルクルット?)

 

 ルクルットは何かを警戒しながら歩いているように見えた。

 この王都で何を警戒するのだろうか、と思いつつ近づく。

 隠密技能が無いのでレンジャーであるルクルットにすぐに気づかれる。

 

「ティカさん!」

 

 ルクルットはどこか安心したような表情を浮かべた。

 

「ルクルット、貴方どうしたの? 何を──」

「あー、詳しい話は漆黒の剣(うち)が泊ってる宿で話したいんだが……今、時間大丈夫か?」

「大丈夫よ……何があったの?」

「ちょっと厄介事に巻き込まれたというか……突っ込んだというか……取りあえず来てくれ」

 

 そうしてルクルット案内の元ティカは宿屋に行く。

 金級が泊るにしては少し高そうな宿だった。

 

 宿に入り、ルクルットたちが泊っている部屋に入る。

 

「今戻った。買い出しは出来なかったが、凄いもん連れて来たぜ」

 

 部屋に入るとペテルが驚く。

 

「ティカさん?! ……ルクルット、なんで連れてきた?」

 

 その声には少しの怒りが滲んでいた。

 それに対しルクルットは反論する。

 

「今この状況を打破するにはこの人の助けが必要だ。対価は後でどうにかして払うしかないだろ」

「それは! ……そうかもしれないが……」

「私を置いてけぼりにしないでくれる? 何があったか教えて」

「……実は──」

 

 

 ペテルからティカはだいたいの情報を得た。

 ニニャが探していた姉を王都の路地裏で発見した。だが、その姉……ツアレは違法娼館で働かされていたという。体はボロボロで、精神も病んでいる。

 そして、彼女は裏の娼館で働かされていた身……ツアレが生きているのを良く思わない連中──八本指がその魔の手を伸ばしつつあった。

 

「……どうしたものかしら」

 

 ティカはうーんと考える。

 ツアレを助けるのは簡単だ。メアリを呼んで回復させ、転移魔法でカルネ村にでも転移させればいい。

 だが、そこまでするほどの仲ではない、ともティカは思う。

 ティカは所詮は悪魔だ。自身の利となるか否かで物事を考える。

 漆黒の剣にそこまで投資しても回収できるかが見透明な今、手を貸す義理は無いとも思う。

 

「頼む! 何でもします! 金なら今後のクエストで得た金の殆どをティカさんに渡せますし、どんな危険な事だって受け入れます! だから──!」

 

 ペテルたちはそう深く頭を下げた。

 ニニャも、ダインも、ルクルットも深く頭を下げている。

 

「いいわ。助けてあげる」

 

 気づいたらティカはそう言っていた。

 何故だ、と自分に疑問を問いかけるも答えは来ない。

 自分は既に悪魔。人に同情するような生態はしていないはずだ。だけども──

 ──誰かの為にすべてを投げ打つ覚悟を持つ彼らを見て心が揺れ動いたのかもしれない。

 

「少し待ってね。助けれる人を呼ぶから──<伝言>(メッセージ)

 

 繋げる相手は当然メアリだ。

 

『奥様。どうされましたか?』

「貴女今カルネ村に居る?」

『はい。カルネ村で村人たちの訓練をしていましたが……』

「よかった。今から私がカルネ村に転移するから、私と一緒に王都に来て。治癒してほしい人がいるからその人を治してもらうわ」

『畏まりました』

 

 そこで<伝言>(メッセージ)を切る。

 

 ティカは漆黒の剣に告げる。

 

「じゃあ、私は一旦神官を呼んでくるわ」

 

 ティカはそういうと<上位転移>(グレーター・テレポーテーション)でカルネ村に転移し、そこでメアリを拾って再度宿屋に転移した。

 

 漆黒の剣は神官を呼ぶ、と言っておきながらメイドを連れてきたことに驚きつつもティカさんが言うならば、と信頼した。

 

 メアリがツアレの寝ているベッドまで移動する。

 

「では魔法を使います──」

 

 そうして第十位階の回復魔法を行使し、肉体の傷も精神の傷も完全に癒した。孕んでいた子は消滅した。

 

 ツアレが目を覚ました。

 

「姉さん!」

 

 ニニャがツアレに抱き着いた。

 

「セリーシア?」

 

 こうして姉妹は再開を果たした──

 

 

 

 

 

 ■

 

 

 ティカは自身が泊っている宿に一旦帰還した。

 そして部屋でルドガーに先ほどあったことを相談する。

 

「漆黒の剣を犯罪組織から助ける、か……どうしたものか」

「何とかならないかしら」

「……拠点さえわかれば潰すのは簡単だろう。だが肝心の拠点がわからなければな……」

「うーん。国を蝕むレベルなら……国に取り次いでも無駄になるだろうし……」

「……いっその事この王都事態を悪魔で襲撃するか? 悪魔たちに八本指を優先して殺させ、更に一般市民にもある程度被害を出させれば八本指もツアレとやらを追う余裕は無くなるだろう」

「それ、いいわね。じゃあ明日にでも襲撃させましょ。確かイビルロードの傭兵NPCの巻物(スクロール)あったからそれ使うわね」

「あぁ。そうして──」

 

 そこにこんこん、とノックが来た。

 

 ティカが椅子から立ち上がり玄関に向かう。

 

「どなたですか?」

「ラキュースです。話したいことがあって、来ました」

「あら、どうぞ中へ」

 

 ティカはそう言い扉を開ける。

 

「フロントに言って紅茶でも用意して貰いますか?」

「いえ、それには及ばないわ。今ちょっと緊急の事態で……」

 

 ラキュースは苦笑しながら言う。

 

「ラナー第三王女があなた達漆黒に会いたいそうです。王宮まで来てくれますか?」

 

 その言葉にティカは目を点にした。

 

「王女殿下か? ……一介の冒険者に何の用でしょうか」

「ここで言う事は出来ないわ。だけどこの王国を左右する一大事ではある。出来れば来て欲しいのだけど……」

「あなた、どうする?」

 

 ティカがルドガーに問いかけた。

 

「行ってみよう。もしかしたらこっちの問題も片付くかもしれない」

 

 ルドガーが真剣な表情で言った。

 

「? わかったわすぐ行く……いや、この格好じゃ不味いかしら」

 

 ティカは装備を変えている。

 普段装備の陰部を隠した黒い布みたいな恰好だ。

 

「いえ、ラナーはそういうの気にしないから大丈夫よ。行きましょう」

「わかったわ」

 

 

 そうしてティカとルドガーは王宮へ向かうのだった。

 

 

 

 ■

 

 

 王宮内に入り、ラナーの私室に入ったティカが最初に目にしたのは当然ラナー第三王女だ。

 フルネームはラナー・ティエール・シャルドロン・ライル・ヴァイセルフという。

 彼女の自室は王族らしく結構な広さと豪華さを持つ。

 ゲームでも貴族の屋敷はこうだったな、と思いつつティカが礼をする。

 

「初めまして、ラナー・ティエール・シャルドロン・ライル・ヴァイセルフ殿下。私はティカ。アダマンタイト級冒険者を務めさせて貰っています」

 

 ラナーは微笑みで返した。

 

「こちらこそ初めまして、私はラナーです。気軽にラナーでいいですよ」

「流石に王女殿下に対しそのようなことは……ラナー様とお呼びさせていただきます」

「ふふ、わかりました。さぁ、どうぞ座ってください」

 

「失礼します」と一言言ってからラナーと同じテーブルに座った。

 

 テーブルの上には茶菓子が置いてあるが、食べ方のマナーがわからないのでティカは手を付けなかった。

 

「ではさっそく本題に入ります。私たちは八本指と敵対しています。そして近日中に八本指の各拠点を襲撃するつもりです」

 

 ラナーが真剣な表情でそう言った。

 

(ダイレクトにこっちの用事と重なったな)

 

 ティカは偶然か? と思いつつ警戒を強めた。

 

「漆黒のお二人には襲撃に参加してほしいのです。非公式な依頼ですが相応の報酬をお支払いすることを約束します」

「……何故、私たちにも声をかけたのですか? 戦力ならば蒼の薔薇で充分では?」

「いえ。八本指には六腕と呼ばれるアダマンタイト級に匹敵する戦力を持っています。彼らが分散した場合、蒼の薔薇の戦力だけでは足りないのです」

「なるほど、そう言う事ですか……」

 

 ティカは考える。厄介だな、と。

 これは冒険者組合の依頼のグレーなところだ。

 

 冒険者組合は政治には関わらないとされる。強大な力を持つ冒険者が戦争に参加すればそれだけでパワーバランスが崩れるからだ。

 だからラナーの依頼は非常に危ない橋を渡ることになる。

 だがしかし、八本指は犯罪組織……言ってしまえば野盗などと同じカテゴリーになる。

 組合でも山賊や盗賊退治のクエストは張り出されるので、倒しても問題ないかもしれない。

 だが八本指は貴族などにも魔の手を伸ばす組織だ。野盗などと同じと言っては問題があるだろう。

 

 しかし、受けない訳にはいかなかった。

 

「ラナー様。実は友人の冒険者が八本指の違法娼館で働かされていた女性を助けまして……彼女の事もどうにかしていただきたいです。それが、貴女の依頼を受ける条件です」

 

 それに対しラナーはあっさりと受け入れた。

 

「わかりました。その女性についてもどうにかしましょう」

 

 あっさりと受け入れられたことにティカは驚きつつ、「ありがとうございます」と礼を言うのだった。

 

 

 

 

 

 

 ■

 

 

(王国は駄目ね。この女に滅ぼされる)

 

 ラナーはそう判断した。

 ラナーはティカと少し話した。それだけでティカの力と思想を把握した。

 ティカが直接王国に力を振るう事になる未来を予測したのだ。

 その原因は言うまでもなく──帝国だ。

 帝国がティカを取り込み戦争でその力を振るわせることがありありと予想出来たのだ。

 

 ティカを縛る鎖が今のところ何もなく、用意することも出来ない。

 だが、帝国ならばティカに相応しいだけの物を与え、縛ることが出来るだろう。

 ティカは今のところ各国を旅してまわるという。安住の地はないという。だが、帝国に居を構える可能性は高い。

 あの強欲で聡明な皇帝ならば確実にティカを取り込めるだろう──そうなる未来がありありと予想できた。

 

 だが問題ない。自分のすべきことは変わらないのだから──とラナーは次なる策を思案した。

 

 

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