トブの大森林を進んでいく。
ハムスケの案内の元進事二日。一行は順調に東へと進んでいた。
シーカー役のティアとティナが注意しつつ進むもこの二日で七度モンスターの襲撃にあった。
殆どはオーガとゴブリンの部隊だ。木々が密集している森の中という事で非常に戦いにくかったがアダマンタイトにまで上り詰めた冒険者なので苦も無く倒していった。
更に進んでいるとティアが「止まって」と指示を出した。
「どうしたの?」
「大型のモンスターたちがこっちに来ている。数は六。人型……オーガよりも大きい」
「衝突は避けられない?」
「迷いなくこっちに来ている」
「なら迎え撃つわ。漆黒の方もいいですよね」
「問題ない」
そうして武器を構え待つことしばし。敵がやって来た。
今居る場は森の中の広間なので戦うのに問題はない。
「なんだ、お前たちは」
現れたのはトロール五体と筋肉質な大きな──オーガより鍛え上げられ引き締まった体を持つトロールの変異種、ウォートロールだった。
喋れる、という事でラキュースが代表し情報を取れないかと探りつつ会話をする。
「私たちは森に起こった異変を調査しに来た冒険者です。あなた達は?」
「俺はグ。東の地の支配者だ。お前の名を言ってみろ!」
「私はラキュース・アルベイン・デイル・アインドラです。蒼の薔薇のリーダーを務めています」
ラキュースが名乗るとグと取り巻きのトロールたちが大笑いした。
がはははと笑う。なぜ笑っているのか一行はわからなかった。
「俺のように勇気ある名ではないな! お前のような臆病者の言う事など聞く理由はない! バリバリと食ってやる!」
グがそういうとイビルアイが魔法を飛ばした。
「
火球が飛んで行きグに命中し炎の爆発を起こした。
「がぁ?! 卑怯な奴め!」
だがイビルアイの魔法を喰らってもぴんぴんとしていた。
トロール系は炎に対し脆弱性を持つがこのトロールは違うらしい。
「私たちがこの大物を相手するわ。蒼の薔薇の皆さんは他のトロールをお願いします」
「わかったわ!」
そうして戦闘に入る。
ルドガーが前に出て大剣でグの腹を斬り裂いた。
「ぬぅん!」
だがグは斬られたことを意に介さず攻撃する。
ルドガーは斬撃を大きく後ろにジャンプすることで避けた。
「ガハハ! 俺に斬撃など通じ──?!」
グの目論見は破れた。
グは再生に優れたトロールの中でも更に再生能力が高い。
例え頭を潰されようと心臓を貫かれようと弱点属性出ないのならば再生できるほどに強い。
だから相手の攻撃を受けてカウンターを決めたのだ。
だが──いくら待っても再生しない。
「お、お前なにをした?!」
「ただ斬っただけだ」
ルドガーのクラスにカースドナイトがある。
このクラスは低レベルの武器やアイテムを装備、使用できない代わりに攻撃力が非常に高く、更に相手に高レベルの回復魔法でないと回復できない傷を与えることが出来る。
それによりグの再生能力は阻害されているのだ。
「隙だらけよ──
第五位階の攻撃魔法が飛んで行く。
龍の形をした雷がグに直撃し体を焼き焦がす。
「まだだ!」
グはそう叫びマジックアイテムでもある剣で攻撃しようとする。
だがそれを許すルドガーではない。大剣で縦に真っ二つに斬り、絶命させた。
「他は……終わってるわね」
他を見れば既にトロール五体も討伐済みだった。
「そっちも終わったんですね……何か情報は得られましたか?」
「いえ、何もなかったわ……これは骨が折れそうね」
「情報ならそこにいるやつに聞けばいい」
ティアがそういうとクナイを投げた。
木に当たる。
ティカは気づいてなかったがそれで気づいた。透明化している者がそこに居た。
「ま、待ってくれ! 敵対の意思はない!」
そう老人が透明化を解除し姿を現した。
現れたのは上半身が人間の男、下半身が蛇のナーガだ。
「あなたは?」
ティカがそう問いかけるとナーガは回答する。
「ワシはリュラリュース・スぺニア・アイ・インダルン。西の魔蛇……この森の西の地を支配している」
「……東に加え西の支配者も、ね。何の目的でここに居たのかしら」
「東の巨人……先ほどそこの戦士に殺されたウォー・トロールが住処を壊されたの。次の住処を探すべく行動しているらしくその地を追跡しておった。何かあったらワシの支配地にも影響が出るからな」
「ふぅん。本当にそれだけ?」
「それだけじゃ! おぬしらのような強者に喧嘩を売るほど耄碌しておらんのでな……」
「そう。私たちはトブの大森林……この森で起こった異変を調査しに来たの」
「あぁ、あの化け物の影響は人の国にも影響出るか……情報を提供したいところじゃが、出せるのはあの化け物が来た方向ぐらいじゃぞ」
「それだけでも充分よ。ありがとう……一応言うけど森の外に出るというのなら──」
「安心せぇ外に出るなんてことはしないわ。うちには影響がなかったからの……もう行ってよいか? そちらの男が睨んできて怖くてたまらん」
「ラキュース、いいかしら?」
「いいと思うわ。ありがとう、リュラリュースさん」
「うむ。ではの」
そう言うとリュラリュースは去っていった。
「じゃあ、探索を続けましょうか」
■
更に一日かけて一行は進んでいった。野営はもろちんグリーンシークレットハウスだ。
そうして進んでいると不意に声をかけられた。
「き、君たち……冒険者、かい?」
ティアとティナが真っ先に反応し苦無を抜いた。
「ま、待って! 私は敵じゃないよ!」
声の方向を全員が見る。
そこには木がそのまま人の女性の形を取ったような異形が居た。髪は葉っぱで出来ている。
ドライアドだ。
「あなたは?」
ラキュースがそう問いかけた。
「私はピニスン・ポール・ペルリア。ドライアドだよ……君たち、この森に何の用?」
「この森から出て来た巨大なモンスターについて調査しに来たの」
「あ、てことはザイトルクワエの事かな……」
その言葉に全員目を見開いた。
「知ってるの?」
「う、うん。奴はこの森に封印されていたからね……私はその封印近くに本体があるんだ。今回はなんとか無事だったけど……」
「そのザイトルクワエっての詳しく教えてくれる?」
「うん……多分ずっと昔に七人組がやって来て、次元の向こうから来たっていうザイトルクワエを封印してくれたんだ。七人組は人間や翼人、エルフやドワーフも居たよ。んでそいつらが本体を封印したけど永遠には続かないから封印が解けそうならまた呼んでくれって言って去っていったんだ」
七人組、という言葉にイビルアイが反応した。
「七人組……もしや十三英雄か?」
十三英雄とは魔神を討伐し世界を救った英雄たちの事だ。
人間以外の者も居るが、歴史から抹消されている。それでも悪魔と人の混血児などが残っているが。
「それはわからないけど、七人組もすっごく強かったよ」
「異種族合同パーティなど早々ない。まず十三英雄で間違いないだろうな」
イビルアイがそう肯定した。
「まずザイトルクワエって奴で間違いないそうね……それで封印が解けて、移動をした、と」
ラキュースがそうまとめた。
「だけど少し変だったよ。なんか今度は人間だけの七人か八人組が来て、ドレスを着た人がザイトルクワエに向かって何か放ったらザイトルクワエが一瞬で大人しくなったんだ。と思ったらその人たち無視して移動していったけど」
「……封印を解いた者がいる?」
「いや、封印自体は既に解けてたから違うと思うよ」
「ということは……誘導か何かしたのか?」
「ありえるな。いきなりの大移動をしたのに誘導されていたというのは納得できる」
イビルアイがまたも肯定した。
「今度はその集団にも気を付けないといけないわね……王国に対し敵意を持っているのは間違いないわ」
「だな」
ガガーランが肯定した。
その後一行は周辺を調査するも大した情報は得られず。トブの大森林の探索は終わるのだった。