~~アイリ×ツムギ~~
オカルト……それは日常に遍在するものだ極論、腹が痛くなったらトイレが空いてるように神に祈る『困った時(だけ)の神頼み』のだって、広義的なオカルト足りうる。だからこそ、オカルトを信じるかではなく、彼女はこう聞く。
「時にアイリさん。アイリさんはオカルトに興味ありますか?」
トリニティ某有名スイーツ店にて、ツムギが藪から棒に口走る。しかし、アイリはあまり驚いた様子もなく聞き返した。
「オカルトですか……?相変わらず唐突ですねツムギさんは」
「例えば……トリニティのオカルト話で、夜の校舎を徘徊するハナコさん……なんて怪談があるとか」
「へぇ~~。残念ながら全く知りませんね。ナツちゃんとかなら知ってるかもしれません。そういうのは」
まぁ案の定という返答だ。ここでツムギはオカルト研究会だからと話を広げることもできるが、それはしない。興味がない者をむりやり引きずり込むのは怪異のやり方だ。
ツムギは欠片を零さないように上品にタルトをかじり、話を切り替える。
「ところでアイリさん最近どうですか?」
「元気ですよ!って言いたいところですが、季節の変わり目ということもあって最近は体の調子が悪いですね」
「それなら、今日は早めに帰った方がいいですよ」
「すみません……せっかくワイルドハントでの貴重な外出日にトリニティを案内するって話だったのに」
ツムギは机の上にあるスイーツを綺麗に食べ終え、満足そうに目を瞑りながらアイリからの謝罪に答える。
「いえいえ。収穫は既にありましたので」
店の外に出た後、ツムギは去っていくアイリの背中を見つめていた。そして、アイリの姿が見えなくなった瞬間くるりと素早く振り返った。
「さて……興味がない、だそうですよ?」ツムギは誰もいないはずの空間に声を投げかける。
「A……AUUAAA」
アイリのような純朴でオカルトへの知識のない少女は、オカルト側からは狙われることは珍しくない。そういった子どもは、怪異の好物だと昔から決まっているのだ。
「さて……あなたは、それでもまだ彼女に付きまといますか?」
ツムギの知識によれば、ここで断るのは────
「UGYAAAA!!!」
「────『悪霊』、ですか。なら、私流の鎮魂歌(レクイエム)で送って上げるとしましょうか。今からてめぇを、冥府まで!!」獲物(ベース)を取り出し、ツムギはボーカル付きで演奏を始める。それは当然周囲の通行人(オーディエンス)の注目を集めることとなる
「お?なんだなんだ?」
「路上ライブか?」
ざわざわと通行人から観客へと変わる人々に囲まれながら、ツムギ流のお祓いが始まる。「さぁ!冥府までぶっとんでいきな!この一曲で!!3!2!1!ヒャッハー!!」
~~ツムギ×ミノリ~~
「同志諸君!革命の時間だ!!」
今日も今日とてミノリが叫ぶ。もはや説明不要かもしれないが、ミノリにとって支配者への糾弾はもはや呼吸と同じ。だが、今日はいつものメンバーとは少し違った。
「ヒャッハー!!支配者に地獄を見せてやろうぜ!俺たちゃ芸術と建築の反乱者!!」
悪魔のようなバンド衣装に身を包んだツムギがなんと加わっているのだ。
話せば長くなるのだが、あれは避暑の一環としてレッドウィンターでの演奏をツムギが計画したことまで遡り……
「早速邪悪な権力の犬を糾弾に向かう!後に続け同志諸君!」
……長々と説明している時間はなさそうなので簡潔に。ツムギがミノリたちと出会った結果、意気投合してしまったのである。元より自由を重視し束縛に反旗を翻すのがデスメタルの特徴。ツムギの音楽とミノリの思想が惹かれ合うのは運命だったのかもしれない。
「人間の死が社会の福祉!!死ね死ね死ね死ね死んじまえ―!!」
「「「「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーー!!!!!!」」」」
ツムギの演奏に合わせて大量の工務部のメンバーが革命を起こす。音楽付きだということで楽しそうだと一般生徒たちも革命に乗っかり事態は(レッドウィンターでは日常茶飯事だが)大惨事となった。
────そして小一時間が経った
「同志ツムギ!あなたのおかげで革命は成功した!礼を言おう!」
「いえいえ。私こそデスメタルに必要なインスピレーションの中でも、斬新かつ新鮮なものを実地で体験できるなど夢のようでしたよ」
革命は成功してしまった。
「それでは、私はこの辺りで失礼しますね」
去ろうとしたツムギの肩を掴み、ミノリは言葉を紡ぐ。
「待ってくれ!我々の信念として、工務部の同志は革命が終わった後の代表の座には座れないのだ。同志ツムギよ。今回の件で活躍したあなたに座ってもらいたい。」
革命を手伝っただけならともかく、他校のトップに座れなど無茶苦茶な話だ。常人ならばここで断るのが筋だろう。
「ええっ!?面白そうですね!まるで小説の主人公のような激動の展開!新たなるインスピレーションを得られそうです!」
────しかしツムギは狂人であった。
「そうかありがとう、ならば……」
ミノリはメガホンを構えて、胸が2倍に膨らむほど大きく息を吸い込み、一気に叫んだ。
「あたしたちレッドウィンター工務部は新たなる闘争を開始する!」
「……ほえ?」
「新たなる代表ができたならば、それを糾弾するのが我々の使命!」
ツムギでさえ理解できぬ状況。そう、ツムギは狂人である。しかし、ミノリはそれ以上の狂人だったのだ。
その後ツムギはレッドウィンターから命からがら逃げだすことに成功したが、バンド活動用の薄着で革命をしていたため、風邪を引くなど散々な目にあったらしい……