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~ノゾミ編~
「電車といえば……駅弁っていつ食べるか毎回悩むんですよね」
他校に出かけるために電車に乗ったツムギは駅弁を片手に一人悩む。列車が発車する前に食べるのが一番安心して食べられる気もする。しかし、走り出して景色が綺麗になってから食べたほうが駅弁としての風情があると思う。だが景色が綺麗ならば景色のみを堪能したい気持ちもある。
「ノゾミさんはどう思いますか?」
「知らなーい。別に好きなタイミングで食べればいいじゃん?ぱひゃひゃ!!」
隣の席に座っているのは橘ノゾミ。この列車の車掌だ。まだ発車時間じゃないので、乗客と話に来たらしい。
「というかツムギってしょっちゅう電車に乗ってる気がするけど、まだ悩むものなんだ」
「おや?私のことを以前からご存知なんですか?」
「常連だからね~。あんまり学校間をたくさん移動する生徒っていないし~」
ツムギは確かにと頷く。キヴォトスの生徒で学校間を積極的に移動するような生徒はかなり数が限られる。他校の友人も多く、芸術活動はもちろん、プライベートでもよく他校の間を移動する電車に乗るツムギはかなり特殊側だろう。
「それで、駅弁は何選んだの?」
「これもかなり悩まされましたよ……旅の楽しみの一つですからね。カツサンドです」
「お~~いいじゃん!あそこのカツサンド、手軽に食べられるわりにカツがサックサクで分厚いんだよね!食べ応えありって感じ!」
「駅のプロにお墨付きを頂けるとは、恐悦至極。我慢できませんし今から食べちゃいましょう♪」
蓋を開ければ四角い紙製の箱にぎっちり詰まったカツサンドが沁み込んだソースでキラキラと輝いている。断面は肉厚のカツと申し訳程度の千切りキャベツが盛り上がって主張しており、その両側を真っ白なパンが支える。王道の、だが見ただけで美味いとわかるカツサンドだ。
────そしてそんなカツサンドを、ノゾミもじーっと見詰めている。
「……一ついります?」
「いいの!!やったぁ!!ツムギっていいやつだね!!」
小さなお口を開けてもぐもぐとカツサンドを食べる様子に、ツムギは先日出会ったヒカリとお菓子を食べた時のことを思い出す。
「ふふっ、こうして見ると姉妹そっくりですね」
「ん?もしかしてヒカリと会ったことあるの?」
「ええ、前一緒に白線の外に落ちたらマグマゲームで遊びまして」
「え~いいなぁ。ねぇねぇツムギ!今度私とも遊んでよ!いいでしょ?」
「ええ、私でよければ」
「やったぁ!楽しみにしてるからね!ぱひゃひゃ!!」
独特の笑い声と共に、ノゾミはツムギに後ろ手を振りながら運転室の方に走っていくのだった。
「ふふっ、例えるならば────『暴走列車』……のような姉妹でしたね」
カツサンドを頬張りながら、今度は何して遊ぼうかと考えるツムギであった。
~ウミカ編~
D.Uで開かれた夏祭り、特にあてもなくぶらぶら彷徨う影は丁度ライブがあった帰りに寄ったツムギであった。
「ふむ……かなり大きな祭りですが、一体どういうお祭りなのでしょうか」
「これはD.U山車(だし)祭りですよ!!」
ツムギが振り返った先にいたのは犬耳が特徴的な着物姿の少女だった。
「おや……奇遇……というべきなのでしょうか?ウミカさんじゃないですか」
「確かに各地のお祭りに顔を出してるので、奇遇というのも怪しいかもしれませんが……私としては奇遇ですね、ツムギさん」
二人は顔見知りであった。以前、フィーナに呼ばれシズコの誕生日会の手伝いをツムギがした際に、ウミカとも知り合ったのである。その時のツムギからのウミカの印象は────
「では、せっかくなのでウミカさんにこのお祭りの説明をしてもらいましょう。きっと調べてあるのでしょう?百鬼夜行の外のお祭りであっても」
そう、この里浜ウミカという少女。ツムギもびっくりの熱量を持つお祭りジャンキーなのである。
「では僭越ながら!!このD.U山車祭り!!ルーツは百鬼夜行の山車ですが、なんと一般からの自由参加で改造した山車を持ち寄ってもらい、その改造した山車で最終的にレースをするんです!山あり谷あり妨害ありの大迫力のレースの見ごたえは凄まじいものですよ!!」
「だから先ほどから物々しい山車がところどころに散見されるんですね……」
ウミカにとってお祭りは派手なものというイメージもあるためか、そもそも祭りの解説というシチュエーションに興奮したのか、この物騒なお祭りを母親に学校であったことを教える子どものようなキラキラした目でツムギに伝える。
「よろしければウミカさん、一緒に屋台でも回りませんか?あなたとならば迷子にもならなさそうですし」
「じゃあ色々買った後に、私のおススメスポットで山車レースを見ませんか?白熱する試合を見ながらの屋台飯は最高ですよ!!」
そうしてかき氷に焼きそば、ちょっと変わったところでは牛タン串やハム焼きなど様々な屋台飯を取り揃えウミカの案内でおススメスポットへと向かう。さすがお祭りジャンキーと言うべきか、人が少ない割に見晴らしがよく、レースの全貌がよく見える最高のスポットにツムギは関心する。
「さぁレースが始まりましたよ」
「あの!?地雷が今爆発しませんでした!?」
「先んじての地雷の設置は認められていますからね!!もちろん自爆のリスクもありますが!!」
「凄まじい勢いで誘爆していますけれど!?」
「他の山車を妨害する用の爆弾なんかを大量に積んでありますからね!衝突からの誘爆はこの祭りの華ですよ!!」
最終的にはレースのことなんてそっちのけでどれだけ派手に爆発するかに目を奪われたツムギとウミカは、レース中ずっと叫び続けたのだった。
「もう……喉がカラカラですよ」
「私もです、ウミカさん」
熱気で少し溶けたかき氷を食べて喉を潤す二人。ウミカは夢中で食べるツムギの顔を覗き込み尋ねる。
「どうでしたか?ツムギさん」
「最高のインスピレーションを得られました……感謝しますウミカさん」
「いえいえ、お祭りの魅力を知った人がまた一人増えたみたいで私も嬉しいです!!」
また来年も一緒に祭りを回ることを約束して、夕暮れを背景に二人は別れるのだった。