椎名ツムギのSSお百度参り   作:ペンナナ

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ヒフミ編とモモイ編です
32/100!!


椎名ツムギのSSお百度参り ~ヒフミ編・モモイ編~

~ヒフミ編~

 

ショーケースにべったり張り付いて、サッカーボールを欲しがる子どものような純粋無垢な目でグッズを見つめる知り合いを見たら、あなたはどのような反応をするだろうか。少なくともツムギは無視できない人間であった。

「……どうしたんですかヒフミさん」

「あ!ツムギさんじゃないですか!!」

二人はアイリを通じて会ったことがある。アイリ、ヒフミともに人懐っこい生徒であり、ツムギの行動力も合わされば知り合いになったことは自然な流れであった。だからこそ、ツムギは彼女が異常なまでにモモフレンズに燃えていることはよく知っているわけで……

「またモモフレンズですか?」

「ショーケースに飾ってあるメタルペロロ様。欲しいなって……」

「非売品ですけど……まさか盗むというわけではないですよね?」

「違いますよ!?」

さすがにそんなことはしないと信じてはいたが、彼女の情熱ならやりかねないと頭の片隅では考えてしまっていたツムギは無意識に胸を撫でおろす。

 

「……ツムギさんってそういえばデスメタルの演奏を専門にしてるんですよね?」

「……?はい。作曲、ボーカル、演奏と一通りできますけど」

「お願いです!私にデスメタルを教えてください!」

「……はい?」

ヒフミからの唐突なお願いにツムギはあっけにとられているうちに、二の矢は放たれる。

「メタルペロロ様はここの店主さんが次開催するデスメタルコンテストで優勝した人への景品にするつもりらしく……だから教えてください!」

「……まさか今から練習して出ると?」

「大会まで1ヶ月以上あります!その間に私を一人前に育ててください!」

 

かくして、ツムギとヒフミによる特訓の日々が始まった。ヒフミはとてつもない集中力と持ち前の真面目さですぐ成長していった。そして、2週間ほど経ったとき、ツムギは一つヒフミに質問することにした。

「……今更ですが、一つ聞いてもいいですか?ヒフミさん」

「はい、なんでしょうか師匠!」

「私に頼んで景品をとってきてもらうという案もあったのに、なぜ自分自身で練習しようと思ったんですか?推しに対する礼儀とかですか?」

「取得方法にあまり拘りはありませんけど……えへへ。アイリちゃんがバンドをしていたのを見ていいなって思ったんです。私も何か平凡から抜け出せるような特技が欲しいなって」

その一言を聞き、ツムギは納得と拒絶、半々の気持ちで次の言葉を紡ぐ。

「ふむ……少なくとも、あなたの持つ情熱は平凡のソレからは大きく外れたものではあると思います。そうでないと、短期間でここまで上手くはなれないでしょう。モモフレンズのために全てを捧げるその熱と行動力は圧巻です」

「そ、そんなことありませんよ!?」

「ふふ。そんなことないかどうかは、結果が示してくれるでしょう」

ツムギは微笑み、もう一つだけ質問することにした

「ヒフミさん」

「はい?」

「楽しいですか?音楽は」

「はい!楽しいです!」

(大分厳しく教えてきたつもりですが。やはり彼女の強さは、平凡の域を大きく超えていますねぇ……)

 

大会本番、ヒフミは圧巻の演奏と歌唱力で優勝し、見事メタルペロロを手に入れた。なお、ヒフミの様子を見に来た補習授業部の面々は普段のヒフミとの違いに驚き揃ってひっくり返ったという。

 

 

~モモイ編~

 

ツムギが駄菓子屋で懐かしの駄菓子を漁りながらインスピレーションを探しているとき、元気のいい声が小さな店中に響く。

「おばちゃん!これ頂戴!!」

聞いたことのある声にツムギの耳がぴくりと動き、振り返る。そして、やはりと安心した。

「あなたは……モモイさん」

「あっれー?ツムギじゃん。ツムギもおやつ買いに来たの?」

アリスに誘われミレニアムに何度か行ったツムギは、既にゲーム開発部とは知り合いであった。一緒にゲームをした経験もあり、モモイの性格も知っている。

「モモイさんに駄菓子屋……なんだか映えますね」

「え!?そうなの!?私映えちゃうか~」

モモイは頭をぽりぽり掻きながら参ったな~と小声で照れる。

「ええ。放課後の小学生という感じで……」

「ねぇ!?それは失礼じゃない!?」

くすくすと笑うツムギを見て、モモイは一層怒りを顕わにしてぺしぺし叩いてくる。この反応が面白いからからかっている面もあるのは、言うと拗ねそうなので言わないいじわるツムギなのであった。

 

「あ、おばちゃん!今日もアレで遊ばせてもらうから!景品用意しておいてね!」

「景品……?」

モモイの行く先を目で追うと、そこには錆びついたレバーがたくさんついているレトロな筐体があった。

「これは……足場を傾けてボールを転がして、ゴールまで運ぶゲームですね。久しぶりに見ましたよ。」

「そう!クリアしたら景品としてお菓子の詰め合わせが貰えるんだ!」

「ふむ、難易度高そうですが大丈夫ですか?」

「ふふん!ゲーム開発部だからね!まっかせてよ!」

「……それ関係あるんですか?」

「もちろん!見ててよ!今日こそクリアするんだから!!」

(つまり、今まで何回か挑戦してクリアできなかったんですね)

「ぬわー!!なんでー!!?」

ツムギがそんなことを気にしている間に、いつの間にか10円を入れて失敗していたモモイ。しかし諦めずにまた挑戦してはボールを零す。

「もう少し慎重に傾けたらいいんじゃないですか?」

「こういうのは勢いが大事なんだよツムギ!!」

勢いに任せてノンストップでどんどん10円を溶かすモモイ。そんなモモイのプレイ画面を背中越しにじっと見つめていたツムギは、何かに気づき頷いた。

「モモイさん。1回プレイさせてもらってもよろしいでしょうか」

「ほへ?いいけど……」

ツムギは真剣なまなざしで筐体と向き合う。足でリズムをとりながら10円を入れ、一気に足場を傾ける。

「リズムを掴んで……ここ!」

ガタン!!レバーを一定のリズムで連続して動かし、ボールをハイスピードでゴールへと運んでいく。5秒と経たないうちにボールはゴールに吸い込まれていった。

「すっごーい!!ツムギよくクリアできたね!?」

「モモイさんが諦めずに何度も愚直に挑戦したからこそ、クリアまでの道筋が見えたんですよ」

モモイがハイスピードだったからこそ、ツムギは最大スピードならどのリズムで動かせばいいのか、見抜くことが出来たのだった。

ツムギは駄菓子屋のおばちゃんから景品の駄菓子詰め合わせを受け取ると、モモイに手渡す。

「これ、モモイさんに渡しておきますね。以前、アリスさんにはお世話になったので。ゲーム開発部のみなさんで食べてください」

「え~いいの~?」

「くれぐれも、一人で全部食べちゃダメですよ。みんなで、平等に、分けてくださいね?」

「な、なんでそんなこと言うのさ!?」

「モモイさんはわかりやすい人なので」

にっこり微笑みながら圧をかけるツムギに負け、モモイはその場でアリスに連絡をしてから部室に帰るのだった。




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