椎名ツムギのSSお百度参り   作:ペンナナ

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ハルナ編とミヤコ編です
34/100!!


椎名ツムギのSSお百度参り ~ハルナ編・ミヤコ編~

~ハルナ編~

 

ツムギは直接太陽を見ないように手をかざしながら天を仰ぐ。

「いい天気ですね~」

天気は快晴。夏にしては比較的涼しく、風が心地よい。セミの鳴き声がジャワジャワと大自然の演奏会を開いている。

「こんな日は、素敵な巡り合わせに期待してしまいますね」

「すみません、そこの方、この辺りで美味しいお店を知りませんか?」

素敵な巡り合わせを期待したツムギの目の前に現れたのは、まさに素敵という言葉を体現したようなオーラ溢れるお嬢様であった。

「私、黒舘ハルナと申すものですわ。美食を求めて、」

「この辺りでいい店……ですか。でしたらご案内しますよ」

 

ツムギはすいすいと商店街の中を案内していき、一軒の小さなお食事処を紹介する。ハルナが先に店に入ったところで、先ほどからツムギの後をつけていたワイルドハントの学生が話しかけてくる。

「つ、ツムギちゃん今店に入ったのは美食研究会のハルナさんだよ?そんな小さな店で大丈夫なのかな?」

「まぁ、任せてくださいよ。といっても、私は何もしませんが」

自信満々なツムギはハルナに遅れて店に入る。店内はテーブルが4つほど並んだレトロ……というより古びたといった方が正しい内装であった。清潔感はあるが、先ほどのワイルドハント生が心配するのも納得の内装である。

「すみません、ハンバーグ・コロッケ定食二つお願いできますか?」

「はいよ。一つ700円だからね」

ツムギが雀のおばあさんに注文すると、店の奥の犬のおじいさんに注文を伝え、水を出してくれる。

「さて……色々話したいところですが、この店は提供まで早いのであまり話す時間はありませんね」

 

ツムギが言った通り、昼飯時で他のテーブルにも客がいるのに、5分ほどで料理が提供される。

ハンバーグ・コロッケ定食を名乗る割には小さなハンバーグとハンバーグより大きなコロッケ。更に目玉焼きとケチャップスパゲティにキャベツの千切り。ご飯に味噌汁に中華風の春雨サラダという、およそ700円とは思えないボリュームの食事が並ぶ。

「……結構な量ですわね?」

「若いんだからこれぐらい食べてください。食後にはアイスコーヒーも付きますよ」

「ふむ……ハンバーグは肉々しさよりも安心感のある味わいですわね……コロッケはザクザクホクホクで揚げたてなのがよく伝わってきます。定食の名前に出てくるだけある存在感ですわ。目玉焼きはなにもついてないですわね……しょうゆをかけていただきましょう」

「私はソース派ですね。コロッケといっしょにソースかけちゃいます」

「ふふ、このケチャップスパゲティはお弁当の下に敷いてあるアレを思い出しますわね。それよりもずっと量が多いですが……ハンバーグに目玉焼き。コロッケともよく合う名脇役ですわ。味噌汁はお出汁がよく利いてて、シンプルな豆腐とベストマッチしています。春雨サラダはごま油が思ったよりも利いていて、本格的な味わいですわね……どれも丁寧に作られているのに主張が強くなく、ほっとする味わいですわ」

 

全て食べ終わり、ハルナは食後のアイスコーヒーを飲み一息つく。

「家庭料理のプロ……とでも言うべきでしょうか」

「ふふ、どうですか?私が選んだ店は」

「ええ。大満足の料理でしたわ。あなた、名前はなんといいますの?」

「椎名ツムギ……ワイルドハントの美食家ですよ。同居人が料理が上手くてですね……舌が肥えていけない」

「おや、でしたら次はぜひその同居人さんのお料理を食べてみたいですわ」

美味しい料理をお腹いっぱい食べ、アイスコーヒーを飲みながら、ご機嫌で談笑する最高の時間を過ごす二人なのだった。

 

 

~ミヤコ編~

 

「こんにちは~。ミユさんいらっしゃいますか?」

「あなたは……また来たんですか。ミユはいませんよ」

兎耳のカチューシャが特徴的な少女は慣れた様子でスマホから目を離し、来客を適当にあしらう。

「おやミヤコさん。あなたともぜひ会いたいと思っていたところですよ」

「会いたいのは私じゃないでしょう?」

以前なんだかんだあってミユと添い寝をして以来、友人として定期的に子ウサギ公園を訪れるツムギ。当然小隊のメンバー全員とは顔見知りである。

 

「どうせツムギさんの狙いは私じゃなくぴょんこなんですから」

「……そんなことありませんよ?」

「にんじんをそんな大事そうに抱えているのに?」

ツムギはざるいっぱいのにんじんをさっと後ろに隠す。しかし、数秒じっとミヤコに見詰められ観念したようにミヤコの前に差し出す。

「これはみなさんへの差し入れですよ?」

ツムギはスッとにんじんをミヤコの口元に一本差し出す。

「別に我々はにんじんが特別好きというわけではありませんが……というか生で食べるわけないじゃないですか」

ミヤコは口元に押し付けられたにんじんを押しのけ、すっと立ち上がり歩き出す。

「こっちです」

「お、案内してくれるんですね。さっすが小隊長さんは優しいですね」

「なんだかんだぴょんこもツムギさんが来ると喜ぶんですよね」

 

案内された先でツムギは小さく切ったにんじんをぴょんこの口元に運ぶと、モリモリと食べ始めた。

「ぴょんこどんどん大きくなりますねぇ……」

「これでも飼った時は人参を食べさせてはいけないぐらい小さかったんですよ」

「そうなんですねぇ……」

モリモリとにんじんを食べ進めるぴょんこを見ながら、ツムギはふと思いついたことを聞いてみる。

 

「ミヤコさんは私みたいな軽薄そうな人間は嫌いですか?」

「まだツムギさんのことを計りかねています。以前なら嫌いと判定していたかもしれません。ですが、ぴょんこは賢いですから。少なくとも悪意のある人間には懐きません。それに……」

「それに?」

「初対面のイメージで人間性を決めるのはやめようと思う出来事が以前ありましてね……ツムギさんのイメージはミユを口説く怪しい人ではありましたが、怪しいからといってすぐ嫌うのも違うなと」

「私のミヤコさんのイメージもいきなりヘリから降下して爆破してきた人から、一緒にぴょんこを愛でる友人になりましたからね」

「……よく考えたら、ツムギさん側の方がむしろ悪印象を抱いていないんですか?」

当然の疑問をミヤコが投げかけると、ツムギはくすくすと笑う。

「ふふ、からかい甲斐のある可愛らしい年下ですからね。真面目で仲間想いで夢に真っすぐで────『可愛い』、に溢れていますから」

「……ぴょんこじゃなくて、私そのものが可愛いと?」

「私はミヤコさんとも会いたかったと、最初に言ってましたよ?それは可愛いからです」

ツムギはいたずらな笑みを浮かべ、ミヤコに一歩近づく。

「……やはりあなたのような生徒は嫌いです。ちゃんと話したうえで嫌いになりました」

「あらら……嫌われちゃいましたか。その割に離れませんね?」

「これ以上何か言うなら、また爆破しますよ?」

「ふふ。わかりました」

何も言わないでじっとぴょんこの様子を見詰める二人と一匹の時間は、その後しばらく続いた。




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