ネル編です!
55/100!!
~ネル編~
ツムギはミレニアムを歩いていた。ゲーム開発部に新作ゲームを作ったためプレイして欲しいと頼まれた帰りであり、脳内は謎の超展開が連続したゲームのことで頭が一杯になりながら歩いていた。
(なぜ主人公が急に地中を潜りだし土竜人間だと明かす展開を最終盤に……?)
そんなツムギは、曲がり角で小さな影を見逃してしまったのは仕方のないことだろう。ドンッと何かにぶつかり、ツムギが驚いて下を見ればぶつかった相手と思わしき生徒は床に転がっていた。
「すみません。私の注意不足で……大丈夫ですか?」
「あ~気にすんな。あたしもちゃんと前見てなかったのが悪いからな」
「いえしかし、見た限りけっこう派手に吹っ飛んだみたいで」
「……?そうか?アスナに跳びかかられた時なんてこんなもんじゃないけどな」
そう言いつつも、両手に銃を持ったまま下半身の動きだけでひょいと体を起こした生徒の身軽さにツムギは呆気にとられる。
「それに、あたしだけ吹っ飛ばされたのは気合いが足りなかったっつーことだからな。だから本当に気にすんな」
「気合はあまり関係ない気がしますが……明らかに体格差がありますし、そちらの方が小さいですから」
「……言っておくが、ぶつかったことに関しては何も言わなくても、チビって言ったらぶっ飛ばすからな?」
「おや、これは失礼しました」
ぶつかった生徒はぶつぶつと呟きながら、丁寧にスカジャンの汚れを落としもう一度羽織る。
「あたしは美甘ネル。てめぇ、最近噂のミレニアムによく来てるっていうワイルドハント生か?」
「噂になっているかはわかりませんが、ワイルドハント生ですね」
「まぁ、明らかにそのまんま制服って感じだからすぐわかる。そもそも、ウチ(ミレニアム)の生徒だったら、あたしにぶつかった時点でビビッてどっかに逃げちまうだろうしな」
ツムギは内心、なぜこんな小さくて可愛らしい生徒相手に逃げる必要が……?と思ったが、それを口に出すと不機嫌になりそうなので、やめておいた。
「それでどんな噂になってるんですか?」
「ゲーム開発部でよく遊んでるとか、トレーニング部でトレーニングしてる変わり者だとか、後、うちのアカネとも知り合いだって本人に聞いたな」
「あ、それなら私で間違いないですね。私が噂のワイルドハント生、椎名ツムギです」
「ツムギか……言っておくけど、ミレニアムで悪さしたらあたしの世話になるから、そこのところよろしくな?」
「問題起こさなければいいということですね」
「別にお前が腕っぷしに自信があって、あたしと戦いたいなら問題起こしてもいいんだぞ?それならあたしも大歓迎だ」
「遠慮しておきますね。別に喧嘩がしたいわけではないので」
「へへっ、まぁそれが賢いな。お前あんまり強そうじゃなさそうだし」
ここでツムギはせっかくの出会いだし面白そうなこの生徒ともっと仲良くなりたいが、何の話題を振るかで悩んだ。こういう時はまずは相手の好きなものの話題を振るのが王道のため、ネルの好きそうなものについて考える。そこで先ほど丁寧に汚れを落としていたスカジャンがツムギの目についた。
「ところで、ネルさんってイカしたスカジャンしてますね。どこのお店のやつとか聞いても大丈夫ですか?」
「おっ?お前これのよさがわかるのか!?」
ビンゴ、やはり喰いついた。ツムギは内心ガッツポーズをする。
「もちろん。いかついタイプの服は私も好むところなので」
「全然そうは見えねぇけどなぁ……?」
「それなら私の私服を見せましょうか」
ツムギはスマホの写真アプリを開き、私服の写真をネルに見せる。ネルは想像の数百倍はいかつい服にテンションを上げ、写真を食い入るように見ている。
「な、こ、これは……めっちゃイカすじゃねーか!!おい!お前いいセンスしてんなぁ!?」
「ふふっ、やはりネルさんはこういうものが好きですか。私の読み通りです」
「おいツムギ!私のおすすめの店で一緒に買い物しようぜ!ぜってー損はさせないからよ!」
「おや情熱的なお誘い。ではご一緒させていただきましょう」
ネルの誘いでミレニアムの町に繰り出す二人。道中、ネルは倒れた自転車を直したり落ちていた空き缶を拾って捨てるなどの行動を繰り返すので、ツムギも手伝うのだった。
「別にお前は手伝わなくてもいいんだぞ。あたしがやりたいからやってるだけなんだから」
「なら、私も私がやりたいからやっているだけですよ。芸術学院の生徒は綺麗な街並みが好きなんです」
「へっ、口が上手いやつだ。さっさと片付けて、店に向かうぞ」
店はネルの言っていた通り、イカした服やアクセサリーがたくさん並んでいた。ミレニアムにしては店の全体雰囲気はむしろ若干古臭く、最新鋭のファッションとは遠く離れたような店だが、二人は店に入った途端、特に打ち合わせもしていないのに深呼吸をする。
「これは……いい店ですね。まず匂いがいいです」
「だろ……空気がやっぱ違うんだよな。尖ってる店ってのは」
そんな第六感全開なアホな会話をしつつ、宝探しのように様々な服を試着する二人。結果的に、二人とも店を出たときはすっかり服装が変わっていた。
「いやぁ……こんないい服【ここで装備していくかい?】されたら断れませんよねぇ」
「お前最初にあった時より、ずっとイカしてるファッションになったぜ。あたし好みだ」
ド派手な柄や刺々しいアクセサリーや重厚なチェーンなどで全身を固めた二人は、明らかにミレニアムの中でも異彩を放っていた。
「ふむ、せっかくいい衣装も買っちゃったわけですし……なんだかウズウズしてきましたね」
「なんだ?喧嘩でもしたくなってきたのか?」
「いえ、演奏したくなっちゃいまして」
「……へ?演奏?」
「ネルさん。私、もう我慢できません」
ツムギはベースを取り出し、溢れ出る情熱のままに掻き鳴らし始める。
「ヒャッハー!!てめぇら全員、地獄を聴かせてやるぜ~~!!」
「な、なんだぁ!?」
ネルが止める間もなく演奏が始まり、周囲から一気に目線が集まりだした。
演奏が終わった後、ツムギの周囲には多くの観客(オーディエンス)が集まり、町の一角は大盛り上がりになっていた。
「お……うぉぉぉぉーーー!!なんだ今の!?最高にイカしてるじゃねーか!?」
ネルはたまらずツムギに突撃して詰め寄る。
「ふぅ……何だ今のと言いましたか。これが────『デスメタル』、です」
「デスメタル?噂には聞いたことあるけど、生演奏は初めて聴いたな……」
「ふふ、いいですかネルさん。デスメタルはDNAに素早く届きます。まだミレニアムでは究明されていないですが、いつか万病にも効くという研究結果が出ます」
「なんだと!?そりゃすげぇ!!ツムギ!私にもベース教えてくれよ!!」
「いいですよ。じゃあ次は楽器店に行きましょうか。ネルさんにデスメタルの魅力を余すことなく伝えるために、CDショップにも行きましょう」
「今ならなんでもできる気がする!腹の内からガァァッ!!って感じで力が湧いてきてるんだ!早く行くぞツムギ!!」
なお、そんなことを言ったネルであったが、なんだかんだ途中で困ってる人なんかがいたら放っておけず助けたため、楽器店もCDショップの走って移動した割に実質的には随分ゆっくりした移動になってしまった。しかし、ツムギはそんなネルを微笑ましく思いながら、一緒に手助けをしながら移動した。
────ただ、衣装が相当いかつい二人に絡まれたため、助けられた人は大分困惑していたという。
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