椎名ツムギのSSお百度参り   作:ペンナナ

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シズコ編・ウタハ編の2本!6/100です!


椎名ツムギのSSお百度参り~シズコ編・ウタハ編~

~シズコ編~

 

「始めましてツムギさん。百鬼夜行お祭り運営委員会委員長のシズコと申します」

「これはご丁寧にどうも」

ツムギとシズコは楽屋で握手を交わし挨拶をする。2日後、百鬼夜行で行われるお祭りに向けてツムギたちのバンドに声がかかったのだ。

「しかし……百夜堂で会った時と比べて大分印象が変わりますね。」

「え?百夜堂に来てくれたことがあるんですか?」

「ええ。有名店ですから。以前百鬼夜行を訪れた際にお邪魔させていただきましたよ。あんみつをいただきましたが、舌が蕩ける極上の一品でした」

「そんな褒めても、出演料に色は付けませんよ?」

「純粋に褒めているだけですよ」

ツムギの舌にいまだにこびりついて離れないあの愛しい甘味。シズコを見てまた思い出してしまった。

「それにしても……百夜堂でお会いした時に比べて、印象が大分違いますね」

ツムギの記憶によればシズコはドジっ娘キャラであり、注文を間違えるなどしょっちゅうだ。こんなにもクールなやり手の営業姿など想像もつかないほどに。

 

「ああ、よく言われます」

慣れた様子でシズコは返す。

「ツムギさんなら、わかるでしょう?」

「なるほど。お客さんの────『要望』、は大事ですからね」

「そういうことです」

ツムギは自身の体験や内面をそのまま表現するような作曲を行ってはいる。しかし、それだけではダメなのだ。それをより伝わりやすく、みんなに楽しんでもらえるように演出するのも彼女のプロとしての仕事の一つ。

 

「私としてはツムギさんの方こそ噂に聞いていた雰囲気とは全然違うというか……デスメタル系のバンドで間違いありませんよね?」

「ご安心ください。あなたがお祭り運営としての面を見せてくれた以上、我々もお祭りに相応しい『顔』を当日は出させて頂きますので」

激しくベースをかき鳴らしながらツムギは答える。

どちらも裏で、どちらも表。二面性こそが、人を喜ばせるプロとして大切な要素なのかもしれない。

「ああ……ただ」

「?」

「今日はまだ、一般女子高生としてあんみつをいただきに参りましょう」

だからこそ、大事なのはメリハリ。今は、あの美味しいあんみつをもう一度♡

 

 

 

~ウタハ編~

 

「ここがエンジニア部の部室……!!」

ツムギは以前友人になったアリスの誘いでエンジニア部に来ていた。当のアリスは部員を探しにいっているので、その間は自由に探索をしているように言われたのだが……

「これ、勝手に触っていいんですかね?」

触っていいのか、いけないのか。それすらわからないようなハイテクノロジーに溢れている。閉鎖的なワイルドハントではまずお目にかかれないような逸品ばかりだ。

「まぁ、これなら大丈夫でしょう」

まず安全そうな電子レンジでも持ち上げてマジマジと見てみる。

「気を付けたまえ。それは側面の赤いボタンを押すと自爆するからね」

背後からの声と伝えられた驚愕の内容に手が滑りそうになるが、なんとか落とすことなく、そ~~っと電子レンジを台の上に戻す。

 

「始めまして。アリスの言っていた吟遊詩人(バード)とは君のことかな?私はウタハ。エンジニア部の部長をしているよ」

「私はワイルドハントから来た椎名ツムギ。吟遊詩人(バード)でも魔法使い(ソーサラー)でも、ご自由にお呼びください。────『ムード』、は大事ですから」

「アリスとはすれ違いになったかな?それじゃあここでアリスと他の部員を待つとしよう。そこの椅子に座ってくれたまえ」

なぜかステルス迷彩されたポットからお茶が注がれる。どうみても空中から唐突に注がれるお茶でくつろげというのも難しい話だが、そこは癖の強いキヴォトス各学園を旅してきたツムギ。くつろいだ姿勢のまま目を輝かせながらじっと見ていた。

「して、ウタハさん。なぜあの電子レンジには自爆ボタンを?」

「説明すると長くなるが……ふむ。漢字二つで表すならば」

ウタハはその端整な顔立ちを存分に活かす角度で決めポーズをしながら、たっぷりと溜めの時間を作って発言した。

 

「────浪漫、だろうか」

「なるほど────『浪漫』、は大事ですからね」

「ああ。このポットも立派な浪漫だ」

「確かにこれは、素晴らしい浪漫ですね」

何がどうなって電子レンジの自爆機能が浪漫に繋がるのか。透明で使い勝手の悪いポットにどういう浪漫が詰まっているのか。小一時間説明されたところで常人にはわからないだろう。しかし、分かる人には浪漫の二文字で伝わってしまうのだから、頭のいいバカとは恐ろしいものである。

 

その後、ウタハの案内でアリスが来るまで様々な(訳の分からない)マシーンの数々を説明され、目の中に満天の星空を浮かべるツムギ。ウタハ自身も完全に楽しくなってしまい、まるで歌うように解説を続ける。

「ところでウタハさん。あなたがたエンジニア部にぜひ頼みたいことがあるんですけれども」

「ほうほう何だいツムギ」

「ちょっとこれをこうしてですねぇ……」

「なるほど。それならこれぐらいの値段で……」

その後、なぜか次のライブでは音響装置に火炎放射機能と自爆機能が付け加えられ大爆発事故を起こしたらしいが、観客はその『演出』に大満足したそうだ。

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