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~カリン編~
「~~~♪」
ツムギはお気に入りの曲を口ずさみながら、ワイルドハント自治区内を散歩している。お気に入りのカフェに行く道中のため、ご機嫌なのだった。
「今日は何を頼みましょうかね~」
楽しい気持ちのままぐるりとその場で回ってみると、少し遠くにメイド服の生徒がたくさんの生徒や市民に囲まれている光景がツムギの目に入った。
「お嬢さん可愛いコスプレだね?」
「わ~~!!クオリティ高い!!」
「しゃ、写真を一枚撮らせてくれ!!」
「モデルに興味とかない?」
メイド服の生徒は状況に困惑しており、相手がただの一般人では強く言えないのかどう対処すべきかわかっていないようだった。
「これは一体どういう状況だ……?すまない、私はただの一般メイドなのだが……」
(サオリさんが囲われていた時のことを思い出しますねぇ。それにしても、あのメイド服はおそらくミレニアムのC&Cの方ですね)
ツムギは集団の中に突っ込み、メイド服の生徒の手を引っ張るとそのまま強引に集団の外まで引っ張る。
「すみません、お待たせしました。せっかく大人気のカフェに行くって話だったのに……遅くなってしまった分早めに向かいましょう。席が埋まってしまいます」
メイド服の生徒はツムギの言葉の意図を察したのか、特に反抗することもなくツムギについていく。ツムギはそのまま早足で目的地のカフェへと向かい、中へと入って案内された席について、二人はやっと一息ついた。
「すみません、強引に引っ張っちゃって。ミレニアムの生徒さんですよね?恐らくC&C」
「ああ……すまない。まさかいつものメイド服で来たら囲まれてしまうとは」
「気を付けてくださいよ。レベルの高いコスプレイヤーだと思われると、ワイルドハントではああやって写真だのモデルだのに誘われてしまうので」
「そうなのか……気を付けよう。ところで、よく私がC&Cだとわかったな」
「アカネさんやネルさんと知り合いなので……それにコスプレしているつもり0の顔でメイド服で歩いているのを見れば予想もつきます」
「二人と知り合いなのか!?」
「ええ。私は椎名ツムギ。メイドにロマンを求めるワイルドハント生です」
「私は角楯カリン。メイドに求めるものは……可愛らしさ、かな。そもそもメイド服が着たくて最初はC&Cに入ったしな」
「おやおや。可愛さ百点満点の理由ですね。メイドにうるさい私も満足しちゃいますよ」
二人は出されたお冷を飲み、ゆったりとした雰囲気が流れ始めたところでメニューを開く。メニューはオーソドックスなものは大体そろっており、種類が多いためどれにするか二人は真剣な顔で悩む。
「私はオリジナルブレンドのコーヒーとカツサンドにしましょう……カリンさんは?」
「じゃあ私もオリジナルブレンドのコーヒーと……パフェにしようかな」
ツムギはボタンを押して店員を呼び、注文する。店内を流れるオシャレなBGMを聞きながら内装を見ているだけでも提供までの時間は潰せるだろうが、初対面の二人には話したいことがまだまだあった。
「そういえば強引に引っ張ってきちゃいましたけど、このカフェ私のお気に入りなんですよ。落ち着いた雰囲気で、一息つくのに丁度いいかなと思って」
「さすがワイルドハントのカフェだ。オシャレな雰囲気だな……普段からカフェでバイトをしているからこそ、備品までこだわって揃えていることがわかる。掃除も行き届いている」
「おや、カフェでバイトをしているんですか?」
カリンは興味深そうに周囲の飾りに目をやりながら、ツムギの質問に答える。
「ああ……将来の夢のためにカフェでバイトをしているんだ。カフェの店主になりたくてな」
「へぇ……この店みたいなカフェを作るんですか?」
「いやそのだな……可愛い雰囲気のカフェにするつもりだ」
カリンは少し恥ずかしそうに、小声でツムギに伝える。そのタイミングで店員がカツサンド・パフェ・オリジナルブレンドのコーヒー2杯を持ってきたためカリンは今のが店員に聞かれていないか必死に店員の顔色をうかがう。
「ふふっ……くくく」
「わ、笑わないでくれ!確かに私にはあまり可愛い雰囲気が似合わないと言われることもあるが……」
「いえいえ。店員さんに聞かれてないか心配しているその様子がおかしくて……むしろ夢自体はもっと胸を張って言ってもいいも思いますよ?店員さんに聞こえるぐらいに。言霊というものもありますし、堂々と宣言することは大事ですよ」
カリンからの誤解を解いた後、ツムギはコーヒーを啜る。
「むぅ……そうか?」
「いいじゃないですか、素敵な将来の夢があって、そのために努力をしている。他者に胸を張れる美しい青春だと思いますよ」
「青春、か。そうだな。充実した日々を過ごしているよ。正直体が足りないと思うことは結構あるのだが」
「まぁ、バイトをしながらミレニアムの難しそうな勉強をして、しかもC&Cとしても働いているとなれば忙しいでしょうねぇ」
「おかげで勉強は大分ボロボロでな……ツムギはどうなんだ?」
「私も作曲・演奏・ボーカル練習にオカルト研究で体がもっと欲しいと思うことはありますね」
「ツムギは多彩なんだな……だが、それだけやっているんだから、学校からの評価はとても高いんじゃないか?私なんてテストが酷すぎて留年の危機に瀕したこともあってな……」
「ふふっ。オカルト研究会の活動でむしろ問題児扱いですよ。むしろ音楽方面で色々やっているおかげで、なんとか成績に響かずに済んでいる形です」
「一体何をやってるんだ……?私はオカルトには全く詳しくないからわからないな。まさか召喚した悪魔が校内を荒らしているわけではないだろう?」
「ええ、残念ながら。いつかは悪魔を召喚したいものですけどねぇ。まだ成功していません」
「悪魔か……うちのリーダーやアカネと比べて、どちらの方が建物を破壊するんだろうな」
パフェをつつきながら、カリンはため息をつく。そんな様子を見てツムギは優しく声をかけるのだった。
「……カリンさん。愚痴とかあるなら私が聞きますよ?見る限り苦労人ポジションでしょうあなた」
「そう見えるかな?」
「ええ。さきほどの目がうちの苦労人の後輩によく似ていたので」
「……あまり後輩に迷惑かけないようにな?」
「ふむ、善処します」
そうして二人はいろいろな事を話した。オカルト研究会での活動。C&Cでの任務中に命令を聞かないメンバーたちに振り回される話。学校からの課題の大変さ。それぞれの学園の特徴。効果的なダイエット法。話し出せばキリが無かった。
「いやぁ……カリンさんって意外と普通の女子高生って感じの方なんですね」
「……そんなにカタギじゃなさそうな雰囲気をしていたか?」
「いえ、ただネルさんやアカネさんは色々と女子高生っぽくは無かったので」
「まぁ確かにな……そうだ。せっかくならワイルドハントの案内をしてくれないか?ツムギさえよければなんだが……先ほどみたいに絡まれたときの対処がわからなくてな」
「カリンさん押しに弱そうですもんね。わかりました、今日だけはメイドではなく、あなたをお姫様としてエスコートしてさしあげましょう」
「……別にそこまで仰々しく無くてもいいんだが」
「ほらほらそこは乗って!今日はメイドは休暇の日なんですから、たまにはお姫様になってもいいんですよ?」
「は、恥ずかしいんだが……お姫様呼びは」
「ふふっ、カリンさんは世の中にはカリンさんみたいなタイプが恥ずかしがることでこうふ……歓喜する輩もいることを知るべきです。恥ずかしがるほど私は丁重に扱っちゃいますよ?」
「わ、わかった!お姫様でもなんでもいいから!普通に案内してくれ!」
こうしてワイルドハントを回った二人だったが、ツムギの完璧なエスコートにカリンは恥ずかしくも内心ウキウキだったという。
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