椎名ツムギのSSお百度参り   作:ペンナナ

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カヨコ編・ツクヨ編の2本!8/100です!


椎名ツムギのSSお百度参り~カヨコ編・ツクヨ編~

~カヨコ編~

 

カヨコは猫が好きである。カヨコは猫が大好きである。それは今日も朝一番に猫に餌をあげようと公園に出かけた時のことだった。

いつもなら餌に一瞬で跳びつく子が、ニャーニャー鳴きながらまるでどこかに案内するかのように、カヨコをちらちら見ながら歩いていくのだ。

「どうしたの……一体」

猫に連れられた先にいたのは、スケバンに囲まれた緑髪を後ろで束ねたワイルドハント生であった。

「はぁ……そういうことね。あんたからの依頼ってわけだ」

「にゃー!」

猫はコクコク頷くと、カヨコはそっと一撫でして、スケバンの集団に向かって声をかける。

「あんたら、何してんの」

「ああ!?何だテメェ!?あたしらのやることにイチャモンつけようってのか!?」

「はぁ?」

「うっ……」

睨まれたので、睨み返す。それだけでスケバン集団は怯えて去っていく。カヨコにとっては慣れっこだ。そして、これをすると大抵被害者の方も逃げていくからカヨコにとっては楽なのだが……

「すみません……野宿してたら絡まれてしまって」

(なんか普通に話しかけてきた)

面倒だが応対することにする。別にヒーローになんてなりたい気は微塵もないが……便利屋の売名でもできれば御の字だろう。

「まずなんでこんなところで野宿してたのって突っ込みたいけど。まぁ……弾の消費も無かったしいいよ。というか、あんたは怖がらないの?」

「はて?怖がるとはなぜ?」

「いや、怖いでしょ?私の顔」

「いえ……私の感覚では綺麗な顔にしか見えませんよ?」

「うっ!?」

普段冷静さを崩すことが滅多にないカヨコも初対面で殺し文句を言われれば動揺する。

(先生や社長みたいなタイプ……かも)

少し身構える。いや、その二人がカヨコにとって苦手なタイプかと問われれば、本人も認めるほどに大好きなタイプではあろうが、それはそれとしてどんな言葉が飛び出してくるか全く予想だにできないタイプだからだ。

「どこまでも見通しそうな理知的でクールな印象を受けるその瞳。先ほど睨まれたときは、まさに『一目』惚れしそうになりましたよ」

「あっそ……」

「そうだ。助けていただいたのにお礼も無しというのはあれでしょう。一曲演奏を」

「別に……お礼なんていらないけど」

ツムギはカヨコの話を聞かずに準備を始める。こういうタイプは満足するまで付き合う方が早いと経験則で知っているカヨコは、深くため息をついて、付き合うことにした。

「じゃあ、一曲だけ、ね?」

 

 

「大変大変よみんな!!カヨコが朝の散歩から帰ってきてからずっとボーっとしたままソファで動かないの!!」

「生演奏……サイコ~~」

 

 

 

~ツクヨ編~

シズコに呼ばれまた百鬼夜行で演奏することになったツムギ。せっかくなので百鬼夜行の観光名所を一通り見て回ったが、さすがに夏場に歩き回れば旅慣れしていても疲れが溜まるというもの。

「木に人が寄りかかって『休む』……ですか。先人の知恵を活かし木陰で休むことにしましょう」

ツムギが休もうと木に背中を預けた瞬間、妙な感覚に襲われる。

ムニッムニュッ

「……ほえ?」

グリグリムニュムニュ

「なんだかこの木……妙に柔らかいような」

「あ……あのぉ」

「!?……誰ですか!?」

ツムギが周囲を見渡しても誰もいない。なのに、声がとても近くから聞こえてくる。耳に自信のあるツムギが、この違和感の元凶を見抜くのにそう時間はかからなかった。

「!……もしかして」

クルリとツムギが振り返れば、やはりというべきか木にもたれかかった部分が妙に凸凹していた。

「ど、ドロン!!」

煙幕が張られ、そこに現れたのは兎耳と長身が特徴的な少女だった。

「あ……あの、木に変化する練習していて……申し訳ありません!」

「いえいえ、こちらこそ。もたれかかってしまい申し訳ありません。まるで気づきませんでしたよ」

「そ、そうですか!?えへへ……」

ツクヨはぎこちなく、それでいて嬉しそうに笑うとはっとした顔でまた頭を下げる。

「いえ、そんなに謝らなくても……というか私としては気持ちよかったぐらいですし」

 

「あ、あの。他の学園から来た方ですかね?」

「ええ。少し百鬼夜行に来る用事があったので、ついでに旅行中なんです。私は椎名ツムギ。よろしくお願いします」

「よ、用事って?」

「バンドの演奏です」

「へっ!?」

(芸能系の人だ!?)

ツクヨは何度も芸能系のスカウトを受けたことがある。ツクヨ本人はあまり自分に自信を持っていないが、見る人が見れば長身モデルとして才能の原石なのだ。実際、一時はモデルとして働き、大変な苦労をしたこともある。

そのため、ツクヨは完全に芸能界隈に苦手意識を持っているのだ。

「そういうあなたは、なぜ木の真似を?」

「わ、私は大野ツクヨって言います……に、忍者になろうと特訓していました!!」

ツムギは目をぱちくりさせ、ツクヨの大きく滑らかな両手をガシッと掴む。

(ああ……やっぱり馬鹿にされるんだ。忍者なんてやめて芸能界に来ないかとか変な勧誘をしてきてそれで……)

「忍者!?あの!?本物を見たのは初めてです!」

「へ!?あ、いえ!本物というわけでは……まだ修行中で」

「道理で私がまるで気づかない訳です!ぜひ私にお話を聞かせてください!今!この瞬間沸き立つ気持ち!────『インスピレーション』、は逃せませんから!」

「ひ、ひえぇ~~!!?」

 

その後、しばらくツムギに捕まり根掘り葉掘り忍者について聞かれたツクヨは、話終わるころにはクタクタになっていたが、自然と笑顔になっていたという。

 

 

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