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~ノノミ編~
「さて、来ましたよショッピングモール!」
なぜただのショッピングでこんなにもツムギが気合いを入れているのか。それはこのショッピングモールがキヴォトスでも有数の大きさのショッピングモールだからである。普段外の物品には中々出会えないワイルドハント生徒にとって、最新のトレンドがなんでも揃うこのショッピングモールは楽園そのもの。どんなものなら規制されずに持ち帰ることができるか。場合によっては賄賂を買うことや、特殊交易部に運んでもらう品を選ぶのも含め、頭を最大限働かせる。
「さて、せっかくなので今日は買いますよ!!」
気合いを入れて周囲を見渡したところ、まず目についたのは店ではなく、山のように商品が積まれたショッピングカートであった。
(一体どんな人がこんなに買ってるんでしょうか……業者とか?)
そのまま目線を下ろし、ショッピングカートを涼しい顔をしながら軽々と押していたのは、ツムギの顔見知りであった。
「……ノノミさん?」
「あ、ツムギさんじゃないですか!奇遇ですね~」
ツムギが以前シロコと一緒に走っていた時、はちみつレモンを差し入れしてくれたのがノノミであった。その時は大人しくふわふわしたヒロインという印象だったが、そういえばいかつい銃を持ち運んでいたことを、重そうなカートを見てツムギは思い出したのだった。
「ツムギさんもショッピングですか~?」
「ええまぁ。ノノミさんは普段からこのショッピングモールを利用してるんですか?」
「ええ。残念ながらアビドスにある店はほとんど閉まっているものばかりで……どうせなら大きいところで買い物しようってことでよくここを利用していますね。よければ一緒にショッピングしません?ここは広くて、慣れてない人だと迷子になっちゃいますので」
「よろしいんですか?助かります」
「それじゃあ私のおススメのお店にレッツゴー♪」
ツムギがショッピングカートに一つ物を入れていくたびに、ノノミは五つは積み上げていく。もちろん対策委員会全員分という訳ではあるだろうが、それにしてもハイペースであり、ツムギもついつい余計なものまで買ってしまいそうになる。
「ツムギさんはもっと買わなくていいんですか~?」
「あの……これでも気合い入れて結構買い込んでるんですけど……ルームメイトに買い物頼まれた分もありますし。ノノミさんと一緒にいると感覚がおかしくなりますね」
「あ、そうだ。ツムギさんは絶対に必要ないとは思うんですけど、ちょっと寄りたいところがあるんです。寄ってもいいですか?」
「もちろん、大丈夫ですけれど」
「じゃあ……行きましょう!楽器店!」
「……はい?」
楽器店はショッピングモールのうちの一つの店舗だとは思えないほどに大型であり、様々な楽器に防音室、エフェクターにメンテナンス用品まで様々な物品が揃っていた。
「……おお、かなり広いですし、本格的な設備もたくさんありますね」
「音響機材と……防音室は……近所に全く人もいませんし、大丈夫ですかね?楽器とかも買っていったら、みんなでグループ化できるかもしれませんね」
「すみません、何に使う予定なんですか?」
「それは……アビドスアイドルプロジェクトです!」
「アビドスアイドルプロジェクト……?」
「はい!アビドス復興のために、アイドルグループを作って地元を盛り上げようという企画です!」
「そういえば、セリカさんがもう一人の生徒さんとトリニティの謝肉祭でアイドルしていましたね……既にあの時アビドスアイドルプロジェクトは始まっていたんですね」
「もう一人は同じ一年生のアヤネちゃんですね。二人とも猛反対して説得が大変だったんですよ♠」
「あんなにも可愛らしかったのに……二人の才能を発掘した名プロデューサーな訳ですかノノミさんは」
「それほどでも~。それで、何を買っていけばいいんでしょうね」
「……アビドスの体育館をステージにするつもりですかね?」
「そうなりますね」
「ふむ……ならば、スペースは十分あるということで。こちらの音響機材とかいいでしょうね。音の跳ね返りにくい広い場所でも、十分な音量と音質を保証してくれますよ」
「あれ?ツムギさんって音響機材詳しいんですか?」
「……あ、言ってませんでしたね。私ワイルドハントで実践音楽を専攻していまして、バンド活動もやってるので多少は知識があるんですよ」
「え……多少はあるというか専門家じゃないですか!?ちょっと色々教えてください!」
「ふふっ、ではこの椎名ツムギがアビドスアイドルプロジェクトを全力で────『応援』、させていただきます」
こうして様々な店を回った末に音響機材までお買い物した二人は、一旦休憩のために、モール内に設置されたベンチに並んで座る。
「まさかその場で購入してしまうとは……相談とかよかったんですか?」
「大丈夫です!だってアビドスの会計担当はセリカちゃんですもん。言ったら絶対に許可されないので、私のポケットマネーで買っちゃいます!」
「う~ん凄まじい行動力。私もこれぐらい気軽に新しい機材を買いたいものですね。それにしても、ノノミさんからアビドスアイドルプロジェクトの話を聞いてインスピレーションが湧いてきましたね。作曲しちゃいましょう」
そう言うとツムギはバッグからノートを取り出し、感情の赴くままに歌詞を綴っていく。
「私も少しメモをとらせてもらいますね♪」
ノノミも可愛らしいキャラクターが表紙に書かれたノートを取り出し、何か書いていく。
「おや、ノノミさんも普段からメモ取るタイプなんですか?」
「ええ……実は、対策委員会でやりたいことをメモにとっているんです。ウィッシュリストというやつですね」
「なるほど……よろしければちょっと見させてもらってもいいですか?ちょっとだけでもいいので」
ノノミは少し考えた後、何かを追加で書き足した後ニコっと微笑みツムギにノートを渡す。
「どうぞツムギさん、読んでください」
ツムギが中を見てみると、可愛らしい字でびっしりと今後やりたいことが書いてある。
「おお……凄い量ですね」
「赤丸がついているのは達成済みなんですけど……一つ達成しても二つ新しくやりたいことができるので、永遠に終わらないんですよね」
「ふふっ、素敵なノートですね。ノノミさんの……対策委員会のみなさんの毎日が輝いていることが私にも伝わってきます」
「はい!ノートを読むたびに思い出す、どれもこれも、みんなとの立派な思い出なんです!」
ツムギがノートに必死になっている隙に、ノノミはツムギにこそっと耳打ちする。
「……実は、そのウィッシュリストは普段は絶対に人に見せない秘密の物なんですよ?対策委員会のみんなにも見せてないんですから」
「なるほど……そんな貴重なものを私が見せてもらってもよかったんですかね?」
「ええ♪最後までしっかり読んでください」
ツムギが1ページ1ページゆっくりめくっていくと、最新のページに『ツムギさんにアビドス高校でライブしてもらう』という一文が書かれていた。
「……なるほど、これは」
「ふふっ、私はツムギさんの要望を聞いて、うちの子たちにすら見せてない秘密のノートの中身を見せてあげましたよ?ツムギさんも私のお願いを1つ聞いてくださいね♡」
「嵌められた……というわけですか。あんなエピソード聞かされて、こんなものを見せられたら断れないじゃないですか。全く、意外と強かな人なんですね」
「ふふっ、アビドスアイドルプロジェクトのお手伝いとして、ツムギさんにも一緒に公演してもらいますね♡一緒にアビドスを盛り上げましょう~!」
いつの間にかノノミに約束を取り付けられてしまったツムギは、いつかアビドスアイドルプロジェクトが本格的に始動した暁には、同じ舞台でライブをすることが決定してしまった。しかし、アビドスと対策委員会を心の底から愛しているノノミの笑顔を見ると、むしろ今からアビドスでのライブが楽しみになるのだった。
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