椎名ツムギのSSお百度参り   作:ペンナナ

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イオリ編です!
70/100!!


椎名ツムギのSSお百度参り ~イオリ編~

~イオリ編~

 

「ゲヘナに来ましたが……まさかこんな場所に落とし穴が空いているとはうかつでしたね」

「仕方ないさ。普通に考えて道路の真ん中に落とし穴が設置してあるなんて思わないだろうから」

「人生は見えない落とし穴の連続だと比喩されることが多いですか、ゲヘナでは実際に落とし穴がぽっかりとあいているとは。こうして理不尽に晒されることでゲヘナ生は強い大人へと育っていくのでしょうね。大人の階段を登るために穴に落ちる……深いですね」

「そんなこと言っている場合か!!さっさと落とし穴から上がれ!お前が上にいるから私が登れないだろ!!」

ゲヘナの46-3番街において、ツムギとイオリの二人は仲よく落とし穴に落ちていた。以前から風紀委員会と関りのあるツムギはイオリと知り合いのため、一緒に穴に落ちても割とのんびりした態度をとっている訳である。

「そもそもなんでイオリさんも落とし穴の中にいるんですか」

「これはそもそも私を落とすための穴だ!!お前が落ちてきたのが想定外なんだ!」

「こんな古典的な罠に引っかからないでくださいよ……相変わらずみたいですねイオリさんは」

「うるさいうるさい!というか何くつろぎの姿勢をきめてるんだ!!」

「イオリさんの反応が面白いからしばらくこのままでもいいかなって」

「落とし穴から出たら覚悟しておけよ!?」

「そんなこと言われたら猶更出たくなくなるじゃないですか~イオリさんこわ~い」

そんなことを言いながらツムギはまるでイオリを恐れてない様子でイオリのお腹を枕にして寝そべる。

「いいからどけー!!」

「はいはい……わかりましたよ」

 

ツムギは少し残念そうに落とし穴から這い上がり、イオリに手を伸ばし引っ張り上げる。

「やっと出られた……しかし、ヘルメット団を見失ってしまったな」

「ヘルメット団?私が来たときには周囲に誰もいませんでしたけど」

「当たり前だ。ツムギが落ちたのは私が穴に落ちてからしばらく経ってからだからな。私が落とし穴に落ちた後、あいつら閃光弾を穴の中に放り込んできたんだ……だからしばらく行動できなくてな。全く、閃光弾でも下手したら生き埋めになってるところだったぞ」

「イオリさんなら生き埋めにしたところで地中から這い出てきそうですけど」

「そうだな。実際似たような状況への対処訓練もしてあるし」

「生き埋めに対する対処訓練ってなんですか……?」

さも当然のように返答するイオリに、風紀委員会の訓練の厳しさを感じるツムギであった。

「あいつら、ラーメンの行列に並ぶのが嫌だからって並んでる人を全員撃って、しかも文句を言ってきた店員にまで手榴弾を投げつけたんだ……」

「なんというか……短絡的な方たちですね」

ツムギは顎に人差し指を当てて少し考えたのち、イオリに提案をする。

「そうだ。ヘルメット団を探すのに協力しますよ」

「気持ちは嬉しいが、危ないぞゲヘナのヘルメット団は他校のヘルメット団と比べても特に過激だからな」

「まぁそれは先ほどの話を聞けばわかりますが、乗り掛かった舟ですしね」

「……それなら約束だ。決して怪我しそうなら無理はするんじゃないぞ?」

「わかっていますよ。イオリさんは優しいですね」

「風紀委員会として当然の心配だ!まずは聞き込みだな!」

そうして二人による聞き込みが始まったが中々上手くはいかなかった。

 

「おい!風紀委員会だな!さっきこいつが私のこと殴ってきたんだ!」

「そっちが私のことをチビとか言っていたからだろ!」

「チビにチビって言って何が悪いんだチビ!」

「なんだとぉ!!」

 

「ヘルメット団?そんなことよりさー新しい温泉の開発場所としてよさげな場所ない?」

 

「何?先を急いでるんだけど?邪魔しないでくれる?」

 

「ダメだ……誰も話を聞いてくれない……いやいつものことではあるんだが……」

「いつものことなんですか……?」

「うちの生徒や市民は自由奔放な上に風紀委員会……特に私はなぜだか舐められることが多くてな」

理由は明白な気がするが、この状況でイオリが舐められがちな性格をしているなど伝えたら落ち込みそうなので、言わないでおく優しさがツムギにはあった。

「まぁわかりました。とにかく人を集めて、なお且つ協力したいほどに機嫌をよくすればいいんですね?」

「それはそうなんだが、そんないい方法があるのか?」

「お任せください。自分から手伝うと言った以上、それに見合うだけの仕事はしますよ」

 

ツムギは通りの隅でベースを取り出すと、大声でシャウトした。

「ヒャッハー!!てめぇら!!ツムギ様のゲリラライブの開幕だー!!」

「お?なんだなんだ?」

「路上パフォーマンスか?」

「ゲリラライブらしいぞ」

さすが常に刺激を求めて好奇心旺盛なゲヘナの人々。あっという間にツムギの周囲に人だかりができて、演奏が始まる。ツムギの過激な曲はゲヘナ受けがいいのか、それとも純粋にキヴォトス三大学園故に人が多いのか、なんにしても普段のツムギのゲリラライブよりも人は多く集まっている。

「なるほど……演奏をして人を集めるとは考えたな。みんな足を止めてるし、これでスムーズに聞き込みができ……ん?」

イオリがよく聴衆(オーディエンス)を見ると、その中に先ほどのヘルメット団が混ざっているのが発見された。

「見つけたぞ!規則違反者め!!」

「げぇ!?風紀委員会!?なんでここに!?」

「まさか演奏に釣られて姿を現してくれるとはな!」

「くそ……おいお前ら、こうなったらやっちまうぞ!」

突如として路上で始まる銃撃戦。しかし、ゲヘナの民衆はそんなことまるで気にしない。なぜなら日常風景だからである。

「おやおや派手な演出も入って盛り上がってるぜ~!!いえぇぇーーい!!」

むしろ、ツムギはそれを演出として更に演奏が過激さを増す。不規則な銃声や爆発音とのセッションも完璧にこなし、聴衆のヴォルテージはどんどん高まっていく。

「く、くっそ!こいつ強い!!」

ツムギの演奏が終わるころにはイオリはヘルメット団たちを全員捕縛し、応援に来た風紀委員会のメンバーに引き渡していた。ゲリラライブは大成功に終わり、聴衆は満足そうな顔をして散り散りに去っていく。

 

「ふぅ……ありがとうございました。おかげで最高の演奏ができましたよ」

流れる汗を拭い、ツムギは満足そうにイオリに礼を言う。当初の目的を忘れてそうだったが、結果的にヘルメット団を捕まえることに成功はしたのでイオリも文句は言えない。

「……なんだか色々納得はいかないけど、ツムギのおかげで捕まえることが出来たよ。ありがとう」

「どういたしまして。それにしても、聞き込みで歩き回って演奏して、大分疲れましたね」

「私もだ。今日の分の活動は終わったが、大分くたびれたよ……」

その時、イオリのお腹からぐぅ~と音が鳴る。イオリは慌ててお腹を押さえてツムギの方を見る。

「……聞こえたか?」

「なんのことですか?」

イオリはほっと安心した顔でお腹を押さえていた手を離す。

「────そうだ、イオリさん。一緒にご飯食べに行きません?ラーメンとか」

「……なぁ、やっぱり聞こえてたよな?ツムギは耳もいいし」

「はて?なんのことでしょうか」

聞かれていたという恥ずかしさから顔を赤くするが、とぼけてくれているのでそのまま話を続けるイオリであった。

「ラーメン……ツムギは行列も楽しめるタイプか?」

「イオリさんとならばどこでも、いつまでも」

「調子のいいことを言う奴だな相変わらず……それじゃあ、並ぶけど美味しいラーメン屋があるんだ。私のおすすめだが、一緒に食べるか?」

「ふふっ、楽しみですね」

その後、二人で行列に並ぶ間ずっとツムギに弄られ続けたイオリは、自分の選択ミスを後悔しかけたが、美味しいラーメンを仲よく食べたころにはそんなこと忘れて二人で大満足したという。




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