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~ケイ編~
ツムギはミレニアムをまた訪れていた。モモイからゲームを一緒に遊ぼうと誘われたのだ。
「さてさて、今日はどんな新作ゲームが私を待っている事でしょう」
ゲーム開発部には常に新作ゲームが買ってある。勉強のためという理由で部費で買っているらしいが、ほぼ遊びたいから買っているようなものであり、新作ゲーム買ったから友達を家に誘う小学生ぐらいのテンションで毎回誘ってくる。運が良ければゲーム開発部による自作ゲームの新作も場合によっては遊べるため、ツムギにとってはお気に入りの場所である。
「モモイさーん。ワイルドハントから吟遊詩人(バード)が来ましたよ~」
ノックをして、返事を待つ。
「あ、ツムギさんこんにちは」
扉を開けて出てきたのはケイであった。ケイは部屋から顔だけ出して挨拶する。
「こんにちはケイちゃん。中に入れていただけませんか?モモイさんと遊ぶ約束をしていまして」
「すみません、今日はちょっと遊べそうにありません。今部室の大掃除をしているところでして……ちょっと中に入れるのは」
「ふむ、モモイさんは?」
「部室で溜まったゴミのゴミ出しです!全く!なんであんなにゴミが溜まるんでしょう!?普段からちゃんと掃除をしていればこんなことにはならないはずなのに!」
「なるほど……もしかして私が来ると聞いて、掃除を始めたんですか?」
「ええまぁ……人の足の踏み場もまともに無いような場所に、遊びに来させるわけにもいかないでしょう?それなのに、モモイったら何も気にせず!それでいざ大掃除を始めたらとても終わりそうにないレベルで……今日はミドリとユズはアリスと共に冒険に出かけていますし」
「ケイちゃんはゲーム開発部のお母さんですね」
「……前から思ってたんですけど」
「ん?なんでしょうか」
「モモイのことを呼んでみてください」
「モモイさん」
「アリスは」
「アリスさん」
「ミドリ」
「ミドリさん」
「ユズ」
「ユズさん」
「私」
「ケイちゃん」
「なんで私だけちゃん付けなんですか!?」
「ケイちゃんはケイちゃんですよ。特に理由はありません」
実際は良い反応をするからケイちゃんと呼んでいる節もあることは、塩対応されるようになったら哀しいので言わないでおく。
「私もケイさんがいいんですけど……」
「まぁまぁ、機嫌直してくださいよ。私も掃除手伝いますので」
「いえそういう訳には……そもそもお客さんとして呼んだのにお茶の一つも出せないだけでも恥ずかしい現状なのに、手伝いまでしてもらうなんて」
「ふふっ、まぁ普段からよくこの部屋を使わせてもらっているので、その恩返しのようなものです」
「いけません。ただでさえ以前制作したゲーム用にBGMを作っていただいたり、イラストレーターとパイプを繋いでもらったのに、これ以上お世話になるなんて」
「むむむ、じゃあケイちゃんが可愛いからっていうのが理由ではどうですか?」
「私が可愛いから……まるで意味が分かりません!なにも説明になってませんよ!?」
「そんなに文句言うなら、一日ケイちゃんを好き放題できる券と交換とかになっちゃいますよ?どうせ手が足りないんですから、素直に手伝ってもらえばいいんですよ」
そう言いながらツムギは強引に部室に入り片付けを手伝い始める。
「~~~!!全くもう!このお礼は必ずしますからね!」
「ふむ、本当に一日ケイちゃんを好きにしていいんですか?」
「それとは!絶対別の方法で!お礼をしますので!!」
ケイは激怒しながら手伝ってもらうことにはお礼を言う。その様子が面白くて、ツムギはますます調子に乗るのだった。
(レナちゃんを思い出しますね……この可愛さはDNAに素早く届きます)
ツムギはゴミに溢れかえった部屋中を素早く移動し、慣れた様子でゴミを集めて袋に分別していく。
「ツムギさん仕事が早いですね」
「ふふっ、普段から定期的に行っているので慣れたものですよ」
「……そういえばツムギさんって部屋を綺麗にしてるんですか?」
「いえ、基本いろんな場所からのお土産やオカルト品で溢れかえっているのでレナちゃんにいっつもお小言を言われる側です。ですので足の踏み場も危うい状況での大掃除には慣れているわけですね。あ、普段からの収納術なんかに関しては聞かないでください」
「ダメじゃないですか!?」
「創作者(クリエイター)なんて大体こんなものですよ。世の中には掃除ができないから常に引っ越し続けた人生の芸術家もいますので」
「変な言い訳をしないでください!今度ツムギさんの部屋に掃除にいきますからね!」
「おや、お家デートですか?楽しみに待っていますね」
「ああもう!黙って掃除してください!!」
一時間もすれば、部屋はかなり綺麗になりパンパンになったゴミ袋が数個転がっている。
「さて……ツムギさんのおかげで部屋も綺麗になりましたし、このゴミのゴミ捨てはモモイに頼むとして、私は買い出しに行けそうですね」
「買い出しですか?一体何を買ってくるんですか?私を歓迎するためのお菓子とか?」
「お菓子ならいくらでもまだ在庫があります!!スーパーでちゃんとした食材を買うんですよ!!食材を!!放っておくとお菓子とか菓子パンとかカップラーメンとかばっかり食べて!!これじゃあ体の内側からダメ人間になってしまいます!!」
「お、おお……本当にお母さんみたいなことを言い出しましたね」
「というわけで、今日は私がご飯を作ります」
「ケイちゃんの手料理!?」
ツムギは大声で反応し、ケイの肩を掴む。あまりの迫力にケイは目を白黒させて、逃げることが出来なかった。
「私、買い出し手伝うので食べたいです!」
「なんでそんなに喰いつくんですか!?そんな大したもの作りませんよ!?」
「わからないんですか。ならばゲーム開発部として覚えていてください。ツンデレ妹系キャラの手料理シチュほど萌えるものはないんですよ。人類が太古から追い求める────『ロマン』、の代表格ですから」
「いつも以上にわけのわからないことを言わないでください!」
二人は近所のスーパーまで買い出ししに行く。ミレニアムの大型スーパーは自動精算機能や試食用のロボットなど他所では中々見れない設備がたくさんあり、普段見慣れていない人にとってはワクワクの詰まったテーマパークのような気分になる場所である。それはツムギにとっても同じだった。
「ケイちゃん!凄いですよこれ!とった商品が自動で補充される棚です!」
「……ミレニアムの外だと珍しいんですか?」
「そうですね、色んな学校を回ってますが、やはりミレニアムは最先端だなと思わされるものが多いですね」
「だからといって一々はしゃがないでください……私まで変な目で見られます」
「は~いお母さん」
「子ども気分ですかあなたは」
「いえ、夫婦気分です」
「うっさいクソガキ!!」
ミレニアムに帰った後、調理室で二人は料理を作る。ツムギは手慣れた様子で食材を刻んでいき、鍋に放り込む。
「……ツムギさん手料理作れるじゃないですか」
「料理はルームメイトと持ち回りですし、先輩が料理上手なので色々教えてもらってるんですよ。外食するお金がない時も結構ありますしから自炊はできないと」
「じゃあ、私の手料理に拘る必要はなかったのでは……?」
「それは違います。いいですか?普段手料理を食べられるかどうかではなく、ケイちゃんの手料理を食べる事、なんならケイちゃんと一緒に料理する過程そのものに価値があるんです。ケイちゃんというスパイスが最高のインスピレーションを生み出すんです。言うなればケイちゃんチキンなんです」
「ケイジャンチキンみたいに意味不明な言葉を作らないでください!?そもそも今作っているのは肉じゃがです!チキンはどこにもないでしょう!ほら、煮込んでる間に次は副菜の調理に移りますよ!」
ツムギの手伝いもあって調理自体はスムーズに終わったものの、完成時ケイは息を切らすほど疲れ果てていた。
「はぁ……疲れました」
「まぁ、私にずっとツッコんでましたもんね」
「自覚があるなら今度からもっとまともな発言をするように気を付けてください」
なお、ゲーム開発部のメンバーと共に食べたケイの手料理は心温まる味であり、騒がしい食卓と合わせてまるで大家族になったような気分になったツムギであった。
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